偽ポチタ「助けてやるから、女のおっぱいを揉め」士道「ふぁっ!?」 作:鳩胸な鴨
『クソ童貞を攻略してなんになる。
発情期の猿をナンパしてるのと同じだぞ』
「それ、お前も含まれてるからな?」
『自覚はある。が、お前を責めない理由にはならんだろうが。
攻略されてるのはお前だ』
「そうだけどさぁ…」
士道はため息を吐き、自身に付き纏う美少女二人を見比べる。
溌剌とした印象を受ける、スレンダーな体型の少女が耶倶矢。大人しい印象を受ける、グラマラスな体型の少女が夕弦というらしい。
元は「八舞」という一人の精霊だったのだが、なんらかの要因で二人に分たれてしまったという。
いつかは一人に戻る必要があるらしいが、その際にどちらの人格は消え去ってしまうことを本能的に知った彼女ら。
どうしたものか、と悩む暇もなく、短絡的な発想で『どちらかが八舞として相応しいか』を決める決闘が始まったと言う。
戦績は面白いくらいに互角で、なかなか白黒つかない。
そんな折、チェンソーマンとして場に居合わせた士道に目を向け、「この怪物を惚れさせたら勝ち」という、なんとも難易度の低いナンパ合戦が始まったのだ。
童貞を拗らせに拗らせたクソ童貞を攻略することなど、耶倶矢や夕弦ほどの美少女であれば、ガムの包み紙を剥くよりも簡単である。
始まった途端に終わりそうな勝負だが、そこは据え膳食わぬ男の恥。
貞操の喪失は必須であろう、数々の修羅場を言い訳と気絶で乗り越えてきた士道の堤防が崩れることはなかった。
「…ただでさえ十香と折紙で手一杯なのに」
「我がこうして身を尽くして誘惑していると言うのに、他の女の名を口にするとは…。
これは、仕置きが必要だな?」
「憤慨。夕弦の誘惑を気に留めず、第三者…それも女性の名を出すなど、論外です」
しまった。地雷を踏んだ。
後悔するも遅く、ぎゅっ、と二人の密着が格段に激しくなる。
立ち上がろうとするシンボルを必死に抑えていると、ポチタの呆れが響いた。
『…聞くが、コイツらも封印するんだろう?
同時に封印せんと意味がないだろうが…。
お前、「魔性の男」などという役回りができるか?』
無理に決まっているだろうが。
そう叫びたくなったが、士道は寸前で飲み込み、二人の抱き枕と化すことに徹した。
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「…まだ繋がらないんですか?」
「手は尽くしているが…。正直、厳しい」
耶倶矢、夕弦の誘惑をなんとか跳ね除け、用意された部屋にて。
訪れた令音の報告に、士道は頭を抱える。
やはりと言うべきか、妨害電波のようなものが発せられているらしく、ラタトスク及びフラクシナスに通信が繋がらないのである。
そう言う根回しは出来るのに、何故にあそこまでポンコツなのか。
今頃は女子部屋に引きずられ、枕投げで筋肉痛に苛まれているだろうエレンを思い浮かべ、士道は呆れを込めたため息を吐いた。
「まさか、あのダークネス企業じゃなくて、精霊に振り回される羽目になるとは…。
…十香、絶対に怒ってるだろうなぁ」
「面白く思ってないのは確かだね」
「やっぱり…」
「だが、シンのやろうとしていることが分かっているためか、以前よりも安定している。
終わったらたくさん構ってやるといい。
女性に気を配れるようになったのはいい進歩だね、シン」
「まぁ、仕込まれたんで…」
ただでさえ、精霊の悪魔としての一面で心配をかけてしまっているのだ。
これ以上、十香たちの不満を煽れば、どうなることかわからない。
出来る限りのケアを心がけておいて良かった、と胸を撫で下ろすと共に、士道は目下の問題に頭を悩ませた。
『まぁ、相手にとってもイレギュラーが増えてしまったわけだ。
その利点を活かすよう、考えておけ』
「いつもの如くぶん投げやがって…」
『聞くが、私が女を口説くのに役に立った覚えはあるか?』
「いっぱいあるさ。自分じゃ気付いてないかもだけど、いい男だぜ、お前。
クソ童貞なのが不思議なくらいだ」
『……余裕から来る同情はなによりも傷を抉ると知れ、このスカポンタン』
本気で怒っているとは思えない、弾んだ声音で悪態を吐くポチタ。
いつものことながら、素直に褒め言葉を受け取らないのは何故なのだろうか。
そんな疑問を抱きつつ、士道は令音に指示を仰いだ。
「で、俺はどうすればいいですか?
