SEVERANCE PRODIGY〜武器破壊を極めてゲーム攻略!   作:封魔妖スーパー・クズトレイン

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第一層 勇者と騎士
1話 プロローグ


「ぐえへぇっ!?」

 

 真横から突然物凄い衝撃を受けて、アニメでしか聴いた事がない様な呻き声を上げながらゴロゴロと転がる。これだけ派手に吹っ飛ばされたら骨折とか最悪命に関わる様な大怪我をしているだろうが、この世界ではそういうグロテスクな変化の変わりに視界の端にある緑色のゲージが僅かに減っただけだった。

 

 俺を物の見事に跳ね飛ばしてくれた下手人は《フレンジー・ボア》。他のゲームではスライム相当のモンスターだと言われているが、憤怒に染まった眼光からはとてもそうは思えない。一体何をそんなに殺気立っているのだろうか? もしかしたら、こいつ昨日食べたメンチカツになった豚の親だったりするのかな?

 

「危ないっ!!」

 

 声が聞こえると同時に、下らない事をぼんやりと考えていた俺の背後から一人の男がまるで地面を滑る様に現れると、青いエフェクトを纏った直剣でイノシシに見事な一撃を入れ、まるでガラスを割るみたいに粉々に砕いた。

 

 このゲームの世界…………《ソードアート・オンライン》の世界では死んだら死体は残らず、今の様に砕けて消える。話では聞いていたが、先程まではそこに存在していたイノシシが呆気なく消え去るのは現実味が無い様に思えてくる。

 

「良かった、無事みた……ン、ンンッ! 無事みたいだな。獲物を横取りする気はなかったが、折角のスタートで死亡するのも縁起悪いだろうから手を出させて貰ったぜ」

 

 そう言って助け起こしてくれたのはワイルドな顔つきをした青髪のイケメン。ヤンキーみたいな見た目だがとても親切な人みたいだ。

 

「いや〜、助かりました。ソードスキルのやり方を試していたら近くにモンスターがいたのに気付かなくて」

 

「このゲームはどこからでもモンスターが襲いかかってくるからな。ベータでも同じ様にやられた奴が何人もいたぜ」

 

「おっ! それってつまり、あなたはあのベータテスターってやつですか!?」

 

 ネットに書いてあった内容によるとベータ版の稼働試験者の募集人数は千人ぽっちであったのに対して、応募者は十万人以上だったとの話だ。そのとんでもない倍率から選ばれるなんてこの男はとんでもない幸運の持ち主なのだろう。

 

「俺アシュロンって言います。良かったら色々レクチャーしてくれませんか?」

 

 そう言って、目の前の男に直角九十度を意識して頭を下げる。

 

 始めてみて思い知らされたが、このゲームはコントローラーのボタン一つで攻撃できる従来のゲームとは比較にならないくらい難しい。独学で慣れるまでにはきっと酷く時間が掛かってしまうだろうし、この機会を逃せばこの先数少ないベータテスターに会える保証は無い。

 

「ああ、構わないぜ。俺はディアベルだ。よろしくな」

 

 そう言って気さくに握手を求めてくるディアベルはやっぱり相当人の良い人間なのだろう。

 

 初日から親切な経験者と知り合えるとは俺の運も強ち捨てたものじゃないらしい。心に暖かいものを感じながら差し出された手を握る。

 

「さて、ソードスキルを教える……前に、キ……じゃない、お前初心者なのに両手剣を選ぶとは中々のチャレンジャーなんだな」

 

「おう! 折角ゲームをやるのならチマチマ削るよりデカい武器でドカンとダメージ与えた方が楽しいと思ってな! ……もしかして、不味かった?」

 

「不味いって程ではないけど、このゲームで最初から防御を捨てて戦うとなると中々難しくなりそうだな。どうする? 場合によっては今から片手剣に変更するのもアリだぜ」

 

「そうだなぁ…………いや、やっぱり両手剣でやってみる事にするよ。両手で物を振るの結構慣れてるし」

 

 そう言って手に持ったグランソードを二、三回振ってみると、ブォンッ!と現実世界でバットを振った時と同じ唸り声を上げてくれる。うん、やっぱり使っていて心地が良い。

 

「随分と良いスイングをするな。もしかしてリアルで野球でもやってたりするのか?」

 

「ーーッ!? …………あー、えっと、まあ、部活で少しな。もう辞めちまったけど」

 

 ああ、いけないな。野球への未練はもう絶ったつもりだったのに、ふとした拍子に考えてしまう。頭を振って思考を切り替える。

 

折角最新のゲームを初日からプレイするのだ。つまらない事は全部忘れて、今はソードアート・オンラインを楽しむ事だけを考えよう。

 

「それよりもさ、早くソードスキル教えてくれよ。決まるとメッチャ気持ち良いんだろ? 試してみたくてウズウズしてんだ!」

 

「そうだな。両手剣のスキルといったら…………お前には《サイクロン》が合ってるかもしれないな」

 

 そう言ってディアベルはモーションの起こし方や少しタメを入れる事などを細かく教えてくれる。ベータ時代に他の人にも同じ様にレクチャーしていたのか、明確なイメージも交えてくれてとても分かりやすい。

 

 その甲斐もあってか、数回同じ動作をしている内に身体が勝手に動いたと思うと、まるでアニメの剣士みたいに剣に光を纏わせながら豪快な横薙ぎを放った。

 

「おおっ!!」

 

「初ソードスキルおめでとう。今のが《サイクロン》だ。よし、それじゃあ本番だな。今みたいな感じであいつにソードスキルを当ててみてくれ」

 

 指を差した所には新たに出現したフレンジー・ボアがいた。少し近づけば、それだけで少し前にどついてくれたイノシシと同じ目をして突撃してくるが、今度はもうやられる気はしなかった。

 

 何より今はソードスキルを試してみたいという気持ちでいっぱいだ。先程ソードスキルを使った時にはシステムが身体を勝手に動かしていたが、もしそれをシステムに合わせて俺の意志で同じ動きをしたらどうなるのか。

 

 イノシシがもう目と鼻の先にいるという所で、頭の中でイメージした《サイクロン》の動きをスキルモーションに合わせて反映させる。

 

------ーー呼吸が止まる。この感覚は知っている。豪速球を前にして、次の瞬間にはそれをバットの芯で捉えたと確信した時と同じだ。

 

 自分の目ですら追えない程の軌道で振られた剣は確かな手応えと共にフレンジー・ボアを断末魔の悲鳴を上げさせる間もなく真っ二つにする。

 

 この瞬間からもう俺の心は既にソードアート・オンラインに囚われてしまった。

 

 

 

 

 

 

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