偽ポチタ「助けてやるから、女のおっぱいを揉め」士道「ふぁっ!?」   作:鳩胸な鴨

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契約に関しては、ポチタのガバだよ。


精霊の悪魔、激怒する

「…偶然って怖いね」

「襲撃を見越していたのは褒めてやる。

…問題はお前だ、マナ」

「はひっ…!すいやしぇん…!」

「謝って済むかバカタレ。

飽きるまで股ぐらを蹴り飛ばすぞ」

「堪忍してつかぁさぁい…!」

 

ポチタのアイアンクローが炸裂し、ギリギリと音を立て、真那の頭骨が軋む。

偶然が悲劇を生むということを思い知ったポチタらは、深いため息を吐いた。

 

「お前が慣れないからなどという理由で屋上に降りたせいで、あのバカ女に天使を使う隙を晒してしまっただろうが。

お陰で、こっちはイヤホンをしていて音を聞いていなかったトーカを除く全員に襲われた挙句、男とバレた。

しかも、0点のクソアマまで来る始末。

極め付けに『シドーに人殺しをさせるわけにはいかん』と宣い、トーカが私を遠くに投げ捨てた。

力の大半をシドーに奪われたトーカが、あの強いだけが取り柄の阿婆擦れに叶うわけもなく、呆気なく攫われてしまったわけだ」

 

ツラツラと罪状を並べ、顔中に青筋を浮かべるポチタ。

剥き出しになった歯が、チェンソーマンの牙と重なって見える。

真那は涙目で謝罪を述べる度、ポチタの放つ怒気が強まっていく気がした。

 

「はいはい、そこまで。

自分が足を引っ張りまくった事実って、めちゃくちゃ効くから」

 

会場にいなかったのが原因か、それとも半分反転しているせいか、精霊の中で唯一洗脳を免れた二亜がポチタを宥め、真那に助け舟を出す。

ポチタは顔を顰め、舌打ちと共に真那の体をそこらに放り投げた。

 

「ったぁ…。もうちっと優しく…。

…ってか、兄様には変わんねーんですか?」

「今は無理だ。代わった瞬間に悪魔化する。

怒りすぎて、人語すら失ってるぞ。

ここら一帯を更地にしたいならやるが」

「に、兄様がそんなこと…」

「今のシドーは、お前が軽くデコピンをするくらいの感覚でビルを粉々に出来るぞ」

「……すいませんでした」

 

大量殺戮どころの話ではない。

今尚、意識の中で吠え続ける士道…否、精霊の悪魔に辟易し、ポチタがため息を吐く。

救助に行こうにも、美九の尖兵と化した天宮市民や精霊の襲撃が面倒だ。

どうしたものか、と悩んでいると、二亜が首を傾げた。

 

「…ってか、美九ちゃんのアレ、契約違反じゃにゃーの?なんで死なんのよ?」

「それに関しては、私の落ち度だ。

具体的な違反事項を定めなかったのもあるが、1番の理由は慣れだ。

昼間にトノマチの女のことを聞いたが、バカ女の天使の力は、完璧な隷属を示すわけではないのだろう?

私がイカれポンチ…支配の悪魔に散々絡まれて慣れていたのが裏目に出た。あの程度の従属を許容してしまうほどにな」

 

支配の悪魔による「支配」は、美九のものよりも遥かに強力である。

「自分よりも程度が低い」と認識することによって、絶対的な主従関係を強いることが出来るのだ。

その力を目の当たりにしてきたポチタが、美九の天使の力を「支配」と感じることができなくとも、仕方のない話であった。

どうしたものか、と悩んでいると、二亜が不敵な笑みを浮かべる。

 

「ふっふーん!私の出番ってわけだね!」

「なにか策があるんで?」

「モチのロン!さあ、張り切っていきましょー!

悪魔との契約(ベルゼブブ・コントラクト)】、発動!」

 

二亜が顕現した紙片を掲げると、そこから人影が構築されていく。

悪魔のものかと思ったが、違う。

赤黒く、絢爛なドレスに、左右で長さの違うツインテール。黄金に煌めく時計が刻まれた目を前に、真那が息を飲んだ。

 

「な、〈ナイトメア〉…!?」

「なにを、したんですの…?」

 

現れたのは、ポチタが最も嫌いな精霊…時崎狂三であった。

その場に尻餅をついた狂三に、二亜が迫る。

張り付いた笑みからは、有無を言わせぬ威圧が放たれており、狂三の表情が強張った。

 

「あれれー?忘れちったー?

