偽ポチタ「助けてやるから、女のおっぱいを揉め」士道「ふぁっ!?」 作:鳩胸な鴨
「…あの二人、本当は仲良いよな」
『アイツらは元は一つなんだ。
ウマが合わんわけがあるまい。寧ろ、不仲な方が不自然だぞ』
翌日。海岸での自由時間にて、士道は照りつける太陽のもとで遊ぶ精霊たちを見やり、息を吐く。
つい先ほど行われた、八舞姉妹チーム、折紙と十香によって編成された呉越同舟チームによるビーチバレー対決。
序盤こそは八舞姉妹が押されていたものの、折紙らの煽りにより、天性の負けず嫌いを発揮した二人。
驚異的なコンビネーションで逆転勝利を収めた彼女らは二人して盛り上がったものの、ふと気づいたように不仲を装ったのである。
その光景が忘れられず、士道は眉間に皺を寄せた。
「…二人とも助けてやりたいけど…。
最悪、俺たちみたいな感じで、意識の入れ替えとかできないかな?」
『無理に決まってるだろう。
根本からして仕組みが違うんだ。
お前、「飛行機と新幹線は同じモノだから、同じように修理できる」とアホなこと宣ってるんだぞ、バカタレ』
「ですよね…」
正論に殺されかけながら、士道は思考を巡らせる。
しかし、いくら思考しても「同時に封印するしかない」という結論しか出ない頭に、深いため息を吐いた。
「二人同時にキスするって…」
『そこはお前の仕事だろ』
「ポチタ、変わってくれよ…。
あんな口説き文句が吐けるんだからさ…」
『抱けもせん女と接吻なぞするか。変わってほしいなら、とっとと貞操を捨てろ』
「…堅物なのか、最低なのか、よくわかんない時あるよな、お前」
『うるさい。さっさと落とすために何をするか考えろ、クソ童貞』
「それなんだよ。どーすっかなぁ…」
ゆらめく太陽を見上げ、ため息混じりに呟く士道。
そもそも、二人同時に口説くというだけでも至難の業だというのに。
どうしたものか、と悩んでいると。
神妙な面持ちの耶倶矢が、太陽を遮った。
「ちょっといい、士道?」
芝居がかった口調はどこへやら、しおらしい態度で士道に問いかける耶倶矢。
士道は疑問に思いつつ、「おう」と頷き、ゆっくりと立ち上がる。
耶倶矢に連れられるがままに人気のない場所へと移動すると、彼女は士道に迫った。
「あのさ。勝負、明日で終わるじゃん?」
「……口調、いいのか?」
「そうやって誤魔化すモンじゃないって思ったから。大事なお願いだし」
「不正なら受け付けないぞ」
「違う違う。そういうんじゃないの。
…や、ごめん。やっぱそういうのかも」
なんとも煮え切らない耶倶矢に、士道が訝しげに首を傾げた。
が。その疑問は、一気に吹き飛ぶことになる。
────あんたさ、『夕弦を選んで』よ。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「確認。士道。少し、よろしいですか?」
時は少し進み。
思い悩む士道の背に、夕弦が声をかける。
士道は咄嗟に表情を取り繕い、「あ、ああ」と小さく頷いた。
既視感のある流れである。
嫌な予感を感じながらも、士道は夕弦に追従し、人気のない場所へと移動する。
夕弦は起伏が乏しいながらも、神妙なモノだとわかる表情を浮かべ、士道に迫った。
「…懇願。勝負は、明日で終わります。
だから、士道。あなたには…」
「…耶倶矢を選べ、ってか?」
「………驚愕。気づいて、いたのですか?」
「あんだけ仲良かったらな」
耶倶矢に同じように迫られた、というのが本当のところなのだが。
無論、口に出せば機嫌の急転直下は確実なため、士道はその一言を飲み込む。
あの後、耶倶矢は必死に「自分よりも夕弦の方が生きるべき理由が多い」と主張し、士道の返答も聞かずに去ってしまった。
耶倶矢がこんな手段に出たのだ。夕弦も同じことをやらかすだろう。
そんな直感があった士道は、夕弦に向けて、笑みを浮かべた。
「『わかるよ』なんて、無責任なことは言わないけどさ。
大好きなヤツには生きていて欲しい。
そう言う気持ちは、俺にだってあるよ」
「…疑問。何故、私の気持ちが正確にわかるのですか?」
「俺にもある気持ちしかわからないよ。
夕弦の『耶倶矢に生きていてほしい』って気持ちだって、俺にとっちゃ普通の感情だ」
「請願。なら…」
「どっちを選んでも、ツラのいい美人が一人減るんだろ?
