偽ポチタ「助けてやるから、女のおっぱいを揉め」士道「ふぁっ!?」   作:鳩胸な鴨

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今更だけど、この作品はダイジェスト方式です。


五河士道、契約する

険しい訓練を積み、数日が経った。

先ほどまで生徒が行き交っていた校舎には、人っ子一人見当たらない。

それもそのはず。今は空間震警報が鳴り響いている真っ只中なのだ。

今は自分の制御下にはないはずの心臓が、ばくばくと胸打つような気さえする。

今日、自分は世界を殺す災厄を口説き、デートに誘う。

未だにヘタレの汚名は拭えないが、最低限、彼女を前にして吃らない程度には免疫をつけてきたつもりだ。

士道は口を窄め、小さく息を吐く。

 

「ポチタ、邪魔すんなよ」

『せんわ。上手くいけば抱けるのだろう?

なら、夜伽の約束も取り付けろ。なんなら契約を結んでしまえ』

「そればっか言うなって…、ん?

契約って、人間同士でも結べんの?」

 

湧いて出た疑問に士道が首を傾げる。

と。ポチタの呆れを込めたため息が漏れた。

 

『お前は「私の体」なんだぞ?

私の悪魔としての権能は、お前にも使える』

「…でも、ペナルティ半端ないんだろ?

お前相手なら兎に角、精霊や人間が相手だったら使わないよ」

 

言うと、士道はポケットから小型のインカムを取り出し、耳に当てる。

と。そこから琴里の文句が鼓膜を震わせた。

 

『ちょっと。なんで外してたのよ』

「ポチタが嫌がったんだよ」

 

言って、軽く呼吸を整える。

リラックスは済んだ。

士道は半壊しているであろう教室に向けて、足を運んだ。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「昨日は私ばかり質問に答えていたからな!今日はシドーが答える番だ!」

「は、はは…。お手柔らかに頼む」

 

翌日。士道は目の前にて溌剌な笑みを浮かべる少女に、苦笑を浮かべた。

現在、士道は少女…現れるだけで空間震を巻き起こし、世界を殺す災厄たる「精霊」の1人、十香とのデートに勤しんでいた。

決して遊んでいるわけではない。

士道が精霊の力を封印するには、「デートをして惚れさせ、キスをする」などという、深夜テンションで考えたみたいなプロセスが必要になるのだ。

先日、銃撃の雨が降り注ぐ中でデートの誘いには成功したものの、詳しい日程を決め損ねたせいで次にいつ会えるかもわからず。

どうしたものかと悩みながら、気分転換にぷらぷらと街を歩いていたのが幸いして、空間震を起こさずにこの世界へと現れた十香と再会したのである。

今は立ち寄ったレストランにて料理が運ばれるのを待っている状況であり、そこに居合わせたのか、はたまた作戦の一環なのか、店員に扮した琴里の二度にわたる口封じの打撃を、顔面で受け止めたばかりであった。

どんな質問がくるか、と身構えていると。

十香の纏う雰囲気が一変したのが伝わった。

 

「シドーは人間なのか?

それとも、私と同じ存在なのか?」

 

先程の溌剌な印象はどこへやら、神妙な面持ちで問う十香。

というのも、十香は同じくしてASTに殺されかけた士道…否、チェンソーマンに親近感を抱いているのである。

自分を守ったのも、こうして親しく接するのも、その同族意識からなのではないか。

辿々しく、縋るように問う十香に、士道は言葉を探す。

言葉を濁して誤魔化すという手もあるが、士道はその気になれなかった。

 

「あー…。ちょっと長くなるけど、聞いてくれるか?」

 

本来であれば、ポチタに説明の全てを全力投球していたが、今は十香とデートしているのだ。

ポチタの口から語らせるのは、十香にとって失礼に値するだろう。

士道は要領を得ないながらも、出来るだけ丁寧に、ポチタと契約を交わした経緯…ただし、契約内容は含まず…を話した。

全てを聞き終えた十香は、士道の胸元へと目を向け、優しく微笑む。

 

「そのポチタという友はきっと、シドーのことが大好きだったのだな」

「……」

 

