WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)   作:木村仁一

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第2章 単独
1話 情報屋


沈みかけの夕日による橙色から徐々に暗闇へと変わるころ。

 

 遊ぶ子供たちもいなくなった小さな公園に、(タケル)はいた。

 ベンチに座る武の隣に、背中を丸め、頭を両手で抱えながら俯く1人の中年の男性が座っている。

 年は50歳、髪には所々白髪が見え、中年太りした腹が少し目立っている。着込んで灰色に変色したツナギを着ており、一見するとただの工場の作業員にしか見えないが、彼こそ(たに)の情報屋・日下(くさか) 虎吉(トラキチ)。捜査から外されている今の武が唯一頼れる相手だ。

 

(ダンナ)が……そんな……」

 

 谷の死を聞かされ、胸を締め付けられるような思いに苦しむ日下。

 日下にとって谷は、共に暴力団と戦った戦友のような存在だったからだ。

 

「なぁ、何でもいい、ホワイトウィッチの情報、何か持ってないか?」

 

 日下は頭を上げ、武を見る。その表情は申し訳なさそうに暗い。

 

「そう言われてもなぁ……アンちゃん、あの女については情報があまり入らねぇから」

 

 武は俯いた。その表情は悔しそうだが、それ以上強くは言わなかった。日下が詳しいのは、暴力団関係の情報だからだと知っていたからだ。

 それでも日下に会ったのは、暴力団の情報の中に、少しでもホワイトウィッチのことが入っていれば、という期待からだった。

 

「すまねぇ、力になれねぇや」

「そうか……。何でもいい、あの女の情報が入ったら知らせてくれ」

 

 悔しい思いは残るが、今は日下を信じて情報が入るのを待つしかない。武はそう自分を説得して立ち上がった。

 

 その時、日下は何かを思い出したのか、眉を上げた。

 

「アンちゃん、ちょっと待った!」

 

 武は日下に振り返った。

 

「関係あるか分からねぇけど。暴力団絡みの情報を色々かぎまわっている女が居るって聞いたな」

「詳しく聞かせて」

 

 武は日下に近づくと、手帳を取り出し、ペンを走らせた。

 勿論、その女がホワイトウィッチと繋がっているという保証はないが、ホワイトウィッチも情報屋を使って襲撃計画を立てている可能性は高い。

 少しでも手掛かりが掴めれば、ホワイトウィッチにぶち当たるはずだ。

 

「確か……たまに開催されている競馬場に現れる、って」

「競馬場?」

 

 想像していない場所だったため、武は一瞬眉をひそめたが、すぐに納得の答えにたどり着いた。

 恐らく競馬場なのは、いざという時に、人ごみに紛れて逃げる為の手段の1つだろう。怪盗や暗殺者ものジャンルによくあるパターンだ。

 

「女の特徴は?」

「長い金髪の白人系で、車は白のクライスラーだったかな?」

「『長い金髪の白人系、白のクライスラー』。詳しい車種とナンバーは?」

「そこまでは――まぁ例の女と関係あるかどうかは分からねぇけど」

「ありがとう、少ないけど、これ」

 

 武は日下にギャラとして3000円を手渡そうとしたが、日下は「要らない」と手を上げた。

 

「アンちゃん、これはタダにしとくよ。それよりダンナを撃った奴、必ず捕まえてくれ!」

「ああ、約束する!」

「あっ、それともう1つ訊いていいか?」

「なんだい?」

 

 武に訊きづらいことなのか、日下の表情は曇っており、武はその日下を見て、不思議そうに首を傾げた。

 

「ダンナには他にも情報屋は居るのか?」

 

 日下の質問に、「どうして?」と武はさらに首を傾げた。刑事が頼る情報屋は必ずしも1人とは限らないからだ。

 だが、武の知る限り谷の情報屋は日下を除いて他にはいない。

 

「さぁ? 俺が知ってるオヤッさんの情報屋は、あんただけだけど。どうして?」

「いや、俺が場所を突き止める前にダンナが武器工場を抑えたから……まいいや、じゃあ、頑張ってくれよ」

 

 そう言って日下は武の元を離れた。

 武は少し日下の態度が気になったが、早く寮に戻ることを選んだ。

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