偽ポチタ「助けてやるから、女のおっぱいを揉め」士道「ふぁっ!?」   作:鳩胸な鴨

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偽物だけどアイツが出ます。未来最高!


本条二亜は、狂っている

「侵食率自体は、前と変わんないね。

ただ、精神面は結構ヤバめ。

少年の場合、元の気質もそうだと思うけど、ポチタって例があったのも裏目に出た。

そーとー無茶したんじゃない?あそこまでハイになるのって、五年前以来じゃん」

「……はいっ。その通りでございます」

 

勝てない。

士道を言葉で追い詰める二亜を前に、琴里、折紙、十香の3名は言いようのない敗北感を味わっていた。

大人の余裕とでも言うべきか。

無論、参考になる部分は多々あるが、それも士道との揺るぎない信頼関係があってのものなのだろう。

とても真似できないソレを前に、三者三様の嫉妬を向けていた。

 

「…で、この子たちを連れてきたのは?」

「気持ちと情報の整理のため。

やらかした俺じゃちょっと無理そうだし」

「そりゃ、自分で首チョンパしたんでしょ?

しかも、めちゃくちゃゆっくり」

「なんか、切れなくて…」

「そういう言葉が出てる時点で反省ナシか。

じゃ、私と子供作って、嫌でも無茶できなくさせてやろうじゃーにゃいの」

「ば、は、はぁああっ!?」

「……遺憾」

 

琴里の素っ頓狂な声と、折紙の地の底から響くような声が重なる。

一方で、十香は性知識が全くないためか、慌てる二人に首を傾げていた。

 

「どうしたのだ、二人とも?」

「早く抵抗して!おにーちゃんがこのアラフィフに盗られちゃう!!」

「閉経済みのはず。子供は出来ない」

「ところがどっこい。封印済み精霊だから体は19でさ、ガッツリ排卵してんだよねー。

あ、おにゃのこの日だから、股にナプキンしてんの。見る?ダッバダバ血ィ出てんの」

「言わんでいい!!」

「ん?……ん?……むぅう?」

 

尚も唸る十香に、折紙が耳打ちする。

と。みるみるうちに顔を赤くし、十香は士道の腕に抱きついた。

 

「シドーは渡さんぞ!!」

「残念だねー。私が童貞貰うこと確定しちゃってんのよー。契約なんで」

「外堀埋められてたぁあああっ!!

うわぁぁああああんっ!!」

「不覚…っ」

 

二亜の宣告に琴里が号泣。

折紙は悔しそうに歯噛みし、童貞がなにかもわからない十香は「な、何やら知らんがそれでも渡さんぞ!」と、腕を抱き締める力を強める。

もはや、へし折りに来ている。

ミシミシと骨が軋み、冷や汗を流す士道の耳に、ポチタのため息が響いた。

 

『死ね』

「シンプルな罵倒…」

『…ああ、二度は死んでたな。

八つ裂きの刑というのがあっただろ。

今度はアレみたく女に裂かれてしまえ』

「……嫉妬?」

『殺すぞクソボケ』

 

クソ童貞の嫉妬から吐き出される怨嗟に、士道は乾いた笑みを浮かべた。

ポチタが意識を入れ替えると、十香の拘束が緩み、押し付けられていた感触が離れていく。意識の入れ替えに気づいたらしい。

クソ童貞の繊細ハートをひどく傷付けながら、ポチタは混迷を極めた場を諫めた。

 

「落ち着け、お前ら。

コイツの童貞が取られたからなんだ。

お前らの愛はソレで尽きるほど安いのか」

「そ、そういうわけじゃ…」

「良いことを言う。童貞卒業がいい思い出とは限らない。

寧ろ、慣れた分だけ激しく愛してもらえると考えればプラス」

「……はぁ」

 

呆れと悲しみを吐き出すと共に、意識の奥へと引っ込み、落ち込み始めるポチタ。

数万年も童貞を守ってきた男のハートは、わりと脆かったらしい。

薄れた記憶ではあるが、まだ股ぐらにぶら下がるモノがあった時代に生きていた世界では、士道の行いが吊し上げられるのは確実だというのに。

一体、何が違うと言うのだろうか。

意識の奥で考え耽るその背は、ひどくちっぽけに見えた。

 

「…ポチタがガチで凹んでるから、ちょっと出るわ。あと頼むな」

「……今までよく我慢できたよね」

「ん?」

『くたばれクソ野郎』

「なんで!?」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…なぁ。悪魔って、皆ああなのか?」

 

