偽ポチタ「助けてやるから、女のおっぱいを揉め」士道「ふぁっ!?」   作:鳩胸な鴨

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現実で見たことねーよ、高校の文化祭でメイド喫茶してる奴。


五河士織、メイドに徹する

『まず正攻法で勝つのは無理だろうな』

「話が違うぞ…!?」

 

実行委員としての仕事をこなすため、歩いていた廊下にて。

ポチタに告げられた事実に、女装した士道が小さく怒鳴るという矛盾をやってのける。

ソレに対し、ポチタは嘲笑を込めて鼻を鳴らした。

 

『その空っぽな脳みそほじくり返してでも思い出せ。

私はただの一度でも、「競うのはステージだけ」だと言ったか?』

「……もしかして、総合優勝?」

『そういうことだ。無論、向こうもそのつもりでいるだろう。

あのバカアイドル、ステージ部門と指定しなかったあたり、詰めの甘さが露呈したな』

「お前、美九のこと嫌いだろ?」

『当然だ。すぐに剥がれる嘘で塗り固めたモノほど、くだらんものはないからな。

…迷走しているにも程がある』

 

今のお前もだが、とポチタが付け足す。

確かに、今の士道も「五河士織」という嘘をベールに隠れている状況にある。

だから不機嫌だったのだろうか、などと思っていると、ポチタが言葉を続けた。

 

『勘違いしないように言うが、ステージを蔑ろにしろとも言ってない。

絶対条件として2位には漕ぎ着けろ。

模擬店は…あの三人に投げていいだろ。あのバカが支配した学校が相手なんだ。負けることはない。

お前はステージ部門をどう切り抜けるかだけを考えておけ』

 

やはり、そこに落ち着いてしまうか。

士道は気を引き締め、ステージ部門の内容についての案をまとめた資料を握った。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

『屈辱だ。何故に他者への従属を示す服を着なければならん。それも女の物を』

「言うなって…。より惨めになるから…」

 

何をどう違えば、「メイド喫茶」などという小っ恥ずかしい企画が通るのだろうか。

そんなことを思いつつ、士道は怒涛の勢いで愚痴を吐きこぼすポチタを宥めた。

口を聞くあたり、以前よりも機嫌はいいのだろうが、それも微々たる物だろう。

その怒りの原因は、士道の服装にあった。

「メイド喫茶」という企画なのだから、女子生徒はメイド服を着る必要がある。至極、当たり前のことである。

問題は、今の士道が女として振る舞っていると言う点にあるわけで。

結果。士道は女装した上にメイド服まで着た、度し難い変態となったのである。

 

『バレてみろ。殺されるぞ』

「…そうならないことを祈る」

『悪魔が神に祈るな、バカタレ。

反故されるに決まってるだろ』

「ですよね。うん。知ってた」

 

嫌な想像をなんとか振り払い、士道は客寄せを再開する。

と。いつものように色気のない格好をした二亜が、士道の配っていたビラを手に取った。

 

「高校文化祭でメイド喫茶やるの漫画の中だけかと思ってたわ。

まさかリアルで見るとは…」

「にいさ…、んんっ。姉様。

これまた愉快な格好をしてますね」

「二亜と真那に…、四糸乃?」

 

二亜の背後には、黒のロングコートを羽織った真那と、ワンピース姿の四糸乃が見える。

珍しい組み合わせである。

士道が四糸乃に視線を向けると、彼女は士道を見上げ、微笑んだ。

 

「し、しど…、あ、いや…。

士織さん、かわいい…、です…」

「……う、うん…。あ、ありがと…」

 

褒め言葉が凶器になった瞬間だった。

悪意がないとは言え、深く心を抉られた士道は、四糸乃に見えないように落ち込む。

いくら女性らしくしようとも、中身は思春期真っ只中。貞操を捨てたものの、胸には童貞ソウルを抱く男なのだ。

「女性らしい可愛さがある」と言われて、素直に喜ぶような脳みそはしていない。

 

「いいじゃん、似合ってても。

今度スる時、そのカッコでヤる?」

『そんなことしてみろ、シドー。

お前のケツの処女をトノマチに捧げる様を、コミック同人として世間様に公表してやる。無論、女装姿でな』

「やりません」

「ちぇーっ」

 

殿町と自分の名誉のため、断固として拒絶の意思を突きつける士道。

二亜も冗談のつもりだったらしく、棒読みで不貞腐れたそぶりを見せた。

 