十香の言葉に、士道は微妙な表情を浮かべそうになる表情筋に力を込めた。

内容について誤魔化したのは失敗だったか、と思っていると、デートを見守っていたポチタが声を発した。

 

『私は私のことが好きなヤツが大好きだ。

私のことが嫌いなヤツの心臓になんてなるわけないだろ』

 

好きなのは否定しないらしい。

悪魔らしい最低な言い分に士道は苦笑を浮かべ、「そうだな」と十香に言葉を返した。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

『なぜ抱かなかった。

アレは女を抱くための施設だろうが』

 

ポチタの文句に、士道は顔を顰める。

先刻、士道と十香はラタトスクの作戦なのか、ラブホテルへと誘導されたのである。

これにクソ童貞は大歓喜。十香を抱けと士道にしつこく迫った。

が。そこは誠実な男…もとい、据え膳食わぬ男の恥。誘惑を振り払い、鋼の精神で興味を抱く十香をその場から引き剥がした。

ゲームセンターにて獲得したきなこパンの抱き枕を抱きしめる彼女に聞こえないよう、士道はポチタに苦言を呈した。

 

「十香の無知につけ込むみたいで、俺はヤなんだよ…」

『勃起していたくせによく言うな』

「お前のせいだろうが…!!」

 

ポチタの性的興奮は、士道に反映される。

すなわち、クソ童貞が勃起してしまうような童貞死亡シチュエーションに直面すれば、士道のブツも臨戦体制となってしまうのだ。

しかも困ったことに、このクソ童貞が勃起するハードルはマントルにて焼かれてる。

相当期待していたのか、覚醒したブツはしばらく治らず、琴里にも怒鳴られてしまった。

ポチタとラタトスク…正確には四回の離婚と五回の結婚を経験した剛の者であるスタッフ約一名のせいで散々な目にあった。

ため息を吐きかけるも、十香に聞こえてはまずいと思い、やめた。

 

「シドー、どうかしたか?」

「なんでもない。十香が楽しそうで良かったなって思って」

「うむ!…しかし、一体全体どれがデェトだったのだ?」

 

デートという概念が未だにわからず、悶々と悩む十香。

士道はこちらの世界に疎い彼女にもわかるように、丁寧に語彙を振り絞った。

 

「こうやって男女が出かけて遊んだり、話をしたり…。

今日やったみたいに、2人とも楽しいことがデート…だな」

「…シドーも、楽しかったのか?」

「ああ。すっげー楽しかった。

また十香とこうやってデートしたいって思えるくらい」

 

十香の笑みが、ぱぁっ、と花開く。

が。その顔は即座に曇ってしまった。

 

「…私にはきっと、そう思う資格すら無いのだろうな」

 

泣きそうな顔で、十香は懺悔するように、胸中を語り始める。

初めて見た、人間の世界。

自分を殺そうとする人間はどこにもおらず、殺伐とした当たり前が全て否定された、優しい世界。

そんな世界を殺すことしかできない自分は、否定されて然るべきなのだ。

懺悔を受け止めた士道は、怒りと哀しみを顔に滲ませた。

 

「そんな…。そんなこと、もう言うな!

十香は生きていいんだ!!」

「繕わずともいい。私は…」

「よしわかった!俺が十香が生きていい理由をいっぱい言ってやる!

全部聞くまで『死ぬべき』だとか言うんじゃねぇぞ!!」

 

子供みたいな屁理屈を放つ士道に、十香はぱちくりと目を丸くする。

ポチタの影響なのだろうか。

それとも、往来の気質なのだろうか。

士道は「よーく聞け!」と声を張り上げた後、仰反るほどに息を吸い込んだ。

 

「十香はゴミもちゃんと捨てられるし!メシも美味そうに食えるし!楽しいことを楽しいってきちんと言える!」

「……あ、あの…」

「口いっぱいに食べ物を頬張る顔はリスみたいで可愛いし!喜ぶお前の笑顔を見るだけで、こっちだって嬉しくなる!」

「……、で、でも…」

「食べてるものが美味しかったら、『食べるか?』って言って一口くれるし!なにか渡すと毎回『ありがとう』って言ってくれる!」

 

十香の顔が真っ赤になっていく。

彼女はぐるぐると回る視界の中、ふと、あることを思い出した。

 

「く、空間震とやらはどうする!?

