SEVERANCE PRODIGY〜武器破壊を極めてゲーム攻略!   作:封魔妖スーパー・クズトレイン

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16話 伝説の勇者たち(レジェンド・ブレイブス)

 無事弟子入りした俺はそれからまた何時間も掛けてひたすら岩を砕き続けていた。キリト 師匠(せんせい)曰くこの力を上手く使えるようになれば、強力なソードスキルを使用するモンスター相手に有効打となりえるらしい。

 

 ゾーンによる体験があったとは言え、何故急に物の壊れやすい箇所が分かるようになったのかは不明であるのに、修行をしたら使えるようになるなんて上手い話があるのかと最初は疑問に思っていたが、続けていく内にどのような角度から衝撃を与えれば効率良く壊せるかが分かっていき、少しずつではあるが岩を破壊するまでに掛かる時間が短くなっていった。

 

 こうして手応えを感じているし、このままずっと修行に明け暮れたい所ではあるのだが、そう言っていられないのがレベル制MMOだ。

 

 俺のレベルは攻略集団の中でも上の方ではあるが、だからと言ってレベリングを疎かにしてはいざという時にレベルが足らずに呆気なくやられてしまうなんて事もあり得る。戦いの中で死んでも構わないとは思っているが、それはあくまで全力で攻略に挑んだ結果であるべきだ。

 

 そういう訳で、さて何か美味い狩りは無いものかと《アルゴの攻略本 第二層編》をめくろうとした所で、インスタントメッセージにてフィールドボスである《ブルバス・バウ》の討伐に参加しないかとお誘いが来た。

 

 フィールドボスを相手に出来るなら経験値も報酬もかなり貰えるので、それはとても有り難いお話……なのだが…………

 

「平均レベルはこっちが上なんや! 四の五の言わんとアタックはわいらに任せい!!」

 

「いいや! ディアベルさんの遺志を継ぐ俺たち《ドラゴンナイツ》が最前線に立つ!!」

 

「なぁにがドラゴンじゃ、さぶイボ立つわ! 格好だけディアベルはんと同じにしたからゆうて後継者気取りはやめてもらおか。ディアベルはんの遺志を正しく受け継いどるんはわいら《アインクラッド解放隊》や!!」

 

「ふん、大層な名前に見合った実力があるとは思えないがな……!」

 

「なんやとぉ!!」

 

 と、開始直前からこの有様だ。

 

 二人とも自己顕示欲が強い所はあったものの以前はディアベルというリーダーが居たために上手くまとまっていたが、第二層に入ってからはこうしていがみ合いを繰り返している。最近では二つに分かれた集団のメンバー達の間でも険悪なムードが漂ってきている始末だ。

 

 何とも面倒臭い状況だが、このまま喧嘩させていては埒があかないし、何故か先程から辟易している幾人かのプレイヤーが「お前何とかしろよ」と言いたげにチラチラこちらを見てきている。

 

 …………しょうがないか。頭をガシガシ掻きながら二人の間に割って入る。

 

「…………あー、ちょっと良いっすかキバオウさん。役割分担なら俺としては出来れば解放隊の方にタンク役をして貰いたいんだけど」

 

「なんやぁ、ジブンこいつの味方するつもりかい!」

 

「いや、違うって。今回のボス、突進の威力が結構ヤバイみたいだし、突破されて被害を出さないためにもレベルが高い方が盾をした方が安全だと思うんだ。報酬は少し減るかもしれないけど、ここはリンドさんにひとつ貸しって事にして引き受けてくれねえかな?」

 

「むっ……んん〜〜……」

 

 キバオウは腕を組んで思案する。こうしてあれこれ考える事で冷静さを取り戻してくれれば、後は何とかなるだろう。

 

「…………まあ、確かにジブンの言うことにも一理あるわな。しゃーない、今回は引き受けたるわ」

 

「…………すまないなキバオウさん。俺も少し熱くなりすぎた」

 

 キバオウが引き下がってくれたお陰でリンドも冷静になってくれた。

 

 そうして、無事役割分担が決まった事で、二人は自分達のチームの所に戻りアタッカー役とタンク役に分かれて編成を組み直し始める。

 

「お疲れ様。立派な仲裁役だったわよ」

 

 そう声を掛けられて振り向けば、第一層の時と同じ様に野暮ったいウールケープのフードを深く被ったアスナが立っていた。

 

 こうして会うのはボス戦以来だが、あれから更に心境の変化でもあったのか以前の様な鋭い雰囲気は完全に消えていてどこか余裕さえ感じられる。

 

「…………俺、こういうの柄じゃないんだよ。それにどうせなら俺よりも可愛いの女の子が説得した方がみんな素直に聴いてくれたんじゃないか?」

 

