SEVERANCE PRODIGY〜武器破壊を極めてゲーム攻略! 作:封魔妖スーパー・クズトレイン
「せやからぁ、わいは納得できへんのやぁ! どぉして横槍入れてきたプレイヤーにボスのLA取られなあかんねん! おい、聞ぃとるんかアシュロン!?」
「アシュロンお前も見てただろ? グレートボアに俺がソードスキルで華麗にカウンターを決めた瞬間! いやぁ〜、あの時は本当に気持ちよかった! これでディアベルさんも俺が如何に優秀な戦士なのか分かってくれた筈だよな!」
「あーもー、分かった分かりましたから。二人共良い加減ダル絡みするのやめてくれよ! リアルだったらアルハラで問題だぞ!!」
コボルド村攻略後、始まりの街に凱旋した俺達は初のフィールドボス攻略のお祝いにお高めのレストランで宴会をしていた。
二体ものフィールドボスを倒した事でお財布には大変余裕があったため、美味しい料理を思う存分食べたり初めて飲むエールの味に感動したりと最初はとても楽しかったのだが、酒をガブガブ飲んでいたキバオウとリンドに捕まり、いつの間にかこんな肩身の狭い思いをしている。
まさかこの年で忘年会で苦労する新人社員の気持ちを味わう事になるとは思わなかった。ていうか、何故この二人は酔っ払っているんだろうか? SAOの酒は幾ら飲んでも酔わない筈だ。実際俺も飲んだけど問題なかったし。
こうして、かれこれ三十分は二人の相手をしていたけど流石にもう限界だ。ディアベルに二人を止めて貰おうとするが、貸し切ったレストランの中を見回してもあのイケメンの姿は何処にも見当たらない。
「あれ? ディアベルのやつ何処に行ったんだ?」
「アホウ! ここはSAOやぞぉ! 便所がある訳ないやろうがっ!!」
「そうだそうだ〜! 第一ディアベルさんはトイレなんて行かない!」
いや、まだ誰もトイレに行ったとか言ってないから…………。
「ディアベルさんなら少し夜風に当たってくるって言って外に出ていったよ」
「………………そうか、ありがとうシヴァタ。ちょっとあいつと話してくるから後よろしく」
「えっ!? ちょっと!?」
シヴァタを生贄に捧げ、レストランを後にする。
思い返せばディアベルは攻略が終わった時から何処かおかしかった。パーティーと話をする時には普段通りに明るく振る舞っていたが、それ以外の時にはずっと暗い顔で何か考え事をしていた。
どこまでも生真面目なあいつの事だ。今回の戦いで犠牲者が出かかった事に責任を感じているのかもしれない。それに関してはイノシシの予想外の襲撃と俺達のプレイヤースキルに問題があったからなのにな。
主街区まで来た所で、お目当てのNPCにディアベルの名前を伝える。アインクラッド一の面積を誇るらしい始まりの街では特定のNPCにプレイヤーネームを伝えるとそのプレイヤーがいる場所まで案内してくれるので、その機能を利用させてもらう。
NPCに連れられて向かったのは主街区から離れた場所にある小さな広場………………十日前、俺達がこのゲームをクリアする決心をした場所だった。
「ディアベル、こんな所にいたのか」
「アシュロン…………宴会は良いのかい? 君の事だからNPCがショートするまで料理を食べていると思ったんだけど」
「聞いてくれよ。それがさ、キバオウさんとリンドさんが絡んできて食うのに集中させてくれないんだぜ」
「それは災難だったね」
「…………あのさ、ドジ踏んだ俺が言うのも何だけど今日の事はあまり気にしなくて良いと思うぜ。むしろお前の指揮は完璧だった。それに応えられなかったのは俺達が未熟だったせいだ」
「そう…………だね…………」
ディアベルは一応の返事はするが、尚も浮かない顔をする。それだけショックだったのか、それとももっと別の理由があったりするのだろうか?
