グングニルと呼ばれたウィッチ   作:夜かな

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第1話 パラワン島北部空中戦と紅茶

 

 海は遠くから見るとゆったりとした波が見えるが、しかし実際には人の身では抗う事の難しい荒々しさを持つ。とはいえ観る分には、晴天も相まって光が反射し青く輝く宝石箱のように美しい。そして対になるように空にはふわふわと綿飴のような雲が様々な造形となって浮かび、その光景は有名な画家の絵画のよう、まさに自然の芸術といえる。

 

 この景色には大抵の人にここが戦場だということを忘れさせてしまう。

 とはいえ人ならざるものにとっては関係ない。一体のネウロイが放った一条のビームが芸術的な絵画を切り裂いて戦場へと変えた。

 

 「エラっ後ろ!」

 「わかってる、でも離せないよ」

 

 ジグザクに動く1人のウィッチ。その後方に獲物を追い詰める狼がごとく黒と赤のハニカム模様の菱形のネウロイがピッタリと付き、獲物が疲弊するのを待つようにじっくりと追い詰めていく。

 もう1人のウィッチ、エヴィが助けるために降下して攻撃を仕掛けようとする。しかし上方からもう一機の同型のネウロイが胴体の左右から自身を小さくしたようなミサイルを放つ。放たれたミサイルは、エヴィを目がけて追尾する。

 

 「くっ避けられない」

 「エヴィ⁉」

 

 エヴィは、一か八か、出力を下げて素早く背後へと振り向きL7汎用機関銃で、ミサイルに向けて弾幕をばらまいていく。ミサイルは意思があるのか弾幕を避けようとする。が、弾幕を避けきれなかった一発のミサイルは銃弾の膜に捉えて破壊することに成功する。しかし弾幕をすり抜けたミサイルがエヴィの直前で爆発する。

 

 「……え、エヴィ?」

 

エラは爆風に巻き込まれたエヴィに動揺して、背後にネウロイがいることを忘れて回避機動をやめてしまう。菱形ネウロイはその隙を逃さず確実に仕留めようと後ろにピッタリと付く。赤く光るパネルが一瞬、獲物を狩る喜びに震えているようにエラは感じ、死を―――――――

 

 『やらせないよ』

 

 菱形ネウロイが直線に動いた瞬間、大型ネウロイを簡単に貫く25mmの弾丸が、跡形も残さず貫いていった。

 

 「……っ」

 

 『シア!こっちは、無事だよ。そっちはどう?』

 『ん、無事だよ』

 

 エラは無線を聞いてエヴィが巻き込まれた方へと視線を向ける。

 

 『し、死ぬかと思いました』

 『大丈夫、死んでないから』

 

 爆風があった場所には、少し煤けてはいるが無傷のエヴィと、エラが仲良くしたい憧れの超絶美少女であるウィッチ、シアが抱き合っていた。

 

 「………」

 「?」

 「う、」

 「う?」

 「羨ましいですぅぅ!私もシア少尉を抱きたいぃぃいい」

 

 『『えっ』』

 

 広大な大空という景色の裏側で、外見はおとなしい見た目の1人のウィッチが響かせた本性の裏側が無線を通して基地の全員に知れ渡ったのは言うまでもないだろう。

 

☆☆☆☆

 

「うむ、その後、シアを抱きたいと叫んだ少女は恥ずかしさのあまり大空という舞台の表から逃げ去ることに…」

「あの、そのお書きになられているものは」

「これはね、新米ウィッチの黒歴史ノート」

「………」

 

 格納庫横の大きな木の下に、丸テーブルを囲み、綺麗な皿に置かれたクッキーと紅茶を2人の少女が午後のティータイムをしていた。ちなみに私は手元のノートにあの後の祭りをこと細やかかつ丁寧に書き込んでいた。少しだけ脚色は入れながら。

 

「いや~この前は、いろいろ大変だったね」

「……う」

「人生の危機一髪の直ぐにあれだもん、堂々と宣言してすごいよ、普通は出来ないことだよ、うん」

 

 私は一通り書き終わったノートを閉じると、カップの縁に唇につける。この紅茶はシアが、先ほど入れてくれた物だが、とても美味しい。ただこの一言に尽きる。

 特にこの茶葉は基地司令のお気に入りの高級茶葉、司令官室の保管庫から勝手にくすねた物だが、シアの高度な技術と合わさってほどよい味に仕上がっている。まさに完璧な紅茶である。

 しばらく高級茶葉(基地司令印)で入れた紅茶を堪能したのち、ブリタニア本土から届いたファンタジーものの新作小説を片手にさらに楽しいひとときをしばらく過ごす。

 

 ゆったりとした時間が流れていたが、ブリタニアの可愛らしい軍服というか学生服をきっちりとして着こなしたシアがやってくる。

 

 「リオ、基地司令が呼んでる」

 「はて、シア私、呼ばれるようなことあったけ」

 

 せっかくの憩いの時間を基地司令のために、諦めるのはなかなかに決断するのが難しい。

多少はサボってしまってもティータイムなら仕方がないだろう。問題なし。だから無視してティータイムを楽しんでいたら、雑なノイズ音が響く。

 

 『リオ・ブラウン少尉!直ちに司令室に来るように、もし30分以内に来ない場合、しばらく待機シフトに夜間哨戒任務も加えるぞ』

 「ブフっ!?」

 「リオ、汚い」

 

 席に座って隣で紅茶を飲んでいたシアに紅茶を吹き出したことについて注意されてしまう。が、私の内心はそれどころではなかった。日中は事実上、待機シフト関係なく敵が来たら出撃させられるという常に待機状態みたいなものなのに、これに加えて夜間哨戒任務まで加わったらたまったものではない。私の自由な時間が減ってしまうではないか。

 

 仕方が無く今日のティータイムはこれで終わりにして、後片付けをシアにかわりにやって貰い、全力疾走で急いで向かった。

 

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