正直なところ、どちらも惚れさせる魔性の男を演じるのってかなり難易度が…」
「やるしかないだろう。
そのための君じゃないか」
「……そ、そりゃ、そうですけども」
「大丈夫。フラクシナスからの援助は受けられないが、私が出来る限り協力するよ」
あの暴走特急が抜けただけ、ありがたいと思うべきなのだろうか。
そんな失礼なことを思いながら、士道は二人分の足音が近づいてくる音を聞き、ため息を吐いた。
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『ヘタレめ…!旅行前にニアを抱いていたら、アイツらにも手を出せたものを…!』
「ホンットお前さぁ…」
最低にも程があるクソ童貞の恨み節に、士道は眉間を抑える。
性知識はあるものの、勝負となれば恥の殆どを投球する耶倶矢、夕弦の二人の罠に、物の見事にハマったのである。
のれんを交換され、男湯に入っていたはずが一転、あっという間に女湯に入った変態となった士道。
シンボルは本能に逆らえず、突撃してきた耶倶矢、夕弦のタオル一枚に隠された裸体に反応してしまった。
────くくく…。どうした?我の美貌を前に言葉をうしな…、みぎゃぁああああっ!?
────疑問。急に叫んでどうしたのですか、耶倶矢。今ここにいるのは士道と私たちだけ。決着をつけるぜっこ…、きゃああああああっ!?
長年の修行により、凶悪なモノへと育ったソレの臨戦体勢を直視した二人は、それはそれはもう大いに戸惑った。
士道はなんとかその隙を突き、温泉を脱出。
二亜との契約が完全に裏目に出たことで、いつもの如く機嫌が急落したポチタを宥めて、現在に至ると言うわけである。
「はぁ…。汚いモン見せたなぁ…」
『アレはアイツらの不注意だろう。
それに、生娘のようなあの反応…。膜を破るような勝負はしてなかったと見た。
良かったな、シドー。童貞を捨てた後の楽しみが増えたぞ』
「二亜に怒られるだろ…」
『アイツは「自分以外の恋人の十人や二十人いても別にいい」とか言ってたぞ』
「作らんからな!?」
『では、どうやって精霊たちを抑えるつもりだ、バカタレ』
「ゔっ」
落とした精霊のメンタルケアには、士道本人の献身も欠かせない。
そうなれば、恋人のような関係性を持つ少女らが増えるのも当然で。
もしかして、自分は引き返せない場所にまで落ちてしまったんじゃないか、と今更なことを思い、士道は冷や汗を流した。
と。ばぁん、と大きな音がなったかと思うと、旅館で用意されたであろう、薄い着物を纏う耶倶矢と夕弦が部屋に上がり込んできた。
「か、耶倶矢に、夕弦…?」
「……答えろ、士道…!
さっきのは、どっちだ…!?」
「は、はへ?」
「詰問。どちらで興奮したか聞いてるんです」
「は、はぁ…!?」
こんな最低な形で白黒つける気なのか。
身体中の水分が、冷や汗となって一気に抜けていくような感覚に襲われながら、士道は必死に言葉を探す。
しかし。そんな暇もなく、こちらに迫る耶倶矢、夕弦の二人に生唾を飲み込んだ。
と。唐突に意識が入れ替わり、表面に出たポチタが口を開く。
「生理現象だ。女の裸体を見ると、男は誰だってこうなる。
わた…、俺は女に免疫がないからな。お前たちのような見目麗しい女ともなると、その欲を抑えることは難しい」
「へ、へぁ…?」
「狼狽。な、なにを…」
「そんな美少女が二人も揃っているんだ。どちらで興奮したかを見極めるなど、困難を極める。
なに、急くことはない。
まだお前たちの魅力全てを見たとは言えんからな。
お前たちの魅力を全て知った上で、納得できる結論を出してやるさ」
『ぽ、ポチタぁぁああああっ!!』
このクソ童貞、やりやがった。
歯の浮くようなセリフを臆面もなく並べるポチタに、士道は感動と歓喜を込め、意識の奥で叫ぶ。
意識の奥に戻ったポチタは、誇らしげながらも呆れを込めたため息を吐いた。
『お前のくだらない訓練を見てきたんだ。
このくらいは言ってのけて当然だろう』
(マジでありがとう…)
狼狽し、視線を泳がせる二人を前に、士道は胸を撫で下ろした。
取り敢えず、今日のところはまだ、結論を出さずに済みそうだ。
二人は顔を赤くしながらも、満更でもなさそうに口を開く。
「ふ、ふんっ!ゆめゆめ忘れるなよ!貴様は我が美貌の前に、情欲の虜になる運命にあることを!