俺にとっちゃ悩みどころだ」
夕弦の言葉を遮り、ポチタが吐くような最低極まりない言葉を紡ぐ。
ぱちくりと目を丸くする夕弦に、士道は戯けたように肩をすくめた。
「でも、選びはするよ。
用意された選択肢から逃げるような真似はしない」
「…警告。その言葉、覚えていてください」
「どちらか一人を選ぶ」とは言ってないが。
そんなことを思いつつ、去り行く耶倶矢の背を見つめていた。
♦︎♦︎♦︎♦︎
『……周囲を警戒しておくべきだったな。
やたらと迂闊なのはお前の悪癖だぞ』
「今更だろ…」
「む、ぐっ、し、シドー…。助けてくれ…。
髪に引っかかって…」
突風吹き荒ぶ中、ポチタの呆れを流し、はるか上空を見上げる士道。
隣には、共に夜景を眺めていた十香が、引っかかった枝と格闘している。
こうなった原因は、士道の迂闊さにあった。
十香に思い悩んだ様子を看破され、その場に夕弦と耶倶矢が居たことにも気づかず、二人の要求について話してしまったのである。
ソレを聞いた二人は激昂。
自分を殺し、相手を生かすための戦いを開始したのだ。
突風に吹き飛ばされ、木々に引っかかった士道は、枝から十香の髪を救出し、地面へと降り立つ。
と。迫った斬撃に、士道は意識を入れ替え、胸のスターターを引っ張った。
「ギャハハハハッ!」
久々に解放された感覚から、高揚の雄叫びをあげ、周囲にあった影を裁断する。
十香がソレに目を丸くしていると、ポチタの視線の先に佇む人影に目をやった。
「漸く人気のない場所に来てくださいましたね、《チェンソーマン》」
そこに居たのは、士道の心臓を一度は貫いた女…エレン・M・メイザース。
屈辱に歪んだ顔に、憎悪の籠った瞳。
纏う殺気に十香が唾を飲むも、ポチタは剥き出しの牙を開き、長い舌を出した。
「40点の女が0点になったな。
お前は知らんようだから教えてやる。
自分がバカだと知らぬ女ほど、抱く価値がないものだ」
「殺す!!」
ポチタの嘲笑に青筋を浮かべ、装備を顕現するエレン。
怒りのボルテージが突き抜けたのだろう。
悶える素振りも見せず、激昂したエレンは歯を剥き出しにして、ポチタを睨め付ける。
相手の地雷を的確に踏み抜いたポチタに、十香はヒクヒクと表情を引き攣らせた。
「…ポチタは口が悪いな」
「怒った獣ほど単純なものはないからな」
襲いかかる機械の軍団を均すように切り刻み、スニーカーで踏み潰すポチタ。
剥き出しの牙から蒸気を噴き出すと、ツノのように伸びたチェンソーでエレンの斬撃を逸らした。
『ポチタ、遊ぶな!今は…』
「カグヤとユヅルをどうにかしろ、だろ。
私たちはプレイボーイだからな。女は相手にするが、お前のような獣は相手しないんだ」
「なにを…」
続け様に随意領域と呼ばれる結界を張ろうとしたエレンが、ポチタの真意を問う。
と。その瞬間だった。
展開したはずの随意領域が、真っ二つに裂かれたのは。
「「なっ…!?」」
破片舞い散る中、突如して現れた人影に、エレンと十香が目を剥く。
闇夜に靡くロングコートに、両腕から突き出た薄い刃。
肉を裂いたのか、額から突き出た血塗れの刀に、どこが目で、どこが鼻かもわからぬ黒塗りの仮面。
剥き出しになった歯の間から吐息が漏れると、その異形はエレンに視線を向けた。
「…ってなワケです。
獣らしく首を落としてやるんで、覚悟してくだせぇよ。辞表の代わりにするんで」
「その声…、アデプタス2…!?」
異形…真那は、エレンの質問にため息を吐き、腕から力を抜いく。
顎を上げ、見下すように視線を向けた真那は、嘲笑を込めて鼻を鳴らした。
「前々から思ってたんですけど、ダッセェんでやめてくれません?
