偽ポチタ「助けてやるから、女のおっぱいを揉め」士道「ふぁっ!?」   作:鳩胸な鴨

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ここのポチタは井澤さんのクソカワボイスです。


クソ童貞、修羅場を加速させる

「なぁ、シドー。紙がいっぱいだが、どうしたのだ?」

 

ゴミ袋を結んでいた士道の動きが、十香の質問により固まる。

ラタトスクによる検査が予定より早く終わり、十香が住まいが出来るまでの仮住まいとして五河家にて寝泊まりし始めて、数日。

童貞を全力で殺しにかかるような美貌を持ち、精神が未就学児並に幼く、ガッツリ士道に密着してくる十香。

 

そんな彼女が同じ空間で暮らしている。

その事実だけで、クソ童貞の理性は瓦解寸前であった。

 

このままではいつ、獣となった自分が十香に襲いかかるか。

士道にそんな度胸はないものの、それを心配する程度にはタガが外れかかっていた。

しかし、溜まりに溜まったフラストレーションを発散しなければならないのも事実。

結果。士道はここ3日で、ティッシュを二箱ほど使い切ってしまったのである。

純真無垢な十香にそんな事実を言うのは、あまりに酷だ。

士道はなんとか言葉を捻り出し、誤魔化しにかかった。

 

「……そ、その、だな。お、俺、この時期はよく鼻が詰まっちゃうんだ…」

「そうなのか…。早く良くなるといいな!」

 

その純粋さが辛い。

凄まじい形相でこちらを睨め付けてくる琴里から必死に目を逸らし、士道はいそいそとゴミ出しに出かけた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

『女が男と同棲を快く受け入れたんだぞ?

身体を許したも同然だろうに。

お前はいつまで男の恥として生きるつもりだ、ヘタレ』

「お前のせいだろ…」

 

五河家からゴミ捨て場までは、少しばかり距離がある。

なんとか自分一人でゴミ袋を運んだ士道は、ゆっくりと帰路を歩きながら、ポチタに向けて文句を垂れていた。

と。ポチタは心外だと言わんばかりに、深く、深くため息を吐く。

 

『5割はお前だったぞ』

「………え、マジ?」

『お前の股ぐらに迸る性欲全てが私のものなわけがないだろ』

 

どうやら、十香と同じ屋根の下で暮らすことで性欲が暴走したのは、クソ童貞だけではなかったらしい。

自らもクソ童貞の道を歩んでいるという事実を前に、士道は余程ショックを受けたのか、泣きそうな声を漏らした。

 

「あぁぁ〜……。マジかよ…」

『生物が性欲を抱くのは当たり前だろうが。

シドーだけ例外なわけがないだろ』

 

尤もな理屈である。

士道が羞恥と罪悪感に苛まれていると、ポチタの声色が変わった。

 

『言っておくが。これからお前は嫌でも死にかけるんだ。

死んでしまう前に女を抱いておけよ。

その前に死んだら、契約違反になる』

「…わかってるよ」

『じゃあ明日抱け。さっさと抱け。

トーカでもニアでもいい。抱き潰せ。

私はニアの方がいいな。アイツは知識がある分、抱く際に無駄な説明が要らん』

「お前さぁ…」

 

ツッコむ気力もないのか、ポチタが並べる最低な言葉の数々に、はぁ、とため息をつくだけの士道。

と。鼻先に、ぽつり、と滴が落ちた。

 

「……ん?」

 

その違和感に気づくや否や、ぽつぽつとアスファルトが濡れていく。

雨だなんて言っていただろうか。

そんなことを思いつつ、士道は早足で自宅へと戻ろうとする。

と。その足がぴたりと止まった。

 

「…ポチタ、どうした?」

『精霊の匂いがする』

「……え?匂い、すんの?」

『トーカとニアので覚えた。

体を寄越せ。案内してやる』

 

士道の困惑をよそに、ポチタが士道の意識を押し込み、表面に現れる。

ポチタは雨に慌てることなく、来た道を引き返した。

 

『あの、めっちゃ濡れてんだけど…』

「私が心臓になっている上、コトリを封印してるおかげで怪我も治るし病気にもならんのだ。

些細なことでガタガタ吐かすな」

『些細なことじゃねぇよ!

