SEVERANCE PRODIGY〜武器破壊を極めてゲーム攻略! 作:封魔妖スーパー・クズトレイン
カン、カン、カン、カン! と物見櫓から警報の音が数十メートル離れた所でも聞こえてくる。攻略本によればこの警報は一定以上のプレイヤーが近づけば鳴らされるらしく、それは集団戦の始まりを意味している。
「よし、みんな! 作戦通りに行こう!」
ディアベルの掛け声にパーティーメンバーは「応っ!」と返事をして村へと一気に雪崩れ込んだ。
まず先行したのは両手剣使いの俺や
コボルドの様な
村の中央にある広場では既にコボルド達が集まり、臨戦態勢に入っていた。まず目に入ったのがずんぐりとした体型でいかにも親玉といった雰囲気の《コボルド・リーダー》、その脇には《コボルド・トラッパー》が控えている。そして親分を守る様に前の方で集まり喧しく吠えているのは四匹の《コボルド・ヘンチマン》だ。
ここまでは攻略本に記載されていた通りであり、頭数もこちらの方が多い。連携さえしっかり取れればまず負けは無いだろう。
《コボルド・リーダー》が大きな遠吠えをすると、それによって攻撃力にバフが乗った《コボルド・ヘンチマン》が一斉に突撃を開始する。
下っ端コボルド達は早速手に持った短剣に光を纏わせてソードスキル《アーマーピアース》を放つ。それは素早く鋭い一撃ではあるが、こちらは筋力特化型のビルドであり、剣技を使わずとも相殺が可能だ。
「スイッチ!」
背後からの合図に合わせて飛び退けば、ディアベルが前に出てソードスキル《スラント》を発動する。防御が間に合わなかったコボルドはその攻撃をモロに受けてHPのほとんどを削り取られる。
「気をつけろ! 右側から騎兵が来たぞ!」
その声に慌てて注意された方向に視線を向ける。向かってきたのは長槍を持ち、イノシシに乗った《コボルド・キャバルリー》というモンスター。騎獣となっているイノシシは《アパセティックボア》という名前で、牙や毛並みがまだ生えきっていないにも関わらずフレンジーボアよりも一回り大きな身体をしている。だが、厳しい調教を受けたためか、その目にはフレンジーボアの様な激しい闘争心は見られない。
しかし、腐ってもイノシシ。その突進力は凄まじものがあり、上に乗っているコボルドのソードスキルも合わさったら、こちらの陣形はあっと言う間に崩されてしまうだろう。そのため────
「アシュロン! リンドさん! あいつの相手を頼む!」
「了解だ!」
「任せてくれ!」
俺と曲刀使いのリンドで迎撃に向かう。
まず近づいてきた俺に向けて騎兵コボルドは槍のソードスキル《フェイタル・スラスト》を見舞う。それに対してこちらは《アバランシュ》でパリィを狙うが────
「ぎっ!?」
まだ慣れていない《アバランシュ》ではイノシシによる勢いも乗った一撃を殺しきれず、槍先が微かに肩を抉る。
「うおおぉぉぉ!!」
「ピギイイイギィィィッ!!」
コボルドのタゲが俺に向いている内にリンドはボアに対して《リーパー》を当てる。ただ、突進を正面から受けない様にしたためか、やや距離が遠く満足なダメージを与えられていない。
この瞬間にも本隊はコボルドの群れを相手にしているため、もっと前のめりに攻撃して早く合流したい所だが…………いや、油断して致命傷を食らうよりリンドの様に堅実に立ち回る方が正しいか?
騎獣を攻撃されたキャバルリーは一度大きく旋回し、悲鳴を上げるイノシシの腹を踵で蹴り付けてディアベル達に再度向かっていく。どうやら、一度防いだだけでは優先順位は変わってくれないらしい。
だが、一度目とは違いこちらには進路に回り込むまでに十分な時間がある。問題無く間に合った俺は振り下ろされる槍に対して、今度こそ得意の《サイクロン》で迎え撃つ。
ギィィンッ!! と甲高い音が鳴り、相手の槍を大きく弾く事に成功する。コボルドは槍を落とさない事に必死で隙だらけだ。そこへリンドが駆け寄り、イノシシに大ダメージを与える。
「ナイスだ、リンドさん!」
「そっちも良い働きだ!」
この一撃でようやく騎兵は俺達を先に始末しなければならないと思い直したのだろう。それ以降は俺達に向かって繰り返し突撃してくる。
俺ではなくリンドの方を主に狙ったのは奴なりに考えた結果なのかもしれないが、来る方向さえ分かれば最早対処は容易い。
同じ動作を三回行った所でイノシシのHPはゼロになり、ヨロヨロとおぼつかない足取りで渓谷のある方角を向くと、何処か物悲しげに一声鳴きその命を散らした。そして、落馬(この場合は落猪なのかな?)して受け身に失敗したコボルドの頭を両断してようやく《コボルド・キャバルリー》との戦闘は終了。
そのまま急いでディアベル達の陣形へと戻ると、こちらも中々順調らしく、トラッパーは既に倒していて残りはHPが半分を切った《コボルド・リーダー》と下っ端コボルドが二体といった所だ。
「よう、ディアベル! この様子ならもう俺達が入らなくても勝てそうだな!」
しかし、陽気に声を掛ける俺とは反対にディアベルは何処か浮かない顔をしている。
「………………可笑しい…………余りにも簡単すぎる」
そんな呟きが聞こえた瞬間、周囲に大きな地響きの音────じゃない、何か大きな生き物が走ってくる足音がこだます。それは先程まで戦っていたイノシシの足音に近くて………………待てよ?
コボルド達はイノシシの子供を捕まえて、騎獣として調教した。その子イノシシは一体何処から捕まえてきたのか。まだ、成長しきっていない状態でフレンジーボアよりも一回り大きいのだ。きっと種類事態が違っているのだろう。そんなイノシシがいる場所なんてきっと一つしか無い。そして、哀れなイノシシが最後に渓谷を見ていたのは、あそこが故郷だから?
つまり………………
そこまで考えた所で、獣人軍団の背後が突然バキバキと音を立てたかと思うと、『それ』はテントなどを吹き飛ばしながら現れ、驚いて硬直していたボスコボルドに巨大な蹄を振り下ろし瞬時にHPを削り切る。
──────現れたのは《ヴェンデッタ・グレートボア》。コボルド村の先にある渓谷で待ち構えている筈のフィールドボスであった。