グングニルと呼ばれたウィッチ   作:夜かな

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第5話 バラバク海峡攻防戦 後編

 

 

~リオ少尉~

 

 一夜が明けた次の日、私たちは、バラバク島の北にある、ラモス島へ向かうことにした。

 バラバク島にある防空陣地は海峡付近に近くにあり、墜落地点からは向かう場合少し遠い位置にあることが、食材集めの際に分かった。

 そこで、歩きやすい沿岸部を通り、バラバク島とラモス島の間にある島を経由してラモス島の南部駐留部隊ラモス島守備隊の基地へ向かうほうが早く着くと考えた。

 

 道中は異常な霧や大型ネウロイについてシアと気になったことについて意見を交換することにした。

 

「あのときの霧はどう考えても、ネウロイの仕業だと思う。だってこのあたりで視界があそこまで極端に悪くなる霧が起きたことなんて、ないしそれに、大型ネウロイが現われたとき、にあそこまでピンポイントで霧が起きるのは絶対にあり得ない」

「ん、でも、大型ネウロイは弱かった」

「まあ、確かに霧を起こすことに特化しているなら、分かるけど、確かに柔らかかったというか、脆いというか」

「質量と密度薄かった、気がする」

 

 あのとき、大型ネウロイはゆっくりと降下しているようにも感じた。

 

「それに、下部分から、ビームはほとんどこなかった」

「(確かに、そう、あのときのネウロイは胴体下部からの反撃がなくて、コア自体の発見も、単純に上部のビームパネルを破壊するための過程で偶然みつけただけで…)」

「ん、霧は別のネウロイ、大型は輸送機?」

「…シアの言うとおり霧は多分別のネウロイだと思うけど、なんで輸送機って思ったの?」

「もし、先週の空爆が、偵察、なら、もうネウロイは海峡、超えて拠点をもってる、なら本格的に攻める、つもりになる」

 

つまり、ネウロイはすでにスール―海のどこかに拠点を確保していて、本格的に侵攻するための事前偵察をおこなった。あの時の輸送機は侵攻するためのネウロイを運ぶためで、軽くて脆かったのは、既に降ろしたあとだったから。

 

「それってつまり、この島にネウロイが降下していて、なぜか通信が繋がらないのは、ネウロイの妨害電波か中継するはずのバラバク島の防空隊が、すでに全滅していた…から?」

 

 突然の殺気のようなものを感じ、咄嗟にシアと私は、左右に避ける。ビームが先ほどまでいた場所を、通り過ぎた。

 

「ああ、シア大当たりだね、これ」

「ん、最悪な当たり」

 

 私たちの前に現われたのは、四足歩行の三メートルのネウロイ。ビームパネルが前の胴体に一つ、砲塔のようなところに一つ、陸戦ネウロイの密林地帯に適応した新型のネウロイで、インドシナの東部では、軽装備のリベリオンの部隊がこいつの待ち伏せにあい、壊滅まで追い込まれた、インドシナではこいつの機動力に苦戦を強いられている。

 

 私の武器は墜落した時に、海に投棄したので、こいつを仕留めるには、シアのL7汎用機関銃に頼るしかない。

 

 私がシアに視線を向けて合図をだそうとしたとき、ダダダダンッ、という音ともにネウロイはビームパネルを破壊、そして伏せたシアが正確にネウロイへ向けて弾丸の雨をお見舞いし、ネウロイを消滅させた。

 

「リオは、お姫様だね」

「あはは、シア、その立場交代しない?」

「ふふん、やだ」

 

 自身より、可愛い少女に守られることになった瞬間である。

 

~パラワン島北部連合軍臨時基地 通信室~

 

「つまり、ボルネオ島北部並びに、ミンダナオ島、そしてスールー諸島にも、ネウロイによる本格的な侵攻が起きている、ということですか」

 

