~リオ少尉~
呉田大尉達が動き出した。あれを多分だがノースカロライナ級ネウロイに投げ込むためだろう。シアに目線だけで合図を送る。
(そろそろ、決める)
(ん、わかった)
シアからL7汎用機関銃を受け取り、とにかくばら撒くことで砲台の再生を阻止することに努める。
ノースカロライナ級ネウロイはそれがうっとうしいのか、金属音のような鳴き声を周囲に響かせた。それに答えるように霧のドーム状の中に次々と大型、中型、小型ネウロイが数体侵入してくる。その中には輸送型ネウロイも含まれていて、ネウロイ側にとってノースカロライナ級ネウロイが重要なことを思わせた。
「ああもう、大尉はほんと何処かに大事なネジが外れているんじゃないですかね」
「肯定、無茶振りの宝物庫です」
日和軍曹と二千花軍曹は呉田大尉の愚痴を言いながら、輸送型ネウロイを鎧袖一触で撃破し二千花軍曹が削り日和軍曹がトドメに大型、中型を25mm対物ライフルで次々とコアを見つけては三発できっちりと仕留めていく。
寄せ集め程度の戦力では、あの二人を突破することは難しいと思わせる活躍振りだった。恐らく色々と心労が溜まっていたのだろう。
そして十分な時間を稼ぎノースカロライナ級ネウロイの直上に呉田大尉とアマリス曹長が加速しながら接近する。
「ひゃああ、呉田大尉、ほんとにこんな角度で突っ込むんですか」
「ああそうだ、アマリス曹長しっかりついてこい」
凄まじい速さで二人はノースカロライナ級ネウロイに接近していた。
そして距離が僅か1200ftまで接近した瞬間。
「アマリス曹長、今だ! 投げろ」
呉田大尉が一気に上昇アマリス曹長は合図と同時に直方体の箱を投げ、自身も続くように上昇する。
箱は空中で落下中に分解、中からは空気抵抗考えられた流線型をした直径10インチ、全長87インチ、重量500ポンド(227kg)のMk82通常爆弾が露わになる。
リベリオン製のMk82はウィッチ用の物と航空機用の物と2種類が存在する。今回アマリス曹長が持たされていたのは航空機用の通常爆弾だが密かにシア少尉とリオ少尉、爆弾を手配した呉田大尉三人の魔法力を限界まで込められていた。
まあ、つまるところ破壊力はちょっとした戦艦なら撃沈できる程に強化されているヤバい爆弾である。
「って呉田大尉!? あれ爆弾だったんですか」
「うむ、その何だ、すまなかった」
アマリス曹長は自分が運んでいた物に驚き、そしてその破壊力に涙することになる。
Mk82は一切の迎撃を受ける事なく、ノースカロライナ級ネウロイの本来なら煙突がある部分を突き破って降下して加速し加わった勢いで中心部まで見事に進む。そしてノースカロライナ級ネウロイが悲鳴に近い叫びを響かせた瞬間、大きな破壊の渦を生み出し、船体中心部をその破壊の渦は呑み込んでいった。
「……思ったより破壊力がデカいね」
「ん、想定外、込めすぎたかも」
想定を上回る破壊力は、とどまるところを知らなかったらしい。生まれる爆風はドーム状の空間を壊す勢いで広がっていく。
「ええと、とにかく離脱します!エヴィ」
「うん、そうしようというか、巻き込まれる」
「ああもう大尉は何考えてるんですか」
「同意見、あれはMk82だけど多分炸薬が普通より多く入ってた可能性大」
「ふむ、思ったよりも……そういえばネウロイの巣を破壊するために特殊な炸薬を入れた物があると聞いていたが、適当に余っている物を銀蠅したがどうやら当たりを引いたらしいな」
「呉田大尉って時々凄いことしますね」
全員は爆風から逃れるようにドーム状の空間を離脱、同時にドーム状の空間は展開していた主を失い崩壊した。
「ん、死ぬかと思った」
「ほんとう、ギリギリだったね、でもきたねえ花火だぜってね」
私とシアは一仕事終えたと言った感じで巨大な爆心地を眺める。そして後ろではこの現状を生み出した元凶をどうしてやろうかと見つめる苦労人の4人。そしてその後ろではあまりの破壊力にビビって泣いたアマリス曹長を慰める呉田大尉と全員は一応無事に離脱できた。
「まあ、これで任務達成したし、帰ろっかシア」
「ん……なにか、忘れてる、気がする」
「えっと、確かこの港には戦艦以外にも巡洋艦がいましたよね」
「でもさすがに巡洋艦クラスなら気づけるだろうし、鉄くずとして食われたんじゃないか」
シアの一言でちょっとして疑念が浮かぶ。
「まあ、さすがに水中に潜っている、ということもないだろう、気にしすぎだろう」
「えっと、あの…」
呉田大尉の言葉がきっかけになった訳では無いが、アマリス曹長がダバオ港を眺めていて何かに気づいたのか、ある地点を指さす。
その場所に視線を全員で見ると、水中からぷくぷくと泡立ち、それがだんだんと大きくなっていく。この時の私の脳裏にフラグという三文字が浮かび上がった。
ダバオ港の地面を裂くように底から巡洋艦を二つ繋げたような何かが徐々に水上に上ってくる。二つの塔が海水を滝のように上から下に流して現われ、二つの船体をくっ付けた胴体とその上に乗る大型の砲台達、そしてハニカム模様をした模様がそれをネウロイだと証明した。
「「「………」」」
「ん、お代わり、頼んでない」
「あはは、でっかいネウロイさん、ですね」
「「「「oh」」」
最終ラウンドを告げる鐘の音が、ネウロイの忌々しい叫びによって鳴り響く。
「まあ、やるしかないよね、シア行くよ」
「ん、当然、倒してリオとデートする」
「ブファ!?なんで今それをいうの……いいけど」
「ついでにキスも、する」
……私は恥ずかしいことを堂々宣言するシアに顔が真っ赤になってしまい、それを隠すのに必死だ。
「……大胆ですねシア少尉は」
「だね、聞いてる方が恥ずかしくなるよ」
茶化すようにエラ准尉とエヴィ准尉の二人が言う。
「うむ、青春だな」
「いつか私も……」
呉田大尉は大人目線で眺め、アマリス曹長は新たな扉を開きつつあった。
終わらなかったよ、次回で多分、今度こそ、終わるはず。