最寄りのコンビニにて。

結露滴る缶入りカフェオレを啜り、拗ねたポチタに問いかける士道。

ポチタは暫し黙っていたものの、沈黙に耐え切れず、口を開いた。

 

『本能的なのは変わらんが、利他的な性分のヤツは居ない。皆無だ。私含め、地獄に住まう悪魔は自己中が極まっている。

私で思い知ってるだろうが、悪魔には理性というタガが存在しない。

これらはどの悪魔にも言えることだ。

だからこそ、お前は衝動に呑まれ、短絡的な発想で自分の首を切断した』

「…自分でも馬鹿なことしたって思う。

もっとやり方はあった。それはわかってたけど、ああすることしか頭になかった」

 

本当に恐ろしいのは、そんな在り方でさえも肯定してしまいそうな自分だ。

そんな弱音と共に甘ったるいカフェオレを飲み干し、残った缶をゴミ箱に投げ入れる。

心臓を覆う不安が拭えない。

呼吸が詰まっている気さえする。

自己嫌悪ばかりが頭を埋め尽くす中、ポチタがため息をついた。

 

『人間としての思考回路が残ってるんだ。

勃起の亜種とでも思っとけ』

「…気遣い下手だよな、お前」

 

少しだけ、呼吸が楽になった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「〈ホワイト・リコリス〉ねー…。

ほむほむ。エッロい作りしてんねぇ。

デメリットなきゃ乗り回したいとこだけど、人体にゃオーバースペックっしょ。

…人を素材程度にしか思ってないってのが目に見えてマジで気に食わんわ。

コレをノンフィクションでやらかすアホに生きてる価値、あると思う?」

 

日がどっぷりと沈み、誰もいない公園にて。

二亜の冷え切った声色に、一人連れ出された折紙の表情が歪む。

両親の仇は琴里…イフリートではないと言う事情は把握したが、これ以上何の用があるのだろうか。

そんなことを思いながら、折紙は二亜の視線の先にある物体を見やる。

そこには、持ち出した装備…〈ホワイト・リコリス〉が佇んでいた。

そう。あろうことか、精霊を殺すための装備が、精霊の手でいじくり回されているのだ。

今頃、陸自が必死になって探しているだろうと思うと共に、ふと疑問が浮かぶ。

 

「あ、期待してんならごめんね。ASTの皆様方は妨害させていただいてまーす。

『永遠の悪魔』って言ってね。どんな妨害してるか、それだけでわかるっしょ?おんなじとこぐーるぐる回ってるの。

ま、モノホンよりメンタル激弱だから、十回も殺せば心折れるのが欠点だけど…。

そこも対策済み。出撃用の地下鉄に能力かけてもらってね。時速100キロの地下鉄から飛び降りないと戦えもしないよ」

 

出鱈目が過ぎる。

ごくり、と生唾を飲み込む折紙に、二亜は悪魔のような笑みを浮かべた。

 

「安心してよ。1日一体しか作れないから。

『1日で消えるとは言わない』けど」

「…悪魔の軍団でも作っているの?」

「惜しい。現在進行形じゃないよ」

「………っ」

 

光と闇をそのままぐちゃぐちゃに混ぜたかのような不気味な眼光が、折紙を捉える。

ラタトスクの観測器がこの場にあれば、その感情の凄まじさに、たちまちエラーを吐いていたことだろう。

その目に燃ゆる憎悪は、同じ思いを抱く折紙ですら飲まれてしまいそうな程に、深く悍ましいものだった。

 

「…何故、それを私に知らせる?」

「いやねぇ。生み出した悪魔の一人が、君を見た時からうるさくってさ。

もし良かったら、話してみる?

手ェ出さないように手綱は私が握っとくし、一聞の価値ありだよー?」

 

二亜の誘いに、折紙は暫し迷う。

数分だろうか、数秒だろうか。

どのくらい経ったかもわからない沈黙を経て、折紙は軽く頷いた。

 

「いい返事ね。じゃ、呼ぶよ。

悪魔の貯蔵庫(ベルゼブブ・コレクション)】、『未来の悪魔』」

 

顕現した本が開くと共に、人影がゆっくりと構築されていく。

ぱっくりと開いた腹部に鎮座する眼球。上半身を覆う毛は、濡れた獣を想起させる。

閉じられた六つの目に、側頭部から伸びるツノは、枝のように見えた。

がっしりとした体躯を誇るその悪魔が地面へと降り立つと、その場で意味のわからないダンスを始める。

 

「未来!最高!!未来!最高!!

