WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)   作:木村仁一

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6話 発射

 とあるビルの一室—―

 部屋の灯りが点いていないので、とても暗い。

 そんな室内に1人の男が居た。

 鬼柳(きりゅう)だ。

 その部屋の窓の側に台があり、その上には、既に二脚(バイポット)が伸びた対物破壊ライフル・ダネルNTWが乗っていた。

 鬼柳は双眼鏡を覗きながらある建物を覗いている。

 双眼鏡の先に見えるのは、立派な武家屋敷。

 3000坪程の広さがあり、観光スポットにでもなりそうなくらいの存在感を持つ。

 ここは黒富士組本部。黒富士(くろふじ)の住まいだ。

 鬼柳が根気よく屋敷の一室の窓を覗いていると、黒富士が姿を現した。

 それを確認すると、鬼柳はライフル(NTW)の側に置いてあった弾を手に取ると、マガジンに弾を入れ、本体にセット。

 続いて鬼柳は、横に何か機械が付いた単眼鏡を覗く。

 単眼鏡の中には、赤い点が表示されており、それを部屋に居る黒富士に向けると、レンズ内の下部に、「152m」の表示が現れた。

 この単眼鏡は、レーザー測距儀で、黒富士までの距離を測っていたのだ。

 黒富士までの距離が分かると、今度はNTWのスコープを覗きながら、スコープの照準線の高さを調整し、更にNTWのストック下の単脚(ポット)を使って、最終的に高さを固定、黒富士に照準を合わせた。

 次に鬼柳は、NTWの銃身の左部分に取り付けられた装置の電源を入れ、先ほど特定した距離を設定する。

 これを設定すれば、仮に弾が逸れても、僅かなら弾が爆発し、標的に大きなダメージを与えることが出来る。

 今回の弾には、細かくした毒性の強い金属片を入れているので、少しでも体内に入れば致命傷なのは間違いない。

 鬼柳は弾が通るのに十分な広さだけ窓を開けると、ボルトハンドルを引いて弾を装填、狙撃のタイミングを窺った。

 

                 〇

 

 レッドスピーダーの中では、武がレッドスピーダーのタブレット端末を操作している。

 もうすぐ黒富士の屋敷の横を通るところだ。

 

「そろそろ反応があるはずだけど……」

「〈もっと近づかないと〉」

 

 間も無く黒富士の屋敷が見えてきた、その時。

 タブレット端末から警告音がなり、レーダーに赤い点が現れた。

 

「〈これって?〉」

「それよ! 下の『MAP』をタップして、詳しい位置が出るから」

 

 武はレイの言われた通り、画面の下にある『MAP』をタップした。

 すると、先ほどのレーダーがキャッチした位置と、地図の場所が合わさり、詳しい鬼柳の居場所が表示された。

 場所は黒富士の屋敷からおよそ150メートル離れたビル。階までは出ていないが、位置的には、武たちから見て一番右の部屋だ。

 

「時間が無い、ブレイザーを使って!」

 

 武は後部に置かれたライフル・ブレイザーR93を手に取り、暗視スコープの電源を入れた。

 

「〈止めてっ!〉」

 

 レイは急ブレーキを踏んでレッドスピーダーを止めると、武はレッドスピーダーから降りると、ライフル(R93)二脚(バイポット)を立てると、レッドスピーダーの屋根に置いて、鬼柳が居る建物の方へ向ける。

 

「〈正直、遠距離は初めてなんだけど……ところでこのスコープ、何メートルで合わせてあるの?〉」

「100メートルだったかな……」

「〈50メートルもズレてるじゃん……!〉」

「いいから早く見つけて!」

「〈了解!〉」

 

 急かされながらも、武はサングラスを上へずらすと、スコープを覗いた。

 

(右側だよな……)

 

 スコープをズームさせ、反応があったビルを覗くと、2階に窓が僅かに開いた部屋を見つけた。

 その部屋には、ライフルを構える鬼柳が居た。

 

「〈居たぞ!〉」

 

 武は、暗視スコープのつまみを少し回して照準の高さを変える。

調節してある距離より遠い場所に標的が有るので、普通に合わせてしまうと、角度がつき過ぎて弾は上の方へ行ってしまうからだ。

 まだ完全に調整した訳ではないが、今はこれしかない。

 

(一か八か……)

 

 鬼柳のライフルに照準を合わせ、引き金に指を置いた。

 

                 〇

 

 鬼柳は引き金に指を置き、引き金を引く指に力を入れる。

 間もなく弾が発射される、まさにその瞬間だ—―

 

 バリーン‼

 

「何だ⁉」

 

 鬼柳が驚きの声を上げた。

 突然スコープの先端のレンズが砕けたのだ。

 

                 〇

 

「当たった?」

「〈スコープに〉」

「やるじゃない!」

 

 やはり銃の腕は確かだとレイが武に対する評価が上がった……のだが……。

 

「〈いや、狙ったのは機関部なんだけど……〉」

「まぐれ……」

 

 武に対する評価が下がる。

 それでも未調整の状態で標的に当てることが出来たのだから、そこは褒めて欲しいところだ。

 

(でも、これで次は当てられる)

 

 スコープのずれが分かった武は、改めてつまみを回して高さを再度調整、照準をNTWの銃口へ狙いを定め、引き金を引いた。

 

                 〇

 

 スコープを失ったことで、黒富士の姿を確認出来なくなった鬼柳。

 それでも鬼柳は引き金に指を置く。

 何故なら、スコープが無くても、既に照準は黒富士に合わせた状態で固定してあるからだ。

 鬼柳は引き金を引き、銃弾を放った。

 

 ズカーン‼

 

 凄まじい銃声が鬼柳の居る部屋に響き渡った。

 そして、設定していた距離に到達した弾は、下部が後ろへスライド、弾の中に入っていた破片入りの爆薬が露わになった瞬間、火薬は爆発、破片が周りに散った。

 

 ところがだ……。

 

 爆発したのは、黒富士が居る部屋の遥か斜め上と、予想もしなかった場所で起こったのだ。

 鬼柳が単眼鏡を使って黒富士の部屋を覗くと、黒富士が周りを見渡しながらワタワタしている姿が見える。

 全くの無傷だ。

 

「何故だ⁉」

 

 確かにスコープで狙いを定めた訳ではないが、それでもあんなに弾道が逸れるのはおかしい。

 スコープの破損状況を見ると、スコープを狙撃したのは間違いないが、銃自体に損傷は無い。

 だとすると、まさか—―

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