SEVERANCE PRODIGY〜武器破壊を極めてゲーム攻略!   作:封魔妖スーパー・クズトレイン

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 最後に投稿してから気が付けば三ヶ月も経過。一度は諦めかけましたが、最近面白い二次創作作者様が増えてきて、負けるもんかと再復帰しました。

PS SAOIFにてディアベル復活おめでとうございます!


38話 モルテ

 新しい武器が手に入った事だし、エルフ戦争クエをサクサク進めようとした矢先、アルゴより今日の夕方に三層の主街区である《ズムフト》にて攻略会議が行われるという連絡があった。

 

 流石に主目的である階層攻略を疎かにする訳にもいかず、泣く泣くキズメルと別れて主街区を目指すその道中───

 

 ────キィンッ!……キィンッ!……

 

「この音……剣と剣の戦闘……?」

 

「この辺で聞こえてくるって事は……もしかしてエルフ戦争クエか?」

 

 自身の予想に思わず眉をひそめてしまう。

 

 三層の目玉である大型キャンペーンクエストなのだから腕に覚えのあるプレイヤーならば当然このクエストを受けるだろう。クエストの序盤でも報酬は中々のものなのでSAOの攻略を目指すのであれば寧ろ歓迎するべきだ。

 

 だが、ストーリーの進行によって親睦を深めたキズメルと同じ姿をした存在が自分達の預かり知らない所で死の危機に瀕しているのだと思うとどうしてもモヤモヤとした気持ちになってしまう。

 

 それに、万が一クエストを受けているプレイヤーが俺達みたいに敵対している森エルフの騎士を倒してしまった場合、鷹使い(アイツ)が…………

 

「念のために、様子を見に行こう」

 

「……わかった」

 

 キリトの提案に俺もアスナも頷くと、下手に見つかってしまわない様に身を屈めつつ移動を開始する。

 

 SAOのシステム上、戦闘のサウンドエフェクトが届く範囲はさほど広くない。音の聞こえる方角に向かう事数分、前方の木立の奥で明るい閃光──ソードスキルのライトエフェクトが断続的に瞬いた。

 

 近くにあった古木の幹で姿を隠しながらそっと覗き込むと、揃いの青い胴衣を着たプレイヤー四人とそれらを指揮する藍色の長髪の男、そして緑色のマントとプラチナブロンドの長髪をした森エルフの騎士──俺達が戦った《フォレストエルブン・ハロウドナイト》が何者かと激しく切り結んでいるのが目に入る。

 

「あれは……《ドラゴンナイツ》か。しかも、リンドさんにハフナーやシヴァタの奴まで居るって事はギルドの本隊だな」

 

「しかも、あいつら森エルフ側に味方したんだろう。つまり、あのエルフが戦っている相手は……」

 

 …………キズメルか。そう予測した途端、胸を締め付けられる様な感覚に襲われる。リンド達が森エルフ側に加担した事でどう転ぼうとも残された黒エルフの騎士の末路は既に決まった様なものだ。

 

 やるせない気持ちで目の前で繰り広げられる戦闘を見守る中、盛んに切り結ぶ二人のエルフ騎士が立ち位置を変えた事で今まで緑のマントに遮られていたダークエルフの姿が露わとなる。

 

 森エルフと鎬を削っているのは黒と紫の鎧を身にまとい、褐色の肌に短く切ったスモークパープルの髪をなびかせながら素早く動き回り、ゆるく弧を描くサーベルにて鋭い連撃を放つ黒エルフの男騎士(・・・)だった。

 

 ……目を擦ってもう一度見る。黒エルフの男騎士だった。

 

「…………あれ、ぜってぇキズメルじゃねぇよな」

 

「……あ、あれ〜? 少なくともベータテストのときには同じNPCが登場したんだけどな〜」

 

「もしかして……またベータテストの情報に騙されたパターン?」

 

「……そうかも……しれません」

 

 何だか急に気が抜けてしまった。

 

 まあ、冷静に考えてみれば幾らNPCだからといっても男連中がスタイル抜群の美人エルフに剣を向けられる筈がないよな。

 

「……まあ、いいわ。今回はちょっと嬉しいし」

 

「嬉しい?」

 

「ええ。別のプレイヤーがこのクエストを始めても、もうキズメルは出てこないんでしょう? それってつまり、キズメルはわたしたちだけの仲間(・・・・・・・・・・・・・・・)ってことじゃない?」

 

「……かもね」

 

「なら、やっぱりわたしたちが護ってあげないと!」

 

「そうだな。キズメルと同じ騎士を名乗るつもりなんだ。背中を任される位には強くならないとな」

 

