SEVERANCE PRODIGY〜武器破壊を極めてゲーム攻略!   作:封魔妖スーパー・クズトレイン

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猪との戦闘描写が分からずにかなり時間が掛かりました。


6話 闖入者

「なんでや! なんで次のフィールドボスが今出てくるんや!?」

 

 キバオウの叫びは今ここにいるプレイヤー全員が思った事だろう。確かにどんな罠を仕掛けても必ず突破してやるとは豪語したが、流石にこれは殺意高すぎるだろ、茅場晶彦(クソGM)

 

「ブウゥゥアアアアァァァァ!!」

 

「ッ!! 全員散開、全力で回避するんだ!!」

 

 攻撃の予兆を見抜いたディアベルが咄嗟に指示を出す。

 

 その声に我に帰ったパーティーメンバーはグレートボアの突進を急いで避けるが、元々陣形の外側に居た俺を除く盾役は敏捷力が足りないがために間に合わず残っていた雑魚コボルドと共に大きく弾き飛ばされる。

 

 幸い攻撃を受けたプレイヤーのHPは半分程の減少で済んではいるが、ポーションでは瞬時に回復する事が出来ないほか、現在の盾役の装備は機動力の高いコボルドの相手を想定した取り回しの良い武装であるため、強力な突進力を持つ巨大イノシシを止めるためには装備を変更しなければならない。

 

 盾を使えない俺ではこの場合には盾役にはなれないので、盾役の準備が整うまでの間アタッカーのみでボスの相手をする事になる。

 

 《ヴェンデッタ・グレートボア》の攻略方法はどんなのがあったか? 数日前に興味本位で眺めていたページの内容を必死に思い出す。確か攻撃パターンは突進と蹄や牙による単発攻撃の二種類で…………

 

「HPが少ない人はすぐさま回復を! まだ余裕のある人はボスを包囲して、全員の準備が整うまで持ち堪えてくれ!」

 

 受け止められる奴がいないのならば、固まって相手をするよりも周囲を囲って注意を分散させる方が効果的だ。だが、この作戦では万が一の時サポートが遅れてしまうため、特にボスの正面に立って戦うプレイヤーはかなりの危険に晒される事になる。

 

「よっしゃ! ここは俺が真正面で引きつけてやるぜ!」

 

「いや、ここは俺がやろう。お前ばっかりディアベルさんの前で格好つけさせないぞ」

 

「ジブンらみたいなノロマに囮が務まるかい。わいがいっちょ手本見せたるわ!」

 

「買って出てくれるのは嬉しいけど、早くしようか!?」

 

 催促されて慌ててボスをぐるりと包囲する。あくまで時間稼ぎだ。攻撃は二の次にして近接攻撃を避けるだけの余裕があり、さりとて離れ過ぎて突進攻撃を誘発しないギリギリの距離を維持し続けなければならない。

 

「グゥゥウウウウァァァァアアアア!!」

 

「来るぞ!!」

 

 グレートボアは頭を大きく逸らすと牙を使った薙ぎ払いを仕掛けてくる。その攻撃をキバオウは避けようとするが────

 

「うおっ!?」

 

 不幸にも牙がベルトに引っ掛かり、そのまま高々と持ち上げられる。そしてそこから空中で何度か振り回され、ベルトが千切れると同時に「なんやて!?」と叫びながら瓦礫の山の中に飛ばされていった。

 

 ……………………早速前衛が一人消えたぞ!?

 

 グレートボアは投げ飛ばしたキバオウには目もくれずに次はディアベルに狙いを付ける。突然後ろ足で立ち上がったかと思うと次の瞬間に両前足を勢い良く振り下ろす。ボスコボルドを倒した攻撃だ。

 

 人間よりも一回り大きな前足に潰されない様にディアベルはギリギリ回避をするが、巨大イノシシも負けじと同じ動作を何度も行い、土埃が大きく舞う。

 

 このままやらせていたら流石のあいつでも危ない。タゲを取るために俺はイノシシの後ろ足に《サイクロン》を放つ。

 

「ダメだ、アシュロン!!」

 

 大声で静止する叫びが聞こえた。ソードスキルによる硬直時間の中で何故その様な事を言うのか不思議に思った瞬間、視界が目まぐるしく移り変わる。

 

 遅れて腹部に独特の痺れが走る。そうか、後ろ足(・・・)で蹴られたのか。

 

