SEVERANCE PRODIGY〜武器破壊を極めてゲーム攻略! 作:封魔妖スーパー・クズトレイン
モルテ──探りを入れていた張本人の思わぬ登場に息を呑む。
ハフナー達が立ち去った後にこうして一方的に話しかけてきたのを考えると少なくとも俺がモルテの事を問いただした時には既に背後に居たのだろう。
恐ろしいのはその隠蔽の熟練度だ。看破スキルをそこそこ上げている俺やDKBの主力であるハフナー達、他にも沢山のプレイヤーが居るこの場で誰にも見破られずに隠れ続けていられたのを見るにそのレベルはあのアルゴにも引けを取らないのかもしれない。
それ程にまで完璧に隠れていたのにこうして出てきたのはやはり嗅ぎ回っていた俺に余計な真似はするなと釘を刺しに来たのだろうか?
だが、ここは圏内。例えこいつがどれ程の剣の腕を持っていようが、今この場でこちらを害するのは絶対に不可能だ。
それでもなお警戒を解く事が出来ない俺とは対照的にモルテは縁がボロボロに解れたコイフの隙間からにっこりと笑顔を見せながら、まるで友人にするかの様に馴れ馴れしく話し始める。
「あれあれぇ〜、表情怖いっすよぉ。知ってます? 人間関係って第一印象でほぼ決まるらしいっすよぉ。まあ、そういう自分も精一杯のスマイルで話しかけてるのに何故か友達になってくれる人超少ないんですけどねー」
「…………友達が欲しいってんなら、まずその気味のわりぃフードを脱げよ」
「ああ、これですかぁ? それがちょっと無理なんですよねー。ほら、何かの漫画にもいたでしょ? いつも帽子被ってて時々頭と帽子が一体化してる主人公。あれと一緒だと思ってください。まあ、冗談なんですけどねぇー、あははー」
「…………」
こいつ凄い腹立つな!!
……いや、冷静になれ。恐らく相手をイラつかせて自分のペースに持ち込む腹積りなのだろう。ハフナーにいけ好かない相手と言われてもなお両ギルドに取り入って暗躍できていたのは、きっと言及される度にこうして煙に巻いていたのかもしれない。
驚きはしたもののよく考えればこれは好機だ。今この場で少しでもモルテの情報を引き出せれば、後はキリトやアルゴが追い詰めてくれるだろう。
そう判断すると頭の中で何を聞き出すべきかを考え、慎重に口を開く。
「……それで? その呪われた装備のせいで友達ができないモルテさんが俺に一体何の用だよ?」
「またまたぁー、ほんとは解ってる癖に察しの悪いふりしちゃって〜。あっ、もしかして、もっとお話しがしたいから惚けているんですかぁ? 以外とお話し好きなんですかぁー? 嬉しいなぁ、実は自分もなんですよぉ。そ・れ・な・らぁ、お互い心ゆくまでお話ししましょうかー! まずはエルフ野営地に出てくるウェイトレスさんについて───」
「……悪かったよ。どうせ《
「うっはー、辛辣ぅッ!!」
「…………」
落ち着け、落ち着け…………
身体をくねらせて大袈裟なリアクションを取るフード野郎の一挙手一投足に対してイライラが溜まり、気がつけば右手を硬く握り締めていたが、それでもペースを乱されない様にと必死に自分に言い聞かせる。
「まあ、実際そうなんですけどねぇー。もうお察しかもしれませんが、実は自分も元ベータ……ビーターってやつなんですけどぉ、流石に自分みたいな凡人じゃ幾ら情報があったからってソロで生きてくのは無理ゲーなんで、こうして自分めっちゃ役に立ちますよって頑張ってアピールしてるってわけなんですよぉー」
そう言いながらモルテはヒョコヒョコと移動すると先程までハフナーが座っていた椅子に腰掛け、ヤレヤレとさも呆れているかの様なポーズを取る。
「だからですねぇ、困るんですよー。元パーティーだか知りませんけど部外者に横からアレコレ言われると、自分の頑張りが無駄になるし攻略の足並みも乱されるしで激サックですよー」
