偽ポチタ「助けてやるから、女のおっぱいを揉め」士道「ふぁっ!?」 作:鳩胸な鴨
「ははは!どうだ、チェンソーマン!
これが精霊の反転!素晴らしい力だろう!」
「黙れ、気持ち悪い」
反転という現象が起き、変貌した十香を見上げ、高々と叫ぶウェスト。
イカれポンチを想起したのだろう。
仮面の奥にある顔を顰めたチェンソーマンは、嗤うウェストコットの声帯を、躊躇いなく切り落とした。
と。そんな彼を目掛け、幾つもの光弾と共に光の刃が迫る。
「貴様ァアアア!!」
「吠えるな。取り込み中だ」
飛んできたエレンを軽く避け、虫でも叩くようにその場にはたき落とす。
が、しかし。随意領域でそれを受け止めていたエレンは、傷が再生したウェストコットを抱え、夜空へと消えていった。
「今度会った時はタマを潰してやるか。
……で。お前は何回はらわたをぶち撒ければ気が済むんだ、バカタレ」
「俺のことが嫌いな神様に聞け!
ってか、これ大丈夫だよな!?
傷口から砂利とか入ってないよな!?」
「お前の再生で入るか、ボケ。
治癒の段階で燃え尽きとるわ」
ギャーギャーと言い合うチェンソーマンと士道を前に、変貌した十香が眉を顰める。
その殺気をいち早く察知したチェンソーマンは、振り下ろされた片刃の剣を四つのチェンソーで受け止めた。
「……ほう。《暴虐公》を止めるか」
「可愛げが無くなったな!
その生意気な状態で喘がせたいものだ!」
「死ね」
出会った当初の十香を想起させる態度だ。
自分以外の一切合切を敵だと認識しているのか、その敵意は士道にも向けられていた。
世界を殺す剣をあっさりと受け止めたチェンソーマンは、距離を取る十香に下品な笑みを浮かべる。
「シドー、あのトーカもオトせ。
あの生意気な女から、甘く縋るような喘ぎ声が聞きたい」
「ホンットお前さぁ!!」
いくら男心をくすぐる見た目をしていても、中身は性欲のままに動くモンスター。
こんな状況でも最低である。
自分の体躯よりも遥かに大きいチェンソーマンの顔を見上げ、呆れた怒号を放つ士道。
と。それを煩わしく思ったのか、十香は《暴虐公》と称する剣を、士道に向けて振り下ろした。
「『精霊の悪魔:■■■』!!」
自分でも認識できない言葉を叫ぶと共に、士道は肘から二つの腕を伸ばす。
チェンソーマンと同じ体躯だが、その様相はまるで正反対だった。
肌を覆う装甲は、存在がまるごと世界に溶け込んでいるかのように、白とも透明とも取れる不思議な色で染まっている。
しかし、一部は存在が抜け落ちているのか、所々黒が目立つ。
武装も完全とは言えず、元あった腕から突き出るように顕現した弓矢、斧が鎮座しているのみ。
残った腕には、これまで同様に肉を裂いて出た黒いチェンソーが唸り声をあげている。
顔を覆う仮面は白と黒で分けられ、その脳天には十香の《鏖殺公》とチェンソーが合わさったような刃が伸びていた。
「軟いッ!!」
精霊の悪魔が叫ぶと共に、飛んできた十香の斬撃を額から伸びる刃で打ち消す。
普通なら首が折れる挙動であるが、チェンソーマンとして戦ってきた経験からか、スムーズに斬撃を放つことが出来た。
しかし、痛いことには変わりないわけで。
精霊の悪魔は首を、ゴリっ、と鳴らし、歪んだ骨を無理やりに戻した。
「ゔぁーっ…!いっ…、てぇえ…!
