昨日を振り返ることは、きっと明日を生きるための糧になる。
それはとっても素敵なことで。
だから私は今日、あなたとの思い出を手繰っていくことにしてみたんだ。
一個ずつ、一歩ずつ、丁寧に。
Apdx.02-01
たっだいまぁ~! いやぁ今日はさっむいねぇ、この服で外出んの辛いわー……あ、これ買って来たヤツ、カウンター置いとくから先生あとよろしくね!
さってっと、それじゃあ……あ? なにたきな、どうした?
話? 私に? いいけど、何改まって。
へ? 長くなる? まあ、こっからお店は支度中だから、別にいいと思うけど?
ふぅ~ん? ……分かった。じゃ、上で話そっか。
で? どうしたんだいキミぃ、そんな畏まって。
……あぁ! さては貴様、何かやらかしたなぁ? なんだぁ? 怒らないからお姉さんに話してごらん? ん?
……ありゃ、違う? あーちょーちょちょちょ、ごめんごめん、怒らないでってたきなぁ! 冗談だよ冗談!
あーでも、だったらどうしたよほんと。そんな顔……「いつもこんな顔です」ぅ? いやいやいやいや、さすがに騙されませんって。
まいいや。で? なんだい、結局。
へ? 隼矢さん? 隼矢さんがどうかした?
……あー、あーあーあー、そういうことね!
けどたきな、それはこの千束お姉さんに「恋バナ」を仕掛けてきたってことかい? やるねぇ! お姉さん嬉しいよそれはぁ。
あちょちょちょい、そんなこと言わないでぇたぁきぃなぁ! もう冗談じゃんこんなのぉ!
……で? いつのことから知りたい? え? あー、なる、ほどぉ……?
最初から……最初からかぁ……むつかしいこと言うねぇ……。
うーん、最初、かぁ……。最初って言うとぉ……うん、あれだな。隼矢さん……あの時はまだ「真弓さん」だったっけ。
お客さんとしてこの店に最初に来た時の話になるから……あれ、どれぐらいだっけ。でも多分今ぐらい? 去年のね。
うん、そう。だからたきなが来るより前の話。
そのときの印象かぁ……。うーん……。
正直に言っていい? えっとね、その時は。今とはちょっと、ってか結構違った。ぶっちゃけ、あんまりいい印象を持ってる感じじゃなかったんだよ、最初。
だってさ、あのときの隼矢さん。
――めっちゃ
Appendix 02. Reminiscence for my dear
今ぐらい、っていうか、正月飾り片付けてすぐぐらいって感じだったし、ジャスト一月だったのかな? だから……あ、ちょうど一年前なのか。まあそれぐらいの時、ちょいちょいって年初めの
ま、ウチってお客さんが増えることってあんまないじゃん? だから新顔っていうか、新しいお客さんが来た時のことはどうしても覚えてるもんなんだよね。カナちゃんとかもそう。まあでも、カナちゃんは夏のこと*1の方がどうしても印象深いかぁ……。
そういえばあの時のたきなすごかったねぇ? あのカナちゃんとこの担任の人、正直「やっちまおうか」って思ってたでしょ。
……そうかぁ? いや絶対あれはたきな「やっちまう」感じの目ぇしてたもん。までも、あそこでぐっと堪えてくれたのは私嬉しかった。「いのちだいじに」、だもんね?
まああのあとDAじゃなくて隼矢さんの方があそこら辺の取引を潰しに行くの積極的だったのはちょっとびっくりしたけど。まあやっぱ「マトリ」が絡むやつは私たちよりは警察だってことなんだろうけどさ。
え? ……あそうだ、たしかに。今は隼矢さんの話だった。ごめんごめん。
それで? 初めてお店に来た時のことだったっけ?
そうねぇ……。正直さ、あの人ってそこそこイケメンじゃん? まあ見た目がどうって話じゃないんだけどさ、それでもまあ気になっちゃうのが人間のサガなわけで。
たしかー……手前の座敷席の入口の方、だから、あーあそこだ。あそこに座って、まずはコーヒーだけ頼んできたんだよね。
で、もうすぐにノーパソ開いてなんかカタカタやり始めてさ、周りのことなんて見ちゃいない。興味もない、みたいな?
