グングニルと呼ばれたウィッチ   作:夜かな

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第一章 ミンダナオ島血戦
第17話 ミンダナオ島血戦 前編


 

 

 年が変わっても私の日常は、あまり変化はしない。いつもの大きな木の下で、本をめくりながら、平穏な時間を過ごす。特に何かあるわけではないこの時間はゆったりできる。

 先月までは、ネウロイとの戦況が大きく動く日々ばかりであったが、ここしばらくはおちついている。変わったことと言えば、新入りのウィッチが入ってきたことだろう。

 確か名前は、アマリス・アスター、階級は曹長でこの基地最年少になる少女だ。赤茶色の綺麗な長髪で年齢相応の元気な子である。

 

 アウストラリス空軍の新米ウィッチらしい、しかし基本的な訓練も殆ど受けておらず、基地に着た時点で飛行時間、僅か6時間とペーパードライバーどころか、チュートリアルを受けている途中の段階である。

 

 なので、呉田大尉の教導のもと、扶桑のウィッチたちと訓練中でいまは走り込みの最中のようである。ウィッチたるもの日頃の訓練鍛錬は疎かにはできない。私も一日に数回は滑走路を往復している。

 

「なんだ、リオ少尉暇そうだな、どうだろう先日の罰の続きに走ってきたらどうだ」

 

 走る彼女らを尻目に、読書に戻ろうとした私に基地司令が話しかけてきた。どうも先日の酒入り紅茶を飲ませたことを未だに許してくれないらしい。しかし罰として滑走路走り込みを果たしたのだ。その言葉に乗る気はなく、途中読みかけの本を読むことに意識を向ける。

 

「ほう、無視かリオ少尉、なら「いえいえ、基地司令殿、威勢の良い彼女たちに目が釘付けになっておりまして、そうです、ところで用事か何かでしょうか、ご多忙の基地司令殿がここに来るのはそうそうありませんから」

「……ふん、まあいいか、リオ少尉先日の件含めて言いたいことがあるが、それとは別件だ、ブリーフィングルームに必ず参加しろ、今回はウィッチ隊全員に指示がある」

 

 いつもなら、雷が落ちるものいいをしたが、普段呼びつけることがない事前ブリーフィング、ミーティングに直接呼びにくるのも珍しく、何か厄介なことでもあるように感じた。

 

 結局、平穏な時間はまたも終わりえお告げてしまった。

 

 

 

 そのあと、シアと合流した私は普段参加することがないブリーフィングに参加する。そしてその内容は…

 

 「ふむ、それはつまり、フィリピン陥落の危機ということか」

 「ああそうだ、呉田大尉。もう一度言うが、フィリピン駐留部隊は壊滅、ミンダナオ島を制圧、拠点としたネウロイの度重なる空爆により、既に上陸から守ることが難しい状況だ」

 

 フィリピンの防衛、周辺の支援を担っていた駐留部隊が連日の空襲で壊滅、ミンダナオ島をネウロイに完全に制圧され、そこから空爆がおこなわれて、いつ上陸されてもおかしくなく、そのうえ守ることも難しいという。はっきりいって危機的状況である。

 

「あの、じゃあ私たちはフィリピンからの撤退を支援するということでしょうか」

 

 歓迎お風呂会で、すっかり忘れ去られてしまい一時へこんでいたが、何とか立ち直った二千花軍曹が、今回のブリーフィングの内容について聞く。

 

「いいや、違うその逆だ、今回我々は、ミンダナオ島にあると思われるネウロイの拠点の偵察任務をおこなう。この任務は危機的状況を鑑みて、極東方面連合軍司令部より発せられた作戦に基づきおこなわれる」

 

 ここ一帯に、新しく新設されたばかりの本来の上級司令部であった東南アジア方面連合軍司令部は、フィリピンへの司令部再配置の途中であったが、今回の空爆によって多数の将校が戦死、機能不全に陥り、一時的に極東方面連合軍司令部が上級司令部となっている。

 そして今回の作戦は、極東方面連合軍司令部が主導していた。

 

 

「……今回の作戦は、急遽組まれたものだ。戦力も我々ウィッチ隊と戦艦アーカンソー、及び重巡洋艦二隻、その護衛のみでおこなわれる。この任務は作戦の第一段階だ」

 

 八人のウィッチと戦艦と重巡二隻他護衛、撤退ではなく偵察 この戦力だけで一体どんな作戦をしようというのか。

 

 ちなみに作戦内容はあまりに馬鹿らしいぐらいシンプルなもので、とにかく出撃と相成った。

 

 

~極東方面連合軍司令部~

 

 高級絨毯が敷かれた会議室でこれまた豪華な椅子に腰掛け、二人の人物が話し合いをしていた。

 

「タカシマ将軍、今回の作戦些か、無謀すぎるのではないかね、ウィッチがいくら居たところで、巨大なネウロイの要塞を落とすのは不可能だろう、ましてや、中枢を見つける前に全滅するのがオチだ」

 

 ボイルオ・バガンダス将軍、ウィッチに対して懐疑的な派閥に属するリベリオンの将軍。リベリオン現政権の反対派であり、軍需特需で成り上がった軍政出身、とある特殊兵器の開発推進者。

 

「ええ、だからこそ、ボイルオ将軍のお力添えを得て戦艦を作戦に加えたのですよ」

 

 高島義元少将、極東方面連合軍司令部の作戦参謀長、今回の作戦を立案した人物。本来の作戦ではウィッチ隊だけでおこなう作戦を立てていた。しかしウィッチ懐疑派閥の妨害と介入に合い仕方なく、ボイルオ将軍らの意見を取り入れた。

 

「ふん、ウィッチに頼らんでも、ネウロイの拠点を見つけるのは簡単にできる。あの特殊なものを使えばネウロイの拠点は丸裸にできるのだ。何故つかわない」

 

 高島少将は、拳をばれない程度に強く握り押さえる。

 

「いえ、確かにあの特殊なものを使えば、発見はたやすくなります、しかし次の大規模な作戦までネウロイに知られるわけにはまいりません」

 

 ボイルオ将軍は、あざ笑うかのような顔をして言う。

 

「ハッ、ネウロイの連中に理解できる訳は無いだろう。まあいい、私は食後のデザートは最後まで待つことぐらいはできる。楽しみは取っておくとするよ、まあせいぜい作戦が成功するよう祈っているよ」

 

 そういうと、ボイルオ将軍は座っていた椅子をそのままに、会議室を出て行った。

扉が完全に閉まり、離れる足音が聞こえなくなると、どっと息を吐き、同時に愚痴る。

 

「何が待つことができるだよ、それぐらい扶桑の子供でも出来ることだよ。まったくもって不愉快の塊だ、とんだ無能が……まあいい、この作戦は必ず成功する。あのスレイプルの血を引く彼女がいるんだ成功しないことはない……そうだろうシア」

 

男の顔はその時、狂気に取り憑かれた悪魔の微笑みを浮かべた。

 

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