なんですか、アデプタスって。
『訳のわかんねー単語に数字つけりゃカッコいい』とかマジに思ってんですか?」
「私に牙を剥いた挙句、アイクから授かった名を侮辱するとは…。
拾ってあげた恩も忘れましたか?」
「恩を盾に好き勝手するクソ上司なんて、こっちから願い下げです。
さっき言ったじゃねーですか。アンタの首を辞表にするって。
退職金は、古い口座に振り込んでくだせぇ」
真那は言うと、膝を折り、刀を構える。
なんのつもりだ、とエレンが口を開こうとした刹那。
一閃がエレンの髪留めを切り裂いた。
「あーあ、外れちまいました。
次は当てるんで、抵抗してくだせぇよ。
『もやしっこー部長』♪」
「………いいでしょう。
兄妹仲良く、殺してやります!!」
いつの間にやら、エレンの背後に回っていた真那が嗤う。
怒りを煽られたエレンの叫びを背後に、ポチタは十香を連れてその場を後にした。
「誰が付き合うか、バーカ」
「……ポチタ。真那はあんなに性格が悪かったか?」
「兄の仇である上に、長い間騙されたんだぞ。
多少なりとも歪まんわけがないだろ」
「………確かに」
♦︎♦︎♦︎♦︎
耶倶矢、夕弦の激闘により発生した嵐が吹き荒ぶ中。
「わぷ、わぷぷ」と珍妙な声を上げ、目や口に襲いかかる自身の髪を払う十香。
ポチタは目にも止まらぬ速度でぶつかりあう二人を見上げ、ため息を吐いた。
「どうする?叩き落とすか?」
『いや。危害は加えたくない』
「言うと思った。…おい、トーカ」
「む?」
「制御役は任せる。お前の霊力なんだ。
お前が抑えとけ」
「は?それは、どういう…?」
「シドー。変わったら使え。
トーカの天使のみだぞ。間違えるなよ」
『わかった』
ポチタが士道に投げかけた言葉で、何をするつもりなのか悟ったのだろう。
十香は咄嗟に止めようと息を吸いかけるも、思わず止まってしまった。
「頼むな、十香。俺だけじゃ、切っちゃうかもしれないから」
「………っ」
そう言われてしまっては、頷くほか出来ないではないか。
十香は一瞬だけ表情を歪めるも、即座に微笑みを浮かべる。
どんな力を持とうと、五河士道という人間が揺らぐことはない。
自分が惚れた男は、そう言う男だった。
十香の笑みに、剥き出しの牙から「ありがとな」と告げ、姿勢を低くする士道。
と。チェンソーに亀裂のような線が駆け巡り、刃を透明な膜が覆った。
「『精霊の悪魔:プリンセス』…って、男なんだけど、プリンスの方がいいかな?」
『好きにしろ』
「…十香の力でもあるしな。
プリンセスでいいか」
そんなやり取りに混ざる余裕がないほどに、十香の体を凄まじい脱力感が襲う。
鼓動すら止まりそうだ。
目眩にたたらを踏むも、十香は力を抑えつけようと意識を集中させる。
暴れ狂う獣の尾を掴むような感覚だ。
士道が内面に秘めた『精霊の悪魔』としての本能なのだろうか。
十香は歯を食いしばり、今にも自身を吹き飛ばそうとする暴虐の嵐を押さえつけた。
「し、シドぉお…!は、やくぅう…!」
「ご、ごめん!すぐにやる!」
あの時感じた狂気は、そこになかった。
精霊の悪魔が剥き出しの牙を開き、蒸気を吐き出す。
ヴヴゥン、と刃が激しく唸ると共に、夜色の奔流が嵐をかき乱した。
「女の喧嘩を見る趣味は、ねぇ!!」
そんな叫びと共に、精霊の悪魔の放った斬撃が曇天を引き裂く。
隠された星空が顔を見せると共に、耶倶矢と夕弦の激突が止まる。
困惑に満ちた表情で、ぐずぐずに崩れた仮面から顔を出した士道を見やる二人。
士道は不敵な笑みを浮かべ、声を張り上げた。
「こっち向いた!
ってことは、俺の話を聞く気になったってことだよな!」
「は?…ってか、今の、なに…?
え?士道が、やったの…!?」
「憤慨。…なんの、つもりですか?」
「決まってるだろ!
世界から一人、ツラのいい美人が消えるのを止めに来た!!」
二人の纏う雰囲気が冷える。
今すぐにでも殺されそうなほどに底冷えした視線に、士道は動じることなく叫ぶ。
「揃いも揃って自分が死ぬ理由ばっか考えてんじゃねぇよ!
二人で生きたいならちゃんと言え!
何が『一つに戻る運命』だ!
