【カオ転三次】地方神ガチ勢と化した俺たちの話   作:一般俺たち

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第六話

 

 富士山。日本人で知らない者はいない、日本を象徴する霊峰だ。【ガイア連合】の本拠地、【星霊神社】はその富士山のお膝元にある。土地を流れる霊脈は恐らくうちと比べ物にもならないだろう。新幹線とバスを乗り継ぎ、長々と時間をかけて星霊神社に到着した時、まずその『大きさ』に驚かされた。

 

「でっけ……いやいやマジか、ひょっとしてここ自体が【異界】になってるのか?」

 

 神社に足を踏み入れたはずが、目の前には大きな街が広がっている。明らかに外から見える大きさと中身が合っていない。この物理法則を無視した現象は【異界】特有のものだ。うちもお狐様の神社を異界化して拡張しているからよく分かる。

 

「建物一つだけじゃない、霊地全体を異界で覆ってるのか。いったいどれだけのMAGがあれば可能なんだ?」

 

 あと普通思いついても実行しようと思うか? やべーなガイア連合。スレ民のノリが軽かったからつい勘違いしてしまうが、やはりここが日本最大の霊能組織だ。本拠地をこれだけ大規模な異界としている組織など、世界でも数えるほどだろう。

 

「やあ、君が灰谷くんだね? どうもどうも」

 

 周囲を見回していると、後ろから年若い少年が声をかけてきた。長く伸ばした黒髪に童顔、そしてその身に秘めた桁外れのMAG。間違いなく彼が【ガイア連合】の盟主、通称【ショタオジ】だ。

 

「あ、こちらこそどうも……。今日はよろしくお願いします」

「いやいや、そんなに硬くならないで! うちはまだまだ出来たての組織だから、既に【覚醒】してる俺たちの参加は実際かなりありがたいんだよね」

 

 お互いにぺこぺこと頭を下げ合う。今日はショタオジとの面談(ガイア連合員は全員行うらしい)の後、ガイア連合を色々案内してもらう予定なのだ。それにしても、まさかショタオジがここまでの怪物だとは思わなかった。何でここまで強いのにまだ人間でいれるのかが不思議なレベルだ。

 

「よし、じゃあさっそく本殿へ行こうか。転移酔いに気を付けてね~」

「は?」

 

 視界がブレたかと思うと、次の瞬間俺とショタオジは畳張りの和室にいた。

 

「さ、座って座って。面談を始めようか。あ、饅頭食べるかい?」 

 

 テキパキと一反木綿らしきものが座布団やお茶を用意している。転移能力って実在したんだとか、この妙な布型生物は何ですかとか色々聞きたいことはあったが、状況に流されるまま着席する。もう何でもありすぎて笑えて来ちゃったな。

 

「……まあいいか、よろしくお願いします。お饅頭はぜひ下さい」

「君もなかなか図太いねぇ」

 

 これだけ強い人が味方してくれるのであれば有難い限りだ。この人が『俺以外の転生者など要らぬ!』とかいう考えの持ち主じゃなくて本当に良かった。

 

「では改めまして、灰谷蓮と申します。14歳です。学校には行っていません。使えるスキルは【アギ】と【ディア】です」

 

 まずは自己紹介だ。この時、使えるスキルについて述べておくのはデビルバスター界のマナーらしい。掲示板で見た。

 

「中一の時に神隠しに遭いまして、そこで霊能に覚醒しました。その後は異界に~~~~」

 

 大体の事情は既にメールで送っているが、一応口頭でも説明しておく。お狐様との出会いから異界探索の経緯、【カマドガミ】を奉ずる一族と接触したことなどなど、今までの経歴を洗いざらい喋っていく。

 

「……って感じなんですけど……あの、何してるんですか?」

 

 俺が話している間、ショタオジはずっと水晶玉をのぞき込んだりダウジングの様な事をしていた。これが噂に聞く占術ってやつか?

