SEVERANCE PRODIGY〜武器破壊を極めてゲーム攻略! 作:封魔妖スーパー・クズトレイン
「人族がこの森で何をしている!」
「邪魔立て無用! いますぐ立ち去れ!」
急に乱入してきた俺達に対してエルフ二人は揃って拒絶の言葉を発するが、頭上の!マークがクエスト進行中を意味する?マークへと変わった。
「ここで森エルフに敵対行為──剣を向ければクエスト開始だ」
「う……うん、……別に恨みはないけれど……ごめんなさい」
やはり思う所があるのか、アスナはややためらいながらも森エルフにレイピアの切っ先を向ける。
それによって無事(?)クエストが進行したのか、ハンサムな顔立ちがみるみる険しくなり、イベントMobの黄色いカラー・カーソルも敵対状況への移行──そして、プレイヤーよりも遥かに高レベルである事を示すドス黒いダーククリムゾンへと変化する。
「……愚かな。黒エルフごときに加勢するか」
「……人族にも道理のわかる者がいるということだ。カレス・オーの白騎士よ! 我が方より奪い去りし《
とりあえず信用はしてくれたのか、女剣士はアスナの隣に並び立ちサーベルを構える。
四対一と形勢が一気に不利になったのにも関わらず、森エルフの男はその顔に優美かつ酷薄な笑みを浮かべた。
「…………よかろう。ならば───」
じゃきっ! とロングソードが上段に構えられ
「
次の瞬間、放たれた暴風が如き威圧感に仮想の肉体から冷たい汗がにじみ出る。
成る程、キリトが勝てる相手じゃないと頑なに言うのも納得だ。レベルが高いだけじゃない、対峙している男は剣士としての次元が違った。
「ほら、めっちゃ強そうだろ? やっぱり、ガード専念がいいんじゃ……」
「うるさいわね! わたしはもう決めたのよ、片方だけでも助ける──」
───ギイイィィィンッ!!
「──ぎっ!!」
アスナに向けて振り下ろされた剣を《サイクロン》で咄嗟に受け止めると、ソードスキル同士が激突し轟音と火花が迸る。
ゾーンに入っていたお陰で縮地でもしたのかと思う程の速度で距離を詰めてきた森エルフの一閃になんとか反応する事が出来たが、フロアボスの攻撃をガードした時と同じ様に防御しきれなかった衝撃がジワリとHPを削り、鍔迫り合いをしているこの瞬間にも気を抜けば押し倒されそうだ。
筋力特化型である俺が得意技で迎撃したにも関わらず力負けした。それ程にまで目の前の男はレベルや装備、ソードスキルのブーストに至るまで圧倒的に格上の存在だと思い知らされる。
だが──
「正当防衛成立ね! 覚悟しなさい、このDV男!!」
どうやら、森エルフが攻撃してきた時には既にアスナは奴の背後に回っていたらしい。そこから、ガラ空きとなった背中に向けて渾身の《リニアー》を放つ。
アスナの描く銀色の軌跡は的確に森エルフの弱点を突いた。だが、それによって発せられた音はアバターを切り裂く時に出る鋭いものではなく、まるで鉄板でも叩いたかという様な硬い音であった。
「ヌゥッ……小癪な!」
男は額に青筋を浮かべてアスナを睨みつけるが大きなダメージが入った素振りは見せていない。
「七層レベルの
キリトがそう呟きながらアスナと森エルフの間に割って入り、緑のライトエフェクトをまとった振り下ろしに対して水平斬りの《ホリゾンタル》を使用する。
俺よりも筋力の低いキリトでは真っ向から受け止めようとすれば最悪弾き飛ばされてしまいかねないが、そこは流石キリトと言うべきか、剣同士がぶつかる瞬間にその角度を逸らしていく事で衝撃を最小限に抑えた上に相手の体制をほんの少しではあるものの前のめりに崩してしまう。
そして、その僅かな隙を狙って女剣士が鋭い二連撃を入れた。
「ガハッ!?」
強烈な色彩と衝撃音……クリティカルヒットとなった攻撃に森エルフは白目を剥く。
「見事なものだな」
「……そっちこそ!」
女剣士に褒められて驚いた顔をするキリトだが、すぐにその表情を引っ込めてニヤリと笑いながら返す。
「……何よ。散々勝てないだのなんだの言いながら自分だって結局ノリノリじゃない」
「まあ、俺だけのけ者はゴメンだからな!」
「それじゃあ、全員が良い感じで火が付いたみたいだし、あのゴリラ騎士様をとっちめる為の良い作戦をお願いしますよ。リーダー」
「そうね、お願いするわ。リーダー」
「何だよリーダーって!? ……ったく、良いか? 俺たちの攻撃は森エルフにはほとんど通用しない。だから、ダメージディーラーは黒エルフのお姉さんに任せて、彼女が攻撃するための隙を俺たちで作るんだ。あいつのヘイトは俺が稼ぐからアシュロンは主に盾を狙って防御を崩して、できるならそのまま破壊しろ。アスナはスイッチで奴を翻弄してくれ」
「了解だ!」
「任せて!」
そうと決まれば早速作戦決行だ。
同時に迫る俺とキリトに対して、森エルフは厄介な技巧派のキリトではなく自身よりも力の劣ったパワータイプである俺の方に襲い掛かろうとするが、そうはさせまいとキリトは《ソニックリープ》で瞬時に距離を詰める。