下着までぐっしょりじゃねぇか!?』

「どうせ勃起したら戻るんだ。

気にするだけ無駄だろ」

『そっちの心配じゃねぇよバカ!!』

「うるさいぞヘタレ。少し黙れ」

 

ぎゃあぎゃあと口喧嘩というのもくだらない口論をしながら、濡れた石段を上がっていくポチタ。

下品な言葉をツラツラと並べているだけでも罰当たりなのに、がっつり真ん中を歩いているあたり、神に対して一切の畏敬を抱いていないことがわかる。

何度か滑りそうになりながらも登り切ったポチタは、狭い境内を見渡す。

と。ぱしゃん、と、水が跳ねる音が響いた。

 

「………」

 

ポチタがそちらに視線を向けると、レインコートのような衣装を纏い、水溜りで遊んでいる少女が見えた。

琴里と同じくらいの年頃だろうか。

ポチタはそれに顔を顰め、ため息を吐く。

 

「…ちんちくりんじゃないか。

もう少し育てば70…いや、80は固いか…。

抱くのはもう5年待った方がよさそうだ」

『ホンットお前さぁ!!』

 

流石はクソ童貞。最低である。

しかし、雨音のせいか、水溜りで遊ぶ少女には聞こえていないようで、士道は胸を撫で下ろした。

と。そんな彼をよそに、少女が凄まじい音を立てながらすっ転んだ。

その際に、手にはめていたパペットがすっぽ抜け、士道の足元に落ちた。

 

「…腹と顔を打ったな。相当痛いぞ」

『だぁーもぉーっ!代われっ!!』

「当たり前だろうが。

口説くのはお前の仕事だ」

『お、おまっ…、お前っ…!!』

 

あんまりな態度に怒鳴りそうになりながらも、士道は意識をポチタと入れ替える。

士道はパペットを拾い、転んだまま微動だにしない少女に歩み寄った。

 

「大丈夫か?その、痛いところとか、擦りむいたところとかないか?」

「……」

 

ゆっくりと身体を起こした少女に、士道が問いかける。

が。少女はそこから後退り、士道から距離を取った。

 

「…こ、来ないで、ください…」

 

ぐさっ、と音を立てて、言葉の刃が胸に突き刺さったような気がした。

士道がポチタへの怒りと自己嫌悪に顔を歪めていると、続けて少女が口を開く。

 

「いたく、しないで…ください……」

 

どうやら、危害を加えるような存在として見られていたらしい。

その姿はまるで、天敵を前にした小動物だ。

士道はなんとか警戒を解こうと、拾ったパペットを差し出す。

 

「これ、君のだろ?」

「……っ!」

 

それを視認した途端、少女は目を開き、士道との距離をゆっくり詰める。

躊躇いがちにその手からパペットを受け取ると、左手にそれをはめた。

 

『やっはー。悪いねお兄さん。助かったよ』

 

と。そのパペットが口を動かし、やけにハイテンションな声を上げた。

士道がそれに面食らっていると、ポチタが士道に語りかける。

 

『トーカの剣があるだろ。

アレが意志を持ってると思え』

「そんなこともわかんの…?」

『似たような悪魔を何回か殺した。

なんの悪魔だったかは忘れたがな。

経験上言うが、そういうのを物扱いすれば大概はキレるぞ』

『ん?どったの、おにーさん?』

 

自分の心臓と物騒な会話をしてます、などと正直に言えるわけがない。

士道は乾いた笑みを浮かべ、「や、別に…」となんとか誤魔化した。

 

『ならいーけど…。起こしてくれた時、よしのんのいろーんなトコ触ってくれちゃったみたいだけど、正直どーだった?』

「ど、どーだったって…」

 

いつぞや見た、痴漢に詰め寄る女子高生のような勢いで問いかけるパペットに、士道は慎重に言葉を探す。

 

『もしかして、よしのんにノーサツされちゃったー?

見た目によらずガッツリしてるんだね、このラッキースケベ!』

「あ、いや…。そう言うことでいいです…」

 

訂正する気も失せ、項垂れる士道。

ポチタの影響か、はたまた往来のものか、性欲を溜めに溜めたスケベなのは事実であるため、余計に心が痛い。

 

『ショックを受けてる場合か。

さっさと口説け、ヘタレスケベ』

「ぉまっ…、んんっ」

 

反射的に出そうになった怒鳴り声を堪え、士道は少女らに向き直る。

が。彼女らの姿は既に小さくなっていた。

 

『そんじゃ、スケベのおにーさん!