「何言ってやがる。攻略の邪魔しようとしてんのはお前の方じゃねぇか」
「ええー、そんなことないですよぉ。自分これでも、みんなのことを考えて精一杯頑張ってるんですよー」
そこで一旦言葉を限ると、謎めいた元ベータテスターはコイフの下で口の端をより鋭く吊り上げ───
「──ボスワンコのLAを独り占めしようとして犬死にした
「──────ッ!?」
自身の発言の何処かが気に入ったらしくケタケタと笑うモルテ。その笑い声は吐き気を催す程に不愉快で……聞きたくなんてないのに先程まで至る所から聞こえていた話し声や雑音はいつの間にか消え去り、目の前のクソ野郎の声以外に耳に届く音は無い。
「いやー、笑っちゃいましたよぉ。お利口さんなリーダー気取ってた癖して、ここぞって時にゲーオタ丸出しの欲を出したせいで攻略を無茶苦茶にした挙げ句、無様に死んじゃったらしいじゃないですかぁ」
「…………まれ……」
「あっ、そういえばベータの時にも同じような格好でボス戦で出しゃばってたプレイヤーがいましたよ! 懐かしいなぁ、それで最後にはキリトさんにLA取られて悔し泣きするのがフロアボス戦の風物詩だったんですよぉ。もしかして、あの人がディアベルさんだったのかなぁ?」
「…………黙まれ……」
「もしそうなら、あんな涼しい顔して本心じゃキバちゃんみたいにキリトさんに嫉妬しまくっちゃってたんですかねぇ? うわー、嫌だなぁ。凡人なら凡人らしく身の程ってやつを───」
「黙れっつってんだろッ!!」
気が付けばテーブルから身を乗り出し、モルテの胸ぐらを掴んでいた。
もう情報などどうだって良い。いや、もう十分理解した。
こいつは敵だ。
この場に現れたのは偶然だったのかもしれないが、こうして接触してきたのはこの機会に俺を徹底的に排除するためなのだろう。
誰よりも最前線を突っ走っているビーターのキリトと行動を共にし、ALSとDKBの二大派閥のリーダーとも親睦のあるプレイヤー。確かに企み事をする上で邪魔になる事この上ない。だからこそ、こうして起爆剤となるディアベルの話題を出して俺に喧嘩をふっかけてきている。
これが罠である事は分かっているが、それでも我慢する事は出来そうにない。
「……もう良い。テメェとのお喋りはウンザリだ。あるんだろ? 手っ取り早く済ませる方法が」
「…………へぇ」
怒気を含んだ俺の言葉にモルテは怯む所か珍しい虫でも見つけたみたいに軽い感嘆の声を上げると嘲笑うかの様な声を発する。
「いいですね、いいですねぇ。それならスイッチ全開なあなたのために超クールで超エキサイティングな方法で決着を着けるとしましょうかぁ!」
─────────────────
【Morte から1vs1デュエルを申し込まれました。受諾しますか? YES/NO】
バオバブビルの裏手にて、目の前に表示されたウィンドウの文字の中から《半減決着モード》を選択して承諾のボタンを押す。するとウィンドウが変化し、六十秒のカウントダウンが開始された。
「ホントーにいーんですかぁ? ぺーぺーのあなた相手にこの条件じゃ、まるで自分が虐めてるみたいで、良心がズキズキ痛んじゃうんですけどー?」
「…………」
ニヤニヤと笑うモルテを無視していつも通りのルーティーンで集中力を高める。
デュエルの掛け金は至ってシンプル。『負けた方は今後、ALSとDKBとは関わらない』というものだ。無論、所詮は口約束である為、どれ程の影響力があるか定かではないが、少なくともこれでモルテは表立って両ギルドに干渉する事が出来なくなる。
残り四十五秒。
ルーティーンを終わらせて視線を上げれば、正面五メートル先では既にカウントが始まっているに武器すら抜かずにぼけっと突っ立っているモルテの姿。こちらを軽く観ているのが伝わってくる態度に剣を握る手に余計な力が籠ってしまうが、頭の中に僅かに残った冷静な部分が油断するなと警告を発する。