『本来のチェンソーマンのことを教える代わりに、私のいうことをなんでも聞く』って契約交わしたよね?」

「た、確かに、交わしましたが…」

「逃げようってなら残念。【悪魔との契約】はね、絶対に違反することができないようになってんの。

違反したら死ぬとかじゃない。『違反するという行為自体が出来ない』んだよ。君も、もちろん私もね。

極め付けには、逃げないように契約者を呼び出す機能まで完備!

…ま、絵に描いたようなパーフェクト能力ってわけじゃあにゃーけどね」

 

自分の置かれた立場がわかったのか、悔しそうに歯噛みし、二亜を睨め付ける狂三。

しかし、そんな視線を向けられても、二亜はニマニマと笑みを崩さなかった。

どう見ても煽っている。

ビキビキと音を立てて青筋を浮かべる狂三に、真那は初めて同情を向けた。

 

「……なんつーか、初めてアンタのことを可哀想に思いました」

「屈辱ですわ…!!」

「無為な時間を過ごす暇はないぞ。

命令だ。協力しろ、クソアマ」

「わ、わか、わが…り、まじだ…!」

 

本来ならばその眉間に弾丸を打ち込んでやりたいところだが、二亜に体の自由を握られている以上、それも叶わない。

迂闊だった自分を呪いつつ、狂三は震える声で協力を受け入れた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…私としては、時間も増やせていいのですが…。

こんなことで宜しかったのですか?」

「いちいち斬り殺してみろ。

正気に戻ったシドーがうるさいだろうが」

 

狂三の足元から広がった影が、美九の尖兵と化した人々の足を止める。

その場に倒れ伏す少年の背を踏み、ポチタは心臓から垂れるスターターを引っ張る。

ヴゥン、という音と共に血液が倒れた人々の服を濡らし、額と腕の肉を裂いてチェンソーが突き出た。

 

「背に乗れ。あのバカ女のことだ、無理矢理に動かすだろ。飛ばすぞ」

「…士道さんの背が良かったですわ」

「体は同じだろうが」

 

背に乗った狂三の愚痴を一蹴し、ポチタはその場から駆け出す。

その際に、幾度が呻き声が聞こえたが、ポチタからすれば斬り殺さないだけ温情である。

その場に倒れていた自分を呪え、と思いつつ、ポチタは会場の壁を切り裂く。

破片と共に会場に入ると、美九がこちらを睨め付けているのが見えた。

 

「やりなさい!!」

 

美九の号令と共に、冷気と暴風がチェンソーマンとなったポチタへと襲いかかる。

八舞姉妹と四糸乃による攻撃だろう。

ポチタは呆れを込めた息を吐き、チェンソーで床を切り抜いて、一点を踏みつける。

勢いよく捲れ上がった床が氷塊と斬撃を受け止めると、ポチタはそれを足場に、天高く飛び上がった。

 

「愚かな!颶風の御子たる我らの領域に踏み込もうとは、万年早い!」

「笑止。私たちを甘く見過ぎです」

 

それを阻むのは、やはりというべきか、耶倶矢と夕弦であった。

メイド服姿で霊装を顕現した二人を前に、ポチタは呆れを吐き出す。

 

「滑稽すぎて笑えてくるな。

お前ら相手に足がないとでも思ったか?

鮫、来い。仕事だ」

「はァい!父様ァ!!」

 

三人の間を引き裂くように、いくつもの目玉が並ぶサメが地面から現れる。

ポチタはその背に飛び乗ると、振り落とされないよう、チェーンを口に引っ掛けた。

あまりに現実離れした光景を前に、美九は愚か、狂三や耶倶矢、夕弦までもが目を丸くする。

 

「な、なにそれ!?」

「見てわからんか?足だ」

「サメじゃん!?なんで陸にいんの!?」

「お前たちの風のおかげで万能の足だ。

天才的な発想だろう?」

「父様天才!父様天才!!」

「やかましいぞ」

「ごめんなさい!!」

 

ヒレを軽く蹴り飛ばし、折檻するポチタ。

普通、鮫は陸には上がらないし、浮遊もしなければ、風に乗ることもない。

鮫の悪魔:レプリカにロデオしたポチタは、茫然としていた耶倶矢と夕弦の体にチェーンを巻きつける。

「鮫。その場で百回は回れ。

私を振り落とす勢いでな」

「はァい!父様ァ!!」

 