で、だ。コーヒー持ってったのは私だったんだけど、もうね、しれーっとした顔で受け取んのよ。この私が、千束ちゃんがだよ? 持ってってやってんのにさ。
……ちょっとはツッコんでくれてもいいんだけど? ――あ、え? ……あ、あはは。そりゃ、どーも。たきながそんな真っ直ぐ私を褒めるの、珍しくない?
……あ、そう。……いや、そんな正面から言われたらちょっと照れるわ。やるなたきな。
ま、まあそれはいいとしてだ。とにかく、お客さんにも色々いるってのは分かるんだけど。でもこの場所は、みんなにとって楽しい場所にしたいワケ、お客さんも含めて。今でもそう。じゃなかったらこの店やる意味ないわけだし、私にとっては。
だからそんなところであーんな「人生全部つまんないです」みたいな顔されたらさ、もうカッチーンよ、カッチーン。
まあね。今ならわかる。あの時の隼矢さんは、もう本当に人生つまんなかったんだなって。
……あー、そういえばたきなには言ってなかったっけこの話。ま、あとの方で話すよ。とにかく、今はあの時のあの人の気持ちはよく分かるんだ。だからしょうがないかなって思わなくもない。いや、それでもこのお店にいるときは楽しい顔しててほしいよ? でもそれは私から言えたことじゃなかったんだろうなって。
とにかくだ、とにかく! まあそういうわけでちょっとムカついた私はですよ。どうにかしてあんにゃろーのしけたツラを変えてやろうって思ったのさ。ムキになったというか。
え? ……ああ、確かにそうかも。普通の人ならそういうのって、「いない人」扱いってか、無関心になるか。たきなもあの時、土井さんのことをそう見てたんだもんね。
いやーあの時はひどかったわ。ほんと、私の早とちりで土井さんにはほんっと迷惑かけた*2。あ、たきなにも。ごめんね? ――ありがと。
まあでも、私は自分の時間をみんなのために使うって決めてたんだよ。まそれは今だってそうっちゃそうだけど。
でもそもそもあの時は、私の「寿命」はもうそんなになくて。長くても二年までは持たないよなぁ、って思ってたわけで。だから最後の一瞬まで、このお店は絶対楽しい場所のまま終わりたいって思ってた。それは新しく入ってきたお客さんもそう。
そういうわけだったから、私は結構隼矢さんに絡みに行ったんだよね、自分から。あの人あんなつまんない顔してるから一回しか来ないかなぁ、とか思ってたら、週に一回か二回は来てたし。あ、土日ね? 多分あの時は普通に公安勤めだから週末しかここには来れなかったんだと思う。
……そういう意味じゃますます土井さんと被るな。ちょっとトラウマが……。
ま、まあいいや。でそん中でいろいろあの人のことを聞いたわけですよ。まず年齢とか。私てっきり学生さんだと思ってたんだよ、初めて店に来た時。
いやだって詐欺じゃんあの見た目で二十三歳とか! そりゃ最近の二十代は若く見える人増えてるっていうけど、それでもあれは若すぎだよ!
……んん、とにかく。あとそれ以外だと、趣味とかの話もしたっけ? 休日何してるかとか。まあその休日にここに来てたわけだけど、それとはまた別のね?
