偽ポチタ「助けてやるから、女のおっぱいを揉め」士道「ふぁっ!?」   作:鳩胸な鴨

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狂三以来、偽ポチタと相性の悪い精霊来たわ。


偽ポチタ、拗ねる

「………なんでこうなったんだろうな」

『経緯はどうあれ、お前が絶世の美少女らに囲まれているからだろ。股にぶら下がるモノがあった時代の私でもああする』

「ですよね…」

 

疲労がのしかかる体を引きずり、肺の中に溜め込んだ空気を絞り出すように深いため息を吐く。

なんてことはない。全校男子生徒からの嫉妬を買うことになってしまっただけである。

女性らしい美しさで殴り殺してくる精霊が三人に加え、校内でもトップ3に君臨するほどの美貌を持つ折紙に好かれ、常時アピール合戦が始まる。

そんな光景を目の当たりにして、健全な男子高校生が嫉妬を抱かぬわけがない。

天宮市全体の高校によって行われる合同文化祭…「天央祭」に向けた集会にて、そんな光景が繰り広げられたのなら、矢面に立たされるのは当然なわけで。

士道は不本意ながら、文化祭実行委員という、果てしなく面倒臭い役目を押し付けられてしまったのだ。

 

「…お前さ、元は人間だったんだよな?

文化祭の実行委員とかやったことある?」

『もう数万年は前だぞ。

それだけ経てば、当時の記憶など殆どない。

お前も、去年の飯の献立は何だったと聞かれたら困るだろ』

「あ、はい。すみません」

『しかし、トノマチのやつめ。

アイツの女は実行委員だろうに』

 

ポチタの愚痴に、士道は乾いた笑みを浮かべた。

既に恋人がいると知れ渡っている殿町も巻き込もうとしたものの、「お前と違って純愛だから」と跳ね除けられたのである。

反論しようにも、機密事項に抵触する情報ばかりが頭をよぎり、言葉が出ず。

士道は「女誑しのクソ野郎」という汚名を、甘んじて受け入れるしかなかった。

 

「…精霊を救うためとはいえ、なんで惚れさせるってプロセスが必要なんだろうな?」

『私が知るか。仕組みを作った奴に聞け』

「……神とか?」

『違う。お前に力が集中しつつある以上、作為的なものに決まってるだろ。

手口がイカれポンチのものとそっくりだ』

 

ポチタの憶測に、士道が息を呑む。

しかし、それも数秒のことで、士道は呆れをこめて息を吐いた。

 

「ポチタ、お前…。

頼むから、そういう重要そうな仮説は言ってくれよ…」

『お前はアホだから、ボロが出るだろ』

「辛辣…」

 

なんともストレートな罵倒に項垂れ、眉間に皺を寄せる。

これでも進学校に入学し、上位とはいかずとも、将来が期待できる大学を選べる程度には偏差値も高いのだが。

しかし、以前に琴里の不安を煽った前科がある以上、反論しようもなかった。

 

「…ホント何なんだろうな、俺って」

『ヘタレスケコマシドスケベな悪魔人間』

「なんだその最低なデビルマン!?」

『すっとぼけるな。お前のことだろうが』

「わかってるけども!!」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「………で。その『誘宵美九』ってアイドルが〈ディーヴァ〉って精霊で、お嬢様高校の文化祭実行委員だったと。

加えて、男じゃ攻略が無理なレベルの百合っ子ってのが判明して…。

そんな愉快な格好させられて、ポチタの機嫌がマイナスに振り切れたってわけね」

「二亜からも何か言ってくれ…。

口すら聞いてくれないんだ…」

 

翌日。

契約更新のために訪れた二亜の部屋に、家主の深いため息が漏れる。

二亜の眼前には、士道とよく似た少女が佇んでいた。

そう。士道が女装しているのである。

ご丁寧に、声すらもラタトスク特製の変声機でテノールボイスから一転、女で通せるほどのアルトボイスに変わっている。

これにプライドがエベレスト並みの悪魔であるポチタが機嫌を損ねないはずもなく。

結果、変身が叶わないどころか、口すらも聞かなくなったのである。

無論、問題はそこだけではない。

 

「…仮に攻略できたとして、男だってバレたらヤバくない?

教科書とか広辞苑とかに載ってるくらいにパーフェクトな『焼け石に水』の一例じゃん」

「俺も言ったけどさぁ…!」

 

問題は、この案に不安要素が多すぎると言うことなのだ。

まず第一に、勃起のハードルがマントルで焦げてるレベルの性欲のコントロール。

これはまず無理だと諦めることになり、女装の間は貞操帯を装着する羽目になった。

…キレたポチタによって、一つ残らず壊されたが。

次に体格。士道は線が細いものの、薄く腹筋が割れてるくらいには筋肉がついている。

背の高い女子として通らなくもないが、触れたのならば違和感を感じてしまう可能性も捨てきれない。

最後に、バレた際のアフターケア。

もし仮に、士道のことを女だと思ったまま封印が成功してしまえば、男だったと判明した際の反動が予測不能なのである。

しかし、これしか手がないと言うのも事実。

不満も不安も多いが、やるしかないのだ。

二亜もその結論に至ったのか、肩をすくめ、苦笑を浮かべた。

 

「ま、なんもしないよりはいいんじゃない?

