織田3大軍師と恐れられた男〜女性ばかりの戦国時代で種子島で成り上がる 作:焼肉定食
「そういえば約束の刻限が近いわね。」
と少し清洲に寄った後すぐに呼び出しがかかりまた集結、その間に六がやっぱりというか柴田勝家ということが分かった中で信奈からそんな声がかかった。
「そういや。勝家どこに行くんだ?」
「まったく、馴れ馴れしいな。われらは正徳寺にて今より美濃の蝮に会いに行くんだ。」
「美濃の蝮となると斎藤道三か。」
「あぁ。信奈さまは道三の娘を義理の妹に貰い受け、縁戚関係を結ばれる予定なんだ。」
「…そういえば織田って結構内も面倒だった覚えが。」
「あぁ。そういう私も元々は信勝様の家臣なんだ。信奈様のご家老が過労で亡くなったので、今日は代わりに侍っているだけさ。」
「…そうなのか?てっきり姫さん直属だと思ってた。」
そこらへんは元々知っている世界と同じ世界線なのか。
おそらくそう遠くない未来に争いは必ず起こる。それはおそらく分かっているだろう。
「そういえば信奈様にもお前はタメ口だよな?」
「ん?……まぁ敬語だとボロが出るからな。あんまり敬語得意じゃないんだよ。元々俺は人間関係がゆるいところで育ってきたからな。敬語が苦手だから余計に失礼になる可能性がある。」
などと意外にも普通に会話ができている。
普通に敵になる予定だが、思っていた以上に雑談できていることに驚いた。
と話している途中に遠くだが高台にある草薮が動いた気がした。誰かに見られている?そんな気がする。
信奈はもちろん勝家も気づいていないので気のせいではないかと思うがそれでも一応警戒しといた方がよさそうだな。
「姫さん。今すぐ鉄砲に火を入れろ。」
「えっ?ちょっと暴発したら」
「何かに見られている可能性がある。さっき少しだけ向こうの高台の草薮が動いた。」
「えっ?本当!?」
「生憎旅人の前は狩人のもんで視力はいいんだよ。一応威嚇がわりでいい。おそらくそれだけで牽制になる。」
俺はかすかに横を見ると五右衛門の姿が一瞬見えた。おそらく偵察に向かってくれているんだろう。
「それにおそらくだけど……あっちも露骨に手を出せないだろうからな。」
「どういうことだ?」
「まぁ、その話はおいおい話すよ。とりあえず行こうか。」
信奈と勝家は警戒していたが、俺は何も警戒もなく足軽仲間と話しながら歩き始める。
結局予想通り道中は何もなく無事正徳寺までたどり着くのであった。
「……姫さま、道三どのはすでに本堂へと到着されているとの由。」
小姓らしき小柄な女の子が、信奈に拝礼しながら報告した。そういえば小姓とか信奈付きの家来は見たことがまだなかったな。
「デアルカ。わたしも着替えなくちゃね。それと浩介も正装に着替えてきなさい。先に行って購入しておいたわ。」
「ん?俺もか?」
「えぇ。付き人には浩介にするわ。あなたなら私や蝮の言っていることについて理解できるでしょ?警備面では犬千代や六がいるから問題ない。」
「姫様!?」
勝家が驚きの声を上げるが確かに信奈は間違ってはいない。美濃国はおよそ50万石以上の価値がある。一応尾張も50万石以上はあった覚えがあるが信奈は弟と内乱状態にあるためその価値はもっと低いものだろう。
「…御意。勝家は武将だろ?戦場で活躍する時が一番勝家は輝くだろ?俺は反対に武力は全然ないからその分頭を働かないといけない。今回は武力なんて必要ないんだよ。この戦で必要なのは弁舌と頭の良さ、そして臨機応変な弁論だろ。」
「あら、あなた私を助けた際に数人の足軽を倒していたじゃない。」
「それは味方あっての話だよ。俺一人じゃ何もできない。だからこそ……頭を使うしか生き残る道はないんだ。」
女性に守られているのは正直複雑だが、これでも元々両親がなってからは嘘や頭を使わなかったら生き残れなかった。だからこそ俺が唯一生き残るのはこの道しかないのだから。
俺が正装に着替えを入るとすぐに空気がかわったように感じる。
なんか見られているな。勝家や犬千代と呼ばれた織田に加え、先ほど見た草薮の奥にいた少女と道三だと思わしき上座に座っているおっさんがいる。
俺はあえて勝家の隣に座ると勝家は驚いたように俺の耳に呟く。
「お前その髪どうしたんだ?」
「あっ?癖毛なんだよ。昔から。水でふやけたらすぐ癖毛に戻るからちゃんと伸ばしただけ。似合ってないか?」
「いや。似合っていないことはないんだけど。むしろ似合っている。」
「えっ?」
「あ、いや。なんでもない。」
すると顔を真っ赤にして目を伏せる勝家に俺は苦笑してしまう。昔から癖毛が強かったがいつのまにか癖毛を
面倒くさいけど、癖毛を整えようかなぁ。
そう思っていると
「信奈とやら、遅いのう。」