「…で。なんで四糸乃もいるんだ?」

『いやぁ、不覚にもよしのんがすっぽ抜けちゃってねー。真那ちゃんに助けてもらったんだよー』

「たまたま足元来たんで、拾っただけでごぜーますよ。

んで、姉様に会いに行く途中って聞いたんで、どーせならと一緒になったわけです」

「そっか。ありがとうな、真那」

 

文化祭が謎の冷気に襲われずに済んだ。

士道が胸を撫で下ろしていると、二亜の面持ちが神妙なものに変わった。

 

「想定通りだったよ。あの三人組は潰されちった。

双子ちゃんには話通したし、対策はしてるから安心してちょ」

「…殿町には申し訳ないな」

「あ、そこは大丈夫。『彼しか考えられません』的なこと言って、誘惑全部跳ね除けてたから。落ちはしたけど」

「殿町、お前…!そんなに想ってくれる恋人いるなら二次元への浮気やめとけよ…!」

 

世界を殺せると称される精霊の力をもってしても、乙女の純愛は打ち砕けないらしい。

熱くなった目頭を抑え、士道が殿町に届きもしない上に、彼が言えたことではない叱責を送っていると。

話が見えていない四糸乃が首を傾げた。

 

「なんの…、話、ですか…?」

「あー…。ちょっと勝負中でさ。

文化祭でどっちの学校が盛り上がったかで競ってるんだ」

「そう、なんです…か。応援、して…ます」

 

既に仕込みは終えた。

あとはステージに全力で臨むだけ。

四糸乃の不安を煽らないよう、精霊を賭けた勝負ということは口にしなかった。

 

「ありがとな。どうせなら入ってくか?」

「お、いいねー。私らは士織ちゃんに接客してもらおっかなー?」

『ほら、四糸乃も言わなきゃ!』

「わ、私も…、お願い、します…!」

「かしこまりました、ご主人様」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「……つ、疲れた」

『外さないの!バレるリスクを考えなさい、バカ士道!!』

 

盛況にも程がある。

席の取り合いで乱闘が起きるほどに混雑した店の整理を終えた士道は、蒸れたウィッグを外そうとするも、耳元につけたインカムから響く琴里の怒号で手を止める。

絶対に汗疹になる。

汗でベタつく頭皮を気にしていると、急激に人混みが霧散した。

 

「士織さん、こんにちは。盛況ですね」

「み、美九…」

 

外さなくてよかった。

修羅場に突入した未来を思い浮かべ、冷や汗を流すと同時に安堵の息を吐く士道。

先日の険しい表情はなく、にこにこと微笑む美九に、士道は漏れ出しそうになる敵意を抑えた。

 

「客として来てくれたのか?それとも…」

「お客としてですぅ。

少し、お話をしたいと思いまして」

『…聞くに耐えない内容だったら代われ』

 

客として来たのなら、歓迎しないわけにもいくまい。

士道は美九を席に案内し、注文を取る。

いつボロが出るとも限らない。

なるべく離れるために、厨房スタッフの方に回ろうか、と思い立つも、美九が手を握ったことで止められた。

 

「どこに行くんですかぁ?

お話ししましょうって言いましたよね?」

「厨房の方に回ろうかと…」

「大丈夫ですよぉ。士織さんのお料理は確かにいただきたいですが、それは勝負が終わってからにしますぅ」

 

既に勝利は揺らがない、という自信が透けて見える。

美九に促されるがままに、士道は彼女と向かい合うように座し、鋭い目で睨め付けた。

 

「話ってなんだ?」

「この間のことです。

私が『人間を嫌わなければならない理由がある』と。

……何故、解ったんです?知人の体験からの憶測ですか?」

 

美九の視線が、士道を突き刺す。

ぴりぴりと肌中に駆け巡る刺激は、美九の放つ威圧なのだろう。

アイドルとは思えぬほど敵愾心を露わにした美九を前に、士道とポチタの意識が変わる。

 

「お前に何があったかなど、私が知るか。

話とは『私がお前の過去を知っているかどうかの確認』だったのか?」

「…いえ。知らないならいいんです」

「まぁ、予想はつくがな。

『歌に関連する何か』が原因なのだろう?」

「………賢いんですね、士織さんは」

「お前の隠し方が下手なだけだ」

 

ポチタは嗤うと、美九の細い喉元に指を突きつけた。

 

「何故『精霊の力でしか歌わない』?

