目が覚める。
強い日差しを受けて、俺は反射的に上体を起こした。
「やば、大学行かないと……え?」
俺はどうやら寝転がっていた様だが、何故か辺りは草原だ。
「……どこだよ、ここ」
どうやら、俺は俗に言う異世界転移?をしてしまったようだ。
俺は肩から下げていた鞄、着ていた服、そして腰に巻かれたホルスターに付けられた『モンスターボール』を見て、確信する。
『ポケモンの世界』だと。
この事実に気付いた心臓が尋常ではない程早く脈打つ。熱い血液が全身を巡る感覚が、より一層リアルを突きつけている。運動もしていないのに、過呼吸を起こす程息が上がり、目は限界まで広がっている。そして、脳ミソがフル回転して、一つの答えを導き出す。
俺はホルスターに付けられた『プレミアボール』と『ハイパーボール』に手を伸ばす。両手どころか全身が震えているが、問題なく外すことが出来た。初めて手に取るモンスターボールは、思っていたよりも軽かった。
身体全体が燃えるように熱い。妄想ではなく、今ここにいる現実感は確かなものだとこのボールが教えてくれている。
しかし……もしかしたら、この中にいる『何か』が、俺に牙を剥いて、死んでしまうかもしれない。何から何まで分からないこの状況に、恐怖していると言ったら嘘になる。
でも″そんなこと″はどうでもよかった。
これが合っていたなら。
もし本当ならば。
俺の疑問も、理由も、何もかもに答えてくれるはずだ。
俺は声を震えさせながらボールを取り上げ、名前を呼ぶ。
「出てきてくれ、『ルーア』『レシィ』」
《どうかなさいましたか?マスター?》
《何か困った事があったのか?ご主人様?》
出てきたのは……伝説のポケモン。
『ルギア』と『レシラム』。
圧倒的な存在感は大きさと比例していた。
ルギア……ルーアと、レシラム……レシィは確かにそこにいた。
二人(二匹?いや二人か…?)は翼を勢いよく広げて地面に降りたった後、翼を畳み、首をかしげて辺り見渡して不思議がっていたり、俺を見て何かを考えているようだ。
どうやら、ボールから出した二人もまた、少し混乱しているのかもしれない。
「ごめん。急に呼び出して。俺も、何がなにやらでパニックで…混乱しているんだ。二人を呼び出したのはそのことなんだが……えっと……。
単刀直入に言う、ここは何処なんだ?俺は……誰なんだ?もしかしたら、何かを忘れているかもしれないんだ。最悪の場合、記憶喪失になっている可能性がある」
《どういうことなのでしょう……マスター。マスターはマスターなのではないでしょうか?あの城で出会い、そして旅をしたのを覚えてはいないのですか?いえ、その前に…ここは確かに、先ほどいたサザナミタウンとは違う場所のようですが……》
《あぁ、そうだな。ワタシとも一緒に旅をしたじゃないか。あの冒険の日々のこと、しっかりとワタシは記憶しているぞ。というより、ご主人様はご主人様だろう?まさか、自分の名前まで忘れてしまったのか?だとしたら……》
俺は心の流れで安堵していた。とりあえずは会話……テレパシーのような何かは通じているようだ。
ルーアの性格は『おっとり』、レシィの性格は『れいせい』であり、今の状況的にはありがたい。
というよりも、俺の…いや『俺』の名前か。
「俺の、『この世界での』名前は……」
そうだ。思い出した。
俺は昨日、大学のテストが終わってすぐ一人暮らしをしているアパートへ戻り、ポケモンの最新作……ポケットモンスタースカーレットをプレイするためにSwitchでソフトのダウンロードをしてたんだ。
時間がかかるだろうと思って、かつて一番やり込んだポケモンブラックのデータを何故か見返そうと思って、DSの画面をつけて…そうそう、BGMが好きだったんだよなぁと思ってサザナミタウンへとルーアの『そらをとぶ』で向かって……。
…………?
