SEVERANCE PRODIGY〜武器破壊を極めてゲーム攻略!   作:封魔妖スーパー・クズトレイン

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※話の都合上、一部の会話を変更しました。


9話 パーティー結成

 《アルゴの攻略本》にはボスモンスター《イルファング・ザ・コボルトロード》の推定HP量や使用する武器とソードスキル、HPゲージが残り一本になったら曲刀に変更するなどといった重要な情報が事細かに記載されていた。

 

 そして、裏表紙には【情報はSAOベータテスト時のものです。現行版では変更されている可能性があります】の一文。

 

 まるでベータ時代から情報屋をしていた(・・・・・・・・・・・・・・・)かの様にボスの細かな情報を知っている事に加えてこの注意書きだ、ほぼ全員がアルゴ氏が元ベータテスターだったのではないかと疑念を抱いたに違いない。

 

「みんな、今はこの情報に感謝しよう! 出所はともかく、このガイドのお陰で数日は掛かる上に危険の伴う偵察戦を省略できるんだ。…………こいつが正しければボスはそこまでヤバイ感じじゃない。きっちり戦術(タク)を練って、回復薬(ポット)をいっぱい持って挑めば、死人なしで倒すのも不可能じゃない。いや、違うな。絶対に死人ゼロにする。それは、オレが騎士の誇りに賭けて約束する!」

 

 ディアベルの言葉に賛同する様に盛大な拍手が送られる。…………個人的にはあいつが騎士で確定している点に思う所はあるが。

 

 こうして、フロアボスの攻略法が分かったため次に行うのはボス戦時の役割分担だ。『仲間や近くにいる人とパーティーを組んでくれ』という掛け声と共に各々が六人組を作り始める。

 

 さて、俺はどうするかな。この大一番はディアベルと共にアタッカーをしたい所だが、筋力優先のステータスなら盾役(タンク)に回るべきなのかもしれない。だけど、個人的には攻撃しまくって活躍したいしなぁ。

 

「アシュロン、悪いけど君は残りの二人と一緒にサポートに回ってくれないかな?」

 

「なんとっ!?」

 

 まさかここで戦力外通告されるとは思わなかった。

 

「オイオイそりゃねえよ。今まで一緒にやってきたのに、ここに来て味噌っかす扱いは流石にあんまりじゃねえか?」

 

「…………ごめん。だけど、これは君にしか頼めないんだ」

 

 内心を押し隠して少しオーバーに抗議してみせる俺に対して、ディアベルは真剣に………………何処か後ろめたい表情で頼み込む。

 

 それは戦力とかパーティーバランスとかとは違う、もっと別の目的がある様な…………。

 

「…………分かったよ。まあ、今回はのんびりと雑魚の相手をしながらお前の活躍を見物させてもらうぜ。でも、俺が離れている間に油断してドジ踏むんじゃねえぞ」

 

「ありがとう。せめて、君が暇にならない様に最高のボス戦にしてみせるよ」

 

 そう言って、ディアベルの案内のもと、オミソ達の所に向かう。残りの二人とは一体どんな奴らなのだろうか。こんな場面であぶれてしまうのだ、余程頼りない奴か重度のコミュ障かな…………。

 

 

 

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「…………よ、よお。さっきぶりだな」

 

「あ、ああ。また会ったな」

 

「………………」

 

 まさかのキリトとケープ女だった。

 

 会議前のやり取りが尾を引いていて空気が重い。そして、ケープ女からの圧が恐ろしい。

 

 何故よりによってこの二人があぶれてしまったのか。特にキリト、お前はめちゃくちゃ強かっただろ。雑魚処理のサポートなんてやらずにボスの相手をするべきだろうが。

 

「とりあえず、パーティー申請送るから入ってくれ」

 

「お、おう。サンキュー」

 

 パーティーを組んだ事で、視界の左上に二人分のHPバーとキリトとアスナ(フード女の事だろう)の名前が表示される。

 

「…………ま、まあ、色々あったかもしれないけど、今回は一緒に頑張ろうぜ」

 

「気安くしないで。あなたとは仲良くするつもりは無いから」

 

 いけない、涙が出てきた。言葉は刃物って格言を何処かで聞いた事があったけど本当の事だったんだな。ソードスキルを喰らった時より胸が痛いや。

 

「第一、頑張るも何も無いでしょ? ボスに一回も攻撃出来ないまま終わっちゃうじゃない」

 

「し、仕方ないだろ、三人しかいないんだから。スイッチでPOTローテするのもギリギリだし」

 

「そんな事分かってる! だけど! …………いえ、確かにあなたの言う通りね」

 

 雑魚狩りの役割には俺自身も不満はあれど、それにしたってアスナは異常だ。その姿からは余裕が無いというか、何処か生き急いでいる様な雰囲気を感じる。

 

「…………とりあえず、何処か落ち着ける場所でボス戦時の連携について話すべきだな。俺は何処でも良いがどうする? その辺の酒場とかでするか?」

 

「………………それは嫌。誰かに見られたくない」

 

「なら、どっかのNPCハウスの部屋とか…………でも、誰か入ってくるかもしれないしなあ。誰かの宿の個室ならカギ掛かるけど、それも無しだよな」

 

「当たり前だわ」

 

 どうやらキリトもこのじゃじゃ馬には苦労しているらしい。そもそもこの二人は一体どういう経緯で一緒にいたのだろうか? 