 

「これはねぇ、かいつまんで言えば君のMAGを見てるのさ。魅了や洗脳にかかっていないかとか、憑依されて乗っ取られていないかとか」

「えっ」

「うーん……。取り合えず洗脳はされてないみたいだね。良かった良かった」

 

 そうショタオジはあっけらかんと笑う。

 

「洗脳されてる可能性もあったんですか」

「だって君、女神の気配がもう物凄いもの。もし事前にアポイントメントが無かったら、多分境内に入った瞬間にシキガミに攻撃されてたんじゃない?」

「怖すぎません?」

 

 シキガミの強さは知らないけど、多分その場合俺って死んでましたよね?

 しかし洗脳か。一瞬訳が分からなかったが、確かに調べて当然かもしれん。俺はお狐様が大好きだから彼女の為に働いてるけど、傍から見たら本心でやってるのか洗脳されてるのかなんて分からないもんな。ガイア連合に敵のスパイが入っても困るし、当然の処置だろう。

 

「ほらこれ見てよ。これがパッと見で分かる君の魂のイメージね」

 

 そう言ってショタオジは水晶玉に映った俺の姿を見せて来る。促されるまま中を覗き込むと、水晶玉の中の俺は全身が黒いもやに覆われており、何処からともなく伸びた手が俺を背後から抱きしめている。やっべ。もうこんなのホラー映画のポスターじゃん。そりゃこんな奴がやってきたら攻撃しちゃうわ。敵組織の幹部じゃん。

 

「これが君のMAGを見たイメージね。こんなホラー漫画の表紙みたいになっちゃってさあ。何か心当たりはある?」

「いやー、心当たりしか無いです。毎日お狐様と同じ場所で寝起きしたり、一生氏子として仕えるって祭殿の前で誓ったりしたんですけど、たぶんそれですかね」

「うわっ……」

 

 ショタオジに絶句された。マジで? このレベルの強さの人が引くほど俺のやった事ってヤバいの? また俺何かやっちゃいました?

 

「君、絶対ろくな死に方しないよ。今のを聞いて更に霊視が深まったけど、今度はこんな感じ」

 

 もう一度水晶玉を見せて来る。すると、今まで黒いもやだったものがお狐様の尻尾に変わり、俺はお狐様に背後から抱き着かれて全身を尻尾でグルグル巻きにされていた。お狐様の真っ黒な瞳が俺の横顔を覗き込んでいる。うーん、今日もお狐様は美しいな。

 

「これが君の言うお狐様って人? 見てよこの顔、もう完全にハイライト無くなっちゃってるじゃん」

「恋愛映画のポスターになりましたね」

「最後には刺殺されそうだけどね」

 

 しかしなるほど、俺はこんなにお狐様に執着されてるのか。俺が一方的にお狐様を大好きなだけかと思っていたが、意外と彼女も俺の事を大事に思ってくれているらしい。

 

「へへっ、ちょっと照れますね……。なんか惚気みたいになっちゃってすみません」

「うーわ、これ見てそういう感想なんだ。多分君死んだら彼女に魂取られるよ? 」

「あ、それはもう約束済みなんです。俺が死んだり彼女を裏切ったりしたら俺の魂はお狐様の所に行く予定でして」

「……君たぶん、メシアに生まれてたら筋金入りの狂信者になってたと思うよ」

 

 ある意味こっちに来てくれて運が良かったというか何と言うか……とショタオジが呟く。褒めてくれてるんだろうか。それはそれとして、ショタオジって彼女いるのだろうか。これだけ強い霊能者にまさかお見合いの話が来てないわけが無いとは思うが、そもそもこっちは面接に来てるんだ。あんまり惚気るのも悪印象だろう。

 

「ええと、それで面接の続きなんですけど」

「ああ、大丈夫大丈夫。洗脳も魅了もされてないみたいだし、既に覚醒してる異能者なんてこっちから大歓迎さ。面接結果は文句なしの合格ってことで」

「え、本当ですか! ありがとうございます」

 