あとは……それ以外だと、もう何回も来てくれてた辺りで、ボドゲ会に誘ったりとかもした。それがあんな顔して結構乗り気でさ。しかも強いんだこれが。クルミが来るまではうちの店じゃ最強だったんじゃない? やっぱハッカさんはああいうのみんな強いのかねぇ……。
でまあ、そんなこんなやって三月ぐらいになるあたりには、隼矢さんも結構この店じゃ笑うようになってくれてて。
あ、たきなも思う? そうなんだよね、あの人笑うと可愛いんだ。普段はめっちゃキリッ、みたいな感じで余裕の顔してるのにね、あれはズルいよねほんと。
……あ、でもたきなには譲らないぞ? ――え? あ、そう。……それは、ありがと。
まあそんなんで、隼矢さんも立派な常連さんになって。私も一件落着かなぁ、みたいな感じに思ったあたり。そう、四月ぐらいに。
たきな、君と会えた。
え? ……いや。これは隼矢さんがどうとか関係ないよ。でもあの日のことは、今の私の一生の思い出だもん。それぐらいずっと記憶に残ってる。――嬉しかった。
やっぱりね、もう自分には時間がないってなって。その時に、私と同じ立場の子が来てくれて。私の「楽しい」を全部、あげられる子が来てくれたって。私の「今まで」を、この子に残すんだって。そう思える相手を、最後の最後に私は見つけられた。そう思ったんだ。たきな、君のことだよ。
で、その日なんだよね。そうだよ、同じ日なんだよ。隼矢さんがうちの仲間になったの。「公安の人」ってことが分かったのだって。
いやぁ、あの時はほんとびっくりした。だってまったくそんな素振り見せなかったんだもんそれまで。さすがだねって思ったわ。
私たちも「女子生徒です、JKです」って顔してまあ色々人を殺して回ってる仕事だから、まあ私は殺さないけど? でもとにかく身分を伏せるってのは割と普通っちゃ普通。分かってるんだけどねぇ。
けどあれはやられたわー。不意打ちだよ不意打ち。けっこー悔しかったというか、ほんと「やられたー」だった。
まあでも、結局そのおんなじ日に、私は二人、どっちとも出会えた、仲間になれた。――運命だったのかも、ね。それは、もしかしたら。
――なんだよぉ。それぐらいロマンチックなこと言ってもいいじゃんかぁ。女の子なんだぞ? 私も。
まあそれで、リコリコは五人になった。まだクルミが来る前だったからね。
でまあ、そのときの隼矢さんが仲間になってくれたのは、確かにうれしかったよ? 常連さんになってくれてたし、ムキになってたときに結構張り付いて話しまくってたから他のお客さんよりもなんだかんだ親近感あったりして。なんというか、笑うと可愛いな、とか、あの見た目でびっくりするぐらい落ち着いた雰囲気出してるギャップがけっこーかっこいいじゃん、とか、まあそういうやつ。
でもそれが、何か
そっからしばらくは、たきなも覚えてると思うけど。まああんまり隼矢さんがうちの
何でって、そりゃ実際ウチはたきなが経理やってくれるまで赤字だったわけだし。売り上げのまともな管理も出来てたか怪しいし。
まそれはいいのよ。いいの。
それでそれで、やっぱ隼矢さんの
……あ、たきなはそっちの方の印象が強いのか。まあ確かに? 私たちは
でもさー、やっぱあの時の隼矢さんめっちゃカッコよかったよ。なんつーか、「全部僕の予測範囲内です」 眼鏡クイっ! みたいなあれ。まああの人は眼鏡かけてないけど!
……え? いやだから、そういうのは映画とかいっぱい見ると分かるもんなの! たきなももうちょっと私セレクションの映画を見ようぜ! 人生損だよ損!
あ、あとはあれだ。クルミ――『ウォールナットさん』と話してた時のあれも! なんか車の制御乗っ取られたところでさ、よく分かんないうちにあっという間に制御取り戻しちゃったじゃん。なんでもない感じで。なんかすごい「キーボードカタカタカタ!」みたいなやつじゃなくて、もうなんか当たり前すぎて「あれ? 終わったの?」みたいになっちゃってたけど。
でもあれ見て、『ウォールナットさん』ぐらいすごいハッカさんなんだなって思ったっけ。まあ隼矢さんは「クルミには絶対勝てない」って今でも言うけど。
まあでもとにかくなんかこう、全部お見通しで、なんもかんもコントロールして、クールに仕事は成功させるぜ、みたいなところがシビれたね、私は。まあネタバラシが終わったあとのことだけどさ。「この人のプラン通りやれば多分大丈夫なんじゃない?」みたいな。
先生が作戦立ててた時も「危ない」って思ったことは全然ないんだけど、でもなんというかこう色んなところに目が行き届いてる、みたいな? そういう几帳面なとこがあるんだよね、隼矢さんのプランは。想定外のことがあっても何個もバックアップ用意してくれてる感じ。
だからその時は、「すっげー優秀な参謀かつハッカさんがウチに来た!」って思った。クルミと合わせて、これは勝つる! ってなもんよ。
