SEVERANCE PRODIGY〜武器破壊を極めてゲーム攻略!   作:封魔妖スーパー・クズトレイン

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8話 波乱の攻略会議

「凄えな! こんなにプレイヤーが集まってるのか。おっ! 鎌なんて持ってる奴がいるぜ。あんな武器もあるんだな」

 

「そうだな。SAOは魔法が無い分、多種多様な武器が存在するみたいだ。この前なんかは鉤爪を装備したプレイヤーなんかもいたよ」

 

 第一層の迷宮区付近に位置する街《トールバーナー》。この街の噴水広場には現在四十名以上ものプレイヤーが集まっている。それもこのゲームをクリアするために一ヶ月もの間、死地に赴き己を鍛え上げた立派な戦士達だ。

 

 思わず感嘆の声を上げる俺をまるで無邪気な子供でも見るかの様に笑うディアベル。コボルド村の攻略後は数日間ぎこちない関係が続いていたが、今ではまた以前と同じ様に話が出来ている。

 

 とはいっても以前と大きく変わった点が一つある。それは、ディアベルの髪が青いロングウェーブヘアになっている事だ。

 

 この派手は見た目は本人曰く、『全てのプレイヤーを導くリーダーとなるための決意表明』らしい。

 

 普通ならば似合っていないと大笑いする筈なのだが、流石はディアベルと言うべきかその髪型が驚く程しっくりきている。やはりイケメンはどんなアレンジをしても様になるという事だろうか。

 

 そんな事をしみじみと考えていると、視界の隅に知っている顔…………きっと来てくれるだろうと思っていた奴を見つけた。

 

「悪い、ちょっとあいつに挨拶してくる」

 

「…………ああ、分かった。だけど、もうすぐ始まるから手短に頼むよ」

 

 その言葉に「分かってる〜」と適当に返事をして足早に向かう。

 

 目的の人物───キリトはケープを羽織っている人物に何やらレクチャーをしている。顔はフードで隠れて見る事は出来ないがどうやら女の子らしい。余り人と話すのは得意ではなさそうだったのに意外と隅に置けない奴だ。

 

「よお、キリトお久しぶりだな。来てくれると思ってたぜ」

 

「ん? …………確かアシュロンだったか? 話は聞いてるよ。今回のフロアボス攻略会議、主催はあんた達みたいだな」

 

「そうそう。ボス部屋を一番に見つけた功績って事で我らがリーダーが栄えある第一回フロアボス攻略の指揮官をやらせてもらってるって訳よ」

 

「流石に驚いたよ。俺はまだ十九階に入ったばかりだったのにもうボス部屋を見つけるなんて」

 

「まあ、運が良かったんだよ」

 

 そう言ってわざとらしく肩をすくめるが、もちろん運だけで見つけた訳ではない。いち早く見つけられたのはディアベルがベータ時代の知識でどの辺に階段やボス部屋があるかを割り出していたからだ。

 

「そんな訳で今回はそちらの彼女さんともご一緒によろしく頼みますよ」

 

 気軽に言った発言だったが、これが感に触ったのかケープの子は不機嫌そうに呻いた。

 

「勘違いしないで。別に私はこの人とはそんな関係じゃ────待って。何で私が女だって分かったの?」

 

「そりゃ、身体付きを見れば男か女かなんて大体分かって────あ痛っ!?」

 

 足を蹴っ飛ばされた!?

 

「最低! 人の身体ジロジロ見るなんてセクハラよ!」

 

「ジ、ジロジロは見てねぇよ!?」

 

「嘘よ! これだけしっかり着込んでるもの。じっくり観察でもしなきゃ分かる訳ないじゃない! この変態!!」

 

 別にやましい気持ちなど無いのに酷い言われ様だ。このケープ女、随分と他者に対しての警戒心が強いらしい。

 

 SAOでは男女比の大きな偏りによって女性プレイヤーにちょっかいを掛ける輩が増えてきているという話は聞いた事はあるが、それにしたってここまで無愛想では今回のボス戦で誰かとパーティーを組む事など出来るのだろうか?

