SEVERANCE PRODIGY〜武器破壊を極めてゲーム攻略!   作:封魔妖スーパー・クズトレイン

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17話 vsステーキX人前

「皆の者! ゆくぞ、必殺のフォーメーション γ(ガンマ)「こっちは回復終わったぞ、スイッチだ!」───は次の機会にして、戦略的後退だ! ふはははははっ!!」

 

「ちょっ!? オルランドさん!?」

 

 そう高笑いしながら走り出したオルランドの背を慌てて追いかけて、四本角の巨大牛《ブルバス・バウ》の元から離れる。

 

 現在フィールドボス戦はアタッカーのドラゴンナイツとタンクの解放隊との連携があまり上手くいっておらず、リーダー同士が怒鳴り合いをしてはいるが概ね順調に進んでいる。今後の事を考えたら寧ろこの場でギルド間での連携の欠点を洗い出せたのは大きな収穫と言っても良いだろう。

 

 そして、フィールドボスの取り巻きである《ウインドワスプ》の討伐に関しては事前情報よりも数が多いが、案の定攻略集団最強の二人が鬼の様に狩っているため心配の必要は無さそうだ。

 

「それにしても、ボス戦参加は初めてって聞いてたけど、随分と良い連携をしますね、このチーム」

 

 そう、予想外だったのはブレイブスの動きの良さだ。

 

 平均レベルの低さに最初は不安を覚えていたが、隊列の組み方やスキル使用の連携などをマスターしている。それに加えてしっかりと強化された最高ランクの装備による防御力の高さによってタンクとしての役割をメインである解放軍よりも上手くこなしている。

 

「うむ、我らはこのアインクラッドに来る前より、別のアクションゲームを嗜んでおってな。一本道のマップに押し寄せるモンスターを切り捨て続ける単純なものではあったが、その経験のお陰でこうして戦えておるのだ」

 

「ああ、そのゲームなら俺も暇つぶしに少し遊んだ事がありますよ。…………あれ? でも、確かあれって六人一組でやるゲームだった筈───」

 

 そう口にした所で、ふと俺達の頭上を通り過ぎていく一匹のウインドワスプが気になってしまった。

 

 そいつはプレイヤー達には目もくれずに真っ直ぐブルバス・バウの元へと飛んでいき、巨大牛のイチボの部分に着地すると怪しい緑色をした毒が滴る針を剥き出しにして───

 

 ──ブツっ!!

 

「モ゛ッ!?」

 

「「「「イ"ッ!?」」」」

 

 ブルバス・バウのお尻目掛けて勢いよく針を突き刺す嫌な音がこだまし、声にならない悲鳴を上げる哀れな牛とその痛みに共感して思わず自身の尻を押さえてしまった俺を含む数名のプレイヤー達。他の奴らも何が起こったのか分からずに固まってしまい攻撃の手が止まってしまう。

 

 そして──

 

「ブモ゛モ゛モ゛オオオォォォッ!!」

 

 突如としてブルバス・バウが大声を上げ、これまでのアルゴリズムを無視した無茶苦茶な動きをし始める。

 

「なっ!?  暴走(バーサーク)するなんて聞いてねえぞ!?」

 

  暴走状態(バーサークモード)は特定のモンスターが体力を削られるなどした際になる状態のことで、その名の通り怒り狂って激しい攻撃を繰り出してくるのだが、その分行動が単調になったりとプレイヤーにとってもメリットになることはある。

 

 だが、それは相手が暴走すると分かっていることが前提であり、今回のように急に変化してしまえばそれに対応出来ずに戦況が悪化してしまう。

 

 フィールドボスが暴走状態になるなんて攻略本には載っていなかったし、先程の特殊演出からしてこれもベータ版との差異というやつだろう。考えてみれば、牛の取り巻きに蜂なんていう全く関係無さそうな組み合わせの時点で疑うべきだった。

 

 ブルバス・バウの突然の猛攻によって戦線は崩壊し、ほとんどのプレイヤーがHPを半分くらいにまで減らしてしまっている。

 

「いかん! 皆の者、急いで救援に向かうぞ!!」

 

「そんな!? まだ回復も済んでないのにあれの相手をするなんて流石にヤバイですよ! ここは一旦退きましょう!」

 

「いや待ってくれ! 取り巻きを担当している集団に頼りになる奴がいる。そいつが来てくれるまで持ち堪えてくれ!」

 

 幸い取り巻き部隊との位置はそれ程離れてはおらず、向こうもボスの異常に気が付いている様子ではあるためすぐに助けは来るだろうが、それまでにボスの注意を引いておかなければ最悪死者が出てしまうかもしれない。

 

 そして、今現在タンクとしての役割が辛うじて出来るのは《レジェンド・ブレイブス》以外にはいない。

 

「そういうことであるならば、がぜん引くわけにはいかぬな!」

 

 オルランドはそう言って前に出ると、怒り狂う雄牛に向けて《 威嚇(ハウル)》の雄叫びを上げる。その堂々とした姿に他の盾持ちのメンバーも顔を見合わせて頷くとオルランドに並んで構えを取った。

 

 レジェンド・ブレイブスに 憎悪(ヘイト)を向けたブルバス・バウは角が四本も生えた頭を低く構えて、逞しい前足で地面を数回掻くと次の瞬間には荒い鼻息をあげて真っ直ぐ突っ込んできた。何度も見た突進攻撃だが、暴走状態であるためにその迫力は先程とは段違いだ。

 

