モブトレーナーの再スタート   作:夢の中の妄想2

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第五話 園田トレセン学園

「どうですかトレーナー。この学校は?」

「いいな。中央ほど殺気立ってないし、全体的に穏やかだ」

 

園田トレセンを歩きながら、ブリッジコンプが話しかけてくるのに俺は相づちを打つ。季節は秋に移ろうとしている。

 

「私も、元々は園田トレセンの出身なので、凄く思い入れがあるんですよ」

「そうか。そう言えばそうだったな」

「……中央に編入したときはG1レースで勝つのは無理でも、G3位なら勝てるかなって思ってたんですよ」

 

ブリッジコンプは高等部から編入してきた。地方競馬で無双し、意気揚々と中央に編入したものの、鳴かず飛ばずで出戻りもしくはそのまま他のコースに転科したり退学する……何て話はよくある話だ。ブリッジコンプはその直前だった。

 

「でも、プレオープン戦で勝つのがやっと。重賞レースなんて最初はゴール板にすら載らなかった。伊丹トレーナーと出会う前にいたトレーナーも最後は皆愛想を尽かして契約解消されちゃいましたし」

「……」

 

ブリッジコンプに初めて出会った日のことを思い出す。俺は新人で中々担当がつかず、毎日選抜レースで必死に声をかけては断られる日々。一方のブリッジコンプも毎日のように選抜レースに出てはパッとせず、死んだ目をしていた。

 

「でも、伊丹トレーナーと出会ってからはどんどん調子も成績もよくなって、ゴール板に載るようになって……最後にはG3レースで3位で入着して、本当に嬉しかった初めてライブでセンター近くに来られた」

「ああ。覚えているよ。お互い号泣してたな。君に至っては鼻水まで垂らしてた」

「恥ずかしいこと思い出さないでくださいよ」

 

もうっとブリッジコンプは頬を膨らませると、ぺしっと尻尾で俺の脚を軽く叩いた。

 

「今はこうやってレースに出たい子達の面倒を見てるんです」

「出たくない子もいるのか」

「中央は走るために来てるって子が多かったかもしれませんが、地方はそうでもありません。出たい子は出て、出ない子は勉学に励んだり、他の競技を頑張ったり、自由にしています。走る子も、中央を目指すのはごく少数で、多くは兵庫シリーズ3冠を目指してます」

「まぁ、色々あるんだな」

 

その後、ブリッジコンプは様々な場所を案内してくれた。食堂や屋内プール。図書館、体育館トレーニングルーム。案内が終わる頃には丁度昼を回りかけていた。

 

「今日はこれで終了です。校舎内、職員室にある出退勤機械に職員証をかざして帰りましょうか」

「わかった」

 

俺とブリッジコンプは職員室まで行くと教師達に軽く挨拶をし、退勤した。教員達も俺を拍手で出迎えてくれた。トレーナー陣といい、教師陣も皆性格が穏やかそうな人ばかりだ。ブリッジコンプも今日はトレーニングがないらしく、そのまま退勤した。

 

「何か、教師陣からの受けもいいみたいだな」

「伊丹トレーナーは教員免許をお持ちですし、誰か教師で欠員が出たときのピンチヒッターとして期待されてるんですよ。中央トレセンはトレーナーもそこらの学校の教師より教えるのが上手いですから」

「あぁ……」

「実際私も何度伊丹トレーナーにお世話になったことか」

 

ブリッジコンプは勉強が全く出来ないわけではなかったが、科目によって偏差値が20以上も差がある位ムラがあり、大学を受験するにあたって俺がフォローしていたこともあった。

 

「あの時は俺も必死だったよ。君に教えるために自分が勉強してたし」

「お陰様で現役で第一志望の大学に入学できました」

 

そう言ってブリッジコンプが笑ったその時、『ぐぅぅ』という音が鳴った。俺は特に気にしてなかったが、ブリッジコンプの顔が固まったかと思えば、見る見るうちに真っ赤になった。

 

「……」

「……腹、減ってたのか」

「……」

「……」

 

普通だったらここで『何か食べに行くか』とでも言うのだろう。でも俺はまだ完全に人目が怖くないわけではない。できるだけリスクを避けるためにも、寄り道は避けたい。

 

「……あの」

「何だ?」

「この先に、お気に入りのブリティッシュパブがあるんです。今なら人も少ないでしょうから、行ってみませんか?」

「……」

 

まさかの提案だった。

 

 

 




登場人物

ブリッジコンプ

年齢:22歳
身長:164cm
体重:不明
趣味:レース観戦・ランニング

茂治が初めて中央トレセンで担当したウマ娘。元々は園田トレセンの出身で、園田トレセン時代は『園田の幻影』と言われるほどの無双っぷりだったが、編入した中央では鳴かず飛ばず。やっとの思いでトレーナーがついたと思えば、すぐに契約解消をされる状態だった。最後の年に茂治にスカウトされ、やや投げやり気味に担当になった。その後は徐々に力を付けていったが、僅か1年の間では成長に限界があり、中々勝てない日々が続いた。

最後の重賞レースの3位入着が最高成績となった。茂治も彼女も知らないが、裏では『出会うのがもっと早ければ重賞でも1着が取れたただろうに……』という声があったとか。元々は芝が得意だったが、兵庫シリーズの多くがダート開催のため、ダートの方が得意になった。現役時代の得意距離は短距離から中距離。走りの適性は逃げと先行。

中央トレセンを卒業後は地元の国立大学に進学。中央トレーナーの資格を取得したものの、地元であり母校の園田トレセンに就職。トレーナーとしての評価を上げている最中に茂治のニュースを耳にし、羽柴理事長に茂治を推薦することを直談判。更に中央トレセンの秋川理事長にコンタクトを取り、茂治の経歴書などを手に入れて羽柴理事長に渡した。

趣味はレース観戦とランニングで、ランニングに関しては気分がいいとデイパック1つ背負って往復400km位走る。体型維持のためにトレセン卒業後もトレーニングを欠かさないため、その身体能力は現役並み、もしくはそれ以上。

家族構成は園田トレセン近くでウマ娘用品専門店を経営する両親と、年の離れた妹と弟の5人家族。現在は実家で暮らしているが、妹が中学入学と同時に反抗期に入り、両親と共に手を焼いている。

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