WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)   作:木村仁一

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2話 2人の魔女(?)

 みなとみらいの遊園地――

 その駐車場に、黒のクライスラーが止まった。

 その車から降りてきたのはレイだ。

 クリーム色のスタンドカラーコート、その下からは足首が見えないほどの白いロングスカートを履いており、腕を覆うほどの白いイブニング・グローブのような手袋をしている。

 レイが遊園地に来たのは、勿論遊ぶためではない。

 情報屋の女が次の落ち合い場所に選んだのがここだったのだ。

 遊園地といっても入場ゲートは無いので、どこからでも出入りが出来る。

 

 遊園地の中に入ったレイ。

 平日なので人は多くないが、幼い子供連れの家族などが目に入る。

 定番のジェットコースターやお化け屋敷といったアトラクションも豊富だが、その中で最も目立つのは、この遊園地のシンボルでもある大観覧車だ。

 まずレイが向かったのは、カフェだ。

 

「こっちこっち」

 

 レイが声の方へ向くと、そこには屋外の席に座る一人の女が居た。

 長い白髪の上に、黒いつば広帽子が乗っており、黒の長いピーコートを着ている。

 今回はサングラスや眼鏡を掛けていないが、間違いなく情報屋の女だ。

 レイが情報屋の女に近づくと、真っ先に思ったことを口にした。

 

「ハロウィーンはまだ先よ……」

「知ってるわよ、それくらいっ!」

 

 情報屋の女が強く否定したが、どう見ても魔女のコスプレだ。

 その後に2人は、一通りアトラクションを楽しんだ後に、大観覧車に乗った。

 ここが今日の目的である情報の提供場だ。

 ゴンドラの中なら話を聞かれる心配がないので、ここを選んだのだ。

 

「それで掴めたの?」

 

 レイが情報屋の女に尋ねる。

 

「えぇ。荒松(あらまつ)組は北野(きたの)組の縄張りを奪うつもりよ」

「北野組。天王会(てんおうかい)の?」

「そう。この前の資金は、銃を買うための物だったのよ。取引相手も掴めたわ」

「何処のマフィア?」

「グローブスファミリー、北米のマフィアよ」

「どうして荒松は北野組の縄張りを?」

「北野組縄張りにしている場所に、新しく土地開発が行われる予定なのよ。ということは?」

「土地の価格が高騰、更に施設によってはシノギも増えるってことね」

「それが狙いよ。それにグローブスファミリーは、日本進出を狙っているという話もあるから、縄張りを提供してもらう約束で荒松たちに協力したのかも。将来的には天王会の縄張り全部、とか」

「なるほど……」

 

 レイは思った。

 海外のマフィアが2億円で日本の暴力団に銃を提供するにしては安いような気がしていた。

 個人的なイメージだが、そういう連中は外国人を見下す傾向があるので、2億もかなりの大金だが、それを超えるべらぼうな額を求めてくるはずだ。

 しかし、マフィアに縄張りを提供するということなら、その金額でも引き受けるのかもしれない。

 日本の暴力団として荒松の行動はどうかと思うが、黒富士組の計画を次々に潰しているので、かなり苦しいのだろう。他の組の縄張りを奪い、マフィアに土地を売ってでも、儲けになるものが欲しいのかもしれない。

 

「でもちょっと待って。それって一つ間違えたら黒富士(くろふじ)組と天王会が戦争になるってことじゃない?」

「そういうことになるわね。まぁ、それだけ追い詰められているのかも」

「そうね……」

 

(まぁ、資金は抑えたから、その取引もご破算になるでしょうけどね……)

 

「そういえば、『資金の情報が意図的に漏れていた可能性がある』って言っていたわよね? どうしてなの?」

「荒松組に資金提供者が現れたのよ。それも例の魔女たちが資金を奪ったすぐ後に」

 

 それを聞いたレイは目を細めた。

 確かに都合が良過ぎる。

 

「どう考えても資金の情報をわざと流して奪わせたとしか考えられないでしょ?」

「でも、どうしてそんな回りくどいことを?」

「考えられるのは、荒松(ボス)の信用を得るためでしょうね。そして、組を乗っ取る」

「なるほど……。魔女たちは利用された訳ね。それで、荒松たちに資金援助をしている人間は分かったの?」

「詳しいことはまだ分からないけど、資金提供者は元北野組の男らしいのよ」

 

(……北野組?)

 

 レイは眉を顰める。武が言っていた勝田って男も、元北野組の組員だったことを思い出したからだ。

 もしかしたら、何らかの関係があるかもしれない。

 

「ちょっと待って! 北野組の人間が敵に資金援助するってこと⁉」

「元、よ。組のルールを破って刑務所に入ったものだから、破門になったらしいわよ。それで逆恨みをしたんでしょうね」

 

 レイは顎に手を添えて考える。

 

「どうかしたの?」

「1人心当たりがあるの。その男も元北野組の組員よ」

「当たりかもしれないわね」

 

 一周を終え、レイと情報屋の女がゴンドラを降りる。

 

「それじゃ先輩、また後で」

「またね。彼氏さんにもよろしく」

「……彼氏じゃないって」

 

 顔を真っ赤にして否定するレイに、情報屋の女は笑顔を向けて離れていった。

 

 駐車場のクライスラーに乗り込んだレイ。

 

(ハァー……。全くあの情報屋(ひと)は……)

 

 情報屋の女は確かに役に立つのだが、人をからかう癖は、どうしても苦手だ。

 武のことが知られてから、もっと酷くなったような気がする。

 

「あーダメダメ、しっかりしなさい、私っ!」

 

 レイは気合を入れ直すように自分の両頬を叩くと、スマートフォンを取り出し野々原を呼び出した。

 

「ジイ」

『はい、お嬢様』

「武から連絡は?」

『いいえ。何かございましたか?』

「もしかしたら、武を狙っている男と、荒松に資金を提供している人間が同じかもしれないの。すぐに準備して武のところに行かないと」

『時間がかかります。今からレイドマスターを送って、武様をガードしましょう』

「レイドマスターだけで大丈夫?」

『レイドマスターの装備なら何とかなります。それとお嬢様?』

「何?」

『荒松組から抑えたお金のことなんですが、実は……』

 

 野々原の話を聞いたレイが「何ですって⁉」と声を上げた。

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