~戦艦アーカンソー~
ダバオ港に突入した戦艦アーカンソーとその艦隊は双胴型ネウロイと激しい砲撃戦を繰り返していた。
「もっと早く次の弾を装填しろ! 奴さんはまだまだ元気だぞ」
「サー、しかしこれ効いているのですか、10発は撃ち込んだはずですよ」
そういいながら新兵は甲板上のMk75インチ速射砲に同じ新兵達と共に装填作業を完了する。それを確認した古参の砲手は、双胴型ネウロイに正確に照準して放つ。
「まあ、牽制にはなるだろう、本命は主砲塔の連中だ。アイツらが上手く奴さんのウィークポイントを突けばな」
それを聞いていたもう一人の古参が笑いながら言う。
「そりゃあ無理ってもんだろうさ、なんせジョーンの奴あの年して一回も彼女の一人も居ねえんだぜ。双胴の美人のウィークポイントなんか突けるかよ」
「そりゃそうだ、HAHAHA!! おい新米手が止まっているぞ、弾もってこい」
「サ、サーイエッサー」
新兵は慌てて装填を再開しようとするが砲弾が見当たらない。すぐさま砲弾を運ぶ班から受け取ろうとした時だった。
一瞬の大きな衝撃が船体を揺らし、新兵もその衝撃でバランスを崩し、尻から床に着く情けない態勢になってしまう。
「う、いったいなにが……え」
新兵が振り返った衝撃の元は船体中央部から上がる黒煙から一目で分かった。双胴型ネウロイの放ったビームの直撃を受けたのだ。
アーカンソーの艦橋では被害状況の確認が行なわれていた。
「それで被害は」
「はっ左舷中央部の副砲が消滅、第3主砲旋回機故障旋回不能、第4主砲砲身大破、更に船体中央部より亀裂による浸水、また二番煙突付近で火災炎上中です」
たった一撃のビームを食らっただけで大きな被害を被ったことに動揺を隠せない艦橋要員達。そんな中、艦隊司令が振り向かずに艦長に話しかける。
「艦長、この船は駄目かね」
「……いいえ、戦艦はこの程度で沈むほど柔な乗り物ではありません。なんなら乗組員かき集めて第3主砲を旋回させて撃つことも可能ですが」
「そうか、艦長ウィッチ達の要請どおり本艦の全火力を奴の中央に集中だ、この程度では沈まないのだろう」
艦長はかっこつけて言った自身の発言に若干後悔しつつも、艦の全火力を双胴型ネウロイの中央に向けさせる。そして同時にこれ以上直撃しないことを密かに存在するかわからない神に祈った。
~リオ少尉~
戦艦アーカンソーが双胴型ネウロイと激しいが砲撃戦を繰り返している間に私たちは手持ちの弾薬を共有し合う。残り一戦分を戦うことは可能になった。
「結構ギリギリですね」
「肯定、でも十分と考える」
「あのう、少なすぎでは……」
「まあ、現状を考えれば十分かもね……シア少尉コアの位置は」
L7の7.62mm弾の薬莢をいじりながらシアは双胴型ネウロイの中心部を眺める。シアの灰色の瞳が魔法力に一瞬包まれる。
「ん、装甲、配置、多分中心部の艦橋部の下にある」
「まあお約束って感じだね、分かりやすくて助かる」
「うむ、既に戦艦の方には伝えた、後はタイミングを合わせ仕掛けるだけだな」
戦艦アーカンソーは双胴型ネウロイと同航戦になるように動きつつあった。
~戦艦アーカンソー~
戦艦アーカンソーの艦橋内部ではビームの至近弾によって発生した波によって幾度も揺れに襲われていた。
「ぐっ……被害状況は」
「左舷水密隔壁に亀裂! 浸水なお拡大中、本艦傾斜角30度」
戦艦アーカンソーは竣工から半世紀経ちつつある歴戦艦であった。近代化改装によって対ネウロイ装甲を施されてはいたが、船体の老朽化はどうしようもなく、強力なビームの至近弾によって破口や亀裂が次々と生じてしまっていた。
「ダメコンはもう少し保たせよ! 何としても奴に一撃を与えるぞ」
「戦艦アーカンソーを除く艦隊は双胴型ネウロイの攻撃を引き寄せて援護、時間を稼ぐのだ」
戦艦アーカンソーに続き重巡や護衛の駆逐艦が持てる火力で双胴型ネウロイに攻撃を仕掛ける。しかし双胴型ネウロイの一部がひっくり返る。そして小型のビームパネルが無数に展開、豪雨の如く放たれたビームが重巡や駆逐艦に降り注ぐ。
「なっ!フォレスト、フィッチ轟沈、クイックが戦列より離脱します」
「まるで散弾銃のようだ。駆逐艦が一瞬で穴だらけに」
先頭にいた駆逐艦三隻の内二隻が船体に無数のビームの直撃を食らい轟沈、何とか耐えることができた駆逐艦は炎上しつつ離脱していった。
「艦長! いつでも撃てます」
「よし! 全砲門撃て」