道三が退屈そうに大あくびをした、その時だった。
「美濃の蝮! 待たせたわね!」
最高級の京友禅の着物を艶やかに着こなしつやつやと輝く茶色がかった長髪をハラリと下ろした織田信奈がでてきたのだ。
その姿を見た道三は、口にしていたお茶を噴き出す。
歴史のことについてはそこそこしか知らないが元々正徳寺の会談は有名である。
織田信長と斎藤道三との会合で度肝を抜きその後は信長の有利な状況である。
織田信長がうつけの格好をしているのには理由があり、それは理論的にも正しいことが分かっている。
まぁ、姫さんがそれをできるかはわからなかったが正装に着替えてくると答えた時には感づいていた。
織田信奈は天才の域にいると。
でも、本当に自分の見せ方がよく分かっているな。俺も元々綺麗な少女だとは思っていたけど、正装だともっとも少しだけ見とれてしまったし。
「う……うおおおおおおっ? な、な、な……なんという……美少女っ!?」
声に出すのかよっと思っていたのだが俺は声を出さなかった。
「わたしが織田上総介信奈よ。」
「あ、う、うむ。ワシが斎藤道三じゃ……」
道三は完全に度肝抜かれているようだった。とりあえず第一段階ではインパクトはとれた。あとはどれくらい詰められるかだ
「デアルカ」
「お、お、おう……」
「蝮! 今のわたしには、あんたの力が必要なの。わたしに妹をくれるわね?」
「さて、それはどうかのう。織田信奈どの。」
にやりと微笑む道三は、迫力満点の悪人面だった。流石は道三って言ったところか。蝮と呼ばれた
「あんたほどの器なら、わたしの実力のほどはひと目見れば分かると思ったんだけど、こちらとの同盟は組めない……ということかしら?」
「ふふ、なに。いくつか尋ねたいことがあるのでな。もっとも……場合によっては、この場でそなたのお命を頂戴するやもしれぬ。くっ、くっ、くっ。」
道三が鋭い眼光で信奈を睨みつけながら、ドスのきいた低い声で続けるが俺は真っ先にその可能性がないだろうと思いついた。それならおそらくあの草薮からすでに襲いかかっているだろう。
まぁ、実際面白そうではあるから黙っておくが、ある程度見守っておこう。
「まず一つ目の質問じゃ。そなたは何故領民や家臣からも『尾張のうつけ』と呼ばれておるかのう。」
「それは俺から説明させてもらってもよろしいか?」
俺は軽く手を上げる。すると道三と信奈が俺の方を見る。
「あら、……ちょうどいいわね。浩介の見解を話して頂戴。」
「御意。」
すると信奈も面白そうに見ている。多分試されているだろうがここは信奈と共有がして起きたかったことだ。
「まず一つ目は利便性、所謂機能性ではないかと思われます。流石に十二単や髪も後ろにまとめているのは、戦に邪魔になったりするから。そして二つ目は南蛮のものを揃えているからだと思われます。西の方は知りませんが特に織田家は南蛮色が強い。その例が火縄銃、種子島だと思われます。」
「えぇ、概ね、種子島はね、武士が撃とうが農民が撃とうがその威力は同じなの。これがどういうことか蝮、あなたなら分かるわよね?」
信奈は不敵に微笑んで道三を見る
「つまり、種子島を揃えれば農民上がりばかりの我が織田軍もたちまち最強になるのよ!」
「なるほど。じゃが、鉄砲も一挺二挺では役にたつまいて。高額で希少品の種子島を、はたして何挺集めたのかな? 十挺か、それとも二十挺かな?」
「五百挺よ!」
その数には、俺も少しだけ驚く。
「五百挺!? 我が軍の何倍じゃ!?」
と道三が呻く。当然だ。種子島は非常に高価であることもあるのでかなり貴重品でありながら普及も遅れてしまった原因なのだから。
「はたして、それだけの種子島をどうやって調達したというのか? 尾張には、それほどの収入があるというのかの?」
「確かに織田家の石高は低いわ。でもね、貿易港の津島を押さえているの。津島の商人に納入させた矢銭(軍用金)で買い揃えたのよ。」
「なるほど。そなた、ただの大名ではないな。まるで商人じゃの。」
津島は確かに貿易港として優秀だけど。それでも500はやっぱりすごいな。恐らく軍事費のほとんどをつぎ込んでいるのだろう。
「ではあと一つだけ尋ねたいのじゃがな」
「なに?」
「なぜ、そなたの父君……亡き織田信秀公は戦ではワシにかなわぬと知りながら、美濃に何度も攻めて来おったのかのう?」
「父上の考えは知らないわよ。でも、わたしが攻めるとしたら東にはいっさい手をつけずに、ひたすら美濃だけを攻めるわ!」
「ほほう、それはなぜかのう?」
面白そうな道三に俺も少しだけ苦笑してしまう。
どれだけこの話し合いが面白いんだろうか?いや、思っていたよりもこの道三も将来が見えているのではないのだろうか?