「でも、二人とも忘れるなよ。こっちは生きてる人間だけど───」

 

「あっちはNPCだって言うんでしょ? 耳タコよ」

 

 キズメルが巻き込まれていない事に安堵した為か、何処か緊張感の無い会話をしてしまう俺達とは対照的に、前方では森エルフの騎士が黒エルフの騎士の一撃によって瀕死の重症を負い、続くドラゴンナイツの面々も多人数で攻めたもののまるで子供でも相手にしているみたいに軽々と吹き飛ばされてしまう。

 

「警告に従い立ち去っておれば、このようなことにならなかったものを。愚かな人間たちよ……その愚かさの報いを受けるがよい」

 

 残りのHPが半分を切ったリンド達にダークエルフはサーベルを容赦なく振り下ろすが既の所で森エルフが受け止め、ソードスキル同士のぶつかり合いから発生した衝撃波が周囲の大木を震わせる。

 

 それでも最早逆転は不可能と悟ったのだろう。追い詰められた森エルフの騎士は悔しさに顔を歪ませながらも鋭い声で叫んだ。

 

「カレス・オーの聖大樹よ! 我に最後の秘蹟を授けたまえ!」

 

 その叫びと共に森エルフの胸元辺りから放たれた鮮やかな黄緑色の光が周囲を激しく照らし出し、その光に包まれた二人のエルフのHPが一瞬で根こそぎ削り取られる。

 

 自爆攻撃によりどちらのエルフも助からない。まさにキリトが言っていた通りの展開だ。

 

 力無く倒れた森エルフが最後にリンドに秘鍵を託して消滅すると、それでクエストが無事進行したのかハフナーが大袈裟なため息を漏らし、それを皮切りに他のメンバーも緊張が緩み、エリートMobがいかに恐ろしかったかについてワイワイ雑談を始めだした。

 

 そんな一団の中で、一人のプレイヤーに視線が止まる。そいつは痩せた男で、武器はキリトと同じアニール・ブレード。フードを目深に被ったその姿は見るからに怪しい人物なのだが、注視してしまった理由はその男が───

 

「どうやら、無事終わったみたいね。見つかると面倒だし、もう行きましょう」

 

「……あ、ああ。そうだな」

 

 二人には伝えるべきだろうか? ……いや、あの男の事を何も知らないのに変な事を言って不安にさせるのはよそう。この後の攻略会議の場でリンド達と話す機会はあるだろうし、その時にそれとなく聴いてみれば良い話だ。

 

 そう考えて頭を軽く振って思考を切り替えると、先を行くキリトとアスナの後を追いかけた。

 

 

 

 

 

   ─────────────────

 

 

 

 

 

「うわ……すっごい大きな木……!」

 

「木……て言うか、もうビルじゃねぇか、これ!」

 

「中身も完全にビルだぞ。天辺が確か二十階だからな。上がり下がりは面倒だけど、そのぶん最上階からの景色は絶景だぜ」

 

 《ズムフト》には何十メートルにも伸びた超巨大木が三本もそびえ立っており、どうやらその内部をくり抜いて町を作っているらしい。森がテーマの層の主街区なので何となくツリーハウスが沢山ある街を想像していたのだが、そんな予想を軽々と超えてくるSAOの世界観に改めて驚かされてしまった。

 

 三本の大樹に囲まれる様にして作られた転移門広場には多くのプレイヤーでごった返していて、その中には初期装備だったり非武装の者までいる。きっと新しい層の観光や主街区内だけで達成できるクエストを求めて訪れてきたのだろう。

 

 顔を輝かせて忙しなく行き交うプレイヤーを見ていると自分達が進めている攻略がこうして多くの人達に良い影響を与えているのだと思えてきて何だか嬉しくなってくる。

 

 そんな感想を抱きながら人波をかき分ける様にして入った樹の内部は年輪模様がくっきり浮き上がる木の温もり満載の空間となっていて、部屋の真ん中には大きな螺旋階段が天井を貫いてそそり立つ。

 

「ねぇ、早く行きましょう! 一番に着いた人が部屋を決めることにしますからね!」

 

「あっ、きったね!!」

 

 突然競争が始まり、果てしなく伸びた螺旋階段をアスナとキリトが猛スピードで上っていく。

 

 出たよ、敏捷値ハラスメント。フィールドでは俺のペースに合わせてくれるのにこういう時にはトップレベルのスピードを見せつけてきやがる。まあ、きっと勝者となるアスナならば下手な部屋は選ばないだろうし、今回はゆっくりと後を追いかける事としよう。

 