人間不信極まってた私を落として、抱き潰すまで行ったんだからさ」

「……ごめんなさい」

「謝らないの。こーゆー時は『またシよう』だよー?」

「ばっ…、あんなに激しくしたんだぞ!?

口が裂けても言えんわ!!」

 

士道はあの日の夜を引き摺っていた。

それも無理はない。

理性が完全に外れていたとは言え、二亜があまりの快楽に気を失うまでやらかした挙句、構わず続け、秒で叩き起こしたのだから。

激しい自己嫌悪に陥る士道に、二亜は呆れたようにため息を吐く。

 

「…言い方変えよう。

私が我慢できない。ムラムラして原稿全ッ然進まなくなるから、そうなる前に抱いて」

「……っ、や、で、でも…」

「でももへちまもない!

少年のせいで普通のじゃ満足できないの!!」

「は、はひぁ…っ!」

 

完全に尻に敷かれている。

自分の立場、やったことすら棚に上げて相変わらずな悲鳴を漏らし、震え上がる士道。

いつもならばポチタの毒舌が炸裂したのだろうが、機嫌を著しく損ねたポチタが出てくることはなかった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「………つ、疲れる…」

 

女装生活四日目にして、五河士織…もとい士道の疲労は頂点にまで達していた。

士織として生活するにあたって、折紙による「スカート激写事件」をはじめとした多くのトラブルに見舞われたのだ。

更には、天央祭の実行委員という多忙な役目を「士道の代わりに務めることとなった」という苦しい設定上、実行委員としての仕事もこなさなければならず。

士道は疲労からか、おぼつかない足取りでアスファルトを歩いていた。

その手には、洗い立てのレースのハンカチが握られている。

 

「……話してると、普通の女子なんだよな」

 

そのハンカチは、先日、不慮の事故で負傷した士道の傷を塞ぐために、美九が巻いてくれたものだった。

先日見た剣呑な態度はおくびにも出さず、普通に接してきた美九を思い浮かべ、首を傾げる。

 

「……なぁ、ポチタ。地獄に似たような悪魔は居なかったのか?」

『…………』

「やっぱダメか…」

 

いまだに機嫌は治らないらしい。

がっくりと項垂れ、士道はため息を吐く。

と。耳元のインカムから、琴里の呆れの籠った声が響いた。

 

『なに?あの駄犬、まだ拗ねてんの?』

「私が駄犬なら、お前は乳臭いクソガキだろうが」

『なんですって!?』

「あ、こらポチタ…!」

『………』

「また黙りやがった…」

 

悪口にはバッチリ反応するのか。

そんなことを思いつつ、士道は怒る琴里をなんとか宥めた。

と。絢爛な家屋から、複数人の女子生徒が現れ、こちらに向かってくる。

 

『…来たわよ』

「なんですか?美九お姉様は今、プライベートですわよ?」

 

上品な雰囲気を纏っているが、実はデリバリーのキャバ嬢か何かなのだろうか。

失礼極まりないことを思いつつ、士道がなんとか説明しようと口を開くと。

女子生徒らを掻き分け、美九が現れた。

 

「あら、士織さん」

「よ、よう…」

 

願わくば、バレませんように。

士道は内心祈りつつ、美九に促されるがままに彼女に近づいた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「彼女たち、私のこと大好きですしー、私の為に死ねるなら本望じゃないですかー?」

 

悪魔らしい笑みを浮かべる美九を前に、士道は悪魔として暴走しそうな体を押さえつけていた。

八舞姉妹を封印したことにより、5割が悪魔と化したためか、前よりも悪魔になりやすくなっているのだろうか。

鋭くなった牙から力を抜き、息を吐く。

噛み砕くと、美九の言い分は「精霊の力があっても、自分さえ幸せならいい」という、道徳の教育が行き届いていない子どもじみたものだった。

例え、誰かを殺すことになったとしても、美九にとってはオモチャが壊れた程度の認識なのだろう。

士道が美九を糾弾しようとした、その時。

唐突に、意識が入れ替わった。

 

「人をおもちゃとも思ってないな、お前。

そこらの小石と一緒に見てる目だ」

 

士道が愕然とする一方、美九の瞳が揺れる。

頼むから、爆弾を落とさないでくれ。

士道が制止を叫ぼうとするも、ポチタの圧に負けてしまった。

 

「私は私のことが好きな人間が大好きだ。

だからだろうな。私のことが好きな人間はすぐにわかる。

…お前のその目。私のことは愚か、人間という種族自体が大嫌いなんじゃないか?」

「………"黙りなさい"」

 

