グングニルと呼ばれたウィッチ   作:夜かな

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待てなかった、反省はしていない


第9話 ボルネオ島北部 上陸戦 後編

 

 

~リオ少尉~

 

私たちが作戦空域に着くまで、あとわずか、既に上陸ポイントに向けて、扶桑陸戦隊、リベリオン海兵隊、そのあとに続くように東南アジア方面軍フィリピン駐留部隊が上陸艇に乗って向かっている。

 

「リオ少尉、まもなく作戦空域に到着します。扶桑空母航空隊も、予定通りに進んでいるようです」

「よし、ここまで問題なし、あとは、ネウロイ次第だね、さすがにこの規模の動きは気付いているだろうし…シア、今回は本気でね」

「ん、当然」

 

 シアは今回、両手にL7汎用機関銃、背中には25mm対物ライフル、更に両脚のハードポイントに、AIM9Bが二つとかなりの重装備。私も、普段使っている25mm対物ライフルは背中に背負い、12.7mm重機関銃を両手で持ち、ハードポイントにはシアと同じAIM9Bを四つ、基本的には小型ネウロイへの対処を目的とした手数重視になっている。

 

 「まもなく作戦開始時間です」

 『全隊に通達、地獄の門へ至り、繰り返す地獄の門へ至り』

 「おお~始まったね、でも、凄いね……ネウロイはさ」

 

 作戦開始を告げる合図と同時に、雲海の隙間から見える、密林の複数から、多数のネウロイが出現、およそ100を超える小型、中型ネウロイが、迎撃に上がってきていた。

 

 「大型は、いない」

 「まあ、鈍亀よりは厄介ではあるけどね」

 「あの、新型もいるみたいですよ」

 「……准尉達はキャンベラの護衛をよろしく、新型でもなんとかなるよ、多分」

 

 見慣れた菱形のネウロイの他にミサイルのようにとんがった新型の中型ネウロイが、混じっている。とはいえ、こちらもそれなりに戦力を整えてきた訳で、ここで簡単にやられるつもりも、まして、一匹も逃がす気はいまの私にはない。久々の狩りに、使い魔はやる気にあふれ、私も溜まった鬱憤を晴らすために、最初っから飛ばしていくことにした。

 

~ボルネオ島駐留部隊第2前線司令部~

 

「各地にて我が軍は優勢、北部への上陸部隊は航空支援を受けつつ沿岸部を確保しつつあり、また、第56大隊がポイントDを確保、更にバルジ島へ上陸した部隊が、島の6割を制圧、続々と各地で優勢の報告がきています」

 

「よし、想定より、ネウロイの戦力は少ないようだ。このまま行けば、バラバク海峡の確保ができる。更に戦力を投入だ、ここで一気に行くぞ、予備大隊に連絡をつなげ「急報!!」何だ」

 

司令部に突然の急報が届く

 

「ネウロイ、ネウロイの、ネ、ネウロイの……超大型ネウロイが出現!、そ、それで」

「それで、何だ」

「く、空母、出雲が、大破。扶桑艦隊は壊滅状態です!」

 

それは、誰しもが全くの想定外の、いや、この作戦の根底が、壊れ、戦況の変化が起きてしまうほどの、いや、そもそもが、うまく行き過ぎていたことの、答えでもあった。

 

「なっ!?中佐、奥地に進んでいた部隊が、待ち伏せに合い救援要請が出ています」

 

まるで計ったかのように、ネウロイの伏兵が、突出し守りが薄くなった部隊に襲いかかる、更に、この前線司令部にも、激しいビームが降り注ぐ。

 

“何ごとだ!なぜ、こ―――“ ”敵襲だ、ネ、ネウロイの奴らまっすぐここに“

 

前線司令部は、瞬く間にネウロイに、蹂躙されていく。勇敢な兵士達が、塹壕やトーチカ、対戦車砲陣地によって抵抗をするも、圧倒的な火力によって塹壕ごと吹き飛ばされ、トーチカは、質量を活かした突撃によってコンクリートごと生き埋めに、対戦車砲陣地は長距離からの砲撃で粉砕され、彼らの抵抗はむなしく、蹂躙劇が続いていく。

 

「こちら、だいよん、ぜんせん、司令ブッ、ゴハッ、ネウロ、いの…げき…きゅう、えん」

 

無線機に力を振り絞り、救援を呼ぼうとする、士官、しかし、ネウロイに見つかり、無残にも鮮血を散らすこととなった。

 

~東南アジア方面連合軍 作戦司令部~

 

 慌ただしく、士官が走り、無線が飛び交い、混沌が広がっていた。そのような中で、一人の将官は、ただ冷静に、静かに、戦況を見極めていた。

 

「(ふむ、さすがに一筋縄にはいかないか、攻勢に出た部隊のもっとも兵士の質の層が薄いところを突いている、それに、前線の指揮系統を見事に、狙った攻撃で、一部部隊が孤立してしまった。だが、それも想定のうち、もともと、現地の人々で編成された各駐留部隊をかき集めて、新たに作った急ごしらえの方面軍だ。士気は高くても、部隊間の連携はバラバラ

そもそも、地形が最悪だ。密林と山岳部が部隊の連携を更に難しくしている上に、小さな洞窟や狭い道がひしめき、待ち伏せ、奇襲の格好の場所が広がっている。もともと攻略できる物ではないのはわかっていたことだ)」

 

広大な地図に置かれた小さな、大隊クラスを表す駒が、いくつか、バツ印に変わる。しかしその印より離れた場所に整った配置をした駒が十倍近く置かれていた。

 

