私たちの双胴型に対する攻撃は、突然現れた新型ネウロイによって阻止されてしまった。
「シア、これまずい、完全に意表を突かれた」
「ん、有利な点がない」
新型ネウロイの完全な不意打ちが、空戦において圧倒的な不利の状況を生み出している。そもそも空戦の基本とは常に相手に有利になること、つまり
ところが双胴型ネウロイへの攻撃で空中への警戒が薄れた絶妙なタイミングで奇襲を掛けられた。
消耗し疲弊した私たちに反撃する余裕がないそんな時に。
先ほどまでのネウロイたちとは動きが完全に違う。おそらく新型ネウロイは対ウィッチを想定している。効果的な奇襲によって主導権を握り、編隊を組み複数で連携しながら戦う人類のロッテ戦術のようなもの、各種戦闘機動、これら戦術を新型ネウロイは組み込んでいる。
「......長期戦は、不利だなあ」
「短期、決戦、んッ」
「シア?、どう、したの...え」
シアの様子がおかしいことに気付いた私は、後ろを飛ぶシアに振り返る。曇天の風景に映る赤い血、私の視界に映る吐血するシア、明確に分かる腹部からの出血。
「もしかして、さっきの攻撃で」
「......だい、じょう、ぶ」
「全然大丈夫じゃない!?、ッまずい」
私は動揺のあまり、動きに繊細さを欠く。その隙を新型ネウロイが見逃すはずがなかった。二体の新型ネウロイは直線に飛ぶ私とシアの背後を取り攻撃の態勢に入る。それに気付いた私は、咄嗟にL7を投げ、シアの腕を掴んで回避行動を取ろうとした。
「シア!」
「り、お」
シアを抱え守るように、来る瞬間を待つ。
そして―――――雷雨のような轟音が鳴り響いた
『コーラル1、1kill』
『コーラル2、1kill』
白い破片を撒き散らし、二体の新型ネウロイが消滅する。双発の轟音を靡かせ後退翼からクリップトデルタ翼の変化を感じさせる大型ジェット機が翔ける。
続くように身の桁に合わない大型のジェットストライカー履いたウィッチが現われる。彼女は私とシアに振り返ると、シアを一瞥したのち申し訳ないという顔をする。
「遅くなりました、リベリオン第7艦隊第5空母航空団
カールスラント系のシルバーに近い色味をした髪を持つ彼女は所属と名前を告げると、シアを抱える私とは反対側から支えに入る。
「援軍が何で、確か今回の作戦に参加した航空戦力は私たちだけのはずですが」
「はい、極東方面軍の司令部が立てた作戦ですね、でも数分ほど前に作戦は変更されました。ミンダナオ島への強襲上陸に、です」
「強襲、上陸、ん、第7艦隊、ほんたい?」
シアは何とか意識を保ちながら会話に入る。
「そうです、とにかくあの海上のネウロイは第5空母航空団と三雲より発艦した攻撃隊がどうにかします。すぐ近くまで空母が来ていますので、そこで治療と補給をしましょう。それ以降の第60飛行隊と扶桑のウィッチの皆さんは空母コーラル・シーで待機して貰います」
「うん、シア行こう」
「ん、りお、大丈夫、だよ、しん、ぱい、ない」
「シア......」
マリネの案内で空母コーラル・シーまでシアを運ぶ。シアの傷は深い。けれど空母コーラル・シーまで意識を保ち、何とか危機を抜けることができた。
□■□■□■
~扶桑皇国極東方面連合軍司令部~
「ふむ、思ったより早くリベリオンの大統領選が終わったようですね。貴国の新しい大統領は行動も早いようだ、すぐさまこの戦役に本格的介入を始め、その第一陣として太平洋洋上で待機中だった第7艦隊を派遣してくるとはさすがに想定外です」
「ふん、もともと不確定要素の多い作戦だ、今回は偶々艦隊が近くにいたからこそ、派遣できただけだ。あの者の力ではない」
高級絨毯の会議室で今回の作戦の結果が書かれた書類を読みながら対談する二人の人物。リベリオン派遣将校のボイルオ将軍と極東方面連合軍司令部の作戦参謀の高島少将。
「それに高速化するネウロイ対抗するために生み出された次世代戦闘機のF-4とストライカーが配備された我が国で世界最強を誇る精鋭をわざわざ運河という利権の旨みがある、中東ではなく密林しかない東南アジアに派遣するなど過剰ではないか」
ボイルオ将軍はそう不満の声を漏らしわずかばかりの私怨も含んだ口調で言う。
「まあまあ、比較的損害も旧式艦と消耗品の駆逐艦だけですみましたし良いじゃありませんか、それよりも次を考えましょう」
高島少将はボイルオ将軍を宥めると胡散臭い表情を隠しもせず、次の話題を切り出す。
「どうやら、我々が派手に動いている裏でコツコツと作戦を立てている者が居るようで、管轄も東南アジア方面連合軍主導で動いているようです」
ボイルオ将軍は眉をわずかにあげ、興味を示す。
「ふん、先の空襲で将校も士官も打撃を被った東南アジア方面の連中がかね、ばかばかしい、どんな作戦なのかね、まさか反攻作戦というわけはないだろう」
「ええ、それが将軍のいう反攻作戦も半分ほど間違ってはおりません」
「ふん、愚かな者も居たな、で内容は」
良いように釣れたと胸中でほくそ笑む高島少将は、すっ、と封をされた指令書を渡す。
「なかなかよくできていますよ、ハノイから撤退し防衛線を引き直す、そして十分な補給と航空艦隊支援でハイフォンの巣に攻勢を仕掛ける、まあ素人でも思いつく作戦ではありますが、利にはかなっています。どうせなら我々主導でやりたいものです」
「ふん、だがインドシナ連邦の首都を事実上放棄するようなものだ、到底実行は無理であろう」
「そうでもないようですよ、どうやらインドシナ連邦首脳陣に許可は取り付けているようです、まあ政府中枢は移転が進んでいますから、問題はないようです」
情報を小出しに出す高島少将に苛立ちを持ちながらもボイルオ将軍は話を続ける。
「で、どうするのだ、我々が主導権を握るのは難しいのだろう、タカシマ将軍」
「ええ、ボイルオ将軍の切り札あれを使いましょう。あれを作戦にねじ込むぐらいなら簡単にできます」
「ふむ、私はあまりポーカーが得意ではなくてね、切り札を切ることには慎重なたちなんだ。しかしまあ、タカシマ将軍のことだ、何か策があるのだろう......そうだな、扶桑の新鋭戦艦あれを引っ張ってきたならば承知しよう」
ボイルオ将軍の言葉を聞いて高島少将は胡散臭い目をさらに細めると、了承の返事を返した。
「では、一か月後、作戦の開始前までには手配しておきましょう、大和を越える戦艦を......」
次回はミンダナオ島血戦のエピローグ。平穏な回になると思います。その後はインド戦役の間話か、シアの日常編などを挟んで次章に移ると思います。それにしても気付けば6万字まで書き、話数も30超えて、当初は数ヶ月で完結するだろうと思っていたのですが、気付けば半年以上も経っていました。本当に時間が進むのは早いですね。まあ、スケジュール管理がガバガバ過ぎて投稿頻度が酷いことになったのが原因ですが。
ともあれ、今後とも本作をどうぞよろしくお願いします。