【カオ転三次】地方神ガチ勢と化した俺たちの話   作:一般俺たち

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第十八話

 

 異界攻略は滞りなく完了した。

 ボスはこの異界の管理を任されていたという天使、【プリンシパリティ】。メシア教日本支部からの撤退指示を無視し続けて、ついに事実上の殺害許可が出た筋金入りのイカレ天使だ。

 軽く話してても「なぜ聖人がここにぃ!? 悪魔、貴様が誑かしたのですねぇ!!」「おお、不浄なるリリスよ! 今すぐ彼を解放するのです!」「神、神、神、神ィ! 神の御意志が聞こえないのですかァアアアアアア!!!!!」と非常にうるさかった。やっぱメシア教ってカスだわ。

 結局最後は最大までMAGを込めたなんちゃって【アギダイン】で焼き尽くしたが、最後まで救済だ信仰だとうるさい敵だった。

 

 いや、イカレ天使の事はもういいか。異界に封印されていた【キクリヒメ】と話をしなければならない。俺達にとってはこっちの方が本番である。

 

 

 

 

「ガイア連合特殊外部顧問、【稲荷神】じゃ」

「ガイア連合準幹部、大和神対応担当の灰谷蓮です」

「……日本神、【キクリヒメ】です」

 

 ガイア連合にいると、上には上がいるという言葉を意識することが多い。ショタオジを筆頭に幹部は怪物揃いだし。

 だが上には上がいれば当然、下には下がいるのだ。

 たとえばガイア連合の傘下に置かれた多数の地方組織、最近敗北して流れ着いてきたエジプト神話勢力、未覚醒の一般人たちなど色々。

 

 そして趣味が悪い話になるが、うちのお狐様はこういう相手にイキるのが大好きなのである。

 

「いやー、キクリヒメ様にわらわの氏子をお見せするのは恥ずかしいのう。 まだまだ未熟な者で、無作法お許し願いたいのじゃ……これこれ、そうMAGを高ぶらせるでない♡ なに、緊張してついやってしまったのか? ならば仕方がないのう♡このざこ♡ざーこ♡霊能よわよわ♡ わらわのこと好きすぎ♡まったく、キクリヒメ様の氏子を見習わせたいのう……?ぜひ紹介してほしいものじゃのう……?」

 

 イエーーーイ!!最高にかわいい!!!いつもの妖艶なお狐様もいいが、和服に着替えてメスガキと化したお狐様も最高に愛せるなあ。ここで俺の力量をアピっておくのも狡猾で大好き。

 

「ん? んんん? ええっ!? 0人!?!? 零細一般狐のわらわですら理解ある氏子くんがいるのに!? 日本神話の有力神であるキクリヒメ様には0人!?!? ほー……なるほどなるほど……。……おいキクリ、焼きそばパン買ってくるのじゃ。ダッシュな。……ギャアアアアアッ!?!?」

 

 あっ、煽りすぎて【破魔】かけられてる。ゴロゴロと床を転がっているが、雰囲気がギャグっぽいので大丈夫だろう。ファニーなお狐様も可愛いね♡

 

「こ……殺す! この駄狐を殺して私も死にます! これ以上の生き恥を晒しては生きていけません!」

 

 肩で息をしながら叫ぶ【キクリヒメ】を何とかなだめる。【キクリヒメ】さまは淡い黄色の着物に身を包んだ、20代後半にも見える清楚で明るい女性だ。今はちょっと錯乱してるけど。

 

「私頑張ったのに! 天使相手にも頑張ったのに! うう、もう飲まないとやってられない……! お酒おかわりください!!」

「はい、かしこまりました」

 

 交渉用に作った一室で、キクリヒメ様は勢いよくお神酒を飲み干しておかわりを要求する。高級な調度品に囲まれてるせいで、ホストクラブに嵌まった真面目なOLにも見えてくる。

 ちなみに隣で恭しくお酒を注いでるのが俺ね。

 

「くそう、くそう……! 私のほうが先輩なのに、後輩ばかりがどんどん出世していく……! DQNのカグツチくんの相手とか全部私がしてたのに……!」

「酷いですね。みんなキクリヒメ様の大切さに気づいていないんですよ」

「うう、優しい……シャンパンお願いします……」

 

 やっぱりこれホストクラブかもしれん。元は密会用の部屋のため薄暗く作られていたのが仇となったか。

 