だからこそ俺の知らない歴史があるとしたら、それはとても面白いんだと思ってしまった。
「それは蝮、あんたが最初に美濃を狙ったのと同じ理由だわ。」
「むっ?」
「蝮!世間のバカな連中はあんたのことを『美濃を奪った蝮』と呼んでいるけれど、あんたは本当は『天下』を盗りたかったんでしょ?」
ぴくり、と道三の眉が動く。それはすでに肯定を表している。
「信奈どの。なぜ、ワシが天下盗りを目論んでいたと断言できるのじゃ?」
「美濃を制する者こそが、天下を制するからよ!美濃こそが日本の中心だもの!西は京の都に連なり、東は肥沃な関東の平野へと繋がっている。この美濃に難攻不落の山城を築いて兵を養い、天下を窺う。そしてときが来れば一気に戦乱の世を平定し、日本を平和な国にする。商人が自由に商いに精をだせる、そんな豊かな国にする。それがあんたの野望だったんでしょう?」
道三は、震えながらも、なんとか頷き、そして、カラリと道三の表情が陽気なものに変わる。
「参った……参ったわい、信奈どの!誰にも話したことの無かったこのジジイの戦略をすべてお見通しだったのじゃな? いや、参った!」
「蝮、わたしは美濃をいずれ併呑する。あんたの生涯の夢、天下統一の野望を、わたしが叶えてあげるわ!」
「商人が自由に商いに行える国を、そなたが?」
「商人だけじゃないわ。農民だって侍だって同じよ。日本をこんな風に乱れさせた古い制度なんか全部叩き壊して、南蛮にだって対抗できる新しい国に生まれ変わらせてみせるわ! わたしが見ているのは日本だけじゃない。『世界』よ!」
道三が、大きな笑い声をたてる。今となってはあたり前だったが本当に世界ってこの時代までは知られていなかったんだと思いしらされる。
「そなたが尾張でうつけ者と呼ばれる理由が、やっと分かったわ。この智慧者のワシの頭の中ですら『天下』、つまりは日本が知恵の及ぶ限界でごじゃった。しかし信奈どのは『世界』などという途方のないものを見据えておったのじゃな。」
「蝮、今のはここだけの話よ。あんたとわたしにしか分かり得ない話だもの。余人に聞かせれば、うつけどころか気が触れていると言われるわよ?」
「いえ! ここに理解できる者が一人おりまする!」
すると庭先の少女が声が響く。そういや、あの少女は道三の小姓である。
「おう十兵衛、そちも思わず熱くなったのじゃな。しかしまだ早い。今は、黙っておれ。」
「……ぎょ、御意。」
……十兵衛って明智十兵衛光秀かよ。本当にここに名のある武将ばかり揃ってんな。
「……さて、天下盗りのために美濃が欲しいという話じゃったな、信奈どの。」
「そうよ。美濃が、わたしにもらわれたがっているのよ。」
「ふ、ふ、ふ。老いたとはいえど、ワシは蝮と呼ばれた男。それは出来ぬ相談よ。」
「でしょうね。そう言うと思っていたわ。わたしも、タダでくれとは言わないわ。」
「ふふふ。そなたが一代の英傑であると分かってしまった以上、一度は戦場で相まみえて戦ってみたいのう……。」
「それは美濃も尾張のためにならないやめた方がいいぞ。」
俺はそれはきっぱり否定する。すると全員がこっちを見る。
「ちょ、ちょっと浩介!?」
「ほほう。それは何でかのう?」
「武田がほぼ間違えなく動くからだ。今は上杉と川中島で睨み合いをしているが油断をしていると直ぐに美濃を取られるくらいの戦力は残しているだろう。あそこは軍師も結構優秀だからな。山本勘介もいるし、真田の忍術隊である程度は情報も入ってきているだろう。だからこそ織田と斎藤家が戦った場合は武田の騎馬隊で漁夫の利を狙っているだろうな。武田も上杉が片ついたら恐らく西方に進出してくるだろうしな。」