くれぐれも!我を口説こうなどとくだらぬことは考えぬことだ!」
「忠告。惚れさせるのはこちらです。私たちを口説くなど、ナンセンスです」
『ほら、取り敢えず褒めろ。お前でもそれくらいは出来るだろ』
褒めろ、と言われても。
そんな文句が飛び出そうとするも、士道はなんとかそれを飲み込む。
ロマンチックに口説き文句を吐けたなら良かったのだが、中身はクソ童貞なのだ。
どう頑張ってもダサくなるに決まってる。
ポチタの言ったことの繰り返しにはなるが、効果は期待してもいいだろう、と思い、口を開いた。
「耶倶矢も夕弦も、口説きたくなるくらいには、とびっきりの美人ってことだよ」
「ばっ…!?な、なに言ってんの!?」
「困惑…。そ、その…」
面白いくらいに狼狽する二人に、士道は内心で激しく謝罪した。
十香たちのように、人間としての文化に馴染みのない精霊であれば、このような稚拙な褒め言葉でも効果があるらしい。
羞恥に負けたのか、二人は妙な声をあげながら、早足で部屋を立ち去り、勢いよく扉を閉めた。
『…及第点だ。私の言葉の繰り返しになったのはいただけんが。
もう少し言い方を変えろ、アンポンタン』
「前よかマシになったろ…」
『マシなだけだろうが』
「ぐぅっ…」
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「…あー。そりゃ暴走もしますね」
旅館の周辺を覆う木々の中にて。
油と破片に塗れたコートを払い、真那が血が滴り落ちる手のひらを舐める。
周囲には人型のロボットらしき物の破片が散乱している。
真那は積み上がった残骸の一つに腰掛け、土産屋で買った菓子に舌鼓を打つ二亜を見やった。
「私の分、残してくだせぇよ」
「あ、終わった?」
「ええ。頭のネジぜーんぶカッ飛ぶくらい、ハイになれましたよ」
残骸の山から飛び降り、真那は未だに鋭い痛みが残る両手を見やる。
この痛みがいつものことだと認識してしまうくらいには、非日常に慣れてしまった。
滲む血を全て舐め取ると、真那は二亜が手に持った箱に並ぶ菓子を取った。
「ちんすこうですか。…実は、食べたことねーんですよね」
「ちょっと変わったクッキーみたいな感じ。
お土産で貰ったモンしか食ったことないけど、こっちで食ってもあんま変わんないね」
「そりゃそうでしょうよ」
鉄の味が残る口内に、封を開けた菓子を放り込む真那。
確かに、クセになる独特な風味だ。
真那はもう一つ袋を手に取ると、即座に封を破り、口に入れた。
「あー…。飲み物欲しいです」
「血ィ飲む?」
「それはナシで。あと、炭酸じゃないやつ」
「いちごオレなら」
「お、やった。このメーカーのヤツ、美味えんですよ」
自販機で買ったであろう、真那はどこでも見かけるラベルのいちごオレを受け取る。
額から血が噴き出すのは難儀だな、と思いつつ、口腔に残る風味を流すように、甘ったるいいちごオレを口に含んだ。
「初陣、どーだった?」
「兄様とポチタさんの戦い方はまるで参考にならねーですね。
ま、扱っているモノが違うんで、当たり前なんでしょうけど」
「銃の方が良かった?」
「いえ。こっちの方が馴染みます。
兄様に近い姿ってのも気に入りました」
言って、薄い線が走る左手首を握る真那。
「変身方法はダセェですが」と苦言を呈すると、二亜は肩をすくめた。
「変身後はカッコいいし、いいじゃん。
ほら、また来たし」
二亜が言うと、上空から影が向かってくるのが見える。
真那はそれにため息を吐くと、左手を握る右手に力を入れた。
「痛いからやりたくねーんです、が!」
シャキン、と、薄い金属を撫でたような音が、月夜に響いた。
崇宮真那/■■■■■■■…変身するとハイになる。クソ暑い中、ロングコートを着ることに不満たらたらだったが、変身した姿を鏡で見て「あ、ロングコート以外似合わねーな」と気づいたので受け入れた。わりと旅行を楽しんでる。
八舞姉妹…士道の勃起を目の当たりにして、思わず悲鳴を上げるくらいにはウブ。お互いに抱き合って悲鳴をあげていた。
本条二亜…案の定狙われたけど、真那と悪魔たちが守ってるので無傷だった。20個入りのちんすこうを12個食べて、真那にしばかれた。
五河士道/精霊の悪魔…会って間もない女に勃起を見られた男。今回ばっかりは不可抗力と主張しても良い。偽ポチタのフォローに救われた。
偽ポチタ…一話を読み返して貰えばわかるが、クソ童貞ではあるものの、カップルメーカーとしては超優秀。周りの結婚式にめちゃくちゃ呼ばれてた。