「うう……こんな(霊能が)イケメンがあの狐の物なんて納得できない……。お兄さん、この後予定ありますか? 改宗とか興味無いですか……?」

「申し訳ありません、うちはそういうお店じゃないので……」

「そうじゃそうじゃ。キャストの引き抜きはご遠慮いただこうかのう」

 

 あ、お狐様が復帰してきた。破魔のダメージがやっと抜けたのだろう。

 スッと立ち上がったお狐様はそのままソファに深く座り、テーブルの真向かいを指さす。

 

「さて、冗談はこのくらいにしておくか。ほれ、お前もこっちに座るのじゃ」

「くっ、割と本気で撃ったのに。私たちがいない間に、随分と力を蓄えたようで」

 

 お狐様はさっきと違って至極真剣な雰囲気だし、キクリヒメ様も真面目な表情をしている。こういう二面性もお狐様の魅力だよな。

 

「……ふう、落ち着きました。動けるようになったのもお酒が飲めるのも久しぶりで、少し羽目を外してしまいましたね」

「はいはい、そういうの良いのじゃ。早く商売の話に移るぞ」

「む。商売神は風情がありませんね。……まあいいでしょう。貴女がそこまでの力を得たカラクリも気になりますし」

 

 アイスブレイク(本当にそうか?)を終え、まずはお互いの認識や過去話の擦り合わせから行う。

 

 そもそも大和神話勢力がなぜここまで衰退してしまったのかと言えば、その発端は1945年の太平洋戦争にさかのぼる。当時の日本は、世界の大国であるアメリカ率いる連合軍に敗戦寸前まで追い込まれていた。そのまま終わっておけばまだ傷も少なかったのだろうが、追い込まれた日本は禁じ手とされていた【オカルト】に手を出してしまう。

 【祟り】による直接的な呪殺に始まり、【ガルダイン】による神風や異能者による蹂躙など、国有の退魔組織である【ヤタガラス】を中心とした反攻作戦は最初こそ大きな成果を上げた。

 だが、ここでアメリカの背後に存在する【メシア教】が動く。呪殺は天使に弾かれ、神の火である【メギド】と【メギドラオン】が艦隊を壊滅させた。結局日本は奮戦虚しく破れ、日本の退魔組織を危険視したメシア教により地方組織は全滅。彼らが崇めていた大和神たちも、みなそれぞれの異界に封印されることになったのだった……。

 

 と、この話をしている【キクリヒメ】様は本当に悲しそうだった。

 

「【メシア教】に氏子たちを殺され、身動きの取れぬ異界に縛り付けられ。あの鬼畜米英を倒すとなれば、私に否はありえません。解放の恩も合わせて、【ガイア連合】への協力を約束しましょう」

 

 そう言って寒気のする微笑みを浮かべた彼女からは、メシア教への確かな憎悪が読み取れた。これに嘘は無いだろう。

 だが、俺たちにとってはここからが本番だ。どういう条件で約束するのか、支援はどれくらい必要なのかをキッチリ詰めなければならない。

 

「そ、それでですね……。その、対価はどれほど頂けるのです?」

「なんじゃお主、厚かましいのう。お主が憎む【メシア教】へ助太刀してやるというのに、まだ助けがいるのか?」

 

 まずお狐様が軽いジャブを放つ。最も有利な今のうちに、ガイア連合との格付けを済ませておきたいのだろう。

 

「(こ、コイツ、今度コテンパンにしてやります……!) ……妙な事を言いますね。【多神連合】を下したメシア教は、じきに全世界の征服に乗り出すでしょう。その時、あなた達だけで対抗できるとお思いですか?」

「さあ、どうかのう……。ガイア連合の盟主の力は凄まじいものがあるからのう。分からぬのう」

「下手な嘘は止めてください。だったら私たちを解放する理由がありませんよ? ほんとは『助けてください』ってお願いしたいんじゃないですか?」

 

 おお、お互いにバチバチやり合っている。ガイア連合が格上だと納得させたいお狐様と、日本神の方が格上だと主張したいキクリヒメ様との争いだ。

 その後もお互いのマウント合戦がしばらく続いていたが……。

 ……あ、お狐様が目配せしてきた。ここら辺が頃合いかな。

 

「お狐様、いい加減になさっててください! さっきから聞いていれば、余りにも誠意を欠いた物言いではありませんか!」

 

 グッ。 

 演技とはいえ、お狐様に怒鳴るなんて畏れ多い行いにダメージが入る。

 

「キクリヒメ様と言えば、あの伊邪那岐様と伊邪那美様の仲を取り持ったとされる偉大な神! 格がどうこうなど、そのような不毛な諍いはお控えください!」

 