 すぐに二人の姿が見えなくなった為、声を頼りにのそのそと階段を上っていくが階をまたぐ毎にアイテムショップや飲食店、時には何を売っているのかも分からないヘンテコな店まであって結構面白い。現実の世界ならば途中で息が切れそうなものだが、SAOでは無茶な動作をしない限り疲労は感じないので楽しんでいられる。

 

 そうして、最終的にいかにもスイートなお部屋が並ぶ最上階へと到着すると、同時にその内の一室から「なんでここにいるのよ!!」「理不尽!!」という二つの叫び声が響き渡る。どうやら、いつもの痴話喧嘩が始まったらしい。

 

 あーあ、あの二人またやってるよ。アスナが機嫌を直すまで今度はどれくらい時間が掛かるかな? 面倒臭いなぁ、と考えながらドアノブに手を伸ばした所で、ふと妙案を思いつく。いっその事このまま逃げてしまおうか?

 

 幸い扉の向こうからはこれ以上の叫び声(シャウト)は聞こえないから大事になる心配はなさそうだし、丁度お腹も空いてきたので良い機会だ。ほとぼりが冷めるまで何処かで食事でもしていよう。

 

(悪いなキリト。恨むのなら俺を置き去りにした自分の敏捷値を恨むんだな)

 

 心の中でそんな捨て台詞を吐きながら、もと来た道を引き返すのだった。

 

 

 

 

 

    ─────────────────

 

 

 

 

 

「オレたちは、おまえら一般プレイヤーを解放するために戦っているんだ! 優先されて当然だろ!」

 

 最上階から少し降りた階にあるレストランにて注文した料理を幾つか平らげた所で、入り口付近のテーブルから怒鳴り声が聞こえてくる。

 

 見れば青い胴衣を着た金髪で大柄な男──ハフナーとその仲間(エルフクエの時に居たナガと呼ばれていたプレイヤー)が観光中らしきプレイヤーの一団と何やら揉めているらしい。

 

 ハフナーとは知らない仲ではないし、このまま放置して《ドラゴンナイツ》ひいては攻略集団全体の印象を悪くするのは得策ではない。それにもしかしたらエルフクエストの時に居たフードの男についても何か聴けるかもしれない。そう思った俺は食事を中断してハフナーの背後から声を掛ける。

 

「よう、ハフナー! お前らもこれから飯か?」

 

「──ッ!? ……アシュロンか。おまえは一人なのか? ブラッキーたちはどうした?」

 

「あー……その、なんだ……三十六計何とやらだ。そんな訳で今あっちのテーブルを一人で使ってるし、良かったら一緒にどうだ?」

 

 俺の誘いにハフナーは渋い顔をするが、少し考えてから「まあ、いいか」と了承してくれた。

 

 そんなこんなでハフナーとその仲間一名とで食べかけの食事や空になった皿が積まれたテーブル──その光景を見たハフナー達に苦笑いされた──につく。

 

「俺もこの店にはついさっき来たばっかなんだけどよ、オススメにあるオーガラットの香草焼きはかなり美味かったぜ。あとスティッキーマイマイのチーズスープも結構イケる。逆にグロキノコのグロソースソテーは匂いがキツくて───」

 

「ありがとさん。オレたちは無難にこのサンドイッチにするわ」

 

「ええー、そりゃねえよ、ハフさん。せっかく高そうな店に来たんだしもっと面白そうなの頼もうぜ」

 

「あのなあ、ナガ。この前もそう言ってとんでもねぇモン食わされたの忘れたのか?」

 

 新たな味覚の開拓をしているのではと疑う様な料理が出てくるのはSAOでは日常茶飯事であり、俺もせっかくの機会だからとディアベルやキリトの制止を無視してそういうゲテモノをよく口にしているが、結果は大抵お察しだ。

 

 ある程度歳が近いのもあって、ハフナー達はサンドイッチを俺は追加注文していた料理を食べながらまるで学食みたいなノリで世間話が始まる。

 

「そういや、キバオウさん達がギルド結成クエストやってるの見かけたけど、《ドラゴンナイツ》はもうやったのか?」

 

「ああ、ついさっき、やっと終わらせたとこでな。あと、ギルドの名称は《ドラゴンナイツ・ブリゲード(D K B)》に決定した」

 

 ドラゴンナイツだけでも良いと思うのだが、何故ブリゲートの一単語を態々足したのだろうか? まさか《アインクラッド解放隊(A L S)》に対抗して頭文字三つになんてくだらない理由じゃないだろうな?

