偽ポチタ「助けてやるから、女のおっぱいを揉め」士道「ふぁっ!?」 作:鳩胸な鴨
その割にはこの作品、デアラ履修者向けだけどね。
「十香に悪いことしちまったな…」
『だから慣れておけと言ったろうに。
お前が精霊の封印を続ける以上、この問題は付き物だぞ』
拗ねてしまった十香がいる部屋の扉を見つめ、士道が息を吐く。
新たに確認された精霊〈ハーミット〉…即ち、神社にて遊んでいた少女らの攻略中に、十香がその現場を見てしまったのだ。
それだけでも、十香の怒りを爆発させるには十分であったというのに。
あろうことか、怒りに震える十香によしのんが油を注いだことにより、彼女の怒髪が天を突いた。
結果。十香は見事に拗ねてしまい、士道を避けるようになってしまったのだ。
封印した精霊の力…霊力は、精霊が機嫌を損ねれば逆流する。
これは二亜が「締切6時間前に7ページが白紙」という、漫画家としては受け止めきれない絶望を前にした時に発覚しており、士道の頭を悩ませる要因でもあった。
『トーカは純真な分、独占欲も強い。
手玉に取った女の性格くらいは正確に把握しろ、プレイボーイ気取りのヘタレめ』
「言い方、もっとあるだろ…」
『手玉に取ったのは事実だろうが。
思い返してみろ。お前、3人の女を口説き落としてキスしてるんだぞ』
「ぐぅっ…」
反論しようとも、ぐうの音しか出なかった。
全くもって事実だからである。
だがしかし。そんなスケコマシになってまでも、精霊を救うと決めたのだ。
ここで折れていてはダメだ。
十香になんとか事情を説明しようと、扉に手をかけようとすると。
ポチタがふと、声を上げた。
『おい。お前が説明してどうする』
「え?いや、でも、俺が説明しないと…」
『トーカは良くも悪くも引きずる性格だ。
お前が接触することは即ち、トーカの気持ちの整理を妨げることに他ならんぞ。
悪いことは言わん。ラタトスクに投げろ』
「……わかった。令音さんに言っとく」
士道は言うと、踵を返す。
とん、とん、と階段を降りる音が遠ざかると、十香の部屋の扉が開いた。
「シドーは誰と話していたのだ…?」
♦︎♦︎♦︎♦︎
「…ごめんな、見つけられなくて」
「……」
『あの瓦礫の中から紛失物…それも手のひらサイズのパペットを見つけるなど、無理に決まってるだろ』
数時間後。
傘をさした士道はため息を吐き、隣にいる俯いた少女…精霊〈ハーミット〉である『四糸乃』を見やる。
その左手にあったはずのパペットはなく、降り注ぐ雨の冷たさにやられたのか、赤みを帯びた手先が晒されていた。
ほんの偶然だった。
二亜の自宅にて契約更新を終え、帰路についていたところ、デパートだった瓦礫を漁る四糸乃を発見。
話を聞くと、士道が四糸乃の攻略に臨んだデパートにて、パペット…よしのんを紛失してしまったらしい。
精霊云々を置いても放っておくことができず、士道は彼女と共によしのんの捜索を始めた。
が。結果は散々で、見つかるものといえばデパートの備品やら品物だった破片くらい。
何時間か探したところで四糸乃の腹の虫が鳴いたことで、捜索は中断。
昼食を摂るのと、四糸乃のことを詳しく聞くため、士道は自宅に彼女を招くことにしたのである。
『…トーカに見られてみろ。
確実に修羅場になるぞ』
「ファミレスとか、二亜のところとか、下手に連れてけないだろ」
小さく言うと、士道は扉の鍵を開け、「入ってくれ」と四糸乃に促す。
四糸乃は最初こそ躊躇ったものの、意を決したのか、恐る恐る玄関に足を踏み入れた。
「適当に作るけど、リクエストあるか?」
「…………」
『親子丼でも作ってやれ。合成調味料が一人分ほど余っていただろ』
特に希望がないのか、それともリクエストできるほど人間の文化を知らないのか、ふるふると首を横に振る四糸乃。
