SEVERANCE PRODIGY〜武器破壊を極めてゲーム攻略!   作:封魔妖スーパー・クズトレイン

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2話 楽しいだけの世界の終わり

「アシュロン、今だ!」

 

「分かってる!」

 

 蜂型のモンスター《プリックワスプ》の攻撃をディアベルが盾で防いでいる間に横から一撃を入れて四散させる。それが最後の一匹だと気付いた時には安堵の溜め息と共にその場に座り込んでしまった。

 

「お疲れ様さん。随分と怖がってたがアシュロンは虫は苦手だったか?」

 

「いや、苦手云々以前にあれは流石に怖いだろ」

 

 イノシシよりもHPの少ない雑魚敵とはいえデカイ蜂というのはなんとも恐怖を覚えるものだ。その大きさに比例した羽音を聞くと背筋が凍り付くし、針の攻撃を受けた時なんかは痛みが無いにも関わらず意味不明な悲鳴を上げて転げ回り、それを見たディアベルが腹を抱えて大笑いしたため危うく二人揃ってやられそうになった。

 

 そんなこんなで様々なレクチャーを受けながら二人で夢中になって狩りを続ける事数時間、単純な戦闘なら何とか様にはなってきたけどシステム面については全く知らない事ばかり…………いや、知れば知る程この世界の奥深さを思い知らされる。正直この世界を自分と同じ人間が創り上げたなんてちょっと信じられないくらいだ。

 

 草の上にゴロリと転がってメニュー・ウインドウを開く。時計を確認すると時刻は既に五時半近くになっていた。

 

「もうこんな時間か。もうそろそろ晩飯の時間だし、一旦ログアウトしなきゃいけないかな」

 

「そうだな。このゲームは精神的な消耗がかなり激しいから、ここら辺で休憩した方が良いだろう。俺も一旦落ちて次は八時くらいに入ろうと思っているがアシュロンはどうする?」

 

「モチ、やるに決まってるっしょ! こんなに楽しいゲームなんだぜ。もう他の事で暇つぶしなんて出来ねえよ!」

 

「了解だ。それじゃあ八時にログインしたらメッセを飛ばしてくれ。言っとくが五分でも遅れたら置いてくからな」

 

 そう言って意地の悪い笑みを浮かべてはいるが、こいつなら二十分でも三十分でも待っていてくれるだろう。まあ、流石に待たせるのは悪いだろうから五分前には入れる様にはするつもりだが。

 

「所でメッセージってどうやって送んの?」

 

「ああ、そういえばまだ教えてなかったな。まずはメニュー・ウインドウにある…………」

 

 ディアベルはそのまま数秒程フリーズしていたと思っていたら次の瞬間には血相を変えてメニュー内のあちこちを押し始めた。

 

「お、おい? いきなりどうしたんだよ?」

 

「無いんだ…………ログアウトボタンが何処にも無いんだよ」

 

 …………………………なんだそれ? つまり、ログアウト出来ないって事なのか?

 

 慌てて俺のメニュー・ウインドウも調べてみるが一番下にあった筈のログアウトと書かれているボタンがすっかり消えてしまっていた。

 

 気が付けば身体が…………この世界における自分自身の肉体、剣士アシュロンのアバターが震えている。

 

 こんな大掛かりなネットゲームのサービス初日だ。多かれ少なかれバグが出てくるのは仕方がないとは思うが、それがフルダイブ中にログアウト出来ないとなれば話は違ってくる。

 

 「嘘だろ? …………ゲームから出られないなんてそんな事無いよな!? 緊急停止ボタンとかそういうの無いのかよ!?」

 

「そんな物聞いた事もない。………………クソ、ダメだ! GMコールも繋がらない! …………馬鹿げた話だとは思うけどオレたちは今自分の意思でログアウトする事が出来ないみたいだ。こうなるともうバグが直るまで待つか、リアルで誰かがナーヴギアを───」

 

 リーンゴーン! リーンゴーン!

 

 その続きを遮るかの様に辺りに鐘の音が響き渡る。時刻を知らせる目的にしてはやけに大袈裟な音量だ。もしかしてログアウト出来ない事と関係があるのか?

 

 そんな疑問が頭の中に浮かんだ直後に突然青い光に包まれる。そして、光が収まったと思うと───

 

「何だこの人の数!? それに、ここって多分最初の街だよな!?」

 

「今のは転移だったのか! でもどうして態々こんな事を?」

 

 広場にはきっと全てのプレイヤーが集められたのだろう。端正に整えられたアバターの顔には怒りや困惑の表情が現れていて、皆が誰に向かってでもなく口々に怒声や悲鳴を放つのが聞こえてくる。その光景は最早数分前までの楽しいゲームとはかけ離れてしまっていた。

 

 そんな中で一人のプレイヤーが「おい! あれを見ろ!」と空を指差すと、そこには【Warning】【System Announcement】という文字が赤々と映し出されていてた。その演出的な表示にはどこか末恐ろしさを感じる。もしこれから運営からの謝罪があるのだとしたら余りにも趣味が悪すぎる。

 

 全てのプレイヤーが固唾を飲んで見詰める中、中央部分よりまるで血の様なドロドロとした液体が溢れてきたかと思うと、それは空中に留まり、広がって何かを形作っていく。出来上がったのは巨大な赤いフード付きローブを纏った人型。フードの中には本来あるべき顔が存在せずポッカリと空洞が広がっているだけだった。

 

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

 

そして呆気に取られているプレイヤー達の事などお構い無しに赤いローブは若い男の声で高らかに告げる。

 

『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

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