 俺この部屋に入ってから自己紹介と惚気しかしてなかった気がするが、本当にそれでいいんだろうか。いや、さっきの占術で俺の人間性を調べたのか? 魂の形まで分かるんだ、適性なんて本人に聞くよりよほどよく分かるだろう。

 

「で、これが君のステータスね」

 

 そう言ってショタオジが和紙を差し出してくる。

 

 ★【灰谷 蓮】異能者 Lv8

  破魔無効

  スキル 【アギ】【ディア】【狐の加護】*1

 

「おおー……! おお……」

 

 一瞬こういうThe・ゲームって感じのステータスを見れてテンションが上がったが、レベルの低さにすぐ鎮火される。嘘……私のレベル、低すぎ……!? 恐らくだけど、ショタオジとかレベル100超えてるだろ。まあな……異界で雑魚狩りしてるだけで強くなれたら苦労しないよな……。

 

「いやいや、ウチに入る前からレベル8ってけっこう凄い方だよ? 大抵はここで覚醒して【シキガミ】を得てからやっと異界に潜り始めるからね。ウチは修行用の異界もあるから、やる気さえあればどんどん強くなれるって」

「うーん……修行用の異界ですか……」

 

 少々頭を押さえる。そうか、基本的にレベル上げは【星霊神社】でやる事になるのか……。勿論それは良いんだが、俺が異界に潜ってる間いったい誰が【禁足地】の【ガキ】を処理するのか、その間お狐様はどうするのかって話になるよな……。

 

「○○県に住んでるんですけど、その辺りでちょうどいい異界ってありませんかね……?」

「いやー、中々難しいかなぁ。そもそもほとんどの異界は地方霊能組織の管理下に置かれてるからねぇ……」

 

 適正レベルより遥か下か遥か上しかないよとショタオジは笑う。仕方が無い、現実はRPGとは違う。自分のレベルに合ったダンジョンが常に近くにあるとは限らないのだ。

 うーん……。【カマドガミ】一族には本当に世話になってるから、異界の【ガキ】狩りはちゃんとしたいんだよな。【禁足地】は無限にガキが湧き続ける異界だけど、逆に言えばちょくちょく数を減らしてやれば早々異界の外には出てこないわけで……。基本【星霊神社】でレベル上げして、一週間に一回むこうに帰るみたいな感じにするか……? いやいや、そしたらお狐様はどうするんだよ。お狐様と一週間に一度しか会えないとか俺の精神が壊れるぞ。だけどお狐様は神社から離れられないしなあ……。

 

「うーん……」

「わあ、難しい表情してる」

「妻を残して出張する夫の気分です……」

「そのたとえ本当に合ってる?」

 

 わらわと仕事どっちが大事なのじゃ? と俺の脳内お狐様が語りかけて来る。違うんです、お狐様の為に仕事が必要なんです……。

 

「一度持ち帰らせていただきます……」

 

 取り合えず後でお狐様とよく話し合おう。俺一人で決めるべきことでもない。

 

「うんうん、きちんと自分の祭神といい関係を築けているようで何より。じゃ、お話はこれくらいにしよっか。ガイア連合を案内するよ」

「ありがとうございます……」

 

 結局この後、ショタオジ自らガイア連合を案内してもらって終わった。未覚醒者の修行場やシキガミ・アイテム工場、修行用異界など、ガイア連合の高い技術力と戦力をよく確認する事が出来たのだった。

 シキガミについても色々話をした。ショタオジの秘術によって作られた、成長する仲魔【シキガミ】。その性能や見た目についてはある程度自分の希望通りにできるらしい。性能については前衛を張ってくれる味方が欲しいが、見た目についてはどうしようか……。女性型が流行らしいが、絶対お狐様はいい気分しないよな。

 強くなるとは選択肢が増える事。そして人は無数の選択肢を前にどうしたらいいか分からなくなる生き物なのである。今後の身の振り方について考えながら、俺のガイア連合訪問は終わりを告げるのであった。

 

 

 

*1
【火焔ブースタ】+【ローグロウ】

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