イェイ!イェイ!未来!最高!!

私を呼び出したということは、我が母も『未来最高』と叫びたくなったのですか!?」

「いや全然」

「ショック!過去最悪な気分です!!」

 

存在がうるさい。

声がうるさい、セリフがうるさい、動きがうるさいの三拍子が揃っている。

『騒音の悪魔』の間違いなのでは、と思いつつ、二亜は折紙を指差した。

 

「ほら、会いたがってたっしょ?

自己紹介しなさい」

「私は『未来の悪魔:レプリカ』!

オマエも未来最高と叫びなさい!!」

「断る」

「殺すぞ!!」

 

最悪のファーストコンタクトである。

「ファーストコンタクトでありワーストコンタクト」というユーモア溢れる一節があったな、と思っていると。

二亜が未来の悪魔:レプリカの胸毛をごっそり抜いた。

 

「ふごぉうっ!?」

「ダークネス企業の手先でもないお客さんを殺さないの。本題に移りなさい」

「お、オマエが叫ばないせいで母に叱られてしまったじゃないか!畜生!鬼!悪魔!」

「責任転嫁しないの」

「ほぉうっ!?」

「………」

 

毛を抜かれ、悶絶する未来の悪魔:レプリカ。

それに冷ややかな目線を送っていると。

急激に未来の悪魔:レプリカに頭部を掴まれ、ぱっくり空いたその腹部に突っ込まれた。

 

「っ…!?は、離して…!!」

「すぐ終わる。大人しくしてろ」

 

抵抗するも、万力のような力で押さえつけられ、抜け出すことができない。

眼前にある瞳に、心の底まで覗かれていそうで、えもいわれぬ怖気が背筋を走る。

数秒経つと、折紙は乱暴に床に投げ捨てられた。

 

「っ…、な、なにを…」

 

尻餅をついた折紙が問いかけるも、未来の悪魔:レプリカは答えない。

と。彼の喉奥がくっ、くっ、と音を立てた。

 

「おい、オマエ。私の力が欲しくないか?」

「なんの…話…?」

「オマエ、力が欲しいんだろう?私が貸してやると言ってるんだ」

 

悪魔の囁きに、折紙は唾を飲む。

何故、と瞳で問いかけると、未来の悪魔:レプリカは醜悪に笑った。

 

────オマエは最悪の結末を迎える。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…何を企んでいるの?」

 

折紙と別れ、帰宅した二亜を出迎えたのは、見るからに不機嫌な琴里と十香だった。

どうやら、士道はまだ帰っていないらしい。

やることが多いな、と思いつつ、二亜は琴里の問いに締まりのない笑みを浮かべた。

 

「えー?人聞き悪いにゃあ、妹ちゃんは。

近いうちにお姉ちゃんになるかもしれないんだし、もーちょい優しくてよ」

「そんな冗談を聞きたいんじゃないの。

アンタ、士道を付き合わせて何をするつもりなの?」

「…誤魔化されてくんないか」

 

冷たい針が、髄を貫いたような気がした。

二亜は表情を変えぬまま、しかし、どこか危うげな雰囲気を纏い、口を開く。

 

「殺されかけた挙句、目の前で好きな人殺されてんだよ?

それでなんの感情も湧かないほど、人間やめた記憶はないにゃあ」

「復讐でもする気?」

 

二亜の変貌に臆することなく、淡々と問い詰める琴里。

想定していた質問だったのだろう。

二亜はにっこりと笑みを浮かべ、踊り始めた。

 

「そ。少年を刺したあのアマも、それを指示したクソ野郎も、それに追従するダークネス企業も。全部ぶっ殺してやろうかと思ったけど、殺すってなんかパッとしなくない?

スッキリしないっていうかさ、すぐ終わっちゃう割にクソ重いじゃん?

だから、軽ーい嫌がらせを企んでるわけ。

復讐ってさ、漫画描いてるとクソ重たい話になっちゃうけど、ホントは嫌がらせレベルでいいの。

ストレスでハゲ散らかしてノイローゼとかにならないかなー、って軽い気持ちでやる程度のモンなのよ」

 

陰湿にも程がある持論を展開し、琴里の頬に触れ、顔を近づける二亜。

頬に伝う指の感触が、毒虫が這っているように思えてならない。

顔にかかる息は、悪魔のソレに等しい。

体の中からじわじわと侵食されていくような感覚に、琴里は小さく悲鳴を漏らした。

 

「琴里から離れろ…!