僅かな時間ではあったが、戦艦アーカンソーの全門が双胴型ネウロイを捉える。12インチの砲弾がコアのある中心部にむけて確実に放たれた。
~リオ少尉~
戦艦アーカンソーが斉射し中心部を大きく穿つ。そこに私たちは向かって突撃する。
先頭として呉田大尉に二千花軍曹、日和軍曹が先行して仕掛ける。
「久しぶりにこいつの出番だな」
呉田大尉はそう言うと身につけていた刀を抜く。刀の刀身は魔法力を込められていた。
「刀って、呉田大尉ってやっぱり生きる時代間違えてませんか」
「肯定、絶対おかしい」
「おかしくはないぞ、欧州戦記いわく、ネウロイの巣を刀で真っ二つにできるのだ、問題ない」
「「さすがに、それはない」」
呉田大尉は二人の反応に、刀を正面に構えて双胴型ネウロイに突撃する。
「呉田大尉危ないって、ビームを切った!?」
双胴型ネウロイは刀を構えて突っ込んでくる呉田大尉に向かって大型砲台ビームを向け放つ。放たれたビームを呉田大尉は刀で真っ二つにしながらそのまま大型砲台ごと切り裂いた。
「呉田大尉ってほんとヤバい」
「今更、でしょ」
日和軍曹が続くように小型パネルの弾幕をくぐり抜け、懐からパイナップル状の物体を取り出して投げる。
「今、二千花」
「手榴弾持ってたなら、早く使ってよ! もう」
パイナップル状の手榴弾が小型パネルの中心部に達した時、二千花軍曹がL7汎用機関銃を手榴弾にむけて正確に撃ち込み、爆発させる。甲板の小型パネルを多数巻き込み破壊する。
「扶桑のウィッチって大概おかしい気がします」
「ぼくもそう思う。アマリス曹長ついてきてね」
「はい! 私も頑張ります」
エラエヴィ准尉の二人とアマリス曹長の三人は12インチの砲弾が直撃し再生の途上にある中心部を削り追撃していく。
「さすがにコア露出は無理か、エラ」
「一発しかないけど、それでも痛いですよ」
エラ准尉が懐から大口径リボルバーを取り出し固有魔法を込めた弾丸を構え放つ。放たれた弾丸は再生途上の中心部を更に削りとる。
しかしノースカロライナ級ネウロイとの戦闘でエラ准尉の魔法力は消耗しており、固有魔法を込めた弾丸もわずか一発しかなかったためコアの露出までには至らない。
「そんな、あと一撃なのに」
「まだです! 私だって」
アマリス曹長が拳を作り、追撃を掛けるように魔法力を込めた一撃を叩きつけた。それは確実に赤く光るコアを露出させた。
「……ん、Bカップ」
「将来性に期待だね」
「ああもう、この二人は……」
残念ながらアマリス曹長はまだまだ発達途上にあるらしい、とはいえ新米ウィッチである。彼女は将来性に期待できる。
「さてと、いい加減休みたいんだよね」
「ん、終わらせる」
私とシアはアマリス曹長が露出させたコアに向けて接近、しようとしたときだった。
「……ッ危ない! リオ」
私をシアが突き飛ばた瞬間、先ほどまでいた所を鮮紅のビームが通り過ぎる。その後に続くように前後対称の菱形主翼とV字の形をした尾翼をもつジェット戦闘機のような見たことのないネウロイがマッハ1を超える速さで通り過ぎた。
「なっ、新型ネウロイ、それに速い」
「呉田大尉、新手です! 数は4機」
「まずい、全員ブレイク、ブレイク」
新たに現われた新型ネウロイは圧倒的な速度と機動性で私たちに襲いかかる。
「クルセイダーでも追いつけられないってやばいかも」
「否定、やばいどころか、ピンチ」
新型ネウロイの一機を日和軍曹と二千花軍曹が背後から追いかけるが、新型ネウロイがさらに加速することで突き放される。そして意識が前に向いたその隙を突くかのようにもう一機が二人の背後から仕掛け、二人は回避に専念せざる終えなくなる。
「アマリス曹長こっちだ、各員は2機編隊を組んで迎撃、双胴型は……とにかく今は新型ネウロイとの空戦に集中だ、クソ、クルビットからのヘッドオンだと、なかなかやりおる」
呉田大尉は連携を取って動く新型ネウロイに対して一対二を避けるため編隊を組ませる。同時に新米ウィッチであるアマリス曹長をカバーしながら新型ネウロイの一機と交戦する。
新型ネウロイの背後を取った呉田大尉に対して新型ネウロイは機首を180度に回転させ正面からヘッドオンを挑み交差した。
私とシアは双胴型ネウロイへの接近を諦めるしかなく、新型ネウロイと空中戦を行なうしかなかった。
新型ネウロイのモデルはYF23。第二世代に第四世代ぶつけるのはやり過ぎたかもしれない。
一応反省はしている。