『誘宵美九の歌声は無価値だ』と自己紹介でもしているのか?」

「………ははっ。ははは…。

すごいですねぇ、士織さんは。

ますます欲しくなっちゃいました」

 

互いに悪魔のように唇で弧を描き、牙を剥き出しにする。

心なしか、空間が軋む音すら聞こえる。

と。その雰囲気は、机に置かれたオムライスによって霧散した。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

『よって、総合優勝は来禅高校!

奇跡の逆転です!!』

「予定調和に奇跡もクソもないだろ」

 

ステージに轟くアナウンスと歓声を前に、意識を入れ替え、表に出たポチタが肩をすくめる。

結局のところ、対策は立てていたものの、現役アイドルに勝てるはずもなく、ステージ部門は二位に終わってしまった。

これに勝ち誇った美九だったが、所属する竜胆寺女学院を自分の思いのままにしか動かない木偶が集う城にしてしまったのがいけなかった。

模擬店や展示の方に一切の力を割かず、ステージ一本で勝負に出てしまったのだ。

予想以上に予想以下な行動を取った美九に、ポチタは鼻で笑って見せる。

 

「ばーか。勝算もなく、勝ち目のない賭けなど持ちかけるか」

「こ…、こんなの、インチキです…!

私、ちゃんとステージで勝ちました!

勝った、勝ったもん…!なのに…」

「総合的にこちらの方が勝っていると結論が出たんだ。

バカにもわかりやすく言ってやると、小学校の運動会と同じだ。

優勝したチームが、すべての競技で勝っているわけがないだろ」

 

睨め付ける美九を見下ろし、勝利を喜ぶ十香や八舞姉妹に視線を向ける。

正直なところ、今回の勝利は大部分、精霊たちの美貌を利用したに過ぎない。

今までの積み重ねがなければ負けていたと言う事実を前に、ポチタは意識の奥にいる士道に笑みをこぼす。

 

「この予定調和を引き起こせたのは、他ならんお前のおかげだ。

私は横から口を挟んだだけに過ぎん」

『…明日は隕石の雨か』

「殺すぞクソボケ」

 

素直に褒めたと言うのに、失礼な奴だ。

そんなことを思いつつ、項垂れ、ぶつぶつと何事かを呟く美九へと視線を戻す。

危うげな雰囲気だ。

とっとと命令を決めてしまおうか、と頭を悩ませたその時だった。

爆発音がステージ全体を揺らしたのは。

 

「……おかしいと思った。

マナがロングコートを着ていたのはコレが理由か」

『な、なんだ…!?』

「こないだの接触がまずい方向に転がった。

人目につくが、仕方ない。【悪魔の模造品(ベルゼブブ・レプリカ)】を出すことも視野に入れるぞ」

 

ざわめく観客席を無視し、音の発生源であろう箇所を見やるポチタ。

と。隙を晒したのが悪いと言わんばかりに、美九が腕を振り上げるのが視界に入った。

ポチタがそちらに向かおうとするも、爆発音と共に会場が揺れたことでバランスを崩してしまう。

 

「ぐっ…!」

「歌え、詠え、謳え…!〈破軍歌姫〉!!」

 

そんな声と共に、パイプオルガンとも、城とも取れるような鉄塊が顕現した。




本条二亜…DEMの襲撃に大立ち回りしてる。使っているのは蛸の悪魔:レプリカのみ。本当はステージを見に行きたかったけど、真那が「数が多いから手伝え」というので、泣く泣くそっちに行った。

五河士道/精霊の悪魔/度し難い変態…女装の上にメイド服という、度し難い変態になってしまった男。その上、心には童貞ソウルを抱いているという、完膚なきまでの童貞。女装での行為は、ポチタの機嫌を著しく損ね、殿町の尊厳も破壊するのでやらない。

鳶一折紙…原作同様、襲撃に大立ち回り中。未来の悪魔:レプリカの力と〈ホワイト・リコリス〉の力で優勢に立ち回るも、限界が来て墜落。

崇宮真那/サムライソード…浮遊用の装備だけを背負い、サムライソードとしてジェシカ・ベイリーというDEM社員と戦闘中。この状態での空中戦は不慣れなので、割と拮抗してる。爆発音は、痺れを切らした真那が会場を足場にしたから。無自覚な戦犯。

誘宵美九…いろんな偶然が重なって、原作通りに観客席全体を洗脳できた。やったね。

偽ポチタ…いろんな偶然が重なって、立ててた対策が無意味になった。命令をする暇もなく、観客や精霊らに襲われることになる。畜生。
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