『そうだ、大佐、極東方面連合軍司令部では、この事態に対して責任のなすりつけ合いで、直ぐには動けそうにない、バラバク島は現有の陸戦戦力で、対応してもらうほか無い』

「ですが沖島中将、すでに一個中隊が消滅し、装備も旧式の戦力だけでは、」

『分かっている、支援のために重巡一隻と駆逐艦二隻を派遣してもらえるよう、リベリオンと交渉している。もっとも近くにいる艦だ、話はつけておくから、艦砲射撃のもと、なんとしてもバラバク島は奪還してほしい』

「…了解しました」

『貴君らの武運を祈るよ、大佐』

 

 基地司令は、艦砲射撃の支援をなんとか取り付けることはできた。

 

「どうでしたか」

「陸戦部隊の増援はないが、艦砲射撃は用意してもらえそうだ…南部駐留部隊につないでくれ」

「了解です、こちらパラワン島北部連合軍臨時基地、南部駐留部隊….」

 

基地司令は、バラバク島奪還にむけて、派遣する部隊と各隊の状況をから今後の展開について考えていた。

 

「はい…えっ!?ウィッチが、大佐!」

「どうした」

「ラモス島を砲撃していたネウロイを、殲滅したそうです!!」

 

「………はっ?」

 

 

 

~ラモス島守備隊~

 

「大尉、陸戦隊の増援が現地に到着し、ネウロイの侵攻は沿岸部でなんとか押しとどめることができました」

「そうか、間に合ったか」

「しかし、以前砲戦型ネウロイからの砲撃が止んでおらず、被害が出続けています」

「やはり、火砲が足りなすぎるか」

「ここは、橋を爆破してこちらへの侵攻を止めるべきでは」

「いや、橋があるから連中の戦力が集中している、もし爆破しても連中の戦力を削らなければ、砲撃で疲弊したところを、空から攻撃されかねん、ここは、戦場を、絞り敵戦力を削りながら砲戦型ネウロイを破壊するチャンス待つ」

 

 橋を爆破してしまえば、ネウロイからの侵攻自体は止められる。しかし砲撃に対してこちらは何も出来ず、一方的に撃たれるだけだ。それに、ネウロイがバラバク島をどうやって落としたのかが分からないうちに、戦闘の流れを止めるわけにはいかなかった。

 

~ラモス島前線~

 

「伍長、あの忌々しい砲戦型ネウロイを仕留めてこい」

「はは、無茶言わないでくださいよ、47mmの直撃を受けてピンピンしてる奴さんに、一歩兵の私が倒せるわけ無いでしょう?」

「……そうか」

「いや、そんな顔されても無理ですぜ、さすがに」

 

 双眼鏡をのぞきながら陸戦隊の隊長と部下がそんな会話をしていると、突然砲戦型ネウロイの一体が消滅する。

 

「おお、言えば出来るもんだな」

「…いや偶々でしょ」

「でも一体…」

「うん?あれは、ウィッチ、か?」

 

 

~リオ少尉~

 

「ひぃふぅみぃ、それなりの数だね、さすがに」

「ん、まあなんとかなる」

「……ふむ、確かに出来なくはないのか、シアなら」

 

 私とシアはさっき遭遇したネウロイを除いて特に、襲われることはなく、ラモス島と繋がる橋がある場所までたどりついていた。しかし、そこはまさに戦闘中の真っ只中で、どうするか、相談していた。

 

「つまり、砲戦型を破壊して、そのまま、ラモス島守備隊が築いた、陣地まで強行突破すると……シアの負担がすごいことになるけど、大丈夫?」

「問題ない、リオはいま、お姫様、よってシアは王子、このまま恋のらんでぶー」

「…うん、まあ、大丈夫みたいだね」

 

どうやら勧めた恋愛小説の中に、戦場を通り抜けて駆け落ちするものが、あったようだ。

もはや、こうなったシアはネウロイの大群の中を余裕で突っ切ってしまうだろう。

 

「レッツ恋のらんでぶー作戦、開始」

「えっ、ちょ、ま」

 