 

 一応主催者の一員として彼女が参加できるのか不安を覚えていたが、ふと気が付けば周囲にいるプレイヤー達がチラチラとこちらを観ていた。

 

 …………うん、これは不味いな。このままでは下手したらお話の続きは黒鉄宮の牢屋の中でする事になるかもしれない。

 

「はーい! それじゃ、五分遅れだけどそろそろ始めさせてもらいます!」

 

「っ!! あー、いけね。もう仲間の所に戻んねえと。そんじゃ、また後でな!」

 

 丁度良いタイミングで会議開始の合図があったので、こちらを睨みつける少女と「はあ!? ちょっと待て! 空気悪くして逃げるなよ!!」と叫ぶキリトを置いてそそくさとその場を後にする。三十六計逃げるに如かず。ここはセクハラ野郎のレッテルを貼られる前に退散するに限るのだ。

 

 広場の中央では参加者を整列させたディアベルが噴水の縁に飛び乗ってみせる。一見演説のために皆から見えやすい位置に移動しただけに思えるが、助走も無しに飛んでみせた事で自身のステータスの高さをアピールする狙いがあるらしい。

 

 そして、青い長髪をなびかせたアイドルばりの甘いマスクに何名かのプレイヤーが小さくざわついた。どうやら掴みはバッチリの様だ。

 

「今日はオレの呼びかけに応じてくれてありがとう! 知っている人もいると思うけど、改めて自己紹介しとくな! オレはディアベル、職業は気持ち的に《ナイト》やってます!」

 

 ………………あいつ、他の奴らの前だからって謙遜しやがって。

 

 まあ、仕方ない。こう言う時こそ合いの手を入れて盛り上げるのが俺の役目か。

 

「ほんとは《勇者》って言いてーんだろ!」

 

 俺の言葉や他の仲間達の口笛や拍手にディアベルは苦笑しながら手を振って反応し、話を続ける。

 

「さて、トッププレイヤーのみんなに集まってもらった理由は、もう言わずもがなだと思うけど…………今日、オレたちのパーティーが、ついに第一層のボス部屋を発見した!」

 

 この言葉に今度はほぼ全てのプレイヤーがどよめく。無理も無い。ここまで長い道のりであったが、ようやくゲームクリアへの糸口を見つけたのだ。

 

「一ヶ月。ここまで、一ヶ月もかかったけど…………それでもオレたちは示さなきゃならない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームそのものもいつかきっとクリア出来るんだって事を、始まりの街で待ってるみんなに伝えなきゃならない。それが、今この場所にいるオレたちトッププレイヤーの義務なんだ! そうだろ、みんな!」

 

 ディアベルの演説に盛大な拍手が送られる。ルックス、ステータス、ユーモア、そしてゲームクリアに向けた堂々とした発言は今ここに集まったトッププレイヤー達に理想のリーダーという印象を植え付けただろう。

 

 そう正に完璧な流れだ。………………俺の隣で何やら言いたそうにウズウズしているキバオウさえ居なければ。

 

「ちょお待ってんか、ナイトはん! そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな!」

 

「キバオウさん、こいつっていうのは一体何の事かな?」

 

 突然の乱入にも動じないディアベルに対して、ふんと盛大に鼻を鳴らすと噴水の前まで喧しい足音を立てて移動し怒鳴り散らす。

 

「こん中に五人か十人はベータ上がりの卑怯もんどもがおるんやろ! ええか! ジブンらがビギナーを見捨てて何もかんも独占したせいで二千人のプレイヤーが死んどるんやぞ! 少しは恥っちゅうもんがあるなら、今この場で土下座して溜め込んだ金やアイテムを全部吐き出さんかい!」

 

 その言葉に広場にいた全員が凍り付いたかの様に黙り込む。

 

