モブトレーナーの再スタート   作:夢の中の妄想2

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第十八話 再会

「……今、何て言いましたか?」

 

ブリッジコンプと飲みに行った翌日。出勤してすぐにたづなさんからかかってきた電話に出た俺は、状況が飲み込めず聞き返した。電話越しのたづなさんはかなり焦っているようだった。

 

「もう一度言いますね。トウカイテイオーさんが昨日から行方不明なんです」

 

昨日の昼頃。テイオーはトレセン学園の寮を出たのを最後に行方をくらました。怪我をしてからテイオーは学校を休んでは街中を徘徊していることがあったため、当初学園はそこまで気にしてなかった。

 

しかし、夕方以降も戻らないことに違和感を覚えたたづなさんが警察に相談。行方不明で捜索願いも出すことも視野に入れる事態となった。今も心当たりのある場所に片っ端から電話をかけているらしい。

 

「何か手がかりは?」

「今のところは……公共機関を利用した形跡はないそうです。周辺の監視カメラも調べていますが、難航してます」

「……実家には?」

「一番に連絡しましたが、ご実家には戻られてないそうです」

 

テイオーは……と言うよりも寮生活をしている生徒の大半は門限の都合もあって、行動半径はそこまで広くない。テイオーも中央がある周辺の街から1人で出ることは、俺が担当しているときはまずなかった。

 

それが今の今まで見つからないとなると、恐らく中央周辺の街から出ている可能性が高い。でも、一体何処へ行くんだ?

 

「伊丹トレーナー。貴方の所にテイオーさんは来られてないですか?」

「いえ、今のところ来てないですね」

「もし夕方までに見つからなければ、捜索願を出さないといけませんね……」

「まだ出されてないんですか?」

「ご両親の意向やマスコミが嗅ぎ回っていることもあって、今は保留にしているんです」

「しかし……」

「あ、すみません。電話みたいですので、一度切りますね。何かありましたらまた連絡してくださいね」

 

慌ただしく通話を切られた後、俺は天井を見上げた。幾ら人間よりも遥かに力が強いウマ娘と言えども、まだ未成年。何があるか分からない。早めに捜索願を出すべきではないか。そんなことを考えているとチャイムが鳴る音がした。業務が始まる。俺は椅子に座り直すとパソコンを開いた。

 

 

 

・・・

 

 

「ん?」

 

昼休み。大きく伸びをして外を見ると、グラウンドに人だかりができていた。

 

「揉め事か?」

 

昼練の場所取りで揉めることは良くあること。様子を見て、拗れそうなら仲裁に入らないといけない。そう思って扉に手をかけたその時、勢いよくドアが開いて俺はドアに頭をぶつけた。

 

「痛って~……」

「あ、伊丹トレーナー、ごめんなさい」

 

ドアの前で蹲っていると、村山先生と数人のウマ娘が入って来た。

 

「何事ですか村山先生」

「大変です。ジュエルトパーズが……」

「パーズがどうかしたんですか」

「グラウンドを歩いていたらいきなり知らない子に引っ張られて」

「物凄い剣幕で、収集付かなくなって……」

「すぐ行きましょう」

 

この大事な時期、怪我や不祥事は致命的。俺は急いでグラウンドに向かった。グラウンドにはさっき見ていた以上の野次ウマが集まってきている。

 

「通してくれ」

 

その野次ウマ娘達をかき分けていくと、中心に辿り着いた。そこには困惑した様子のパーズと、フードを被ったウマ娘が立っていた。

 

「パーズ」

「あ、伊丹トレーナー」

 

パーズの言葉に、フードを被ったウマ娘もピクリと肩を動かすと、物凄い勢いで俺に抱きついてきた。

 

「トレーナー!!」

「うおっ」

 

ほぼタックルに近い抱きつきに、俺はそのまま倒れ込む。この抱きつき方は間違いない。彼女だろう。

 

「テイオー。ここで何をしてるんだ」

 

テイオーという言葉に、生徒達が一斉にざわつく。

 

「テイオーってまさかトウカイテイオー!?」

「嘘。中央のエリートじゃない」

「そう言えば伊丹トレーナーが中央にいた時担当してたのって、確かトウカイテイオーよね」

「最近ずっとレースには出ていなかったみたいだけど、まさかトレーナーを探して追いかけてきたの?」

 

そんなざわめきを他所に、テイオーは俺の胸にずっと顔を埋めている。服装を見ると、着ていたパーカーフードは結構汚れている。

 

「まさかお前、東京からここまで走って来たのか?」

「……うん」

「バカ!今度こそ二度と走れなくなるかもしれないんだぞ!!」

 

脚への負担の大きい固いアスファルトをまだ状態が良好でない脚で東京から兵庫まで数百キロ走って来た。思わず出た俺の大声にテイオーはビクッと肩を震わせた。その間に俺は起き上がると、服に付いた砂を払った。

 

「だって……だって……いきなり居なくなっちゃうんだもん……」

「……」

 

俯くとポロポロと涙をこぼすテイオーに、何と声をかけてやればいいのか戸惑っていると、ブリッジコンプが静かに近づいてきて、耳打ちしてきた。

 

「ここじゃ何ですから、保健室でゆっくりお話しされたらどうでしょうか?」

 

確かにこのままでは収拾がつかない。騒ぎが大きくなれば、マスコミに嗅ぎ付けられるかもしれない。テイオーの脚も心配だ。俺はブリッジコンプの提案に頷くと二人に保健室に行くように促した。

 

 

 

 

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