偽ポチタ「助けてやるから、女のおっぱいを揉め」士道「ふぁっ!?」   作:鳩胸な鴨

16 / 30
コイツ、ポンコツが過ぎるぞ…!?


偽ポチタ、呆れる

「…この修学旅行、作為的なものを感じるの、俺だけなのかな?」

『バカタレ。全員が訝しんでたろうが。

確実に私たちが要因となっているぞ』

「ですよね…」

 

ぐうの音も出ない指摘に、士道はがっくりと首を垂れる。

その手元には『修学旅行の行き先が変更となった』旨が記された書類があった。

元は沖縄という、進学校にしてはありふれた行き先だったのだが、予定していた宿泊先が唐突に崩落してしまったらしい。

代わりの宿泊先も埋まっており、どうしようかと悩んでいたところ、クロストラベル社だとかいう旅行会社が「生徒を被写体として、パンフレット用の写真を作る。旅費はこっちで持つので、『或美島』という島に来てくれないか」と接触。

あまりの好条件に訝しみはしたものの、学校としては断る理由もないので受けた、という顛末があったらしい。

保護者用のためか丁寧な文体だが、よくよく情報を噛み砕くと、きな臭い点が目立った。

 

「タイミング良すぎなんだよな。

令音さんから聞いたけど、クロストラベルって会社、あのダークネス企業の系列会社なんだろ?」

『確実に動いているだろうが…。

心配するな。ニアも「行き先が悉く被りまくる一般人枠」として同行すると言ってる』

「無理あるだろ」

 

漫画家から搾り出されたとは思えないほど苦しい設定に、士道は呆れを吐き出す。

しかし、DEM関連にトラウマを抱く二亜が同行しても大丈夫なのか。

心配が湧いては消え、足元がソワソワと忙しなく動く。

と。ポチタが呆れたため息を吐いた。

 

『寧ろ、お前から離れた方が危険だ。

「保険」の発動にラグが生じる。その間に殺される可能性もあるぞ』

「わ、わかってるけどさぁ…」

『それに、アレはお前が想っているよりも遥かに逞しい女だ。

不安要素はお前の方が多いくらいだぞ』

「例えば?」

 

ポチタの物言いに、表情を強張らせる士道。

口喧嘩では彼に勝てないとわかっているはずなのに、具体例を求める言葉が口を突いて出てしまった。

後悔するもすでに遅く、ポチタの口撃が始まった。

 

『まず「精霊の悪魔」としての暴走だ。

トーカやオリガミが危険に陥れば、お前は躊躇いなく悪魔としての力を使う。

そうなれば何をしでかすか、お前自身にも分からんだろう?

次にトーカの機嫌取りだ。

無論、オリガミもお前に迫ることだろう。

どちらもお前に恋慕を向けてるんだ。

修学旅行という一生に一度の思い出を、お前と共に過ごしたいと思うのは自然なこと。

お前は軋轢を産まぬよう、努めねばならん。

…ああ。そういえば、帰宅すればヨシノとコトリの機嫌も取る必要があったな。未だに童貞を捨ててないんだ。お前のようなヘタレスケコマシドスケベにそんな器用な真似ができんことは…』

「ストップ。ストップ。死ぬ」

 

正論で殺されるかと思った。

ひょっとして、自分は『情けない』という単語を凝縮して生まれた存在なんじゃないか。

そんなくだらないネガティブ思考が脳を埋め尽くし、士道はため息を吐いた。

 

「…神様仏様。出来ることなら、いい思い出で終わらせてください」

『神が悪魔の祈りを聞くと思うか?』

「やめて。わかってるから」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「なんで私まで…」

「心臓治してあげたの、だーれだ?」

「わかってます、わかってますって…。

はぁー…。人使いの荒い女に借りを作っちまったですねぇ…」

 

士道たちを乗せた飛行機が到着するまで、あと数分。

一足先に空港に着いた真那は、線の走った左手をまじまじと見やり、ため息を吐いた。

その視線の先には、楽しむ気満々なのか、アロハシャツに身を包んだ二亜が、なんとも愉快なグラサンをかけて佇んでいた。

変装なのだろう、ボサボサの髪を隠すように被さったロングヘアのウィッグが揺れる。

ぱっと見では二亜だとわからない。

真那も同じように、普段は結んでいる髪を解き、染髪剤で黒く染めていた。

 

「確かに、『心臓ダメになったから、代わりの用意出来ねーですか』って聞きましたよ?