「残念でした。わたしは今回こちらの出歯亀君(・・・・)と一緒に取り巻き狩りに回るから、ボス攻略の揉め事はそちらで解決して下さい」

 

「……はは、どうも出歯亀君です」

 

 アスナに引きずられながら力無く笑う出歯亀君ことキリト。

 

 ビーターとして疎まれている手前、フィールドボス戦に参加し辛いが無事に終わってくれるか心配だったらしく態々《隠蔽(ハイディング)》スキルを使用して見守ろうとしていた所をアスナに見つかりこうして無理矢理引きずり出されてしまっていた。

 

 周囲から剣呑な眼差しを向けられてもなお平然とキリトと組もうとする彼女はやはり強い子なのだと改めて尊敬する。

 

「それで、あなたは今回あの人たちとリザーブに回るのよね。名前は確か…………《伝説の勇者たち(レジェンド・ブレイブス)》だったかしら?」

 

「伝説の…… 勇者たち……か」

 

 勇者。その単語にチクリと胸に痛みが走る。

 

 …………いや、ここはゲームの中なのだ。人様の名乗りにケチを付けるのは無粋と言うものだろう。

 

「あれ? そういえば、エギル……あの斧タンクの彼はどうしたんだ?」

 

「エギルさんはね、何かトラブルがあったらしくて来れないみたい」

 

「それで彼らが本隊にか。装備は随分と良いみたいだけど……心細いなぁ」

 

 キリトはそうぼやいてしまうのも仕方がない。

 

 エギルとは第一層のフロアボス攻略に一緒に参加しただけであり、それも別々のパーティーで戦っていただけだが、それでもあの威厳ある見た目と落ち着き払った雰囲気、ここまで鍛え上げたレベルと戦闘技術は居るだけで安心感を覚えてしまう程だ。

 

 現状ではあの人は数少ない頼れる大人というやつだ。先程の両集団のいがみ合いだって、彼ならば真っ先に仲裁に入ってくれた事だろう。

 

 …………考えてみれば、今回は初となる二大派閥合同にして頼りになるエギル率いるタンク集団不在のボス戦か。何だか無事に終わってくれそうにない気がしてきた。

 

「野郎どもー、そろそろ始めるでー」

 

 俺の心配を他所に、キバオウが何とも呑気な掛け声で攻略開始の宣言をする。

 

「おっと、もう開始か。それじゃ、また後でな。大丈夫だとは思うが一応気をつけろよ」

 

「じゃあね、アシュロン君」

 

「…………ああ、また後でな」

 

 そう言って二人と分かれた所でふと、そういえばこれから一緒に組むのにまだブレイブスのメンバーに挨拶をしていなかったのを思い出す。皆がボスのいる盆地へと向かう中をすり抜けて、金属鎧をガチガチに着込んだ集団の元へと急いで駆け寄った。

 

「すみません、遅くなりました」

 

「おお! 貴卿がアシュロン殿であるか。噂は予々聞いている。我が名はオルランド、真の勇者たる者達が集うギルド《伝説の勇者たち(レジェンド・ブレイブス)》のリーダーをしている! 此度の猛牛退治、よろしく頼むぞ!」

 

「え? あっ、はい。よろしくお願いします……」

 

「なに、何も恐れることは無い。此度の戦い、我ら常勝の勇者たちが一緒なのだ! 如何に強力なフィールドボスであろうとも、我が宝剣デュランダル(・・・・・・)の鯖にしてくれようぞ! わはははははっ!!」

 

 腰に差した《スタウトブランド》を抜き放ち、豪快な高笑いと共に高らかに掲げる聖騎士様。…………何と言うか、形から入る人みたいだ。

 

「そ、それにしても武器だけじゃなく防具までかなり鍛え上げられてますね。そこまで強化するのかなり大変だったんじゃないっすか?」

 

「むっ…………う、うむ。ここまで仕上げるのに随分と苦労した。だが、そのお陰で我らは若干平均レベルが足りていないにも関わらず、こうして攻略チームの盾として活躍する栄誉を賜っている。つまり、そう、この武器や防具の輝きは、我らの汗と涙の結晶なのだ!!」

 

 …………どうしよう。今の一言でレア装備特有の輝きが、一気に汗臭い何かに見えてきた。俺も一応、元野球少年だったから友情や努力は好きではあるのだけど、不思議と今はちょっと距離を置きたい。

 

「…………ええっと……とりあえず……ボス戦、行きましょうか」

 

「おお、そうであったな! よし、皆の者、これより出陣である! 我ら勇者の力を攻略チームの者たちに見せてくれようぞ!!」

 

 オルランドの言葉に他のメンバーが雄叫びを上げる。今の俺にはこの空気についていけそうにないため、完全に蚊帳の外だ。

 

 親友との死別でセンチメンタルな気分なのに周りが浸らせてくれない。その事に思わず溜め息がもれてしまった。

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