 

「だいたい、この世界の宿屋の個室なんて、部屋とも呼べない様なのばかりじゃない。睡眠だけは本物なんだから、もう少し良い部屋で寝たいわ」

 

「そ、そうか? 探せばもっと良い条件の所もあるだろ? 俺が借りてるのは、農家の二階で二部屋あってミルクは飲み放題。ベッドもデカいし眺めも良いし、その上風呂までついて…………」

 

 そこまでキリトが口にした瞬間、アスナはまるで閃光の様な勢いでキリトに掴み掛かった。

 

 それから、あまりの出来事に隣で話を呆然と聞いていたが、どうやらアスナはどうしても風呂に入りたいが、その風呂付きの部屋はキリトが長期間借りていてキャンセルが不可能。その結果、キリトが使っている部屋にお風呂をお借りにお邪魔するという事だ。

 

 ………………三十六計逃げるに─────

 

「何処に行くつもりだアシュロン? 良い機会だ。せっかくパーティーになったんだし、親睦を深めるために一緒に来ないか?」

 

「や、やめろ! 俺をお前らの変なゴタゴタに巻き込むな! …………ひ、引き剥がせない!? ディアベル! ディアベル頼む、助けてくれ!!」

 

 余りの恐怖に今ここには居ない友の名を呼んでしまったが、叫びは虚しくこだますだけだった。

 

 

 

 

 

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 そんな訳で、キリトさんが泊まっているお部屋。隣の風呂場では現在アスナ嬢が絶賛入浴の真っ最中である。

 

 この世界のドアは防音設備はバッチリなため水音は聞こえて来ないが、女の子が隣の部屋で風呂に入っているという事実は野郎二人を動揺させるには十分だった。

 

 どうにか気を紛らわそうと飲み放題の牛乳をいただこうとするが、腕が震えて中々グラスを口元まで運べない。向かい側に座るキリトは《アルゴの攻略本》を何故か逆さに読んでいた。

 

「…………こ、この牛乳美味しいな。お土産に五、六本程瓶に入れて貰ってっても良いか?」

 

「えっ? あ、ああ、残念だけどそれは無理だ。その牛乳、宿から持ち出すと五分で耐久値全損なんだよなぁ、これが。しかも消えるんじゃなくてゲキマズな液体になるという…………」

 

「そっか、そりゃ残念だ。どうにかしてヨーグルトにする方法でもありゃ良かったのにな」

 

「面白い発想だけど、流石にそんな事は…………いや、SAOならもしかしたら有り得るのか?」

 

 よし、下らない話だが気を紛らわす事は出来そうだ。このまま適当な話をしている間にアスナが入浴を終えさえすれば─────

 

 コン、コココン

 

 …………廊下側のドアからノックの音が聞こえる。この独特のリズムはきっとプレイヤーのものだろう。

 

「う、嘘だろ…………? 何でだよ! お前ソロプレイヤーの筈だろ!? 何でこんな時に限って来客が来るんだよ!?」

 

「し、知らないよ! このノックの仕方は確かに俺の知り合いだけど、普段はこうして直接来る事はない筈なんだ! …………こうなったら仕方ない。どうにかして気付かれる前に帰って貰うしかない」

 

「出来るのか、そんな事!?」

 

「出来る出来ないじゃない。やらなきゃ俺たちはお終いだ!」

 

 キリトは意を決してドアノブに手を掛ける。まさか、ボス攻略より前に命懸けの戦いに挑まなければならないとは思わなかったが、キリトの言う通りもう泣き言を言っている場合ではない。

 

 思い出せ、甲子園でサヨナラのチャンスで出番が回ってきたあの瞬間を。あの時に比べればこれ位のプレッシャー何とも…………いや、やっぱり今の方がヤバいな。

 

「おや、先客がいたのカ。それはお邪魔だったかナ?」

 

「いや大丈夫だ。それより珍しいな、あんたがわざわざ部屋まで来るなんて」

 

「まあナ。クライアントが、どうしても今日中に返事を聞いてこいっていうもんだからサ」

 

 そう言って入ってきたのは金褐色の巻き毛をしたかなり小柄な少女。その両頬には何故か鼠の様な髭が描かれている。顔を見たのは初めてだが、その小柄な体格と肩に羽織っているフード付きマントには見覚えがある。

 

「おっト、そういえばアンタとは自己紹介はまだした事はなかったナ。オイラはアルゴ。情報屋《鼠のアルゴ》だヨ。よろしくナ」

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