【カオ転三次】地方神ガチ勢と化した俺たちの話 作:一般俺たち
いやー、ガイア連合は強敵でしたね。
あの後修行用異界を案内してもらったんだが、あれちょっと凄すぎるな。地獄の底まで繋がってんじゃねえかってくらい深いし、出て来る悪魔も強力な奴ばかりだった。
ガイア連合員が戦ってる所とか、もはや神話の一部って感じだったしな。隣にいた美女もかなりの力だった。二人とも俺が逆立ちしても勝てないくらい強い。あれが噂に聞いてたシキガミってやつか? あれほど強力な仲間が増えるなら、俺の異界探索もずいぶん楽になるだろう。
「……って感じでしたね。いやー、疲れました。やっぱり家が一番落ち着きますね」
「家……? まあそうか。ふふ、最早ここはお前の家のようなものじゃからな」
星霊神社から新幹線に乗って帰った後。
すっかり夜もふけた郊外の山奥で、俺はいつも通りお狐様と神社でくつろいでいた。
「それにしてもなんじゃお前、さっきからニヤニヤしおって。気持ちが悪いのう」
「へへ……すみませんね……」
お狐様に申し訳ないと思いつつも、三下のようなニヤニヤ笑いが止められない。
ショタオジの占術で見た俺の魂は、彼女によって十重二十重に束縛されていた。彼女は俺に対して物凄く執着してくれているのだ。それが嬉しくてたまらない。やっぱ両想いって分かるのは嬉しいもんだよな。
「お狐様、俺はお狐様の事が大好きですからね」
「ふふ、はいはい。分かっておる分かっておる」
ああ^~可愛い~~~~~。ふっと表情を緩めるお狐様をポスターにして全ての壁に貼りたい……。こうして素っ気ない態度を取っていても、彼女はきちんと俺の事を大切に思ってくれているのだ。これもう結婚するしか無いだろ。
「それで、【ガイア連合】の修行用異界についての話じゃったな?」
お狐様の言葉で我に返る。そうだった、俺はお狐様に今後の相談をしてるんだった。幸せ結婚生活を妄想してる場合じゃない。
「はい。どうもこの付近には適したレベルの異界が無いようでして。【禁足地】のような遥か格下の異界と、【羅生門】のような遥か格上の異界しかないみたいなんですよ」
「ふむ……だからお前が力を高めるには【ガイア連合】の修行用異界が一番適しておると。しかし【禁足地】を放置するのはカマドガミへの不義理になるし、何よりわらわと離れるのは耐えられぬと……」
そこまで言ってお狐様は妖しく微笑む。
「お前、二つ目の理由が本命じゃろう。そんなにわらわと離れるのが嫌か?」
お狐様が俺の頭を撫でてくる。ぐうっ、可愛すぎる。その通りです。あと頭を撫でられるのすごく嬉しいです。
「可愛いのう、お前は……。ほれほれ、頭を撫でられただけで蕩けた顔をしおって。お前は人ではなく犬だったか?」
「ワン!!!!!!!!!」
お狐様に頭をわしゃわしゃとかき回される。俺は異能者ではなく犬のデビルシフターだった……? あ、そこ撫でられるのめっちゃ気持ちいいです。もっとしてください。
「その程度、簡単な事じゃ。分祠すればよい」
「分祠……?」
クソッ、天国の時間はもう終わりか。
パッと俺から手を離したお狐様は、いかにも簡単そうにそう言った。
「うむ。まず、お前がここに留まる事が一番ありえぬ。霊格を上げるために今後【ガイア連合】へ行くことは必須事項じゃ」
「ふむふむ」
「そしてわらわはこの神社の祭神であるゆえ此処を離れられぬ……が、解決策がある。もう一つ神社を建てればよい。お前の家に、【イナリノカミ】を讃える祭壇を建てよ。お前はわらわの氏子であるから、そこは当然わらわの神社……わらわの支配する領域となる」
「なるほど?」
「わらわの神社にわらわが居るのもまた当然の事……。ゆえに、わらわはこの神社とそこを自由に行き来する事が出来るようになる」
「マジですか!?」
神ってやっぱ凄いんだな。人間に置き換えると『ここは私の家なのでいつでも瞬間移動できます』みたいな滅茶苦茶な事言ってるぞ。
「わらわ達は肉体ではなく理屈によって生きる。【ここに在る】と定義されれば、本当にそこへ現れるのじゃ」
「神ってすげぇ……」
悪魔や神という、一種の情報生命体ならではのバグ技って感じだ。
やろうと思えば複数箇所で同時に存在するなんてことも出来るらしい。神は遍在するものだからだ。ここまで来るともはや人間には理解しがたい感覚となる。
「ふふ、感謝せいよ? 分祠した神社には普通、分霊を送るものじゃ。可愛い可愛い氏子の為に、わざわざ本霊であるわらわが労を割いて移動してやるのだからな」
「ありがとうございます!」
本当に嬉しい。お狐様がガイア連合までついてきてくれるなら、なに不自由することなく修行にいそしむことが出来る。俺が強くなればお狐様も強くなり、より強い【加護】をかけられるようになる。加護のかけ直しがすぐに済むという点でも、お狐様が近くにいるというのはかなり有難い。
よし! これで何の憂いもなく山梨県に行けるぞ!