またねー!』

「す、すけっ…!?おい、ちょっと…」

 

心外な評価と共に、その体が解け、消える。

取り残された士道に、ポチタが呆れを漏らした。

 

『スケベは事実だろ』

「その半分はお前だろ!!」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「なぁ。五河はこの子に着せるの、ナース服かメイド服、どっちがいいと思う?」

「お前、三次元にも彼女いるだろ…。

そっちに着せる服考えろよ…」

「ハードルを成層圏突破させるのはやめろ。俺が死ぬ」

 

翌日、朝のホームルーム前。

士道が恋愛シミュレーションゲームが表示された携帯を手に寄ってくる殿町を軽くあしらっていると。

その様子を見ていた折紙がこちらへと歩み寄るのが見えた。

 

「士道、少しいい?」

「あ、ああ…。殿町、もう少し現実の彼女に構ってやれよー」

「うぐっ…」

 

士道の善意は、殿町の心を抉った。

良心の呵責に突っ伏する殿町を背に、士道は折紙と共に教室を出る。

少し歩き、階段の裏にある用具置き場に着くと、折紙が詰め寄った。

もしかして、チェンソーマンや十香のことについてだろうか。

士道が戦々恐々していると、折紙は口を開いた。

 

「士道。自慰の回数が先週よりも3倍近く増えているのは何故?」

「………ふぁっ!?」

 

何故そこまで正確に把握している。

うら若き少女にそぐわぬ下品な情報を垂れ流す折紙に、士道はダラダラと冷や汗を流す。

 

「あ、いや、その…。な、なんで…?」

「恋人だから、士道のことはなんでも知ってる」

「いや、あの、俺、口説きはしたけど…」

「恋人だから」

「だから…」

「恋人だから」

「…………あ、え、は、はぁ…」

 

押しに弱い自分が恨めしい。

なんとか誤魔化そうとするも、その鉄仮面が真っ直ぐに士道を捉えて離さない。

どうしたものかと悩んでいると、ポチタが士道と意識を入れ替えた。

 

「勃起する要因が多くなっただけだ」

『はぁっ!?』

 

ポチタはそれだけ言うと、士道に体の主導権を返す。

火に油を注ぐが如き失言をかましたポチタを睨め付けようとするも、士道は慌てて訂正を試みようとする。

 

「あ、いや、その…」

「夜刀神十香のこと?」

「そうだ。住まいがまだ完成していないらしく、わた…、俺の家で面倒を見ている」

『ぽ、ポチタぁぁああああっ!!??』

 

事態を混迷に導く悪魔の所業に、士道は思わず絶叫をかました。

だが、悲しきかな。それで事態が収まるはずもなく、折紙の据わった瞳が自身を捉える。

 

「いやっ、今のは俺であって俺じゃないというか、その…」

「士道」

「は、ひゃっ、はひぃっ…」

 

地の底から響くような声に、男として情けない悲鳴を漏らす士道。

その目尻には心なしか、涙が溜まっていた。

 

「鳶一折紙!シドーに何をしている!」

 

と。折紙の背に、十香の声が響く。

折紙は十香を見やると、攻撃ならぬ口撃を放った。

 

「泥棒猫」

「……私はなにも盗んでないぞ?」

「いいえ。あなたは士道から大切なものを多く奪った。

失われた多くの命のためにも、あなたを糾弾する」

「なっ…!?本当なのか、シドー…!?」

「奪ってない!奪ってないから!!」

 

折紙の言い分は、あながち間違いでもない。

不安を滲ませる十香を宥めながら、必死にこの事態を収めようと思考を巡らせた。

 

『どうせ遅かれ早かれ体験するんだ。今のうちに慣れておけ』

「ホンットお前さぁ…!!」

 

結局。この修羅場を鎮めたのは士道ではなく、予鈴だった。




鳶一折紙…お馴染み、ライオンすら食いそうな肉食系女子。士道の回数が増えたことに気づいた理由は、ゴミ袋を回収したから。実は偽ポチタに「行動がイカれポンチに似てる」という理由で避けられてる。

五河士道…十香との同棲により、より性欲が暴走してる。長年の修行により、ポチタ抜きでもかなりの絶倫。本人は不本意。

夜刀神十香…性教育はまだ履修してない。その無垢さが童貞を殺すということを知った方がいい。

偽ポチタ…我らがクソ童貞。その不器用な優しさが士道を修羅場へと追い詰めた。
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