そこから記憶がない。
《マスター……もしかしなくとも、一度ポケモンセンターのような、安全を確保出来る場所に行くべきです。何故かは分かりかねますが、どうやらマスターを含めた私たちは、未曾有の事態に陥っている可能性があります》
《私も同意見だ。ワタシたちはさっきまで恐らくサザナミタウンにいたはずだが、……すまない。ここがどこだかは分からない。周りに危険なポケモンなどはいないが、万が一もあり得る。それと、状況把握とご主人様の安全のためにも『皆』もボールから出していた方がいいだろう》
こうしたポケモンのリアル過ぎる″声″も初めて聞いたが、何故か心地いいと感じる。さっきから興奮し過ぎているためか、一周周ってしまったのだろうか。
二人から出た意見を冷静に処理出来るようになるぐらいには、ようやく自らが直面している状況に対処出来た。
そういえばそうだ。ポケモンの世界に来たことによる興奮から直感的に伝説の、会話の通じるであろうポケモンを選んだが、まだ俺にはあと四人のポケモンをデータ的には連れているはずだ。
確認するように、俺はホルスターを確認する……やはりそこにはボールがついていた。
俺は先よりは手の震えが収まった手でボール……『モンスターボール』『プレミアボール』『ゴージャスボール』『ヒールボール』を手に取り、ポケモンを出す。
「頼む、出てくれ『ティア』『ザナ』『ロロ』『レア』」
「ピキュュ」
「カルァ」
「フォォン」
「フイゥルル」
この四人もまた、こちらを確認したり辺りを見渡したりなどして不思議がっている様子だ。
「急に出してごめんな。でもちょっと聞いてくれ、あー……ルーア、レシィ、ちょっとこの子たちに今の状況を教えてやってくれ」
そう言った俺に肯定するかのようにルーアは少し頷き、レシィは翼をはためかせ、四人に向き合った。
俺の持っているポケモンは……勿論この子たちも含めているが『ボックス』の中にいるポケモンすら全員レベル100にしているし、努力値はそのポケモンに合ったステータスに十全に振っている。そのため、現状ではすぐに身の安全を確保することはない。そして死ぬことは無い……はずだ。多分。
かつてのヒスイ地方のように、いつ野生のポケモンが襲ってくるかどうかは分からない。ルーアとレシィが言うように、まずは状況把握と俺の安全のために全員出しておくべきだったのだろう。惜しむらくは、この四人に関しては性格がイマイチだったりするのだが、仕方ない。
この四人は特に思い入れが強い……というのも、何故ならこの子たちは皆『色違い』の個体だからだ。
俺は頭の中でこれからどうするか、『これから』のことについて考える。
とりあえずはポケモンセンターを目指す予定だが、誰を連れていくべきだろうか。
ティア……ドレディアはタマゴから育てた。チュリネの色違いが出た瞬間は今でも覚えている。性格は『がんばりや』。性別は♀。
ザナ……ザングースは殿堂入り直後に捕まえた、四天王戦でのレベル上げはこの子をよく使っていた。性格は『ずぶとい』。性別は♀。
ロロ……ミロカロスの性格は『しんちょう』で性別は♂️。なみのり要員で、いつか冒険するならこの子の背中に乗って海を渡ってみたいと思っていた。
レア……グレイシアは過去ロムであるソウルシルバーからルーアと同じく連れてきた。とにかく可愛い。性格は『いじっぱり』で性別は♂️。
後は『ボックス』の中に確かあと30人くらいはいたと思うが、この世界での俺はここにいてはいけない存在かもしれないためにボックスの機能が使えるか謎なので、とりあえずはこの六人でなんとかやりくりするしかないだろう。
この六人で実際にポケモン世界を生きていくとなったら、ティアかザナが安牌だと思う。
全員色違いなのでそもそもただ者ではないことがバレる可能性大だが、純粋に目立たないようなポケモンを考えるならルーアとレシィは論外だし、ロロは目立ち過ぎる上に陸上では活動し辛く、レアは一番この中で小さいために何かぎあった時に対処が出来なくなるかもしれない。
《マスター。伝え終わりましたよ》
《ご主人様。行動指針は決まったか?ワタシたちは大丈夫だぞ》
そうだな。この子たちの言う通り、ポケモンは大丈夫なはずだ。レベル的にも、もし何かあったときにも対処は可能なんだ。ゲーム上では、あの最強のトレーナーとの声があるレッドのポケモンですらレベルは90に行っていない。
レベル100の伝説ポケモンがいれば余程のことがない限りは安全だろう。
おそらく、一番危険な状態は俺に何かがあることだ。どうしようもなくなった最悪の場合、少し怖いが、ルーアかレシィの上に乗って、文字通り空を飛べばなんとかなるだろう。
とりあえずは、ポケモンセンターに行って……なんと言えばいいかは決めてないが、覚悟を決めるしかない。
俺は人で、仮にとはいえポケモントレーナーだ。人は慣れる生き物だ。だから大丈夫だ。
俺はこの命の危機が迫っているかもしれない状況で、何故か心が踊っていた。
いや、『何故か』じゃないな。
これから起こる何かに、俺は期待しているんだ。興奮しているんだ。ワクワクしているんだ。
何故なら……
俺は、ここで夢を叶えることが出来たからだ。
パルデア地方でいっぱい冒険してたら書きたくなっちゃったので初投稿です。
BLEACH二次の更新遅れに遅れててごめんなさい、ほんと申し訳ナス……。いつか続き出すから待ってて欲しいなって……。
ポケモンはブラックが一番好きです。