 胸の苦しみを抑えながらキクリヒメ様に向き直り、恭しく頭を下げる。

 

「キクリヒメ様、大変失礼致しました。我が神の過ちは私の過ちと同じ。どうぞお怒りは私にお願いいたします」

「い、いえいえそんな……! ええっと、崇める神にすら諫言を行う貴方の信心、お見事です。貴方の言葉で私も目が覚めました。日ノ本の子は我が子も同然。家族を助ける時に、互いの格を気にすることがありましょうか」

 

 よし、ミッションコンプリート。

 神というのは誇り高き生き物で、互いの格付けなんてしたら揉めるのが眼に見えている。なので間に俺という人間が入ってヨイショする事で、何となく対等っぽい雰囲気にしとくのが一番なのだ。

 

「お心遣いに感謝いたします。……それで、支援のお話でしたが」

「は、はい。……あの忌々しい【メシア教】から受けた傷は、未だ癒えておりません。一人でも多くの信者、一つでも多くの祭殿が必要なのです」

 

 これは前から聞いていた話だな。この世界の【神】は信仰されることで力を得る。正確に言うと信仰から生まれる【MAG】を摂取している。

 

「勿論です。現在【ガイア連合】は多数の地方組織への支援を行っており、その中には【キクリヒメ】様を崇めるものも含まれていますよ」

「いえ、それもありがたいのですが……その、ガイア連合の方を勧誘してはいけないのですか? 例えば貴方のような方が信仰してくれれば、私の力も増すと思うのですが……」

 

 そう言って【キクリヒメ】様は赤い顔をしてこちらを見つめて来る。ここでおっ、俺の事が好きなのか? などと阿呆な勘違いをしてはいけない。

 先程の話にも触れるが、信仰による【MAG】の量は信者の質に依存する。強力な【覚醒者】ほどより多くの【MAG】を生み出す事ができるのだ。霊能の素質は子供に受け継がれる事もあわせ、高レベルの異能者を抱える事は神にとって至上命題なのである。

 

「こらーーー! 卑し女神すな!! この氏子はわらわを永劫信じ続けると誓っておるのじゃぞ! そもそもよその信者を横取りとか、行儀が悪すぎるのじゃ!」

「だ、だってしょうがないじゃないですか! 貴女ばっかりズルいです! 前は野狐スレスレの駄目稲荷だったのに、今はこんなに力強くなって! 霊能も強力で、信仰も練り上げられていて……貴女だけそんな優良物件捕まえてズルいです!」

 

 ふふふ、信仰が練り上げられてるだって。お狐様への忠誠を褒められちゃったぜ。

 

「羨ましいか? この輝かしい魂、幾度の死線を越えて鍛えられた信仰心……。でも残念、こいつはもうわらわに夢中じゃからのう。悔しいのう悔しいのう」

「ぐぐぐ……。たまたま氏子ガチャでSSR引いただけの分際で調子に乗って……!」

 

 やっぱり人を煽る時のお狐様はイキイキしてて楽しそうだなあ。彼女の持つ悪性がこんなに可愛らしい形で発散されてると思うと喜ばしい限りだ。

 

「ふふふ、そう悔しがるでない。わらわがただ自慢するだけだと思うたか? ガイア連合を見よ。みな超一流の異能者ぞろいでは無いか」

「!! ……そう言えば、貴女はガイア連合特殊外部顧問……! まさか、私に人の子を紹介してくれるのですか!?」

「ふふふ、勿論じゃ。わらわは割と初期からガイア連合と関わってきた、いわゆる最古参。ガイア連合と上手く付き合っていく為に何が必要か、よく分かっておるのじゃ」

 

 そう言うとお狐様は一瞬でスーツ姿に早着替えした。自衛隊との依頼で使っていたやつだ。

 どこからか飛んできたスポットライトの光に照らされて、お狐様がビシッとポーズを決める。

 

「今のわらわはそう、超一流の敏腕プロデューサー狐! お主をみながチヤホヤして崇め奉るようなスーパー女神に育て上げてやるのじゃ! いうなればそう……【野女神。をプロデュース】じゃ!」

 

 楽しそうにキメポーズをするお狐様は、そう言って不敵に笑ったのだった。

 最近ドラマにハマってましたもんね。楽しそうで何よりです。

 

 

 

 





文字数がかさんだため話を分けました。
後編は可及的速やかに投稿します。
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