お前、よくこんなん出来るよな…」
「どうせ治るからな。
いちいち痛がるだけ無駄だろ」
「俺、一応心は人間なんですが…」
「寝言は寝て言え。来るぞ」
チェンソーマンの言葉を皮切りに、ビルそのものを吹き飛ばさんばかりの斬撃の雨が降り注ぐ。
精霊の悪魔は伸びた腕のチェンソーをしまい、美九と狂三を抱えて飛ぶ。
凄まじい勢いで瓦礫の山となったビルの残骸を踏み越え、チェンソーマンは十香の体をチェーンで縛りつけた。
「ぐっ…、離せ!!」
「だったら大人しく、しろォ!!」
縛られた十香が力任せに拘束を解こうとするも、チェンソーマンが激しく回転したことにより、体がシェイクされる。
チェンソーマンはそのまま勢いをつけ、十香の体をビルへと投げ捨てた。
しかし、その背がコンクリートへと付く直前、十香は体勢を立て直し、無防備になった首に斬撃を放つ。
チェンソーマンは伸ばしたチェーンを、隠れていた鮫の悪魔:レプリカのヒレに引っ掛け、その斬撃をすんでのところで避けてみせた。
「チッ…。一度叩きのめして正気に戻そうにも、骨が折れるな」
『士道、聞こえる!?』
「生憎だ。インカムは私の方だ」
『ぅげっ…!?』
悲鳴じみた琴里の声に辟易しながらも、チェンソーマンが答える。
琴里は露骨に嫌そうな声を上げたものの、即座に声を張り上げた。
『ああ、もう!この際ポチタでもいいわ!
よく聞いて!今、十香に起きてるのは、二亜とは違う完全な「反転」よ!』
「見りゃわかる。
どうすればいいかだけ吐け」
『十香の意識を外からの衝撃で戻すだけ!
いつもと変わんないわよ!!』
「回りくどいぞ。
なんで『キスしろ』と端的に言えんのだ。
お前はそう回りくどいから、大好きな『おにーちゃん』に女として見られんのだろうが」
『余計なお世話よ駄犬!!』
チェンソーマンの指摘に怒鳴り声を上げ、通信を切る琴里。
はぁ、と小さく息を吐くと、チェンソーマンは美九たちを近くのビルにおろした精霊の悪魔へと目を向ける。
「シドー、聞いていたな!
私が抑えてやる!やるならさっさとやれ!」
「おう!愛してるぜ、相棒!!」
「やめろ、気色悪い!鳥肌が立つ!!」
そう言う割には声が弾んでいる。
精霊の悪魔は全身をドロドロに溶かし、五河士道としての姿へと戻る。
と。その姿を見た十香は、怪訝な顔をして士道を見つめた。
「……なんだ、あの人間は?
見ているだけで胸が騒めく…」
「良かったな、シドー!意識の奥のトーカは、お前のことが大好きらしいぞ!」
「トー、カ…?」
自分のことを指す名前すら分からないのか、怪訝そうに眉を顰める十香。
動揺を誘うために放った言葉だったが、あながち間違いでもなかったらしい。
チェンソーマンは喉奥から笑い声を放つと共に、銃の悪魔:レプリカによって捲れ上がった地表へと着地する。
「まずはコレからだ!」
チェンソーマンは四つの腕を、立った地面へと突き立て、チェーンを伸ばす。
訝しげにそれを見ていた十香だったが、その地面全体から夥しい数のチェーンが伸びてきたことにより、その顔が歪んだ。
「二度もかかるか、馬鹿め!」
十香は迫り来るチェーンを拒絶するように掌を前に突き出し、不可視の壁を展開する。
伸ばしたチェーンの軌道は見事に外れ、並ぶビルの一部を薙ぎ切った。
チェンソーマンは目論見が外れたことがわかるや否や、捲れ上がった大地そのものを振り回し始める。
「ギャハハハハッ!!」
「そんなもの!」
ハンマーのようにして迫る巨大な塊に、十香は嘲笑を込めて剣を振るう。
やはりというべきか、十香の一撃の前に塊は砕かれ、チェンソーマンに襲いかかる。
が。読んでいたチェンソーマンは、解放された手で斬撃を掻き消した。
「やはり思いつきじゃ上手くいかんな」
「く、くくく…。面白いぞ、化け物!