でもそん時ゃそれよりたきなだよ。いやぁ、あの時は嬉しかったというか、でも複雑だったというか。
私の「いのちだいじに」ってやり方を、しっかり受け入れてくれてたじゃん? あの作戦の時。でもそれで「ウォールナットさん」を「死なせ」ちゃって。まあ作戦だったらしいけど。で、たきなあの時ちょっと怒ってたというか、不満に思ってたわけでさ。
ちょっとずつ私のやり方を受け入れてくれて嬉しかったけど、でもあの時のたきなの言い分は、正直間違ってはいなかった、と思う。
というか、理屈の上じゃ、たきなの方が正しいんだよ。護衛任務なのに、優先順位を間違えるなんて、護衛失格だ。普通に考えれば、そうだよね。
うん、そう。だから私のこれはわがまま。分かってたんだ。その時たしか、隼矢さんは私の肩を持ってくれたし、たきなに色々言ってくれたけど。だから複雑っていうか、ちょっと申し訳ないところも、正直あった。
え? ああ……ありがとう。まあ、今となっては、ね。分かってくれてるのも、分かってる。私は私のやり方を、それでもやっぱ変えない。変えられない。「やりたいこと」だからってのも、あるけど。
……それも、分かってるよ。たきなが今、凄く努力してくれてるって。隼矢さんとかも、そのやり方で無理がないように作戦立ててくれてることだって。本当にありがたいことだと思う。
二人とも、いてくれてよかった。それはほんとにそう。ありがとうね。
……あ、脱線脱線。でまあ、隼矢さんの「能力」? が、すごいってことが分かったのはその時。いっしょに
それだけじゃないよな、って思ったのは、それのちょっとあと。六月ぐらい。
そうそう! なんだよたきな覚えてんじゃん! そう、ライセンス更新の日。まあ実際は、その前の日だけど。
え? ああ、まあ、そう、だよね。そりゃそっか、たきなの方が覚えてるか。あの噴水広場でも、キルハウス――フキとのことも。
ん? いやぁ、そんな、お礼なんて。だってあれは私がやりたかったからしたことだし。たきながあんな顔してるの、私がイヤだったんだ。
だから、あの時言ったことは全部本当だし、私が言いたかったことなんだ。そう、全部ね。
――それに、隼矢さんから後押しもされてたし、さ。
そうそう。あの日も言ったような気がするけど、そうなんだよ、隼矢さんと話してて、それで決心した。だから前の日って言ったの。
まあもっと言うとそのもうちょっと前にね。
あの人と、二人で確か買い出しになんか行ってたんだったっけ。それでそん時に、たきなのことを話したんだ。あん時ゃまだたきなDAに戻りたがってた訳でしょ? それで、なんでウチに来たか、みたいなのと一緒に話したんだよ。
あー……そうなんだよ。それまで知らなかったっぽいんだよね。たきながなんでここに来たのか。まあ言わなきゃわかんないわけだし、今ならまだしもあの時の隼矢さんは別にDAと深く関わってたわけでもないから事情なんか調べなきゃ分かるわけなくて。しょうがないよね、それは。
でまあ、そんなことを話したんだけど。でもそれがさ? もうなんかそのあとめっちゃ隼矢さんしょげてんの! あの時はなんなんだろって思ってて、なんというかたきなの気持ちになってくれてんのかなって思って。この人も優しいとこあんじゃん、みたいに思ってたんだ。
でもそういうわけじゃなくて。なんか、クルミの作戦の時のことをめっちゃ気にしてたみたいなんだよね。あの時たきなに色々隼矢さん言ってたでしょ? それが全部見当違いのこと言っちゃったんじゃないかって。
気にしいなんだよあの人。優しすぎるんだ。たきなもそう思うでしょ?
ね。ほんとそう。でもまあ、そう言われてみれば確かにそうなんだ。でもそれでも、あの人は私たちの関係をずっと気にしてくれてた。それで前の日に、まあちょっと気になって私話しかけたんだけど。
まあでもその時は隼矢さんひたすら「僕はダメなやつなんだー」みたいになっちゃっててさ? まあ可愛いっちゃ可愛いんだけど、あんまり続くようならあれだし、先生にフォローお願いしたんだよね確か。
まあ、でもその時分かったんだ。「この人は、ずっと私たちのことを見てくれてるんだ」って。それまであんま私たちのことに興味ないのかなって思ってたけど、違くて。だから今思えば、あの人は邪魔にならないようにしてくれてたんだ。私たちのね。
でも、それでもあの人は、この場所を、リコリコを。私たちのことだって。尊重してくれてて、だから一歩引いてたんだって。
それでも思い出してみれば、隼矢さんってばいろいろ私たちのことフォローしてくれてたんだよ。
だってほら、あの人シフトの時は店に本当に最後まで残って、戸締り全部確認してるんだよねいつも。今でもそうなんだ。
でしょぉ!? 気づかないよねぇそんなこと! でもさ、そういうこと言わないんだよあの人。言わないで、でもさりげなくやるの! それがいいんだよほんと。ああいうのほんとかっこいいと思う、私。たきなもそう思うでしょ? ――うんうん!