「皆の者、覚悟を決めよ! 今こそ力を見せる時ぞ! 我らッ、《 伝説の勇者たち(レジェンド・ブレイブス)》也っ!!」

 

 ズダアァンッ! とまるで車同士の衝突事故みたいな音が鳴り響く。

 

 ブルバスの力は凄まじく、三人の益荒男達はズルズルと数メートル押し切られ、HPもレッドゾーンまで削られる。だが、耐えた。

 

「今だ! 奴の膝関節を狙え!!」

 

 ありったけの大声で叫びながら、右前足に《サイクロン》を放つ。それに合わせ、ブレイブスの残りのメンバーも反対の足をソードスキルで攻撃する。

 

「ブォモオオォォ!!」

 

 両前足を攻撃された猛牛は叫び声を上げながら前屈みに倒れ込む。

 

GJ(グッジョブ)! スイッチだ!」

 

 その言葉と共に駆け付けてくれたキリトとアスナがボスの弱点である額のコブに渾身のソードスキルを叩き込む。

 

 二人の攻撃によって、ブルバスのHPはみるみる減っていき──

 

「ブルルモオオオォォォッ!!」

 

  後一撃(・・・)という所で止まってしまった。そして、身の危険を感じたブルバスは自身の身体に鞭打って再び立ち上がってしまう。

 

「ちくしょう! 後少しなのに……!」

 

 後一発、奴の額にソードスキルを浴びせれば決着が着いたのだが、ああして立ち上がってしまうと攻撃は届かない。盾になれるプレイヤーは居ないし、足をチマチマ切り続けるのも非常に面倒だ。

 

「だいじょーぶ! 十分削れた。あとは……!」

 

 その場で思い切り飛び上がるキリト。高いステータスにものを言わせたかなりの跳躍ではあったが、それでも巨大牛の額には届かない。

 

 だが、そこでキリトは《ソニックリープ》の構えを取ると──

 

「はああああぁぁぁぁぁっ!!」

 

「なにっ! 飛んだだと!?」

 

 直進系のソードスキルは確かにシステムの力で加速することが出来るが、それを飛翔するのに使えるとは思わなかった。

 

 弱点のコブを切り裂いたことで、ブルバス・バウのHPは今度こそ完全に削り切られ、断末魔の叫びを上げながらその身を爆散させた。

 

 

 

 

 

    ─────────────────

 

 

 

 

 

「お疲れさん。大したもんだな、あんなソードスキルの使い方思いもしなかったぜ」

 

「ふふん、どうだ。《空中ソードスキル》。お前もフロアボス戦でやってたけど、こんな風にソードスキルにはまだまだ応用の余地があるんだ」

 

 そう得意顔で教えてくれるキリト師匠。成る程、このSAOというゲームはまだまだ奥が深そうだ。

 

「いやはや、実に天晴れな武者振りであった黒衣の剣士殿」

 

 拍手をしながらキリトに声を掛けるオルランド。他のメンバーがここ一番でフィールドボスのLAを取り損ねたことに落胆を隠せないでいる中で素直に相手を称賛するとは中々の精神力の持ち主だ。その英雄的精神をつい先程から大音量での反省会(相手の罵り合い)をしている二大組織のリーダー達にはぜひ見習って欲しいものだ。

 

「いや、そう言うアンタたちもナイスガッツだったぜ」

 

「うむ。一時はどうなるかと思ったが所詮は獣畜生。我らの敵ではなかったな!! この勝利を祝して今宵は大いに飲み明かそうと思うのだが、良ければ貴卿らも参加せぬか?」

 

「あー…………悪い。実はこの後にはもう先約があって──」

 

「この人はこれから次の街でわたしと食事をする約束がありますので。……キリト君、きっちり聞かせてもらいますから。……こそこそ使っていた変なソードスキルとかLAボーナスとかその他にも色々。ケーキでも食べながら、ね」

 

 あ、キリトの目が死んだ。

 

「そ、そうであるか……。では、アシュロン殿、貴卿はどうかな? 我としてはこの期に貴卿と親睦を深めたいのだが」

 

「………………すみません。せっかくのお誘いですが、これからちょっと修行をする予定なので俺も参加できません」

 

「なんと! フィールドボスとの戦いの後であっても己を鍛え上げると申すか! その強さに対する貪欲さ、誠に天晴れである! そうであるならば仕方ない。我らはこれにて失礼するとしよう」

 

 そうしてオルランドは「次はフロアボス戦で」と言葉を残すと仲間を引き連れて高笑いと共に去っていった。

 

「…………ねえ、アシュロン君。何の修行をしているかは知らないけど、余り根を詰め過ぎるのも良くないと思うわ。フロアボス戦があった日くらいはゆっくり休むべきよ」

 

「…………心配してくれるのは有り難いけど、俺なら大丈夫だ。後もう少しで練習している技のコツが掴めそうだから、感覚を忘れない内にものにしたいんだ」

 

 アスナの心配は嬉しいが、それでも今は立ち止まっていたくはない。それに、仲間達と楽しそうに話をするオルランドの姿を見てしまうと、どうしてもディアベルと一緒にいた頃のことを思い出してしまう。

 

 ああやって、アイツやキバオウ、リンド達と談笑しながら歩いていたのがもう遠い昔の様に思えてきて────

 

「そんじゃ、お邪魔虫の俺は退散しますんで、お二人は楽しくディナーに行ってきて下さいな!」

 

 そう言ってキリトとアスナの制止を振り切って急いでこの場を後にする。

 

 ………………胸を刺激し続ける鋭い痛みに思わず叫び出したくなるのを必死に我慢しながら。

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