お前の言葉は、気味が悪い…!!」

 

と。琴里を抱き寄せ、険しい表情を浮かべた十香が、鋭い目つきで二亜を睨め付ける。

今にも斬り殺しにかかりそうな程に剣呑な雰囲気を纏う十香に、二亜は一転、締まりのない笑みを浮かべた。

 

「ありゃりゃ、ごめんね。

私も少年のことが大好きだからさ。

少年を目の前で殺されたせいで、ちょっと頭イカれちゃったんだよねー。

だからさ、大目に見てくれないかにゃー?」

「………っ」

 

十香にも、その感情の波には覚えがあった。

初めてのデートの日。十香を庇い、士道は腹を大きく削られた。

血溜まりに沈む彼が脳裏を過ぎると共に、ゾワゾワと胸に不快感が広がっていく。

十香は蘇りかけた記憶を振り払い、二亜に悲しみを込めた瞳を向けた。

 

「……私も、同じ体験をしたことがある。

一切合切が憎くてたまらなかった。全ては無理でも、シドーの仇だけは取ってやると心の底から思った。

でも、シドーは生きていた。それだけで、そんな気持ちが全部吹き飛んでしまった」

「そう。良かったね」

 

淡白な返答にたじろぐも、十香は辿々しく、しかし確かに胸の内をぶつけた。

 

「シドーがこの世界で生きている。

どんな姿でも、どんな力を持とうと、私と同じ世界を見ている…!

それだけで幸せでたまらない!

琴里も、四糸乃も、お前だってきっと、そんな幸せを感じているはずなのだ!

それなのに…!お前は何故、そんな辛く、醜い気持ちを抱き続けている!?」

 

呟きから怒鳴り声に変わった十香の言葉に、二亜は笑みを崩さない。

作り物のように笑顔を貼り付けた二亜は、弧を描いた口元を開いた。

 

────五河士道が悪魔になったキッカケが、他でもない私だからね。

 

ひゅっ、と二人の喉が鳴る。

薄らと開いた瞼から覗く二亜の瞳に、ドス黒い感情が籠っているように思えた。

 

「ね?私が狂うしかなかった理由、わかっちゃったでしょ?

私が少年を引き返せない場所に堕としちゃったって罪悪感と、それでも少年が大好きって気持ちがぐちゃぐちゃに混ざったせいで、半分はもうとっくに反転してるし。

ギリ正気だから、悪魔関連の能力を『ベルゼバブ』じゃなくて『ベルゼブブ』って言ってんの」

 

二亜は言うと、ゲーミングチェアに勢いよく腰掛け、その手に《囁告篇帙》を顕現する。

よくよく見ると、その半分は禍々しい装飾が走っており、威圧感を放っていた。

二亜はそこから二枚の紙片を引き抜くと、スラスラと筆を走らせる。

 

「こんな気持ちを抱くのは私だけでいい。

あなたたちに、こんなドロドロした感情を抱いてほしくない。少年も望まないからね。

だからさ、お願い。私と『契約』してくれないかな?」




本条二亜…とうとう本性出したね。士道とポチタも、二亜が自責の念で狂ってることは知ってる。実は《神蝕篇帙》を奪った黒幕が使ってた能力の応用で悪魔を生み出していたので、半分反転は前々から示唆していた。恋心を自覚した途端に狂うという最悪の初恋だけど、本人はそんな恋ができたという理由で幸せ。

未来の悪魔:レプリカ…原作チェンソーマンに出てくる本人ではないので悪しからず。性格は限りなく近いが、士道と二亜には絶対に敵意を向けないようにプログラムされている。目をつけた折紙と契約に成功し、「未来最高!」と叫び、踊っている。

鳶一折紙…未来の悪魔が好きそうな鬱展開が待ち受けている女。永遠の悪魔がASTを解放する前に出頭した。懲戒解雇を覚悟していたものの、本作の黒幕に目をつけられたお陰で辞めずに済んだ。未来の悪魔と契約したことにより、「未来最高」と言うと、数秒先の未来を見ることができるようになった。

【悪魔の貯蔵庫】…二亜が五年間溜め込んだ悪魔たちが蠢いている。ポチタの知識がベースとなって生まれているので、士道とポチタのことを「我が父」、二亜のことを「我が母」と呼ぶ個体が多い。
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