私でも止められないんだぞ!?」

「今日みたいに起こさず来たらいいだけの話だろ!まだまだ言い足りないんだから、ちゃんと聞け!!」

「だーかーらー!私の意思では無理だと言ってる!!」

「ずっとこの世界に居ろ!はいこの問題これで終わり!閉廷!!」

「終わりな訳あるか!?第一、そんなことができるわけ…」

「試したのか!?一度でも!?」

「……い、いや…」

「だったら今日からやれ!住むところも飯も勉強も全部面倒見てやる!どんなことが起きても、俺が助けてやる!そんな些細なことでいちいち止めるな!!」

「………」

 

めちゃくちゃが過ぎる。

呆然とする十香に、ヒートアップした士道は怒鳴り声で褒め言葉を続けようとした。

 

「これ以上つまらない言い訳並べるなよ!まだお前の生きていい理由はいっぱい…」

「……いいのか?」

 

十香の縋るような声に、士道は口を閉じ、じっと彼女を見つめる。

暫し迷った後、十香は恐る恐る口を開いた。

 

「私は、生きていてもいいのか?」

 

その言葉に士道が頷く。

目尻に涙を溜めた十香に、士道は手を差し伸べた。

 

「十香。俺と契約してくれ」

「けい…、やく…?」

「『十香が助けを呼んだら、俺が助けてやる。

だから、十香は目一杯幸せに生きろ』。

それだけの、簡単な約束だ」

 

十香がゆっくりとその手を握る。

と。士道はその腕を引き、十香の体を寄せた。

 

「契約成立だ」

 

士道が悪魔のような笑みを浮かべる。

その腹には、がっぽりと穴が空いていた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

『……いくら再生できるからと言って、そこまで無茶をするか』

「ああでもしないと、十香は助からなかっただろ?

それに、俺が助けるって言ったんだ。お前に頼るのは違うだろ」

 

腹を撃ち抜かれ、意識を手放したはずの士道は、胸に抱いたポチタの瞳を見つめる。

士道とポチタのみが存在する世界。

ここに来たのは、もう5年も前だったか。

そんなことを思いながら、士道は久方ぶりに見るポチタの姿に、笑みをこぼした。

 

「お前、わかってたな?

俺が十香と契約を結ぶこと」

『お前の心臓になって5年だぞ?

結ぶとしたら、自分に得がなさそうな契約だと思っていた。

それに、お前に契約を結ぶ権能を渡さねば、私に得のない契約を結ばれる可能性もあったからな』

 

士道は「そうかよ」とこぼし、ポチタの丸っこい背を撫ぜる。

暫しの沈黙が流れる。

それを破ったのは、どこからか聞こえてきた十香の声だった。

 

────助けてくれ、シドー…!

 

『お呼びだぞ。力くらいは貸してやる。

あとは自分でなんとかするんだな』

「ありがとうな、ポチタ」

『私はあの女を抱きたいだけだ。

…しくじるなよ、ヘタレ』

「しくじるかよ、スケベ悪魔」

 

その言葉を最後に、ポチタの姿が消え、心臓からスターターが垂れる。

士道はそれに手を伸ばし、思いっきり引っ張った。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

十香の振るう暴威が、士道の腹を撃ち抜いた少女…鳶一折紙の身に振り下ろされる。

折紙自身も士道を殺す気はなく、これは罰なのでは無いか、と思いながら、世界を殺す一撃を緑の膜でなんとか受け止めていた。

が。その一撃が何度も振り下ろされたなら、話は別。

顕現した折紙の城は、藁の集まりに過ぎなかった。

膜が砕け散り、体が地面へと叩きつけられる。

逆光に隠れた十香の顔が、悲しみと怒りを纏い、剣を上げた。

 

「終われ」

 

死刑宣告と共に、剣が振り下ろされようとした、まさにその時だった。

ドルルル、と、エンジン音が響いたのは。

十香が思わずそちらを見やると、凄まじい勢いで何かが飛んでくるのが見えた。

チェンソーが突き出た仮面に両腕。鮮血を撒き散らしながらこちらへと向かうその影に、折紙は驚愕と絶望を、十香は歓喜と疑念を浮かべる。

 