 このSAOは何処までもリアルに作り込まれてあるため、モンスターも現実の生物と同じ様に理に叶った様々な動きを見せる。だが、俺は攻略本の情報を意識し過ぎる余りに相手を昔テレビゲームで戦った事のあるイノシシ系モンスターと同列視して正面以外からは攻撃をして来ないと思い込んでいた。

 

 …………俺は無意識にこのゲームを侮ってしまっていたのだ。

 

 グレートボアはこちらに向けて突進の構えを取る。自分のHPゲージは先の戦闘でのダメージも合わさって半分を切っていた。そして、頭上にはスタンを意味する黄色い光。

 

「あっ…………あぁ…………」

 

 殺される(・・・・)。プレイヤー・アシュロンは今まで倒してきたモンスターと同じ様に身体を砕かれ、現実の芦屋龍生は脳を焼き切られて死ぬ。冷たい恐怖が心臓を鷲掴みにする。

 

「やめろおおおぉぉぉぉぉっ!!」

 

 ディアベルは必死の形相で《バーチカル・アーク》を打つが、《ヴェンデッタ・グレートボア》はそれを全く意に介さず走り出し────

 

「はああああぁぁぁぁぁっ!!」

 

 その横面に突如、《ソニックリープ》の猛烈な一撃を受けて悲鳴を上げながら大きく仰け反った。

 

 助けてくれたのは黒い髪をした中性的な少年だった。中学生くらいだろうか。女の子と間違えてしまう程に線の細い身体付きと端正な顔立ちをしているが、片手直剣を構えるその姿は強者としての圧倒的な存在感を醸し出していた。

 

「突然で悪いが、このフィールドボス戦に俺も参加させて貰うぜ」

 

 片手剣使い(ソードマン)はキザに笑いながらそう告げる。

 

 その後、この少年の登場から戦況は一変し、こちらのイケイケモードで進んでいった。

 

 この時に盾役の準備が整ってまともな陣形を取る事が出来たのもあるが、やはり一番の理由はこの少年の存在だろう。

 

 グレートボアの攻撃を完全に見切って回避して、隙が出来た所に速く重い斬撃を入れる。アインクラッドに閉じ込められて十日間、ここまで圧倒的な実力を持った剣士は見た事がなかった。

 

 その研ぎ澄まされた剣技の前には、あのディアベルすら霞んでしまう。俺の戦い方なんて子供のチャンバラごっこだったのではないかと恥ずかしくなる程だ。

 

 頼りになる助っ人の活躍に感化されチームの動きも良くなり、絶望的な始まり方をした《ヴェンデッタ・グレートボア》との戦闘は少年の《ホリゾンタル・アーク》によって幕を閉じた。

 

 大逆転に皆が歓喜する中、俺も感情が抑えきれず勝利の立役者様の元へダッシュで向かう。

 

「助かったぜ! アンタは俺の命の恩人だ!」

 

「気にしないでくれ、俺はただフィールドボスのLAを狙っていただけだから」

 

「LA? …………ああ、ラストアタックの事か。どうでも良いよそんな事! 俺はアシュロンって言うんだ。良かったらアンタの名前を教えてくれ」

 

「どうでも良いって…………キリトだ」

 

 キリトはそう言って何処か呆れた表情で笑う。

 

「君はキリトって言うのか………………。オレはディアベル。このパーティーのリーダーをしている。さっきはオレの仲間を助けてくれてありがとう」

 

「なあ、キリトもこのゲームを最後まで攻略する気なんだろ? だったら、俺達と一緒に行かないか? キリトみたいな強いプレイヤーが居てくれたら凄い助かるぜ」

 

「あー…………悪い。俺はソロでやるつもりだから」

 

 申し訳ないとでも思ったのか、キリトは「それじゃあ、俺はこれで」と告げると、かなり高いであろう敏捷力に物を言わせた速度で離れてしまった。だが、こちらはまだ満足していない。

 

「俺達も頑張るから、お前も頑張れよ! それで、次はフロアボス戦で一緒に戦おうぜ!!」

 

 遠ざかる背中に向かって大声で叫ぶと、振り返らないまま小さく手を振ってくれた。それだけで十分だ。

 

 あれだけ強いプレイヤーがいるのなら、百層攻略も可能なのかもしれない。そう思えたのは今回のレイド戦で間違いなく一番の収穫だった。

 

「おい、誰か! ええ加減わいをここから引っ張り出さんかい!!」

 

 ………………キバオウ、アンタまだ引っ掛かっていたのかよ。




ようやくキリト登場です。ここまで主人公が出るのが遅い作品はうちだけでしょうね。
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