カマドガミ一族も、しばらく山梨の方へ修行に行くと伝えたら快く送り出してくれた。
今まで毎日だった異界掃除が一週間に一度になるので、正直嫌がられるかと思っていたから意外だった。ほんとカマドガミ一族には頭が上がらないぜ……。
借りを作りすぎるのも恐いので、俺とお狐様が共同で作った【アギストーン】を大量に渡しておいた。俺がいない間もし【ガキ】が出てきたらこいつでどうにかして欲しい。数匹程度ならアギストーン一個で灰も残さず焼き払えるはずだ。
これで完璧だな!拠点移動ヨシ! と思っていたのだが。
「へぇ、 新しく神社を建てたいって? 僕の神社の近くに。僕の【星霊神社】の近くに? 神社を?」
「ヒエッ……」
めのまえが まっくらに なった!
そっかぁ……ショタオジからすれば商売敵が引っ越してくるようなものだったっすね……。ダメじゃんこれ。
「あの……マジで、命だけは勘弁してくれませんか……。ほんと、ショタオジに喧嘩売るつもりは無かったんです……」
全力で媚を売る。情けないと笑いたくば笑え。この生物学的に格が違うと確信させる重圧の前では、人間は泣いたり笑ったりできなくなるのである。
「きちんと事前に許可を取った点は評価できるけど、それで許すほど僕は甘くないんだよね。うーん、罰はどうしようかな……」
「ヒィィ……」
半天狗みたいな声でちゃった。ショタオジの殺気が肌にビシビシ突き刺さるのを感じる。オイオイオイ、死んだわ俺。来世はお狐様の子供になりたいです……。
「なーんちゃって。うそうそ、冗談だって」
ふっ、と押し潰すような重圧が消える。ショタオジは先ほどの険しい表情が嘘のように、いつもの柔らかい笑顔を浮かべていた。
「ごめんごめん、ちょっと脅かしすぎたね。神社だっけ? 君の家の中に作るなら全然良いよ。【ガイア連合】は【メシア教】以外の信仰の自由を認めているからね。どんな神様を信じようが自由だし、まして家に祭壇を作る事まで禁止したらまさに圧政じゃないか」
「あ、へへ……そ、そうっすよねぇ……」
なんか今日一日でずいぶん三下ムーブが身についた気がするな。前世は就職しないまま亡くなったが、意外と俺営業職とかに適性があったのかもしれん。良いぞ俺、どんどん媚を売っていけ。
「ただ、言うまでも無いと思うけど地脈に手を出すのはNGね? あとガイア連合は信仰の自由は認めていても、布教の自由までは認めてないから。魅了とか洗脳とか使ったら、悪いけどその女神には魔界に還ってもらうよ」
怖いよー。これを遵守させるためにさっき俺を脅していたんだろう。マジで地球そのものと向かい合ってる気分だった。霊格を高めた異能者が生み出すMAGは地脈に匹敵すると聞くが、この人はもはや一つの星レベルだ。お狐様と俺程度、視線一つで殺せてしまうだろう。
「絶対守ります……」
「うん、ならよし。さっ、切り替えてビジネスの話をしよっか。君の女神がガイア連合に協力してくれると、こちらとしても色々ありがたいんだよねー。稲荷神の権能は五穀豊穣や商売繁盛とか便利なものが多いし、たしか狐火の権能で【アギストーン】も作れるんだっけ? もし希望があったらちゃんと適正価格で買い取らせてもらうよ」
「うわっ、棍棒外交だ……」
某合衆国が過去行っていたように、力の差を見せつけてから穏当に要求を通してくる。相手は(断れなくて)死ぬ。ショタオジは米帝だった……?
「へへ、マジ俺たち役に立つんで……マジで役に立つっす。俺らガチなんで」
「君そんなキャラだったっけ?」
三下ムーブは意外とやっていて楽しいのだった。
なんだかんだあったが、取り合えず引っ越し準備ヨシ! お狐様と一緒にガイア連合に行けるぞ! もう今日の成果はそれだけで十分だわ。帰ってお狐様モフモフして癒されよ……。