突き技を咄嗟に剣で受け止めるのは至難の業だ。そうなれば当然、相手は盾でガードをする事になる。
「スイッチ!」
すかさずキリトと交代して、悠長に構えられた盾に向けて丁度クールタイムが終わった《サイクロン》を使う。
森エルフはきっとこの攻撃を止めた後に次に攻撃を仕掛けてくるアスナか黒エルフへの迎撃を企んでいるのだろう。だからこそ、この一撃は……《
「はあっ!!」
割れるという確信のもと剣を振えば、甲高い音と共に両断された盾の向こうに目を大きく見開いた森エルフの顔があった。
「シャッ!」
「ッ──!? ちっ!」
そこへ息を鋭く吐きながら女剣士が刃を振り下ろすが、既の所で男は刀身に緑色のエフェクトをまとわせると
「うっ……ウオオオォォォッ!!」
唸り声を上げながら両手で持った剣で打ち合い、そこから黒エルフを強引に弾き飛ばす。その剣には先程にはない荒々しさがあり───それ故に隙だらけだった。
「はあああっ!!」
完全に振り抜いた隙を狙ってアスナがソードスキルを放つ。あのスキルは《オブリーク》。リニアーよりも攻撃範囲は狭い分、威力の高いスキルだ。
「グゥッ!」
ファーストヒットの時とは違い、今度こそダメージが入った事を示す裂傷音と呻き声が辺りにこだます。
男の戦闘スタイルを堅牢なものにしていた盾は無く、HPはもうすぐ半分を切る。ここが攻め時だ。
「スイッチ!」
キリトが叫ぶ。
体制を立て直させない為には、なるべく手数の多いスキルを使うべきだろう。キリトも同じ事を考えたのか三連撃技の《シャープネイル》を発動すると、猛獣の鉤爪を思わせる軌跡を描いて相手を切り刻む。
「スイッチ!」
今度は俺の番だ。
そう思って多段ヒットする《ファイトブレイド》を選択すると、ダメージは期待したよりも入ってはいないが、それでもこの連撃によって大きく怯ませる事には成功した。後は黒エルフに繋げさえすれば───
「──
「───ッ!?」
凛とした女性の声が聞こえた。
若干たどたどしくはあるが、それは間違いなく交代の合図だ。だからこそ、驚きつつもすぐにその場を飛び退けば、次に続いたのはNPCである筈の黒エルフの女剣士だった。
影が走る。まさにその表現そのものと言って良いだろう。
戦いの後で《フェル・クレセント》という曲刀の上位スキルだと教えてもらったその技を使う黒エルフはアスナのトップスピードすら上回る速さで駆け抜ける。そんな彼女を止める方法は森エルフには無い。
必然、その一撃こそがこの戦いの終止符となった。
「グッ……オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ッ!!」
男の断末魔が森を震わせる。
半分あったHPは一瞬で全損し、貫かれ大きく欠損した左脇から徐々に身体がボロボロと崩れ始めている。
「すげぇ……ホントに倒しちまった……」
キリトが感嘆の声を上げる。
黒エルフも俺達もHPは半分以上残っている。つまり、俺達の前にいるNPCはもう命を掛けた奥の手を使う必要はないという事だ。
「ただ……言っておくけど、この先何が起こるかはもう俺にもわからないぞ」
「なによ。少しは素直に喜びなさいよ」
「いやぁ、ベータ時代の経験をこんなデタラメにぶっちぎったのは始めてなんでね。……これはこれで血が騒ぐけど」
「お前ら油断するなよ。アイツが最後に何か仕出かすかもしれないだろ」
ネットの動画なんかで本来なら倒せない筈のボスを倒してみたってやつがあるが、大抵は勝負に勝ってもイベントで負けたりしてストーリーの辻褄合わせをしてくる。自爆攻撃が両者とも使えるのなら、それこそこのタイミングで強引に共倒れを狙ってくるかもしれない。
「……不覚……アァ……実に無念だ……」
もはや亡霊の様な姿になった森エルフはぶつぶつと呟きながら腰のポーチから何かを取り出す。
…………出てきたのは葉っぱで作られた小さな巾着袋だった。
「っ!? それは──」
「なっ!? おい!!」
その袋を見た黒エルフは血相を変え、制止する暇もなく駆け出してしまう。しかし──
「……貴様ごときに……功を譲ることになろうとは……ッ!!」
男は消滅する間際にそう言いながら持っている袋を高く掲げる。そして、黒エルフの細指が袋に触れる直前、巨大な鉤爪が袋を掻っ攫っていった。
「なっ、何!? 鳥……!?」
「鷹……にしたって、デカイにも程があんだろ!?」
人ひとりを楽々持ち上げられるのではないかと思える程に馬鹿でかい怪鳥が俺達のすぐ真上を滑空する。そして、その先でたたずむ
「まったく、騎士という輩は……なぜ、ああも気位だけが高いのでしょうかねぇ……」
男は先程まで戦っていた森エルフと同じ鋭く尖った耳と輝く様なプラチナブロンドの髪を持ち、きらびやかな金色と緑色の衣を身にまとい……騎士の男には無かった底知れない悪意を秘めた細目をしている。
《
カーソルを
「ともあれ、