「ーー今回はこんなとこだ。また検索をかけてみてくれ」
『了解。
電話超しで翔太郎は新たな情報をフィリップへ送る。
「まさかこんなに噂が広がってるとはな」
『でも検索結果にはほとんど引っかからなかった・・・あくまでも噂が一人歩きしてると思った方が良いよ』
あれから1週間が経過した。翔太郎は風都内でニセWの噂を集め、役に立ちそうなキーワードをフィリップへ伝達する。その情報からフィリップが地球の本棚へアクセスし裏をとる。これまでも行ってきた効果的な収集方法。だが今回は芳しくない。噂だけは手に入るが検索結果からは
「しかし、皆同じ内容だったな」
『怪人に襲われたところを半身の怪人に助けられ、お礼を言うと内緒にしてくれと返す。まぁ皆内緒にしてないけど』
「そりゃ現実味がないからな、むしろ約束守ってた遠山さんの方が少数派だろ」
『その彼も僕たちに話したんだけどね』
「義理堅そうな人だったからな。1ヶ月とはいえ約束は守ってるわけだし、自分の信念に反することはしたくないんだろ。それでもやっぱり改めてお礼を言いたいから会わせてくれ、なんて理由で探偵のとこに来るのは相当だが」
『本当にこの街は興味深いことばかりだ。僕の知識欲は満たされ続けるね』
電話超しでも分かるほど興奮気味のフィリップに心底辞めてほしいとばかりに翔太郎は返す。
「勘弁してくれよ・・・今のお前が満足できるようなネタがまだまだあるって・・・っ!!」
『・・・?どうした、翔太郎?』
「嫌な風だ。泣いてるような、怒ってるような、そんな風だ」
『・・・訂正する。僕の最大の興味はこの街の風を自在に読む君のその直感だよ』
今度はフィリップがやれやれ、といった様子で返す。
「もしかしたら、メモリ絡み・・・噂のあいつかもしれねぇ。その時は半分力貸せよ?相棒」
『あぁ、その時はまた教えてくれ』
そうして通話を切ると翔太郎は風の出所(自身の勘)に従って街を駆ける。2,3分走った頃、何やら公園が騒がしい。見ると1人の男が必死に何かから逃げるようにこちらに来る。
「おいあんた、何をそんなに怯えてんだ?」
「怪人が出たんだっ!あんたも早く逃げな!」
すれ違い様に早口で話すと男は翔太郎が走ってきた道を逆走し、そのまま見えなくなった。
「この先なわけね。さて、この街を泣かせた奴の顔を拝むとしようか」
公園には2人の男が立っている。1人はピエロのような見た目の怪人。
もう1人は黒のベストを羽織ったスーツの男。目深く被った帽子のつばを持ち上げて怪人を見据える。ポケット入れていたもう片方の手を相手側に差し出し告げる。
「あんた、そのメモリを俺に渡しちゃくれねぇか?」
「バカが!こんな力を手放すわけないだろ!この力で、あいつらに地獄を見せてやるんだっ!!」
「・・・そうか」
見た目は探偵といった風貌の男が仕方ない、と言いたげな声色で返す。相手に向けていた手を着ているベストに添えて続ける。
「なら痛い目をみてもらうことになるが、構わないな?」
告げると、添えていた手を大きく横へ払う。そのベストの下に隠れたベルトが露わになる。赤色を基調とした機械の附属したベルトだ。そこには何かを差し込めそうな印象を受ける。
・・・例えばガイアメモリなど、完璧にマッチしそうなサイズだ。
そしていつの間にか両手に握られた緑と黒のメモリをベルトへ差し込む。
『《サイクロン》!《ジョーカー》!』
「変身」
ベルトから流れる音声と共に風が吹く。あまりの強さに怪人が目を逸らす。風が収まった頃には半身の怪人が立っていた。
「さぁ、お前の罪を数えろ」
そんな彼らのやりとりを
「おいおい・・・中身まで俺そっくりってか」
服装は完全に自分と瓜二つだ。変身しW(仮)になったが、その色も右が緑で左が黒と瓜二つ。しかし、自分たちとは僅かに色合いが異なりくすんでいる。それも緑というより黄緑、黒というより紫といった印象だ。
戦闘スタイルは徒手空拳、回避主体の立ち回りであり隙を見て速度を活かした反撃の拳を叩く。相手の攻撃を受け流す度に、右肩にのみ伸びた白いマフラーがなびく。
危なげなくドーパントを追い詰めるニセW。余裕も感じられるその姿に「傍から見たら自分たちはなかなかイケてるな」などと考える翔太郎。しかし突然、ニセWの背後から目の前のドーパントと同じ声がかかる。
「おい、そこまでだ。今すぐに俺への攻撃をやめろ。抵抗もするな。まぁ、このガキがどうなってもいいなら別だがな」
とニセWへ見せつけるように少女の首元を左腕で締め上げるもう一人のドーパント。
「・・・クソ野郎が」
と悪態をつきながらも手を下に降ろす。それを確認した対面のドーパントは満足げに語る。
「おっと、卑怯なんて言うなよ?これは俺の力を2つに分けているだけだ。むしろ本来よりも弱い力で戦ってたんだぜえ?」
「何?どいうことだ?」