「西に?」
「あぁ。上杉が滅ぶとは考えにくい。恐らくある程度戦って、和平で一旦は方を付けるんじゃないか?今日本で一、二を争うくらいには武田と上杉は軍備が優れている。だからこそ北方面には兵は進めないだろう。武田の東は北条であり、同盟結んでいるから実質的に西一択だ。」
「……ほほう。お主相当詳しいのう。」
「生憎数日前までは旅人だったもんで。」
まぁ実際のところ現実世界の知識込みだ。
それに実際に今川と武田に面している二国が争っている場合ではないのだ。実際武田と上杉に立ち向かえるようになるには最低でももう種子島が10倍集まらないと正直相手にならないだろう。
「それに元々、信奈に『美濃譲り状』を書く予定なんだろ?」
「えっ?何言っているの?」
「戦争をやる雰囲気ではない態度だったってことだよ。確かに争ってみたい武将としてはあるかもしれないが、本当は信奈との戦なんて望んでいないんだろう。『天下統一』というあんたの夢を継いでくれるのは、立場的には信奈だけだろうしな。どこか道三じたいがこの会合自体を楽しんでいるように遠くからは見えていた。そっちのお嬢さんの言葉にもかなり嬉しそうだったしな。」
少しだけ考えてから戦をする原因が何かを問われるとおそらく美濃での振る舞いだろう。
「信奈に美濃を譲れなきゃ、あんたの人生は無駄になっちまう。だから譲りたい。しかし美濃の蝮ともあろう者が、そんなお人好しぶりを見せるなんて沽券に関わる。世間から老いたと笑われる。だから信奈と一戦交えるという筋書きが必要だと考えるのが妥当だ。」
「信奈どの。織田家に侍なしとは、謀られたのう。十分頭を使えるがいるではないか。これほどの者がおるとは……老いぼれたワシが勝てる相手ではないわい。」
「えっ?蝮?」
「浩介どの。貴様のおかげで、この蝮、最後の最後に素直になることができたわ! ワシの夢を信奈どのに……いや、我が義娘に受け継いでもらうことにするわい。この場で『譲り状』をしたためよう。ワシはそなたに……我が義娘に美濃一国を譲って、隠居するぞい。」
「蝮!?」
信奈の瞳が一瞬潤んだように見えた。斎藤道三ならば、自分の志を理解してもらえると信じてはいたのだろうが、これほどの無防備な好意を寄せられるとは思ってなかったのだろう。でもどこか似た雰囲気を匂わせてるよな。この二人。
「これより信奈ちゃんは、我が娘じゃ。娘に国を譲るのは、父として当然のこと。」
「本当に、いいの?」
「蝮と憎まれたワシの国盗りにも、かような意義があったのじゃと思わせてくれ。」
道三は筆を取り出すと、「美濃譲り状」を書き始める。つまりこれを書く出来事が起こったということは、次に起こることは…もう変えられないのだろう。
斎藤道三が斎藤義龍によって引き起こされた謀反はこの美濃譲り状が原因で起こったものだと言われているものだから。
「……なぁ、道三。あんたはどこまで見えてるんだ?」
俺はふと声を上げる。すると道三は少しだけだが驚いていた。
「…お主この後のことが分かるのか?」
「分かるさ。軍師候補なだけあって流石にそこまでバカじゃない。」
「ふむ。信奈ちゃんには発言を禁ずるぞい。信奈ちゃん。いずれ我が一人娘をそなたの妹として尾張へ送るぞい。」
道三がふと微笑みながら告げる。どうなるって覚悟はあるんだろうな。
そしてこの織田信奈という少女のことも少しだけだが分かってきた。おそらくこいつはこっち側の人間だと。
そして俺がこれからどうするべきであるかじっくりと考えなければならなかった