【カオ転三次】地方神ガチ勢と化した俺たちの話   作:一般俺たち

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第一話

 

 最高の愛とは、魂を目覚めさせるようなもの。それは俺たちの心に火をともし、心に平穏を与えてくれるものである。

 

 「【アギ】」

 

 指を高らかに打ち鳴らすと、目の前の【ガキ】の全身が燃え上がる。弱点を突かれた悪魔は成す術も無く倒れ、体を構成していた【MAG】を保てなくなりサラサラと崩れていく。

 魔力の減少を感じて一息つく。俺の炎は彼女へ送る愛の具現、決して消えず尽きる事も無い……と思ってはいるが、実際のところ魔力の減少はどうにもならない。

 

 「ぐうぅううう……俺の愛、俺の炎はこんなものではないのに……!」

 

 そろそろ撤退か。ああ、しかしこの程度で我が愛の炎が尽きるとは情けない。もっと悪魔を殺して力をつけたいが、しかし無理をして死んではどうにもならない。俺単独で異界を攻略しているのだ、臆病なほどに慎重であるべきだろう。

 

 早く強くなりたい。この世界において、神の格とは信者の格に影響されるらしい。信者が生み出す信仰のMAGが、神の力に影響を及ぼすのだ。もっとレベルを上げて、もっと多くのMAGを生み出せるようになりたい。そうすれば彼女の霊格も上がり、さびれた神社の祭神という立場から抜け出させる事も出来るだろう。しかし彼女が俺以外の信者を持つというのも苦々しい。NTRか? 俺は強火の同担拒否だぞ。

 

 「……帰るか。早く彼女に会いに行こう」

 

 我が愛、わが最愛の彼女【イナリノカミ】。寂れた神社で彼女に出会った日から、俺は永遠に彼女の虜である。

 

 

 

 

 転生して何が一番良かったって、俺に霊能の才能が物凄くあった事だ。

 稲荷神様から教えてもらったところによると、基本的に悪魔と戦うなんてのは恵まれた才能の持ち主が数年修行してようやく叶うレベルの事らしい。そう考えると、覚醒してすぐに【アギ】が使えた俺はとても運が良かった。おかげで彼女の役に立てるのだから。

 

 「お狐様ー、今日も【ガキ】どもをぶっ殺してマッカをかっぱらってきました! これです!」

 「うむ、此度もご苦労じゃったな。ほれ、近う寄れ」

 「わーい」

 

 土地神【イナリノカミ】。普通に分かりやすく書くと稲荷神、つまりお稲荷様だ。年若い女学生のように見える彼女には狐の尻尾が生えていて、最近はご褒美としてそれを触らせてもらえるのだ。結婚したい。

 

 「ふふふ……お前はわらわの事が本当に好きじゃなあ」

 「わーいわーい」

 「ちょっと尻尾に触らせてやるだけでこの喜びよう。ういやつめ」

 

 あー可愛い。尻尾が柔らかい。太陽の匂いがする。

 絶対に結婚したい。いや、もう結婚してるんじゃないか? 今はまだ中学生だが、前世を合わせればもう問題なくない? というか神様に対して法律とか関係ないんじゃないか?

 

 「ああ^~~~~~~」

 「ふふふ……ほれ、もう終わりじゃ。わらわの尻尾は安くないでのう」

 

 この世のものとは思えないほどふさふさの尻尾に蕩けていると、ひょいっと尻尾を遠ざけられてしまった。ああ、全ての安息がここにあったのに。悲しい。

 

 「どれ、ではマッカを頂こうか。……うむ、うむ、不味くも無いが美味くもないな」

 

 白魚のような指がマッカをひょいと摘まみ上げると、そのまま口内へ放り込む。

 この世界の生き物はみな、【生体マグネタイト】(通称MAG)というエネルギーを放出して生きている。悪魔や神霊はこのMAGを消費して顕現しており、このMAGを固めて通貨としたものをマッカと呼ぶらしい。

 異界の化物どもは皆倒すとマッカを落とすが、しかし取引先がいないのに金だけ持っていても仕方が無い。少しでも強くなりたいお狐様の思惑もあり、マッカを溶かしてMAGとして吸収してもらっているのだ。

 

 はー、バリバリとマッカを噛み砕くお狐様も可愛い。世界で一番可愛いんじゃないか?