耶倶矢たちが声を上げる暇もなく、客席に沈んだ鮫の悪魔:レプリカが凄まじい勢いで回転を始める。

途中、八舞姉妹の悲鳴が響くも、数秒もすると風切り音がかき消した。

軈て、その回転が収まると、目を回した八舞姉妹が仲良く顔を青くし、力無く四肢を重力のままに投げた。

 

「ぅ、うぷっ…」

「不快…。ぎ、気持ち悪っ…ぅう…」

「まずは二人」

 

ポチタはグロッキーになった二人をそこらに放ると、美九の側に控えていた四糸乃に目を向けた。

果敢にも、ポチタから美九を守ろうと前に出てはいるものの、その瞳には怯えが見える。

ソレを感じ取ったポチタは、思わず唸り声を上げた。

 

「…うーむ、弱ったな。

ヨシノの精神が繊細すぎて、下手に手出しができん。何かしようものなら、シドーに小言を言われてしまう」

「父様!幽霊!幽霊!」

「……そういえば、ソレもあったな。

幽霊。ヨシノを抑えろ」

 

ポチタの声と共に、べた、べた、と気味の悪い音がステージに響く。

ステージの明かりのみが満る薄暗い空間では、その姿を捉えることができず。

四糸乃らがキョロキョロと会場を見渡していると、いくつもの腕が彼女に殺到した。

 

「お姉様に、手は、出させません…!

来て、《氷結傀儡》…!」

 

四糸乃が小さく叫ぶと共に、ウサギの形をした怪物が冷気を放ち、吠える。

が、しかし。腕は凍ることも厭わずに突っ込み、怪物を包み込んだ。

夥しい腕の根元へと目を向けると、目と口が縫いつけられた女性の巨顔が映る。

世間一般で言う、幽霊のイメージそのものと呼べる姿。

その剛腕に締め付けられ、ぴくりとも動けなくなった天使を前に、四糸乃は困惑を露わにする。

 

「な、なに、これ…?」

「お前が怖がりで助かった。

コイツは恐怖心を見るからな」

 

ポチタはそう言うと、鮫の悪魔:レプリカをよじ登り、殺到する観客を蹴り落とす。

そのほとんどは男で、侍らせるための女は別の場所…舞台裏か何処かに居るのだろう。

狂三もソレに気づいたのか、呆れた目でポチタを見やった。

 

「…通りで、一般人相手にめちゃくちゃすると思いましたわ」

「顔と股は潰してないんだ。

温情は十分に与えてやってる」

「そう言うところですわよ」

 

士道ならば、被害を出さない方法をなんとか考えていただろうに。

そんなことを思っていると、顕現したパイプオルガンから音が響く。

どうやら、全員に強化を施したらしい。

狂三の影に立っていると言うのに、無理矢理に起き上がった彼らを見やり、ポチタはチェーンを強く引いた。

 

「振り落とされるなよ?鮫、飛べ!!」

「はァい!!」

 

そり返った鮫の悪魔:レプリカが叫ぶと共に、どぷん、と音を立てて観客席が波打つ。

壁だろうがコンクリートだろうが泳ぐことができるという、鮫の悪魔の能力によるものだろう。

美九の傀儡となった人々は、その波によって足を取られ、すっ転ぶ。

ポチタはそれに目もくれず、鮫の悪魔:レプリカからチェーンを外すと、その背を踏み台にして飛び上がった。

 

「まずはその煩い楽器を壊してやる!!」

「そんなこと、出来ると思いますかぁ?」

 

美九が言うと、彼女は息を吸い込み、世界を震わせるように咆える。

咆哮が質量となって襲いくるのに対し、ポチタは狂三に向けて叫んだ。

 

「おい!耳を塞げ!!」

「は、はぁ…?こうですか?」

 

人間を潰すほどの威力を持つ音を前に、ポチタは暴走する士道と意識を入れ替える。

表に出た精霊の悪魔は、その喉奥から圧倒的な霊力を込め、声を放った。

 

「トオカは何処だァァァアアアッ!!!」

 

激怒の叫びが、美九の声を打ち消すどころか、聳える天使の一部を歪ませる。

十香の存在は、良くも悪くも士道の中で大きかったのだろう。精霊の悪魔は誰に問うわけでもなく、ただ十香を求めて叫ぶ。

焦った美九は、続け様に声を張り上げ、先ほどよりも威力のある音で士道を殺しにかかった。

 

「ゥヴガァァァァァァアアアッ!!」

 

が。精霊の悪魔が放つ霊力によって、声は呆気なく霧散した。

呆然とする美九を前に、精霊の悪魔は《鏖殺公》を顕現させると、霊力を注ぎ込み、装甲を纏わせる。

かつて、天宮市そのものを崩壊させる寸前まで行った【最後の剣】。

十香が顕現するものよりも数倍は巨大なソレを前に、美九と狂三が唾を飲んだ。

 

「士道さん!これ以上は…」

「煩い!煩い煩い煩い煩い煩ァい!!