シアは私の右手を引っ張りながら、ネウロイの大群へと突っ込んでいく、その勢いたるや、ネウロイが、一瞬固まってしまうほどである。

 

「じゃま、どいて」

 

無慈悲にも、片手撃ちでL7汎用機関銃が放たれるが、ウィッチの力で反動を無理矢理制御し、正確に放たれた弾幕は的確にネウロイを消滅させていく。

 

時々、ネウロイから放たれるビームをシールドで受け流し、そしてシアが砲戦型ネウロイを仕留めていく、そうやって走り続け、遂に橋にまで至り、橋の途中まで来た、その時だった。突如、空から、ビームが降り注ぎ後方の橋部分から破壊していく。

 

さすがのシアも、ユニットなしで、空中のネウロイを破壊するのは難しく、タイミング悪く、弾を撃ちきったL7汎用機関銃を放り投げ、とにかく橋を私たちは全力で駆け抜けた。

 

「ふ、なかなか、いいらんでぶー、だった」

「いや、それはもういいから」

 

新たに現われたのは輸送機型と思われる大型ネウロイ、しかし一部に差異があり、対地用のパネルが前方に複数確認できた。

 

「…さすがに、まずい」

「そうだね、これは」

 

 大型ネウロイはこちらにとどめを刺そうと、ビームを放った。シアと二人でシールドを出してなんとかビームの奔流に耐えるも、私もシアも魔力は平均よりそれなりに上なだけであり、長く耐えられる物ではなかった。

 

「おいおい、野郎ども、ウィッチを援護しろ、間違っても当てるんじゃないぞ」

「ウィッチに傷でも付いたら、俺らは全員ベトナム送りにされちまうぞ」

 

それを見た聞いた、ラモス島守備隊や陸戦隊は陣地からありったけの砲弾薬をつかって大型ネウロイに集中砲火を開始する

 

 ラモス島守備隊の陣地から、ヴィッカース重機関銃や扶桑製47mmの集中砲火が行なわれた、それに、対応するため大型ネウロイの攻撃が分散し、少しの猶予が生まれるが、それでも焼け石に水であり、状況が変わる物ではなかった。

 

「ねえ、シア、どこ行っても、付いてきてくれるかな」

「んっ…とうぜん、だってリオはシアが必要、だから」

 

耳がいい伍長が

 

「いや、お願いだから、もう少し粘ってください!?そんな悲劇的展開より、ハッピーエンドにしてくださいよ!」

 

「うるさい、下っ端1、そんなの、だから、もてない」

 

「いや、戦場でピンチな時に何いってんすか、というか自分は、妻子持ちですよ」

『「「えっ!?まじで」」』

 

驚愕する声が無線や周囲の陣地から出る。

 

「ん、エラたちきた」

『えっと、はい救援きました、その』

 「エラ准尉、話は後で、とにかくネウロイをお願いします」

 「はい、了解です!」

 

 ドドンッ エラ准尉が放った25mmの弾丸は、大型ネウロイに二つの大穴をあけ、中心のコアを露出させる。

 

 「エヴィ!」

 

 「ok、任せて」

 

 そしてダイブしたエヴィ准尉が露出したコアをL7汎用機関銃で破壊し、大型ネウロイは消滅した。

 

 その後は特に何事もなく、霧を起こしたネウロイも現われずに、艦砲射撃の支援を得た陸戦隊と増援の南部駐留部隊によってバラバク島は奪還された。私たちも基地に無事に帰還でき、基地司令から山のような報告書の提出を、命じられ忙しくは、あるが一応は通常の任務に戻った。

 

しかし、バラバク海峡はバラバク島の対岸を押さえられたままであり、ミンダナオ島では、激戦が繰り広げられていた。

 

キャラクターや戦況といった設定集的なもの

  • 必要、というか見たい。
  • 不要、ネタバレ防止
  • ん、シアのこと、知りたい?
  • 戦況だけ報告したまえ

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