結局。いつものようにポチタのリクエストを聞き入れ、士道はキッチンへと向かい、親子丼を作り始めた。
米は朝の残り。材料もそこまで上等ではない、スーパーの特売品。
合成調味料を使ったことにより、十数分で完成したしたそれを、四糸乃が座るソファの前にあるテーブルに置いた。
「どうぞ」
「………」
レンゲを添えた丼を、ただ見つめる四糸乃。
お気に召さなかったのだろうか、と不安が胸をよぎるのも束の間。
四糸乃はゆっくりとレンゲを掴み、親子丼を一口掬い上げ、口にする。
と。彼女の表情が、ぱっ、と明るくなった。
「……!………っ!」
「美味いか?ゆっくり食えよ」
感動を訴えかけているのか、ばん、ばん、とテーブルを叩く。
その姿がふと、心臓になる前のポチタと重なったような気がした。
「……ポチタを拾った時も、こんなふうにガッツいてたよな。
そこらで買った食パン一枚だったのにさ」
『マトモなものを口にしたことがなかったからな。
それだけでも馳走だった』
まさか、拾った犬の正体がクソ童貞悪魔だとは思わなかったが。
士道が思い出に浸りながら、親子丼をちまちまと食べる四糸乃を見守ること数十分。
空の丼を前に満足そうに息を吐く四糸乃に、士道は優しく問いかけた。
「食べ終えたばかりで悪いんだけどさ。
四糸乃のこと、よしのんのこと、いろいろ聞いてもいいか?」
「………?」
四糸乃は疑問を浮かべるも、警戒を解いてくれたのか、小さく頷く。
士道はそれに胸を撫で下ろし、辿々しい四糸乃の言葉に耳を傾けた。
曰く、よしのんは四糸乃のヒーローであり、憧れであり、理想の自分である。
曰く、苦痛がなによりも恐ろしく、それは他人も変わらない。だからこそASTに対して反撃もせず、ただ逃げ回る。
曰く、よしのんがいなければ、その信条すら守れないほどに追い詰められてしまう。
全てを聞き終えた士道は、全てを語り終え、泣きそうな四糸乃に向け、神妙な面持ちを浮かべた。
『地獄じゃ真っ先に笑われるな』
「お前は笑ってねぇじゃねぇかよ…」
『「私の体」が気に入った女だぞ?
私が気に入らないわけがあるか』
俗っぽい言い方をすれば、確かに「気に入った」という表現が似合うだろう。
救いたい理由なんて、それだけで十分だ。
士道が四糸乃に思いの丈を吐き出そうとした、まさにその時。
「シドー!すまなかっ…」
「あっ…!?」
爆弾が投下された。
令音により事情を把握したのか、それとも折り合いをつけることができたのか、謝罪と共に扉を開いた十香。
その姿を視認した四糸乃の姿が、世界から解けていく。
士道はぐるぐると言い訳を考えるも、十香の嫉妬と怒りに満ちた表情を前に、冷や汗を流した。
『予見できた事態だろ。
言い訳は予め考えておくべきだったな、スケコマシ』
「シぃぃいいドぉおおおっ!!」
ポチタの正論と十香の怒号に、士道は声も出せなかった。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「助けて、琴里。お兄ちゃん、後先考えないケダモノになっちまう」
『元からそうだろ』
漏れた弱音に、ポチタの口撃が突き刺さる。
その隣には、なぜやらメイド服を纏った折紙が佇んでおり、真っ直ぐにこちらを見つめていた。
こうなったのにも原因がある。
遡ること、数分前。よしのんの捜索をラタトスクに依頼したところ、恋愛面においてはあまり役に立たないものの、ソレ以外では優秀な面々の活躍により、その行方がわかった。
それがあろうことか、肉食系女子の頂点に到達した危険人物…鳶一折紙の自宅だったのである。
士道はなんとか折紙の自宅…自衛隊の寮内に入ることができたものの、家探しする暇もなく折紙が密着。