まあ、だからね? それだけこの場所を大事にしてくれてるんだって。それに気づいて、もうなんか嬉しくなっちゃって。こんなに私たちのことを気にかけてくれてる人がいるのに、私がたきなと向き合わないでどうするんだって、勇気をもらえて。それであの日、しっかりたきなにいろいろ言えたってのは絶対にある。
だから、それからかな? ちょっと隼矢さんのことが気になりだしたのは。まあ今みたいな感じでは全くないけど。でもなんというか、ちょいちょいあの人のことを目で追うようには、なった気がする。
そう考えると、あの日はほんと、私たち全員にとって大事な日だったんだなぁって。
だって何より、たきなとしっかり向き合えた。たきなもほら、だいたいあのあたりから私と仲良くしてくれるようになったし。
ありがと。そっちもそう思ってくれてるのは、すごく嬉しいよ。あそこで初めてたきなに、「私」を分かってもらえた、ような気がするんだ。あの店の「仲間」に、なってくれたんだなって。
――まあ、やっぱりあの時は、私には「先」がなかったから。だからああやって、私のことを伝えて、私を覚えてもらって。私のやり方を、やっぱりたきなにはどこか受け継いでほしかったのかも、しれないなって。うん、今から考えれば、きっとそうだったんだ。リコリスとしては、正しくはないんだろうけどさ。
……そんな顔しないでよぉ。今は違うって!
今の私には「これから」がある。たきなも、そのためにいろいろやってくれた訳じゃん? それはほんと感謝してるって。だからあくまで、「あの時の話」として、ね?
まあ、その時はそれぐらいな感じ。
そうだねぇ……だってあの時はほら、まだ銃取引のことって全然私たちには関係ない感じの話だったし? まあたきながここに来た理由の一つでは確かにあったんだけど!
でも結局、その辺の話が絡んでこないことには、私と隼矢さんの「今」にはあまりつながらない気がするんだ。
え? そりゃ、なんでって、だって。
私、もうそう遠くない内に死ぬって思ってたんだよ? 誰かのために時間を使うことはあっても、私のために誰かを縛り付けるなんて無理無理。
……いやだからたきな、それはあくまでの「その時」の話だって言ってんじゃん! 今の私のことじゃあーりーまーせーん。今の私に言われても困りますぅ。
でさ、話戻すけど。とにかくあの時の私にとってはさ。たきなだって、隼矢さんだって、私のことを覚えててほしい、ぐらいのことはあったけどさ。
でも先の長くない私にいつまでも引きずられてほしいなんて、思うわけないでしょ? だってそんなの、「楽しくない」じゃん。気分がよくないよ、そんなの。
だから結局、私が
――ま、だからその時は、そういうことは全然。でも、そういう人が仲間なんだって思えて、嬉しかった。たきなも、隼矢さんも。二人と一緒にここで楽しくやれそうなのは、もっと嬉しい! そんな感じに思ってた。この店やっててよかったぁ! ってなもんよ。
そう言ってばかりはいられなくなったのは……ああ、多分あの時かな。「松下さん」の時の、話。
――ま、それはあとで。夜にでも話そうよ。そろそろ私も話し疲れちゃった。こんだけペラペラするの大分久しぶりだったわ。いやぁ……疲れた疲れた。
え? いや、確か今日隼矢さんは一日用事があるとか何とかでシフト外れてるから、あの人に聞かれることはないよ? 夜も。
……あ、そういえば何の用事かとか聞いてなかったな。ま、いいや! それよりたきな、夜だかんね。忘れんなよぉ?
んじゃ、仕事戻りますか!
リコリコOD五話との差異点として、たきなは自力でカナの担任を射殺しようとする衝動を押さえました。原作ODでは周りに止められまくってやっと収まったっぽいですが、この辺りは主人公がいることによる副次効果だと思ってください。