1963年 9月
先月のデリー空襲でレーダー網に大きな穴が開いてしまった。それ以降定期的にミサイル型ネウロイの空襲が繰り返され、インフラ、工場、空港、あらゆる戦略的要所を攻撃される。遂にはウィッチのストライカーユニット格納庫を直撃、オラーシャ製のMig21Fを全て破壊されてしまった。
「はぁ、めんどくさい、何でわざわざ雑用なんかぁ」
「もう、ネフィったら、ネフィが休み欲しいって言うから新型ユニットの受け取りついでに街での休暇を組んでくれたんだよ、文句言うなら運転ぐらい代わってよ」
「やだぁ」
「だったら文句言わないの」
先月のデリー空襲で迎撃に上がった二人は新型ユニットの受け取りついでに休暇を貰い港町ムンバイに来ていた。ちなみにデリーからムンバイまでは1000km以上離れており
エステルは二日間も運転をぶっ通しでしている。
「って、ネフィが新聞を見るなんて珍しいね。気になることでもあったの」
カールスラント製のシュヴィムワーゲンの助手席でブリタニア語の書かれた新聞を読むネフィに珍しいこともあるといった顔をするエステル。
ネフィは相方の態度には気付かずに新聞に書かれた内容に注視する。
「ネフィ? 」
「……この子、Cカップに見えるけどエステルと同じで着痩せするタイプだ」
「……ネフィ?」
「うん?なにえすtごふぁ」
横からのキツい一撃を食らいネフィは気絶させられる。読んでいた新聞が顔を隠すことで道中醜態をさらすことはなかった。
数時間ガタガタと揺れる道すがらネフィは意識を取り戻し、新聞で気になった事をエステルに話す。決して大きな夢の塊にばかり注視していた訳ではなかった。
「むう、西パキスタン州軍にガリアの新型だってさぁ、羨ましぃなぁ」
新聞にはデカデカと西パキスタン州軍にミラジュⅢというデルタ翼をしたストライカーユニットが多数配備され大きな戦果を挙げていると書かれている。
「ネフィ、デリー管区軍だってミグの最新機種が配備されてるでしょ、それに今日はオストマルク製の最新機のS106を受けとるんだし」
「ミグのライセンス機で殆ど同jごふっ」
「ネフィ?」
ネフィは突然の急ブレーキを掛けられたため慣性の勢いでフロントガラスに衝突、おでこを押さえ悶える。エステルはそんなネフィをまるでさもミスしたように申し訳なさそうな表情をして見ていた。
「はは、うんだいじょうぶ、だいじょうぶ」
「よかったあ、ごめんなさい、ちょっと疲れてたのかミスしちゃった」
「う、うん、運転長いもんね、どこかでお昼にしよ、きゅうけいがてら……えすてるこわい」
道中の小さな街に着いた二人は軍の駐留所にシュヴィムワーゲンを預け小さなレストランで昼食を取ることにした。
「いらっしゃい、お嬢ちゃんたち二人かい」
「えぇ、席はできればテーブル席が良いのだけど」
「ああ大丈夫さ、今日は客が殆どいなくてね、好きな席に座っていいよ」
「ほんとだ、お客さん殆どいないね、がらがらだよ」
「こら、ネフィ失礼でしょ」
「はっはっは、いやいや、いいよお嬢さん本当のことだからね」
レストラン内は食事時のお昼であるにも関わらず客がいない。綺麗に埃一つなく拭かれた机には誰も座っていない椅子が並んでいるだけだった。
ネフィとエステルは日差しがほどよく差し込むテーブル席に対面で座った。
「おじさん、おすすめのメニューってなに」
「もうネフィ……」
「はっはっは、構わないよ、そうだね、グジャラート・ターリーがお昼はお勧めかな、今日はプーリーでライスは白米だね」
「ターリーかあ、エステルいいよね」
「ええ、私もそれでいいわ」
「あいよ、すぐ作るから待っていてくれ」
レストランの店主はメニューの注文を受け取るとすぐさま調理に取りかかった。
店主が奥に行くのを見届けた二人はそれぞれ時間を潰す。
「って、ネフィまた新聞を読んでいるの」
「だってさ、今日の新聞気になることたくさんあるんだもん」
車内でも読んでいた新聞をわざわざ持ってきてネフィは読んでいる。今度は何を見ているのか、エステルはまた何を言い出すのか、半目になってネフィを見つめる。
時々唸るように反応するネフィをエステルが見つめる穏やかな時間がしばらく続く。
「扶桑で空襲、内閣総辞職、ダキア・モエシア連合軍第二次ヴェネツィア戦役に派遣、扶桑海軍東南アジアへ艦隊派遣計画、リベリオンで大統領暗殺未遂、スエズブリタニア将校難攻不落宣言、ギリシア王国、北エピロス、トラキア、テッサロニキを要求」
「ブフォ!?」
エステルは先ほどの会話が可愛くなるような内容に先ほどまでの平穏が何だったのか、分からなくなる。世界はいつになく、混沌としていた。