グングニルと呼ばれたウィッチ   作:夜かな

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第19話 ミンダナオ島血戦 中編

 

 

 ハノイの市街は大都市としては、とても寂れている。活気の溢れていた交通の要である道路にはいくつかの軍用車両が行き交うだけだった。そんな寂れた道にて、警備をしていた兵士が愚痴る。

 

 「こんな街、守る価値があるものかねえ」

 「さあ、まあ上にも何か考えがあるんだろ」

 

 曇天の空の下に、立って警備につく彼らにやる気はなかった。それも仕方のないことで、ネウロイの勢力圏にて突出しているハノイを維持する戦略的意味は薄れていた。特に一時とはいえ、補給路が切断されたため、孤立した結果それは躊躇であった。

 特に彼らが警備する道は、ハノイ駐留部隊の補給を担う要衝、そのため本来重要な役目を任されているにも関わらず、彼らのやる気のなさ、いえ士気の低さはちょっとした攻撃にも簡単に崩れてしまう。そんな状態だった。

 

 この状況を勿論将校達は知らない訳では無い。しかし将校たちの中にもこの状況に不満を抱く者達も多く、尚更に解決できることではなかった。

 

 しかしどうにかしようと行動する者達もいた。インドシナ連邦軍第21師団、師団長ルン・ドウ少将。彼女はハノイ駐留部隊の中で数少ないウィッチ出身の指揮官であり、唯一の陸戦ウィッチ隊を指揮下に持つインドシナ連邦軍の精鋭を率いる指揮官でもある。とはいえ、齢24の彼女は他の指揮官たちからすれば、権力で成り上がっただけの若い将校にしかみえず煙たがられている。

 

 それはさておき、彼女はこの状況を打開するために、何かしらの行動を起こすため各方面に問い合わせていた。

 

 彼女は兵の士気の低さから、ハノイを次のネウロイからの攻勢に耐えることはできないと、そのため一時ハノイを放棄し、インドシナ東部の人類が維持している大都市サイゴンまで撤退しそこに要塞や飛行場を設置、近隣の港からの補給を受けることで、兵の士気を回復させ、装備や航空戦力を整えたうえでハイフォンのネウロイの巣へ総攻撃を掛ける、という案を各方面に打診していた。

 

 しかし彼女の若さが、それを難しくしていて、同意する人もいるが、古参の将校達の支持を得ることができなかった。

 根回しや工作を彼女は苦手だったことが、さらに拍車をかけていた。

 

 ところがそんな状況がかわる転機が訪れる。新たに新設された東南アジア方面連合軍司令部の将校の多数がフィリピンに、移動中に戦死したのである。しかものその大半が彼女の提案に反対していた将校達で、生き残った将校達が“偶々”彼女の案に賛成していた人でたちである。

 

 これによって、リオ達が極東方面連合軍の作戦に参加している間に、裏では密かに決戦の舞台が徐々に作られつつあった。ちなみにこれらは特に邪魔が入ることはなく、表で狂信的な男が暴れていたことで着々と進んでいた。

 

~リオ少尉~

 

 私たちは、ティヌイアン滝と呼ばれるミンダナオ島東部に位置する落差約55m、幅95mのフィリピン最大の滝がある場所で分かれた各班と合流し情報交換をおこなった。

 

 「私達が接敵したのはデルタ翼の形をした小型ネウロイが数機、降下上昇と速度に爆装できるだけの、小型としてはでかい大きさからCASもしくは攻撃機のようなネウロイと考えてる。だからミンダナオ島中央には、拠点がないと思う」

 

 「そうですね、私たちも同じ型の小型ネウロイと接敵しましたので西部にもネウロイの拠点はないと思います」

 

 私とエラ准尉の会話に分からない点があったのか、アマリス曹長が質問を投げかけてくる。

 

 「あの、何故その小型ネウロイがいると、拠点がないと分かるのでしょうか。普通ネウロイがいるのに、拠点がないとは思えないのですが」

 

 この質問に対して、呉田大尉が答える。

 

 「ああ、小型ネウロイのほとんどは、ある程度行動範囲が決まっていることが、わかっていてな、戦闘機型の小型ネウロイはそれなりの範囲を活動域としてはいるが、殆どの場合、大型の護衛か、拠点の周辺100km圏内しか現われることはない。逆にデルタ翼、三角形の小型ネウロイは、爆装が可能な型と考えられる、そういったネウロイは奇襲を目的とした空爆を行なうために、拠点としている場所もしくは母艦から、500km以上離れて単機で飛ぶことが多い。もしくは偵察や哨戒を兼ねているとされる、だからもしこの島にネウロイの拠点があるとすれば、彼らの活動域より離れていると考えられる、というわけだ」

 

 「な、なるほど?」

 

 アマリス曹長はあまり分からなかったらしい、わかりやすくいえば爆装できる小型のネウロイは拠点から離れた場所で偵察しているから、その周辺には拠点はないとある程度わかるということである。勿論逆もしかり、今回の場合は複数の地点で接敵したことと、大規模な拠点、もしくは母艦であることは、フィリピン駐留部隊が壊滅したことからわかる。

 

 だから、わざわざ単機で偵察や迎撃をさせるより大規模な数で迎撃してくるだろう。

 そのため接敵した地点にはネウロイの拠点がないと判断したのだ。

 

 しかし既に私たちが偵察をしていることは、ばれているかもしれない。勿論あっちから大規模な部隊を派遣してくることを見込んで大胆な行動をしたというのもある。

 

 そのため二日目の偵察では班分けせず、残った偵察していない南部、そして大都市ダバオに向かうことにした。

 

 




追記:そういえば男性キャラの殆ど一回以上出ているのは二人か三人しかいないね。
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