それでこそ、殺し甲斐がある!!」
十香が吠えると共に、漆黒の破片が剣へと収束していく。
数秒と経たずして完成した大剣を前に、チェンソーマンはゲラゲラと笑った。
「バカなのは変わらんな。
囮の私に熱中しすぎだ」
チェンソーマンが嘲笑を浮かべると共に、十香は弾かれたように背後を向く。
そこには、いつの間にやら復帰していた八舞姉妹に腕を掴まれ、十香へと迫る士道がいた。
「し、しまっ…」
「十香ぁああ!!」
「っぐ、ぅうう…!!」
士道が名前を叫ぶと共に、十香の表情が苦悶に満ちる。
頭痛も走っているのか、十香はこめかみを抑え、剣を振り上げた。
「なん、だ、お前は…?私に何を……?」
「長い間してなかったからな。
ちょっと長めにしてやる」
ロマンチックな口説き文句すら吐かず、士道は流れるように十香と唇を重ねる。
十香は困惑に目を見開き、士道の体を引き剥がそうと力を込めた。
が。士道の後頭部に手が触れると共に、不思議と力が抜けていく。
存在がひっくり返されていく。
そうとしか形容できない感覚が全身を覆うと、十香の意識が戻った。
「……むっ!?むーっ!むーっ!!」
「………ぷはっ」
意識が戻った十香は、自身が士道と唇を交わしていると気づくと、赤面して慌て出す。
その抵抗を数秒だけ押さえつけた士道は、ゆっくりと唇を離し、息継ぎした。
「お、戻ったか」
「し、シドー…。長いと恥ずかしい…」
「ご、ごめんごめん…」
「まった…、く……!?
シドー!?心臓はどうした!?」
十香はふと、ぽっかりと空いた士道の心臓に目を向け、愕然とする。
士道は乾いた笑みを浮かべると、銃の悪魔:レプリカを仕舞って降りてくる二亜を受け止めたチェンソーマンを指した。
「あー…、あそこ。
あんなナリだけどポチタな。あれが本当の姿らしい。…俺、見るの初めてだけど」
「う、うむ…。…怖いけどカッコいいな」
少ない語彙でチェンソーマンに笑みを向けると、彼は十香に声を張り上げた。
「私からすれば欠点だらけだ。
チ○ポが無いから、女が抱けんどころか自慰すら出来んぞ」
「お前!十香に変な言葉教えるな!!」
「シドー、チ○ポとはなんだ?」
「女の子がそんなはしたないこと言うんじゃありません!!
ポチタも満足したろ!?さっさと戻れ!!」
そんなつまらないコントを照らすように、朝日が登り始めた。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「……誤魔化し方下手すぎるだろ」
翌日。天央祭会場にて、士道は呆れた表情を浮かべ、携帯に罵声を浴びせる。
どうやら先日の件は、「特殊な空間震や幻覚剤散布による集団暴走事件として処理された」らしい。
そのことを示すかのように、荒唐無稽な憶測が踊るネット記事を流し読み、士道は深く息を吐いた。
「まぁ、化け物が壊しましたー…なんて口が裂けても言えんわな」
『お前もソレに含まれてるぞ』
「うん。知ってる。
…しっかし、結構派手目に壊したのに、もう直ってんのな」
『顕現装置様様だな。便利なおもちゃだ』
「おかげでこうやって、三日目の予定を楽しめてるんだ。
便利な発明だよな、ホント」
先日、チェンソーで叩き切ったはずの壁に目を向け、苦笑を浮かべる。
本来、今日のプログラムは二日目の予定諸共オシャカになるはずだったのだ。
しかし、熱意ある生徒たち…主に実行委員会の女子三人…が行った猛抗議により、なんとか開催されたのが、本日の十校の生徒のみが参加する後夜祭だった。
「ポチタ、なんか見たい場所とかあるか?」
『トーカの乳房だな』
「そういうの聞いてないから」
『2割は冗談だ』
「8割本気じゃねぇか!?」
流石は性欲モンスター。最低である。
士道が辟易のため息を吐いていると。
待ち合わせをしていた美九が、廊下の向こうから駆け寄ってきた。