…コレはないでしょ。しかも、モノホンよりかなり弱ぇんでしょ?」

「うんにゃ。ポチタの血ィ飲ませたから、モノホンと同じくらい」

「…それだけで強くなるなら、なんで全員に飲ませねーんですか?」

「殆どをポチタが嫌がったから。

強化できたのは、ポチタが地獄で仲良くしてた子と、私のオキニ、保険くらい。

そいつに飲ませるのだって、本当は反対されたんだから」

 

そんな雑談を交わし、二亜は売店で買ってきた限定フレーバーの炭酸飲料を呷る。

真那も同じものに口をつけ、ちびちびと口に含み、刺激が抜けてから飲み込んだ。

 

「…うぇっ。よく飲めますね、コレ。

味、酷くねーですか?」

「……確かにまずいね。

でも、買ったからには飲まないと」

「なんでちっちぇボトルで買わなかったんですか?」

「売ってなかったんだよ」

 

口腔を蹂躙するチープな味に顔を顰め、舌を突き出す真那。

しかし、飲み干さなければ「モラルがない観光客」という、どこにも歓迎されないモンスターに成り下がってしまう。

諦めたため息を吐き、ペットボトルに口をつけようとし、ふと口を開いた。

 

「何故、私を護衛に選んだんですか?

兄様と契約して、保険はかけてんでしょ?」

「退職届を叩きつけるなら、ド派手な方がいいと思ってさ」

「余計な気遣いです」

「じゃ、言い方変えるね。

アイツらへの嫌がらせ」

「前言撤回。全力で務めさせていただきます」

 

ビキッ、と音を立て、血管が浮かぶ。

拾ってくれた大恩はあるが、殺されかけたというマイナスが大き過ぎる。

般若のような形相を浮かべ、ふしゅう、と怒りを込めた吐息を吐き出す真那。

と。その視界の隅に、ぞろぞろと高校生くらいの少年少女が並ぶのが見えた。

 

「お、来た来た………、ん?」

 

二亜がそちらに視線を向けると、ある一点の違和感に気づき、妙な表情を浮かべる。

呆れと言うべきか、驚きというべきか。

気の毒な感情をむき出しにした顔に、真那が首を傾げた。

 

「どうかしました?」

「や、アレ…」

「ん?アレって…、え?

あ、ぇ、えぇ…?はぁ?」

 

その光景に、真那は困惑した。

高校生たちが教師の長ったらしい注意事項やら、持論やらを展開する中、そこに紛れ込んだ異物。

そう。旅行会社から派遣されたであろうスーツを纏う細身の女性に、見覚えがあり過ぎたのである。

列の真ん中あたりに佇む士道も、なんとも言えない表情を浮かべ、その女性から目を逸らしているのが見えた。

 

「バカだ。バカがいる」

「言わねーでくだせぇ。アレは自分らが1番の天才だとかマジに思ってるタイプなんで」

「や、でも…。まんま来る?」

「宣戦布告のつもりなのか、それとも何も考えてない真性のバカなのか…。

すみません、私でもわかんねーです」

 

あの日、士道の心臓を貫いた女が、何食わぬ顔でそこにいた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「……バレてないとか思ってんのかな」

『イメチェン程度の変装で切り抜けられるとか思ってるクチだぞ。

お前の仇があんなバカだと思うと、こっちが悲しくなってくる…』

 