ぞあっ、と、士道の背筋に悪寒が走った。

しかし、ポチタは止まらず、口撃を緩めない。

 

「黙らんぞ。辛抱ならんから言ってやる。

お前には『人間がモノに思えるほどに大嫌いでなくてはならない理由がある』。違うか?」

「…士織さんってば、ユニークな方ですねぇ。

どうしてそう思うので?」

「私の知人が、似たような人間不信を抱いてた。

そいつ曰く、『何もかもを嫌えば、少なくとも裏切られることはない』だと。

同時に、『気が狂いそうなほどの孤独から解放されることもない』らしいが」

 

「私にはよくわからんが」と付け足し、悪魔のような笑みを浮かべるポチタ。

思い当たる節があったのだろう。

美九は険しい表情を浮かべ、ポチタを見下すように睨め付ける。

 

「お前が女を愛玩人形にするのは、その潤うことのない孤独感を満たすためだ。

一生かかっても満たせないとわかっているのに、バカみたいに好きなものを囲めば解決できると勘違いしてる。

歌という幻想からも、周囲の評価という現実からも逃げたいのなら、シャブでもヤッて潰れるまで性を貪ればいいからな。

お前がやってるのはそういうことだろ」

 

瞬間。美九の服装が変わり、ポチタの周りにパイプが出現する。

ポチタはため息を吐くと、胸に手を突っ込もうとし、動きを止めた。

 

「そうだった。面倒だな…」

「わっ!!」

 

美九の声が、圧力となってポチタの体に襲いかかる。

本来であれば、人一人など簡単にペシャンコに出来るであろう威力を持つソレを、ポチタは軽々と避けた。

 

「図星を突かれたら癇癪を起こすか。

子供がそのまま大人になりでもしたのか?」

「……っ、すぅ…」

「隙を晒すな、バカめ。『コン』」

 

美九が声を絞り出す前に、ポチタが指で狐を作り、パイプに向ける。

と。突如として現れた狐の前足が、パイプを根こそぎ刈り取ってみせた。

その光景を前に、美九は目を白黒させ、ポチタを見やる。

 

「お前と殺し合うこともできるぞ。

が。私としては、ソレは望ましくない。

どうだ?お前の土俵で戦う、というのは?

天央祭1日目、最も盛況だったのがどちらの学校かで競う。おあつらえ向きだろう?」

『ばっ…、何言ってんだ!?』

 

現役アイドル…それも、麻薬のような中毒性を持つ歌声の美九相手に、あまりに分が悪い勝負を持ちかけるポチタ。

士道がそれに声をあげるも、ポチタにはなにか勝算があるのか、余裕を崩さなかった。

 

「……本気ですかぁ?私相手にぃ?」

「本気も本気だ。私は真正面から相手を叩き潰すのが好みなんだよ」

「ふぅん…?でしたら、勝ったら精霊の皆様をいただきますね?」

「ああ、いいだろう。『契約』だ。

私が勝てば…、そうだな。言うことを一つ、聞いてもらおうか」

 

ほくそ笑む美九を前に、ポチタもまた凄絶な笑みを浮かべる。

士道がソレにオロオロしていると、ポチタが意識の中に語りかけた。

 

(このバカ、かかったぞ)

『お前、まさか…!?』

(黙ってる間、暇過ぎたんでな。

コイツの性格を分析していた。

安心しろ。悪魔は己に勝算のない賭けなど仕掛けん)

 

女装に拗ねて故意に黙っていたことは、否定しないらしい。

頼もしいのか、厄介なのか、よくわからない相棒を前に、士道は表情を引き攣らせた。




偽ポチタ…女装してる間は黙っているつもりだったが、美九との対話、勝負で優位に立てばその必要もないかと思い立ち、入れ替わった。美九との相性がとんでもなく悪い。変身できない状況下の保険として、強化された狐の悪魔:レプリカ、サメの悪魔:レプリカ、血の悪魔:レプリカをノーコストで召喚できる。人間不信云々に関しては、二亜と自分の体験談をそれっぽく噛み砕いて話した。

誘宵美九…地雷原でタップダンスされたアイドル。原作でも描写されていたが、ハッキリと好きと嫌いを区別をする上、態度に出やすいので子供っぽい。そんな相手が偽ポチタとの口論に勝てるはずもなく、ものの見事に契約に誘導された。

五河士道/五河士織/精霊の悪魔…女装するにあたって、いろんな問題に直面した。文化祭の実行委員としての役目と美九の攻略、精霊たちのアフターケアや偽ポチタとの契約など、「やることが…、やることが多い…!!」と過労気味。

殿町宏人…「ごめん。俺、お前と違って純愛なんだ」と士道にストレートパンチをかました男。二次元に浮気しまくってるのは棚に上げてる。

本条二亜…士道の童貞を奪った女。美九編で大暴れ予定。士道に抱き潰されたものの、本人としては全部受け入れる姿勢なので、「やめて」は言わなかった。性欲が溜まるスピードが数倍近く早くなった。
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