「来てくれたんですね!」
「ま、手紙もらったしな」
ポケットから可愛らしい便箋を取り出し、苦笑して見せる士道。
先日見せた「ツンドラ」と評されるレベルの態度は何処へやら、美九の表情は明るく、一切の負の感情を感じさせないものだった。
「で、話って何なんだ?」
「あ、そうでしたぁ」
と。美九は全身を士道に預け、無防備になっていた士道の唇を奪う。
いつもの様に、霊力が流れ込んでくる感覚と、美九の柔肌に、士道は目を白黒させた。
「え?はぁ…!?」
「なんて早業…」
「不可抗力!不可抗力だから!」
裸体を晒した美九を前に、士道は必死になって不可抗力であることを主張する。
今まで出会ってきたどの精霊よりも主張の激しい乳房を前に、心臓として鼓動するポチタが、胸から飛び出そうな程に暴れ出した。
流石はアイドルというべきか。男の欲望がそのまま顕現したかの様な肢体を前に、士道は起立しかける息子を抑え込む。
「冗談です。封印のことについては、あらかじめ精霊さんたちから聞いてました」
「……もう、いいのか?」
「ええ。それに、本当の声で言わなくちゃいけないことがあるので」
美九は言うと、少し離れ、頭を下げた。
「士道さん、ごめんなさい」
「……はえ?」
何のことかわからず、士道は目を丸くする。
そもそも、士道は既に美九に対して怒りを覚えていない。
なにか謝罪を受けるようなことがあったか、と思っていると、美九が言葉を続けた。
「私のせいで、十香さんが攫われて…。契約だったのに、私は無理矢理に精霊さんを私のものにしようとして…。挙げ句の果てに、士道さんを殺しかけて…。
今までのこと、全部、全部謝ります…!
本当に、ごめんなさい…!」
「いや、解決したことを蒸し返されても…。
全部ハッピーで終わったから万々歳だし、そんなに気にしてないぞ」
「それでもです!きちんと謝らないと、私…!」
尚も食い下がり、頭を下げ続ける美九。
やはり、根は真面目らしい。
どうしたものか、と士道が悩んでいると、唐突に意識が替わった。
「本人がとっくに許してるんだ。
それでも申し訳ないと思うんなら、お前の歌でも聴かせてやれ」
「……!」
ばっ、と美九が顔を上げる。
ポチタはソレを横目で見やり、笑みを浮かべた。
「90点。いい女だぞ、お前。
幼稚なのを除けばな」
『余計なこと言うな、バカタレ!!』
士道は叫ぶと共に、主導権を取り戻す。
本人に点数を言う馬鹿がいるか、と怒りつつ、士道は美九に頭を下げた。
「こう言う奴なんだ。ごめん…」
「大丈夫ですよぉ。
あと10点埋めて、士道さんの…いえ!100点満点パーフェクトな、『だーりん』の奥さんに相応しい女になりますから!」
「…………へぁっ?」
とんでもない爆弾を投下すると共に、その場を去っていく美九。
『だーりん』とは、婚姻関係にある男性を指す単語で間違いあるまい。
というか、ソレ以外に『だーりん』という単語を知らない。
面倒が増えたとばかりに、士道はがっくりと項垂れた。
「…皆になんて言おう?」
『諦めろ。そう言う運命だ』
五河士道/精霊の悪魔…とうとう悪魔の割合が6割に突入。悪魔としての本来の姿は、チェンソーマンに精霊の使う天使を合わせたような姿。頭だけでも反転した十香の攻撃を捌けるくらいには強い。
夜刀神十香…初めて男のシモを表す言葉を知る。その3日後、ちんちんで爆笑する小学生みたいな女子高生が爆誕した。
偽ポチタ…本来の姿に戻るのは実は2回目。悪魔たちに施された封印は、士道が封印してきた霊力を使って破った。女が抱けない体はゴメンなので、これまで通り、士道の心臓として生活することに。
誘宵美九…その後、アリーナでもだーりんに向けて告白。会場がめちゃくちゃ騒めく中、キリキリと痛む胃を抑えるだーりんを発見し、笑顔を向けたそうな。