トオカを返せェェェエエエッ!!」

「わ、私じゃありません!

十香さんを攫ったのは金髪の人で…」

「お前じゃないならなんで俺の邪魔をする!?」

「そ、それは…!あなたが女装など気持ち悪いことを…」

「ああ思い出した!お前のせいだ!!

お前の癇癪のせいでトオカが攫われた!!

殺してやる殺してやる殺してやる!!

存在の一片も赦してなるものか!!

お前の名前すらも消し去ってやる!!」

 

全身から霊力を吹き出し、涙目で訴える美九を喰らわんばかりに牙を開く精霊の悪魔。

美九を会場ごと殺す気である。

普段の士道からは考えられない暴挙を前に、焦った狂三が制止を図るも、怒りに満ちた精霊の悪魔には届かない。

腕のチェンソーを振り下ろすと共に、会場を潰すべく、【最後の剣】が迫る。

 

「いい加減にしろ。

トーカにばかり目を向けて、封印した精霊まで殺してどうする」

 

と。その意識を抑え込み、ポチタが表に出たことにより、【最後の剣】が霧散する。

ポチタはそのまま降り立つと、恐怖と困惑で茫然とする美九を素通りし、両腕のチェンソーを唸らせた。

 

「とまぁ、見てもらったらわかるように、シオリ…、もといシドーは今、話が通じるほど冷静ではない。

そもそも、ここに来た理由はお前を潰しにきたのと、もう一つある」

「……なんですかぁ?」

「ヨシノたちから『契約』のことを聞いてるだろ。

約束通り、言うことを一つ聞いてもらうぞ。

まともな死に方をしたくないのなら、反故してもいい…がっ!!」

 

ポチタが腕を薙ぐと共に、伸びたチェーンが聳える天使を切り裂く。

崩れ落ちる天使を背に、ポチタは露骨に不機嫌な美九に迫った。

 

「契約だ。『お前のことを話せ』。

手を出すなと言うのも考えたが、お前みたいなヤツのことだ。どうせあの手この手で手を出してくるだろう。

私もシドーも、お前のファッション男嫌いに付き合うのもウンザリしてるんだ。私が根本から絶ってやる」




【悪魔との契約】…『違反できない』と世界に決められてるため、違反の罰則自体が存在しない。おまけに逃げないように、契約対象を自由に呼び出すことができる。めちゃくちゃ有利な条件で契約した際は便利能力だけど、ここの復讐心ガンギマリ二亜さんでないとまず無理。

時崎狂三…契約を盾に無理矢理に協力させられるハメに。しかし、寿命のストックも増やせて、精霊の悪魔の強さも目にできたのでご満悦。ポチタは嫌いだけど、士道は好き。

鮫の悪魔:レプリカ…本物チギャウ。モノホンは地獄で偽ポチタが足として使っていた。悪魔らが偽ポチタを地獄から追い出そうと結託した際、参加しなかった程度には仲が良かった。基本うるさいので、なんか言うたびに偽ポチタに蹴られる。性格はまんまビーム。

五■士■/精霊の悪魔…十香を攫われた怒りで完全に暴走中。5割の力しかないこの時点でも、めちゃくちゃデカい【最後の剣】を顕現させて、天宮市を丸ごと消し飛ばせる。冷静になるまで暫くはかかる。

夜刀神十香…ポチタが表に出ていたら、観客まで殺しかねないと判断して外に放り投げた。その判断が裏目に出て攫われたけど。まさか、士道の方がヤバかったとは思うまい。

誘宵美九…ガチでビビった。精霊の力を手に入れたことで、絶対に安全だとか思ってたけど、全然そんなことなかった。契約のことを知って不安に駆られたけど、ポチタのガバのおかげで助かった。

偽ポチタ/戦犯…自分のガバが原因の一端なので、ちょっと気まずい。失態は結果で取り返すタイプなので、まずは美九をどうにかしようと策を練った。

崇宮真那/サムライソード/戦犯…こちらも失態は結果で取り返すタイプなので、現在は作戦に向けて行動中。

本条二亜…二亜は力を溜めている!▼
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