「…………アシュロン、ひとつ聞いても良いかい? 君は凄い選手だったらしいのに、どうして野球を辞めてしまったんだ?」
その質問に思わず顔をしかめてしまう。SAOとはいえ、ネットゲーム内でプライベートの話は御法度だ。その事はゲーマーのディアベルの方がよっぽど理解している筈だろう。
野球を辞めた理由については俺にとってはかなりキツイ話だし、ましてや落ち込んでる奴に話して元気付けられる内容だとはとても思えない。
「…………ごめん、今のは忘れてくれ。ちょっと気分が沈んでて配慮が足りなかったよ。参ったな、オレもキバオウさんの事悪く言えな────」
「俺が野球を辞めたのは才能があり過ぎたせいだ」
目を丸くしたディアベルを見て溜め息が出てしまう。思い返しても酷い理由だ。それでも、何も話さないでいるよりかは良いのかもしれない。
…………もしかしたら、ずっとショボくれているディアベルにムカついてしまったからかもしれない。
「ゾーンって聞いた事あるだろ? スポーツ選手が絶好調の時に凄い力を発揮するってやつ。俺あれに結構入りやすいみたいでさ、それだから中学の時から試合でもガンガン打てて天才だなんて持てはやされてた」
その時は才能を思う存分発揮して心の底から野球を楽しんでいた。
そして、そのまま何も考えずに高校の野球部に入部したが、俺が入った高校は名門と言っても十年以上も甲子園に行けてなかったらしく、だから焦っていた顧問はまだ入部したばかりの俺を成績が十分って理由で即レギュラーにした。
そこから何もかも掛け違えてしまった。
最初の原因は俺にレギュラーの座を奪われてしまった三年生の先輩。泣きながら言われた一言は今でも忘れる事は出来ない。
「『お前さえ居なければ、俺の三年間は無意味にならなかったのに』ってさ」
「………………」
ディアベルは無言で聴いている。今はもう、顔を見る余裕は無い。
「それでもって、次が同じレギュラーの先輩方。三年もの月日を掛けていたのに、急に現れた一年坊主の方が目立ちに目立って自分達は添え物扱い。そりゃ、面白くはないだろうさ」
分かっていた。甲子園は夢の舞台だ。青春という大切な時間を支払って血の滲む様な努力を重ねた人間のみが立つ事を許される神聖な場所であるべきだった。分かっていたからこそ、理不尽だと思いながらも俺なりに上手くやっていこうと努力した。
「だけど、野球で手を抜く事だけは出来なくて結果的には世間は俺の事を《天才スラッガー》だなんて言い始めた。そうなるともう、先輩だけじゃなくて同学年の奴らからも腫れ物扱いだぜ」
仲間は誰も俺の事を認めてなんてくれない。誰も俺の才能を望んでなんかいなかった。どうすれば良いのか分からずに苦しみ続け、いつしか野球が楽しくなくなっていた。
どうしてもプロ野球選手になるとか、そんな夢は無い。ただ、野球を精一杯楽しんでいたいだけだった。そんな在り来たりな願いすら叶えられないのなら─────
「才能なんて欲しくは無かった」
これが
「そうか……………君はオレとは…………すまなかったな、辛い話をさせてしまって」
語り合えた後、ディアベルは一言謝罪するが、その表情は硬いままだった。漫画なんかじゃ暗い過去を話せば何か解決の糸口になったりするのだろうが、残念ながら俺の話は何の役にも立たなかっただろう。当然だ、途中からただ自分の胸の内を暴露していただけなのだから。
「………………流石に冷えてきたな。もうそろそろ宿に帰るとしようか」
そう言って背を向けて主街区へ向かうディアベル。顔が見えなくなった所で、ようやく本当に伝えたかった言葉が口から出てきた。
「だけどさ、ここでお前に才能があるって言われて凄い嬉しかった。お前の隣なら本当の俺でいられるって安心したんだ。なあディアベル、お前が一体何に悩んでいるか俺じゃ正直良く分からないけど…………俺の事もっと頼ってくれないか?」
紛れもない本音。もしかしたら届くかもしれないと期待したが、こんな臆病者にそんな都合の良い話はありえない。
ディアベルは一瞬立ち止まりはしたが、返事も振り返る事もしなかった。
落ち込んでいる相手に重い話をして更に落ち込ませて、何も分からないのに力になりたいと言う主人公。嫌いになるかもしれませんが未熟者なのでご容赦ください。
次回からプログレッシブの内容に入ります。ここまでオリジナルストーリーにお付き合いいただきありがとうございました。