加えて、市販の精力剤をこれでもかと突っ込んだ、お茶というのも憚られる怪しい液体まで飲まされ。
士道のダイヤモンドでできた理性は、暴れ狂う本能と苛烈極まる戦いを繰り広げていた。
「大丈夫。責任は取る」
「俺ら!高二!!デキ婚!ムリ!!」
「法律の壁なんて超えるためにあるもの。
私たちの部署だと毎年のように転勤の話があるから、それでドイツやイタリアに…」
「話を聞いてくれ頼むから!!」
『間違っても抱くなよ、シドー。
最悪、お前の自由意志がなくなる』
今のポチタは、きっと光を失った、遠い目をしていることだろう。
士道は辛うじて起きあがろうとする本能を抑え込み、折紙の誘惑を跳ね除けた。
「いや、あのさ…、その…。
申し訳ないんだけど、俺、まだ責任取れる歳じゃないっていうか…。
その、そういうのはもっと…、こう、しっかりした社会人になってからじゃないと後悔すると思うんだ、お互いに」
『このヘタレ具合…。10年経っても女を抱くことはおろか、誰かと付き合うことすらままならんな。
お前に落とされた女には同情する』
「………」
ポチタの呆れに思わず怒鳴りかけるも、士道はなんとか堪える。
折紙も納得したのか、それとも別の思惑があるのか、「わかった」と頷いた。
「き、今日はさ、その…」
『馬鹿正直に「パペットを探しに来た」とか言うなよ。
何を要求されたかわかったものではない』
「……お、折紙の部屋が、見たくて…」
直後。士道は激しく後悔した。
鉄仮面の下に、釈迦に付き纏うマーラの如く煩悩が蠢く女、鳶一折紙を甘く見ていた。
一見、最低限の生活感がある殺風景な部屋に見える家の要所要所に、フェミニストですら理性を全力投球するレベルの媚薬効果がある香が炊かれていたのである。
それだけではない。
どこで抱かれてもいいように、避妊具の箱があちこちに設置されていたのだ。
ベッドには裏表『YES』しか書かれていない枕までもが鎮座しており、士道とポチタはその煩悩の凄まじさに戦慄した。
正直、勃ったモノも萎えるレベルである。
一応、よしのんは棚の上に発見できたものの、ソレを回収することが叶うかと問われれば、否であった。
全てを乗り越えた士道は、自慢げに胸を張る折紙に半目を向けた。
「……あ、案内、ありがと。うん…」
「準備は万端。いつでも来ていい」
「何の準備なんですかね…?」
「子作り」
相手にしていて疲れてきた。
強硬手段に及ばないあたり、決して悪い人間ではないのだろうが、押しが強すぎる。
士道は眉間の皺を伸ばし、折紙に問うた。
「……その、折紙はなんでASTに?」
このまま話をぶった切らなければ、絶対に過ちが起こる。
そう判断した士道の問いに、折紙の纏う雰囲気が変わった。
流石にこの質問を出せば、品のない方向に振り切る気も失せたらしい。
折紙は暫し黙ったのち、ゆっくりと口を開いた。
「5年前。私は両親を精霊に殺された」
語られたのは、5年前に起きた火災のこと。
その火災を引き起こしたのは炎を操る精霊であり、折紙の両親もその炎によって殺されたのだという。
両親の復讐に加え、自身と同じような精霊の被害者を減らすために、ASTに入る決意をしたのだとか。
語り終えた折紙を前に、士道が口を開きかけた、まさにその時。
警報音が耳をつんざいた。
鳶一折紙…やべー女。知らない人のために言うと、原作でも大体こんな。独占欲がハンパない上にストーカーまがいのことまでする。詳細は省くが、10巻まで読めばチェンソーマン履修者好物の鬱展開、11巻まで読めば年頃乙女なかわいい折紙を見ることができる。アニメ?やめとけ。三期だぞ。
助けてマキマさん構文をちょっと変えてみた。
夢バトルも次のきょうぞう編で出す予定だし、ちょくちょくチェンソーマン語録は出ると思う。