 

「そういうおまえらは転移門の有効化すら放り出して初日から何やってたんだ?」

 

「ん? ああ、そりゃあ、もちろんこの階層もう一つの目玉のエルフクエだよ」

 

 別に隠す必要もないと思っていたが、俺の一言にハフナーは何故か突然表情を変える。

 

「……なあ、アシュロン。ブラッキーのやつはなんでそんなに急いでエルフクエを進めてんだ?」

 

「え? なんでって、報酬は良いけど時間が掛かるからフロアボス戦に間に合う様にって話だけど」

 

「……それは何としてでもフロアボスに挑む前にエルフクエをクリアしようとしてるって意味か?」

 

 …………一体何を言っているだ?

 

 ハフナーが何故ここまで食い付いてくるのか分からずに困惑した時、ある男の存在が脳裏に閃く。

 

「……もしかして、お前ら今朝一緒にいたフードの男に何か吹き込まれたのか?」

 

「──っ!? な、なんでお前がモルテのこと──」

 

「ナガッ!!」

 

 モルテ……それがあの男の名前なのか。そして、ハフナー達の反応から察するにモルテはギルドにとって秘匿にしておきたい存在……恐らくベータテスターなのだろう。

 

 もちろん、ただのベータテスターであれば特に問題はなかった。こちらにはビーターのキリト様がついているのだ。情報アドバンテージで負ける事はほぼ無いだろうし、そもそも張り合うつもりも無い。

 

 だが、モルテという男に関してはそれだけで話を終わりにしてはならない理由がある。

 

「……ハフナー、そのモルテって奴を信用するのはやめた方が良い。俺達はアイツがキバオウさん達と一緒にギルド結成クエストをやってる所を見たんだ」

 

「はあ!? そんなのわかるわけねーだろ? あいつずっとフード被ってっから誰も顔なんて見たことねぇんだぞ!?」

 

「でも、SAOじゃアバターの体格は変えられねぇし、姿勢だってそう簡単に変わるもんじゃねえ。俺なら、それだけ分かれば顔なんか見なくたって同じ奴だって分かんだよ」

 

 リアルにいた頃から体付きを見ただけで個人を特定する事が出来たが、せいぜい相手がスポーツを嗜んでいるとかどれ程筋トレに励んでいるかとかを知れるだけだったので、まさかこんな風に役に立つ日が来るとは思っても見なかった。

 

 俺の言葉にハフナーは眉間に皺を寄せて深く考え込み、隣に座るナガはそんなハフナーを不安そうにチラチラ見ている。

 

 やがて、ハフナーは大きく息を吐くと渋い顔のまま首を小さく振った。

 

「確かにオレもモルテの野郎はいけ好かねぇけど……もしおまえの言うことが本当だとしてもそれに一体何の意味がある? ベータテスターが二つのギルドに取り入って攻略の手引きをしたとして、それで何か悪いことになるとは思えねぇな」

 

「それは……」

 

 確かにモルテの行動は不可解だが、それによって奴に何の徳があるのかはさっぱり分からない。エルフクエストにありもしない報酬があると嘘を吹き込んだとして、今更互いに意識し合っている二大派閥の競争を激化させても何も変わらないのではないだろうか?

 

 俺が言い淀んだのを見て、これで話は終わったとばかりにハフナーは席を立つ。

 

「……一応このことはリンドさんに伝えとくが、それであいつをどうするかはあの人の判断次第だ。追い出すのならせいせいするし、泳がすのならオレもモルテのことは気にかけておく」

 

 そう言って最後に「じゃあな」と別れを告げるとハフナーはナガと共にテーブルから離れていく。その背中を見つめながら尚も思考を走らせる。

 

 両ギルドに階層攻略にあまり必要のないエルフクエストをさせたとして、モルテの狙いは何だ? 迷宮区にあるアイテムの独占? いや、例えそうだとしても少人数での攻略には限度があるし、そこまでする程の旨みがあるとも思えない。なら、エルフクエストの進行過程に何かあるのか? それならキリトやアルゴに相談して───

 

「いやぁ、サスペンスものみたいですっごいドキドキしちゃいましたよぉ。こんなことならポップコーンとコーラ買っとけばよかったですねぇ」

 

「──ッ!?」

 

 突然、背後から聞こえてきた何処か少年っぽい無邪気さと、芝居っぽいワザとらしさが同居した声。

 

 その声に驚いて振り向けば、背後に居たのはダークグレーの鱗片鎧(スケイルアーマ)を着込み、細かい鎖をフード状に編んだ鎖頭巾(コイフ)から覗く口許に大きな笑みを浮かべる男。

 

「どうもー、自分、モルテってもんです。名前の由来はとってもモテルから、じゃあないんですよねー残念ながら、あはははー」




 アシュロンの特殊能力については後付け設定みたいですが、第一層の攻略会議にてケープを着込んだアスナを一目で女の子と見破ったりと一応伏線らしいものは用意していました(言い訳)。
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