キリト程ではないにせよ相手はベータテスターだ。対人戦においては俺など比べようが無い程に経験しているのだろう。まともにやり合った場合、勝てる確率はかなり低いだろう。
だが、数値上の戦力差ならこちらの方に分がある。俺の武器【ザンバー・オブ・ギバウス】はイレギュラー的に高いスペックを持っているのに対して、モルテの武器はアニールブレードだ。最大まで強化していようが得物の性能には圧倒的な差が存在している。
残り三十秒。
……モルテは動かない。ギリギリまで構えを取らない事でどのソードスキルで来るか読ませないつもりなのだろう。だが、それでも片手剣と両手剣の戦いにおけるセオリーを考えれば相手はこちらの懐に飛び込まざるを得ない筈だ。
残り十五秒。
相手が突っ込んでくるのなら、こちらは防御に回るべきだろうか? いや、それこそモルテの思う壺だ。筋力もリーチもこちらが上。問題だった速度もギバウスのマジック効果で補えているから、ここは小細工をされる前に真っ向から潰しに行くのが正解だ。
そう判断して、剣を上段に構えた頃には残り時間は十秒を切っていた。
九、八、七、六、
「……アハァ」
こちらの意図を察したのか、モルテは笑顔をより鋭くすると剣を上段に構える。片手剣としてはメジャーなスキル、ソニックリープの構えだ。
五、四、三、
やはり突進系のソードスキルで一気に詰めてくる気か、と思った所でモルテの行動に違和感を覚える。このまま普通にぶつかり合ったら不利な事は奴も知っている筈だ。なのに何故───
ニ、一───
カウントがゼロになる前にモルテは突如、刀身にライトエフェクトを纏わせて猛然と地面を蹴る。
────先手を取られた。
「ちっ──!」
このままアバランシュを放った場合、振り切る前にモルテの攻撃を受けてしまう。そう判断してすぐさま構えを変更してモルテを迎え撃つ。
確かに予想外の動きはされた。だが、ゾーンに入っているお陰で緩やかに流れる時間の中でモルテの動きが追えている。ギバウスのソードスキル使用時のみ速さ+15という破格の効果があれば、アバランシュから上段単発技のブラストに変更してもギリギリ間に合う筈だ。
───が、ソードスキルを繰り出す瞬間、ギバウスの強化な速度バフが働き、まるで剣が一人でに動いたかの様な速度に釣られて、システムアシスト任せの杜撰な動きをしてしまう。
それでも何とか間に合った剣の切先がモルテの剣とぶつかり、眼前でオレンジ色の火花が飛び散った。
本来ならば筋力値と武器の重さによってモルテの片手剣を弾いていただろうが、生憎己の武器に振り回された俺の一撃ときっちり威力をブーストしたモルテの一撃は拮抗していたらしい。
キリキリッ! と金属同士が唸りを上げる中、初動を完全にミスした事による焦りが募り、ほんの数秒であるスキル後の硬直にもどかしさを感じる。
「……ケヒッ」
耳障りな笑い声が耳朶を打つ。直後、硬直から抜けたモルテが再び剣を振りかぶった。
「────ッ!?」
顔面に向けての刺突。この近距離で最小限のモーションから放たれる剣先は辛うじて目で追えるが防御は不可能だ。
咄嗟に首を捻って回避するも完全には避けきれず、頬を鋭い熱が襲う。HPが僅かに削れる音が聞こえるが、ゲージを確認する暇すらなく次々と鋭い剣撃が繰り出される。
モルテのステ振りは恐らく筋力寄りのバランス型なのだろう。その動きはアスナの様な敏捷特化のプレイヤーに比べればまだ見切れなくはないが、こちらの動きを読んでピッタリと張り付いてくる戦術眼に、斬り技と突き技の中間の様な独特の攻撃からは反撃する隙を見出せずにジリジリと体力を削られていく。
このままだと確実に負ける。だが、小回りの効かない両手剣ではソードスキル所か剣を振るう事すら難しい為、ベータテスター相手に唯一俺が対抗できるであろう