「ち、《チェンソーマン 》…!?」

 

新たに現れたターゲットを前に、ASTが黙っているわけもなく。

彼女らは十香へと向かう士道…チェンソーマンへと襲い掛かる。

が。チェンソーマンはその刃、弾丸を切り裂き、剥き出しの牙を開いた。

 

「十ォオオオ香ァアアアアアアッ!!」

 

その声で全てを悟った。

アレは士道だ。

そう確信した十香は、死に体の折紙から目を外し、ASTの攻撃に晒された士道へと向かう。

と。それを見た士道は、両腕のチェンソーを引っ込め、仮面をボロボロと崩す。

十香は速度のついた士道の体を、剣を持たぬ腕で受け止めた。

 

「し、シドー…、シドーなのか…!?」

「へへ…。呼んだの、そっちだろ?

契約通り、助けにきた」

「……ばかもの…っ!遅すぎるぞ…!」

 

ぼろぼろと涙を流す十香。

と。その腕に持つ剣が、雷を放ち始めた。

手当たり次第に眼下の光景を破壊する黒雷を前に、十香たちは冷や汗を流す。

 

「な、なんかやばく無いか、それ!?」

「すまない、シドー!【最後の剣】の制御を誤った…!ど、どこかに放出するしか…」

 

言って、十香は倒れ伏す折紙に目を向ける。

士道はそれに激しく首を横に振った。

 

「いやいや!あそこはダメだ!!」

「ではどうすればいい!?もう臨界状態なのだぞ!?」

 

焦る十香を前に、士道は思考を巡らせようとして、やめた。

ここでヘタレを出すほど、士道の覚悟は甘くない。

士道は「すまん」とだけ言うと、「漫画の参考にする」だとかで、二亜に付き合わされた特訓の成果を見せた。

 

『……くくっ』

 

士道が十香の唇を強引に奪う。

ポチタの笑い声と共に、十香が昼に食べたたこ焼きのソースの味が口内に広がる。

瞬間。鏖殺の限りを尽くしていた剣が砕け、十香の纏う服が解けていく。

ゆっくりと高台に降り立つ2人。

士道は自身を抱きしめる十香の柔肌に、暴走しそうになる本能を抑え込んでいた。

 

「あ、あの、た、大変恐縮なのですが、離れていただきたいのでございますのでありますが…」

「ばかもの…。見えてしまう…」

「は、はい…。そーですね…」

 

そう言われては弱い。

士道は十香の抱擁を甘んじて受け入れ、暴れ狂う本能と格闘する決意を固めた。

 

「……シドー。私も契約、していいか?」

 

と。十香が消え入りそうな声と共に、士道の顔を見上げた。

 

「また、デェトに連れてってくれるか…?」

「……ああ。いつだって連れてってやるよ」

 

その言葉に、十香の笑みが花開いた。




チェンソーマンシドー…十香と契約を交わし、悪魔化が進んだことにより、士道の意識を保ったままチェンソーマンとしての力を使えるようになった。ポチタの戦闘経験も一部反映されているので、誰も殺さない戦闘も可能。しかし、その力は偽ポチタチェンソーマンの2割程度。偽ポチタチェンソーマンよりめちゃくちゃ弱い。血の問題はイフリート再生で解決済み。「永久機関が完成しちまったなァ〜〜〜!!これでノーベル賞は俺ンもんだぜェ〜〜〜!!」とか言いそう。

五河士道…偽ポチタのせいで勃起センサー敏感男になってしまった士道くん。ちょっとしたラッキースケベにもフル稼働するので、日常生活に支障きたしまくり。普段はファールカップでなんとか抑えている。十香を封印した日の夜は一睡もできなかった。ナニをしていたかはご想像にお任せします。

偽ポチタ…実は士道のことが大好き。独身29歳社会人クソ童貞になってほしくないため、女を抱けと口うるさく言ってる可能性も…?

本条二亜…士道くんにキスを仕込んだ人。人間不信拗らせていた頃にキスシーンをうまく描けなくて悩んでいたため、契約更新と引き換えに士道くんにそのモデルを頼んだことがある。その3日後にあっさり封印された。

契約のくだりを思いついたら筆が走っていた。
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