ボロクソに罵り、呆れるポチタ。

士道も同じように呆れを込め、付いてくる女性…エレン・M・メイザースを見やる。

やはりというべきか、五年前から容姿が変わっていない。

ミドルネームを抜いた程度で偽名を名乗っているつもりなのだろうか。

少なくとも、修学旅行が平穏に終わることはなくなった。

士道はため息を吐き、首を傾げる十香を見やる。

 

「どうしたのだ、シドー?難しい顔をして」

「あのカメラマンの人、いるだろ?」

「うむ」

「俺、アレに一回殺されたことあるの」

「…冗談か?」

「いや、マジ」

「………シドー本人がすぐにわかる見た目なのに、何故変装しない?」

「とんでもないバカか、作戦上バレてもいいとか思ってるのか…。

あの余裕のせいでわかんないけど、ロクでもないことを企んでるのは確か」

「…いや。多分前者だと思うぞ。

直感だが、なんかそんな感じがする」

 

十香にすら呆れられている。

一方で、当の本人は気づかれていることに気づいていないのか、女子三人のグループによって、可哀想になるほどもみくちゃにされていた。

アレでは余裕もないだろう。

出来ることなら、この修学旅行中は彼女らに付き纏われてくれ、と思っていると。

ポチタがふと、声を上げた。

 

『精霊の匂いがする。近いぞ』

「…っ!?」

「どうしたのだ、シドー?」

「せ、精霊がいるって、ポチタが…」

「む…?本当なのか?」

「信じられんなら案内してやる」

 

いつかのように、ポチタが意識を入れ替え、まばらな列から離れていく。

十香もバレないよう、それに追従した。

暫く歩いていくと、晴天が続いていたはずなのに、ぷっつりと世界が切り替わったように、暗雲が立ち込めた。

 

「な、なんだ…?」

「少し退いてろ」

 

ヴゥン、とエンジン音を立て、チェンソーを突き出すポチタ。

と。突如飛んできた中身のないゴミ箱の弾幕が、十香の顔面を捉える前に裁断した。

 

「お前はツラがいいんだ。

顔を守る努力をしろ」

「あ、ありがとう」

 

褒めているのかよくわからない言葉に、十香は困惑気味に礼を述べる。

と。ポチタは仮面の奥に潜む瞳を上空へと向け、ため息を吐いた。

 

「…二人で一体、か。面倒だな」

「なんのこと…」

 

十香が問いかけたその時。

風が強くなると共に、二つの人影がポチタたちを挟むよう、ゆっくりと降り立った。

二人を見比べると、髪型や衣装の左右に体型など、異なる点はあるものの、顔の作りが恐ろしいほどに似通った少女らである。

ポチタの言葉に納得がいったのか、十香はうんうんと頷いていた。

 

「シドー!すごいな、ポチタは!」

「あ、うん…。すごい、よな…。うん」

 

意識を入れ替えた士道は、更なる波乱への予感に、冷や汗を流していた。




崇宮真那/■■■■■■■…魔術師改造で心臓がヤバめなことになってたので、二亜にダメ元で代わりを用意してもらった。その副産物には不満いっぱいな模様。クソ暑いのに「闇夜に紛れるならこれっしょ」という要らない気遣いでロングコートを渡された。元上司のアホさ加減に呆れてる。

もやしっこー部長…「魔術を抜けば、現代社会で生きていくことすら困難なレベルのポンコツ」というのが原作設定な女。変装も「イメチェン程度でいっか」で済ませる程度にはポンコツ。

本条二亜…仇のアホさ加減に呆れてる。修学旅行に「行き先が悉く被る一般人」として同行。あわよくば膜を捨ててやろうと画策してる。けど、精霊が襲来したのでお預け確定。畜生。

五河士道/精霊の悪魔…ヘタレていまだに二亜を抱いてない。修学旅行が終われば、と先延ばしにしたら、修学旅行に同行された。とうとう貞操とお別れか、と覚悟するも、精霊の襲来により貞操は守られた。仇のアホさ加減に呆れてる。

偽ポチタ…仇のアホさ加減に呆れてる。修学旅行で万年物の貞操とお別れかと期待するも、精霊の襲来により台無しになる。畜生。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。