何か別の方法で打開しなければ…………と、考えを巡らせた所で一つの手段を思い付く。
「ショウッ!」
独特な雄叫びと共に再びモルテが鋭い刺突を仕掛けてくる。狙いは俺の心臓だ。すぐさま斬り上げる様に剣を振るって強引にパリィし、ほんの僅かにモルテの体制が崩れた。
ここで相手を斬り付けようとした所で、きっとあっさり避けられて再度猛攻を受けるだろう。ならばと、右足を前に蹴り出し───
「う………おおぉぉッ!!」
体術スキル《弦月》を発動する。
体術スキルはベータ時代、アルゴしか見つける事が出来なかったスキルだ。当然ながらモルテはこのスキルの事はほとんど知らない筈であり、ベータ時代の戦闘経験が根幹にあるプレイヤー程初見の動きに対処できないのは第一層の時に嫌と言う程理解している。
「かはっ──!?」
例に漏れず、モルテもこのスキルの存在は予想外だったらしく、俺の放った蹴り技が腹部にクリーンヒットし、微かな呻き声を上げながら激しく吹っ飛び、背中から地面に落下した。
本来ならば、このまま追撃を仕掛けるのがベストなのだろうが、この短い時間に繰り広げた攻防によって蓄積された疲労が足枷となり、スキル後硬直が終わった後も動けずにいる。
対するモルテも流石にスキル攻撃をモロに喰らったのは応えたのか三秒程は倒れ込んだままだったが、すぐに軽快な動きで立ち上がると、フードの奥から見慣れた笑みを形作った。
「……いやぁ、驚きましたよぉ! 今のってもしかして、ベータの時ちょろっと噂になった《体術》スキルですかぁ? それにそのご立派な剣もベータの時には見たことないやつだし、きっとお目目が飛び出すようなスペックしてるんだろうなぁ? 羨ましいなぁ、キリトさんに寄生したら誰も知らないようなレアアイテムやスキルまでもらえちゃったりするんですねー」
「…………」
「あっ! もちろん、あなたも頑張って強くなろうってしているのもわかってますよー。雑巾をキュッと絞るみたいに軽ぅく勝てちゃうと思ってたのに、ここまで善戦してくれるなんてビックリしました! きっとディアベルさんも今頃あなたの成長を草葉の陰で喜んでいるんでしょうねぇ!」
「…………ッ」
相手の挑発に思わず奥歯を噛み締めてしまうが、それでも何も言わずにただ剣を向ける。
…………モルテの事を侮っていた訳ではない。しかし、こうして戦った事で思い知らされた。
そんな格上が相手だという認識が、まるで足りていなかった。怒りに身を任せたままでは勝てない。ゾーンによる集中力を維持し、なけなしの戦闘経験から勝利への道筋を模索し、ギバウスの能力を最大限活用して、武器破壊を決める。そこまでして、ようやく奴の首筋に手が届くのだろう。
「あれれぇ? 攻撃してこないんですかぁ?」
「…………」
「あー、そっか。もう疲れちゃったんですねぇ。でもぉ、自分まだまだ遊び足りないんですよー」
そう言ってモルテは右手で持ったアニールブレードを真っ直ぐに向けてフェンシングの様な構えを取る。恐らくここから先はより刺突による素早い攻撃を重視してくつもりかもしれない。
だが、開幕の様に不意打ちを受けない限り、両手剣の得意なロングレンジを維持し続けられる筈だ。そうすれば勝機は───
「……だからぁ、もうちょっとくらい付き合ってくださいよー。キリトさんのために隠しておいた取っておき、ほんのちょこっと見せてあげますからぁ!」
「…………ッ!」
その声と同時にモルテは急に構えを解いて上半身をより左側に捻る。すると、先程まで相手の身体で隠れていた左手がソードスキル特有の輝きを発した。
その手を凝視すれば片手用の斧が握られているのを確認する。確かに奴は《ALS》に潜入している時には片手斧を装備していた。片手斧は前線では珍しい武器であるのは間違いないし、それがモルテの言う『取っておき』なのか…………?