 一部の初心者達の中に燻る反ベータテスターの感情。キバオウは確かに最初に会った時からベータテスターへの敵愾心が強かったが、その思想がまさかここまで過激に成長していたとは思わなかった。

 

「ちょ、ちょっと待てよキバオウさん! いくら何でも横暴すぎやしないか!? それはつまりベータテスターに二千人が死んだ責任を取って死ねって言っている様なもんだぞ!!」

 

「アシュロン、お前あんな奴らの肩持つんか! なんや何処ぞのベータテスターに美味い汁でも吸わせてもろうてたんか!! ………………それとも、まさかお前自身がベータテスターだったりするんか?」

 

 思わず息が詰まる。咄嗟に反論してしまったが、この場面で擁護をすれば疑われるのは必然だった。このままでは俺自身がベータテスターとして吊るし上げられてしまうか…………最悪ディアベルがベータテスターだったとバレてしまうかもしれない。

 

「発言、いいか?」

 

 その時、人垣の中から黒人らしき大男が現れた。落ち着いた雰囲気をしているが、日本人離れした巨体からは一種の凄みがある。その威圧感に勢い付いていたキバオウも流石に怯んでしまっている。

 

「オレの名前はエギルだ。キバオウさん、あんたは元ベータテスターがビギナーたちの面倒を見なかったから死んだと言うが、金やアイテムはともかく、情報はあったと思うぞ」

 

 そう言ってエギル氏が取り出したのは表紙に簡略化した鼠マークが描かれた簡易な本────

 

「それって、攻略ガイドブックか?」

 

「そうだ。こいつはオレが新しい村や町に着くと、必ず道具屋に置いてあった。こんなに早くモンスターやマップのデータを情報屋に提供出来るのは元ベータテスターたち意外には有り得ないってことだ」

 

 このガイドブックにそんな秘密が隠されていたのか。思い返せばディアベルもフードを深く被った小柄な人物と何やら話をしたりメッセージを頻繁に送っていたりしていたが、もしかしたらそれも本の作成に一役買っていたのかもしれない。

 

「そ、そんでも二千人死んどるんやぞ! しかもただの二千ちゃうで、ほとんど全員が他のMMOじゃトップ張ってたベテランや! アホテスター連中がもっと協力しとったら今頃は────」

 

「彼らが死んでしまったのはベテランのMMOプレイヤーだったからだとオレは考えている。このSAOを他のタイトルと同じ物差しで測り、引くべきポイントを見誤った。今オレたちがするべきことは、責任の追求では無く、自分たちがそうならない様に協力していく事だ。今回はそのための会議だとオレは思っているんだがな」

 

『元ベータテスター達は初心者達を見捨ててはいない』。エギルが語った内容は理論に基づいた完璧な論破であり、ベータテスターを処罰すべしと言った空気をもの見事に変えてくれた彼の手腕に感心してしまう。

 

 結論は出たと判断したのか今まで噴水の縁に立ったまま話を聞いていたディアベルは対峙する二人の間に入る。

 

「キバオウさん、君の言うことも理解は出来るよ。でも、エギルさんの言う通り、今は前を見るべき時だろ? 元ベータテスターだって…………いや、元テスターだからこそ、その戦力はボス攻略のために必要なものなんだ。彼らを排除して、結果攻略が失敗したら、何の意味も無いじゃないか。それに(・・・)─────」

 

 ディアベルはもったいぶる様にそこで言葉を止めると、パンフレットの様な物を取り出して高々と掲げてみせる。パンフレットの表紙には《アルゴの攻略本・第一層ボス編》と書いてあった。

 

こんなにも協力してくれているんだ(・・・・・・・・・・・・・・・・)。今度はこちらが彼らに歩み寄るべきじゃないかな?」




8話目にてアスナさん登場。本作初の女性キャラクターとなります。…………SAOには可愛いヒロインが沢山いる筈なのに。
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