ンなくだらねーモン、犬にでも食わせろ!!」
「…そんなめちゃくちゃで、私たちを止めようって言うの?」
「反論。いくら喚こうが、私たちの運命は変えられません」
「そういうのは変えようとした奴が言えることだ!ハナッから諦めてるお前らが言えるセリフじゃねぇ!!」
屁理屈で撲殺する勢いで叫ぶ士道。
怒りに顔を歪める二人だが、たじろぐことなく士道は続けた。
「俺がそのクソッタレな『運命』ってやつを変えてやる!
いいか!?これは契約だ!
『俺がお前ら二人を生かしてやる!
だから、お前らは幸せに生きろ』!!」
「何かと思って聞いてりゃ、何が契約よ!そんな妄言で私も夕弦も生きられたら、こんな苦労しない!!」
「警告。これ以上、巫山戯た言葉を紡がぬことです。でないと…」
「できなかったら、首を切って死んでやる!
だから、頼む…!俺に、お前たち二人が生きる道を選ばせてくれ!!」
士道の剣幕に呑まれ、息を呑む二人。
冗談では決してない。
本当に自分の首を切ってしまいそうな、そんな危うい雰囲気すら感じ取れる。
信じていいのだろうか、と、自分を殺す決意が揺らいだ。
「………」
『…お前、もう少し言葉を選べ。
首を切ると聞いて、トーカが怒ってるぞ』
「ごめん。こうでも言わないと、俺の本気は伝わらないと思って」
二人が「もしもの話」として、揃って生き残る未来を語り合う。
途中で耐えきれなくなったのか、二人の瞳から雫がこぼれ落ちるのが見えた。
死ぬ理由ばかり探していた二人が、初めて生きたいと吐露するのが聞こえ、士道はやりきった、と空を見上げた。
「……なんだ、あれ?」
その時だった。
夜空を遮り、随意領域を展開した空中艦が、爆炎を纏ってこちらに降りてきたのは。
墜落しているのだろうか。
しかし、それにしては真っ直ぐとこちらに向かってきている。
開いたハッチからは、エレンが連れていた機械人形がゾロゾロと投下されるのが見えた。
「なによ、あれ?」
「同意。空気を読んで欲しいです」
耶倶矢と夕弦も感情が冷えたのか、向かってくる艦を見上げ、呆れを吐き出した。
と。二人は顔を見合わせ、不敵な笑みを浮かべる。
「ねぇ、夕弦。『やっちゃう』?」
「肯定。『やっちゃいます』」
二人の影が重なると共に、背に伸びていた翼が繋がり、弓と化す。
そこに夕弦が携えていたペンデュラムが翼に絡みついて弦となり、耶倶矢が携えていた突撃槍が矢として装填された。
吹き荒ぶ風を集約し、弓矢に込める二人を見上げ、士道が呆れを吐き出す。
「…なんだよ。やっぱ仲良しじゃん」
『いがみ合う理由さえなければ、な。
…アイツらを抱く時は、二人同時に相手してみろ。
極上の時間を過ごせるだろうな』
「お前さぁ…」
最低な提案に、更なる呆れを吐き出す士道。
ソレをかき消すように、爆炎が空を埋め尽くした。
崇宮真那/サムライソード…エレンの首を辞表にしようとしたが、逃げられたことで失敗。元に戻った直後、軽い自己嫌悪に陥った。スカートじゃなくてズボン派なので、モミアゲソードと比べて背が低くなった程度の変化しかない。モミアゲソードの1.5倍くらい強い。
本条二亜…描写されなかったが、フラクシナスと戦っていた空中艦、〈アルバテル〉のほとんどをぶっ壊した女。使った悪魔は狐、蛇、幽霊の三つ。強化を受けてるのは狐と幽霊のみだが、壊滅的な被害を叩き出した。
八舞姉妹…百合百合してるが、士道限定で間に挟まれる双子。封印後、士道が一度マジで首を切ったことがあると聞き、胸を撫で下ろした。
五河士道/精霊の悪魔…精霊の悪魔として使う力は、元を正せば十香たち精霊の霊力なので、精霊たちが抑えれば暴走せずに済む。しかし、数秒でも体力の大半がもってかれるので、長い間抑えることはできない。契約のせいで二亜を抱かないと女を抱けない。
偽ポチタ…結局、キャッキャムフフな修学旅行が過ごせなかったことにご立腹。ハーレムが増えても抱けなきゃ意味ねぇんだよ。
エレン・M・メイザース…サムライソードとなった真那と互角の勝負を繰り広げ、撤退。原作よりも沸点が激低。原作でも低かったけど。