───いや、待て。あの斧……以前見かけた時よりも
「シャアアアッ!」
ひときわ鋭い気合いと共に俺の胴体目掛けて手斧が勢いよく
あれを喰らってしまえば無視できないダメージになるだろうし、防いでも避けても大きな隙を作ってしまう。モルテはその隙を狙って突進系のスキルでトドメを指すつもりだろう。
それなら、どうすれば良い? ───簡単な話だ。取ってしまえば良い。俺なら出来る筈だ。
本能が出した出鱈目な答え。失敗すれば左手を失って、そのまま何も出来ずに負けてしまうだろう。それでもモルテを上回るチャンスはきっとここしかない。
飛んでくる斧により意識を向けると、一秒が何倍にも延ばされた様な時間の中で、ゆっくりと回転しているのが見て取れる。
…………なんだ、野球をやってた頃と何も変わらないじゃないか。
もちろん、飛んでくるのはボールじゃなくて恐ろしい刃が付いた斧だし、左手にはグローブも無い。それでも、何の問題も無い。それぐらい軽く出来るからこそ、天才だなんて呼ばれていたのだ。
左手を伸ばし回転している斧の柄を掴むと同時にスローモーションで流れていた世界が元通りになる。
前方にいるモルテは俺の行動に一瞬呆気に取られていたが、すぐに満面の笑みを浮かべた。
「あはははっ! なんですか、それっ! 今のは流石に予想外ですよー! でも……そ・れ・でぇ……ソードスキルは使えませんね!」
甲高い声を上げてモルテがソニックリープで加速して真っ直ぐに突っ込んでくる。
モルテの言う通り、片手に斧を持ったままではソードスキルは使えず、両手剣を持ち直した所で再び奴の剣技に翻弄されて終わるのは目に見えている。勝利を確信した笑みすら浮かべてしまうのも無理はない。
きっとここが最後の賭けだ。両手剣を右手だけで無理矢理持ち上げ、迫りくる凶刃に向かって力の限り叩きつける。
お互いの剣がぶつかり合い、甲高い金属音が響き渡る中、ライトエフェクトを纏ったモルテのアニールブレードの剣尖はやや左下へと逸れたものの勢いは止まらず、俺の左脇腹に深々と突き刺さった。
急所は外したとはいえ、重い一撃によってHPバーが急激に減っていく。この大幅な減少によって、残りのHPが半分を下回った時点で負け。残ったとしても、このまま剣が刺さったままでも終わりだ。
だから、勝敗の行方は天に託そうとばかりに意識から完全に切り離し、今までの鬱憤を晴らすが如く左手に持った手斧をモルテ目掛けて振り下ろす。
────ガシュッ!! っと鈍い音を立てて、斧がモルテの右肩に食い込む。
「があッ……!」
くぐもった声を上げたモルテは技後硬直が解けるや否やバックステップで距離を取ろうとする。そのまま刺し続ければ勝ちを狙えたのに後退を選んだ事やそれまで顔に貼り付けていた忌々しい笑顔が消えている事からアイツのHPも余裕は無いのだろう。
…………好都合だ。
決着を着けるため、剣を持ち直して、モルテの元へと猛然とダッシュする。
両手剣の間合いまできた時にはモルテも逃げきれないと悟ったのか、剣の切先近くを左手で支える、通称《
「おおおおおお────ッ!!」
ギバウスの加速と威力ブーストを乗せて、咆哮と共に放った《サイクロン》はモルテの片手剣のウィークポイントをしっかりと捉える。剣を振り切った時にはモルテに残っていたのは右手に持つ剣の柄と僅かな刀身のみ。────残りの刀身と添えられていた左手は数メール先の地面に転がった。
奴にはもう武器も左手も無い。けれど、お互いのHPはほんの僅かに五割以上をキープしている。
……まだデュエルは終了していない。
フードの奥、一瞬だけ見えたモルテの目には恐怖が宿っていた。それでも、モルテは自身の右肩に刺さったままの斧を何とか抜いて抵抗しようとしているが、どう考えても間に合う筈がない。
賭けの事など最早知った事ではない。そんな不確かな約束事を相手が律儀に守るのを期待するよりも、この場で◾️した方が全て上手くいくだろう。
俺は硬直が終わるとすぐに剣を構えて、ソードスキルを発動し───
「────────ッ!!??」
待て、俺は何をやっている!?
勝手に動き出す身体を慌てて止めると、無防備な状態で硬直が科せられる。
「シッ……シャアアアッ!」
その隙にモルテは右手に持った手斧を乱暴に振り下ろす。動かない身体に衝撃が加わり、俺は糸の切れた人形の様に真後ろへと転がった。
【DUEL END WINNER Molte】
視界の端で、デュエル終了を告げるシステムメッセージが紫色に輝くのが見える。
………負けた。負けられない闘いだったのに……最後の最後で……いや、だからって、何故───
「…………あはっ…………あはははははっ!!
いや〜、ほんとのほんとに驚きましたよー! アシュロンさん、あなた
脳内がぐしゃぐしゃになっている中、モルテが何やら喚き散らしているのが耳に届く。釣られるまま、そちらに目線を送ると、血の気が引いているにも関わらず、やけに嬉しそうに笑うモルテの顔があった。
「嬉しいなぁ、アシュロンさんって意外とこっち側なんですね! ちょっとした草刈りのつもりが飛んだ大収穫でしたよー! 喜んでください。見込みのある人が見つかったって、
《◾️◾️◾️◾️・◾️◾️◾️◾️》ルートが開放されました。