「俺のメモリは《ジェミニ》。自身の分身を作り出す能力さ。この分身は俺と感覚を共有できる。しかもその配分を自由に変更できるからお前の力に合わせてリアルタイムで力の調整も行えるんだよ」
自慢げに自身のメモリの力を語るジェミニドーパント。一通り語ると、それにしても、と続ける。
「噂の仮面ライダーとやらも案外大したことはないな。こんな奴に負けるとは、他のドーパントはよほど弱かったらしい。それか俺が強すぎるのかな?ギャハハ!」
「なら人質はいらないだろ?とっととその汚い手を離しな」
「なんだとこグボォッ!?」
「!?」
ニセWは動いていない。勝ちを確信し油断しきったドーパントへ、翔太郎が飛び出して蹴りを喰らわせたのだ。
「お、お前!なんで2人も!・・・まさかお前も俺と同じ!?」
「他人の空似ってやつさ・・・さて、半分力貸すぜ?お兄さん」
と既に翔太郎の手にはメモリが握られており、ドライバーには《サイクロンメモリ》が装填されている。
「《サイクロン》!《ジョーカー》!」
疾風が吹き荒れ、右半身が緑、左半身が黒の本家、仮面ライダーWが姿を見せる。
「さぁ、お前の罪を数えろ」
ジェミニドーパント×2と仮面ライダー×2の戦いはライダー側が圧倒的であった。そもそも、分裂したドーパントにタイマンで勝っていたニセWの2人と同じ戦闘力のそれぞれが追加されるだけなら当然結果は変わらないだろう。
『翔太郎、メモリブレイクだ・・・と言いたいところだけど』
Wのドライバーは2人で変身可能だが、そのためには片方の精神がベルトの中に入る必要がある。現在はフィリップが精神体のみベルトに入りリアルタイムで現場と会話、意思の共有を行える状態となっている。
「分かってる、あいつは2人のうちどちらかにしかメモリがないんだろ」
『それだけじゃなくて記憶やデータも共有できる性質上、残った分身からメモリを再生なんて可能性もあり得る。つまり』
「2体同時にブレイクする必要がある、と」
メモリブレイクはその名の通り
『直接は伝えない方が良いだろう。相手はこっちがその対応策に思い至ったと知ったらまず二手に分かれてしまう。そこから新たな分身の複製なんてされたら厄介だ』
「ちなみに分身の複製上限はあるのか?」
『もちろん検索済みさ。1体まで。しかも新たに出すには分身を消して元に戻る必要がある』
「なら目の前のこいつらさえブレイクすればひとまずは安全なわけだ」
『問題があるとすれば・・・』
ちらっと横目でニセWを見る。
『・・・この方法をとるには前提として
そう、敵に悟られず、かつ分身体を本体と同時にブレイクするにはこの場でまとめて破壊しなければならない。とうやって伝えるかと思案しているとその彼から予想外の言葉が聞こえてきた。
「
「『!?』」
「お前のことだ、対策は講じてるんだろ?足止めはする、ブレイクは任せた」
「ちょ・・おい、なんで俺らのことを・・」
「《ルナ》!《トリガー》!」
翔太郎の問いには答えずメモリを換装する。ベルトから音声が流れニセWの見た目が変わる。右半身が黄色へ、左半身が青へ。しかし、やはりその色は僅かにくすみ自分たちとは異なる。
「《トリガー》!《マキシマムドライブ》!」
マキシマムドライブとはメモリの力を最大限に解放した攻撃。つまり必殺技だ。
「トリガーフルバースト」
掛け声と共に、左手に握られたハンドガン型のアイテムから光弾が放たれ。その軌道は曲線で多角的にドーパントたちを捉えている。
「今だ、2人とも!」
『とりあえずはチャンスだ。合わせよう、翔太郎』
「・・・あぁ、分かったよ」
フィリップは戸惑いながらも、翔太郎は渋々ながらもメモリを操作する。
「《ジョーカー》!《マキシマムドライブ》!」
ニセW同様、マキシマムドライブを起動。高く飛び上がり、急降下しながらドロップキックの要領で蹴りを放つ。標的たちは既に光弾の嵐で一カ所に集められている。
「『ジョーカーエクストリーム!』」
必殺技を叫ぶとWの中心線から緑と黒のボディの2つに分かれ、それぞれがドーパントの芯を捉える。
膨大なエネルギーを受けたことでドーパント形態のボディが耐えられず爆発。その中から1人の男が転がり出てくる。目立った傷は見られず、受けた全てのエネルギーはボディの根源であったメモリへ集約。ジェミニメモリは破壊され相手を殺すことなく無力化した。
「さて、照井(警察官)にも通報したし後はーー」
ゆったりと向きを変え、正面に立つもう1人の自分へ声をかける。
「ーー当然、話してくれるよな?お前のこと」
自分たちは敵対する気はないと伝えるために変身を解く。それを見たニセWも変身を解きながら答える。
「あぁ、もちろん。俺が答えられるものならな」
これで噂の真相に迫れると確信した翔太郎は安堵する。しかし、その真相が新たな嵐を呼ぶことになるとは思いもしなかった。