「(だからこそ、出てきてもらう必要があった。わざわざ、不利な地形、条件で戦ってやる必要はない。今回の作戦は、あくまで、インドシナ軍の救援、そして―――

 

~パラワン島北部連合軍基地 司令官室~

 

「―――“扶桑海軍の権威の失墜”か、まさか、内部の政争のために、4万の兵士を地獄へと送るとは、世も末だな、そう思うだろう、中尉?」

 

中尉と呼ばれた男は、普段着けている真面目なエリートの仮面ではなく、今回の計画の一端に関わり、扶桑の内部の政争による弱体化を望む、ブリタニア政府の犬は悪魔のような笑顔が冷酷なその本性を現していた。

 

「いえいえ、これもまた、世の中を維持するのには、欠かせない物ですから、それに彼らの死が“我々人類”の未来の礎になるのですよ」

 

悪魔は願いを叶えるのだろう、この悪魔は人類が願いを、かなえるために、必要なことをしているだけ、それが例え、何千、何百万の屍の塔を築きあげたとしても

 

「その犠牲に貴官は家族が含まれていたとしてもか?」

 

ルティはこの男を調べる過程で知った経歴にあったもの、自身の家族を一族を国の為に犠牲にしたというものを。

 

「はっはは、何をいうかと思いきや......あなたもそうでしょう。“実の娘”を捨てておいて、その上、拾ったくせに今度は死地に送り込んで、いやー、私ならこんな、母親はごめんですよ、ルティ・ラウフェイ大佐」

 

男は、机に置かれた角砂糖を、自身の紅茶に、ドバドバといれ、ゴリゴリと音を立てながらかき混ぜる。

 

「フッ、実の娘か、ああそうだ」

 

後悔と憎しみが入り交じった言葉が、感情が

 

「あの忌まわしい奴との間に、出来てしまった、憎くて仕方が無い、

 

―――私にとって最悪の呪いだよ」

 

司令官室の開かれた窓から一瞬の風に、ルティ・ラウフェイ大佐の、憎しみと怨嗟の瞳が僅かに露わになった、そこに“実の娘”対しての、彼女の歪んでしまった、感情があった。

 

 

 

~リオ少尉~

 

赤いビームが無数に飛び交う中で、私の心は冷めていた。いつ訪れるか、分からない死に、対して、いまの私は、何も感じずにいる。上体少しひねり、射線に入る中型ネウロイを、無数の弾丸で“壊していく”、それが一瞬の間に起こり、また次に向けて動き出す。

 

正面から、迫る三機の小型ネウロイの移動先を、予測して、誤差無く弾丸をばら撒く、ネウロイもまた、回避機動をとり、数発は避けて見せる。しかし避けた先へ別の方向から弾丸が降り注ぎ、3機のネウロイは、瞬く間消滅する。

 

それをやった張本人は、複数の小型ネウロイを引き連れて、次々と処理していく。

 

「シア、あと何機いる」

「ん、20機」

 

正確な数を把握している、シアの言葉道理、ネウロイはまだまだいた。

複数のネウロイをまた葬り、激しく鋭く一度でも視界に入ったネウロイを残りの弾丸を使い切るまで、撃つ。

 

12.7mmの弾丸が尽きたため、鈍器として振り回した、重機関銃を、中型ネウロイに叩きつけ、無駄なく使い切り、背中の25mm対物ライフルをシアの援護を受けながら、装備する。既に小型ネウロイはシアによってほとんど刈られてしまい、残ってはいなかった。

 

残る中型ネウロイをAIM9Bで楽に落とせず、結局は一匹ちまちまと消滅させていく。シアが誘導し、私が撃つ。

 

既に空域に残っているのは、数機のF8Dクルセイダーと、エラ准尉やエヴィ准尉、そして、運良く生き残ったキャンベラ隊のみ、戦況は、終局に近く、ネウロイを掃討後に、生き残った扶桑の部隊の勧めで一旦扶桑の空母で、補給を受ける話になる。キャンベラ隊はさすがに難しく先に基地へと帰投することになったが、私たちは補給を受けることにした。

 

生き残った人たちは、ほとんどがベテランらしく、道中親しくなった。

 

「ほんとうに凄かったです、リオ少尉とシア少尉の連携は凄すぎですううぅぅぅうう」

 「うぐっ、エラ、くるしい」

 「はあ、はあ、こんなに可愛いのに、無数のネウロイに追いかけられても勇敢に立ち向かうシア少尉わああ、最高ですっ」

 

器用にシアをホールドしたエラ准尉は、ネウロイ相手にも見せなかったほどの姿をシアにさせるとてつもなく凄いことを空中で行なっている。

 

 「エラ、抱きつくのはほどほどにしときなよ、シア少尉に、いやシア少尉が、限界みたいだからさ」

 「あっ私としたことが、つい夢中になってしまいました、ごめんないシア少尉」

 「ん、だいじょうぶ」

 

普段の姿を取り繕ってはいるが、結構ギリギリだったようだ。

 

 「そろそろ見えてくる頃じゃないかな」

 「おお、空母かあ、こっち来るときに乗って以来だから楽しみだなあ」

 

そうこうしているうちに、雲を抜けだし、ついに空母が視界にはいる。黒煙を吹き船体が傾き、いつ沈んでもおかしくない、大破した空母のが、そして、空母に攻撃を加える遙かに大きな超大型ネウロイが、眼前の視界に現われた。

 

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