 ちなみに俺は彼女から加護をいただいている。彼女がMAGを吸収するほど霊格が上がり、俺にかけられている【狐の加護】も強くなる。そうすればさらに俺がマッカを稼げるようになり、更に彼女が強くなって……という世界一素晴らしい循環が出来ている訳だ。

 

 「……ふぅ。最近は捧げられる量も増えて食べるのも一苦労じゃな。一部は今後の為に取り置いておくか」

 「そうなんですか? 魔界の通貨って言っても、正直使い道がさっぱり……」

 

 マッカを食べ終えて一息ついたお狐様と食後の雑談をする。マッカなぁ……。これってマジで使い道があるんだろうか? 俺の中では子供銀行券くらいの価値しか無いぞ。

 

 「いやいや、魔界ではマッカこそ天下の回り者じゃ。もしわらわが本霊に繋ぐことがあったとして、その時に一文無しであれば取り次いでも貰えん」

 

 人間の俺にとっては中々理解しがたい事だが、神や悪魔の中では分霊や本霊という概念が当たり前に存在するらしい。しかも分霊や本霊の基準はかなり緩い。お前ってちょっと俺に似てるよな? 信仰欲しいし俺の分霊ってことにしない? みたいな緩いやり取りが平気で成立するのだ。

 お狐様は稲荷神の一柱であるが、元を辿れば大妖狐である玉藻の前をルーツに持つらしい。道理でこんなに美しいわけだ。妖艶かつ愛嬌もあるお狐様は世界一の稲荷神である。

 

 「しかし、今日も他の神社の奴らから接触は受けなかったのか」

 「はい。それ以前からずっと言ってましたよね? 無いと不思議なんですか?」

 「うむ……。基本的に神の戦いとは信者への戦い、つまりは信仰の奪い合いよ。より多くの信者、より強い氏子を抱える方が神としての力は高まる。だからこそ、今の今までわらわ達に何の接触も無かったことが信じられん」

 「そうなんですか?」

 「お前は、正直言って天才という言葉すら生ぬるいほどの天才じゃ。わらわと出会ってわずか数か月で【ガキ】を焼き尽くすほどの力を得るなどあり得ん」

 

 そう言いながらお狐様は俺の頭を撫でてくる。ああ^~脳が蕩けるぅ^~。こんなに褒めてくれるくらい俺に才能があって本当に良かった。今生の両親よありがとう、顔も知らないけど。

 

 「かつて【ノギツネ】にまで落ちぶれたわらわを【イナリノカミ】にまで戻したお前を、他の神が放っておくはずが無い。……何度も確認するが、本当に接触を受けていないのだよな? 夜中に神託が届いたことは?」

 「いやー、それが全くないんですよね……」

 「それが分からぬ。分からぬから不気味だ。眠りについているのか? わらわも最近目覚めたゆえ詳しくは無いが、たしか以前はここ一帯が【カマドガミ】の縄張りであったと思うが……」

 

 確かに怖い。正直前世は宗教に関して無知だったのだが、神にとって縄張りは物凄く重要であるようだ。『オウオウ、お前らワシのシマで何やっとるんや? はよショバ代払わんかい』とかなったら困ってしまう。

 

 「……近くの神社とかに、挨拶しに行った方が良いんですかね? 神主さんとかに話をして、祭神さまに顔を繋いでもらう的な……」

 「…………わらわには判別がつかん。お前に任せる」

 

 そう言うとお狐様は俺の顔にモフッと尻尾を乗せてきた。わーい!!!!! なんかめんどくせぇ話がどうでも良くなってきたぞ!!!!

 

 「わらわの氏子。強く、忠実で、愛らしい我が子よ。お前はわらわの事を愛しておるな?」 

 

 尻尾で前が全く見えないまま、お狐様が語りかけてくる。

 

 「わらわの耳目として知り、わらわの手足として働き、わらわに不破の信仰を捧げる我が子よ。……我を神として崇める事を、もう一度ここで誓え。信仰を捨てぬと、決して裏切らぬと、そう誓うのじゃ」

 

 そう語るお狐様の顔は尻尾で隠されて見えないが、何となくその声は震えているように感じた。

 お狐様は過去を語りたがらない。しかし断片的な話を繋ぎ合わせる限り、恐らく彼女は一度自らの信者を失っているらしい。それも、恐らくは信者に忘れられるという形で。

 俺が他の神と接触するという話になって、以前の事を思い出してしまったのだろうか。

 蕩けていた顔を引き締め直し、真剣に返答する。

 

 「勿論です。我が最愛、偉大なる【イナリノカミ】様よ。私は貴女と出会うために生まれてきました。生涯をかけて信仰を捧げる事を誓います」

 

 初めて彼女に出会った時、心臓の炉に火が付いたのだ。その時から永遠に俺の心は彼女のものである。

 俺の返答にお狐様は満足していただけたようで、軽く尻尾で頭を撫でられた。

 

 「ふふふ……お前は本当にわらわの事が好きじゃのう。よいよい、益荒男を従えるのは女神の性よ」

 

 結婚してぇ~~~~~~。日本神話は結構人と神の境界が薄いし、俺が強くなったら結婚してくれないだろうか。彼女の全てが愛おしくてたまらないんだが。

 

 ということで、今まで接触が無かった他の組織に接触することを決めたのだった。地方で宗教勢力ににらまれるとまあまあ暮らしがしんどくなるらしいから、あんまり下手な事はしないようにしなきゃな。

 

 

 

  

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