WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)   作:木村仁一

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5話 貸して!

 騒がしくなっている白摩署(はくましょ)を双眼鏡で覗く1人の男が居た。

 黒いレザージャージを着たこの男こそ、勝田(かつた)だ。

 勝田が居る場所は、白摩署から何十メートルほど離れたビルの屋上だ。

 しばらく白摩署の出入口を見ているが、なかなか(タケル)が出てこないが、人が大勢出てくるのが見えた。

 武が現れるのも時間の問題だろう。

 勝田は双眼鏡を地面に置くと、側に置いてあったシルバーの長方形のケースを開けた。

 ケースの中に入っていたのは、高倍率のスコープが付いたM21セミオートライフルと、その弾倉(マガジン)が入っていた。

 流石に警官が大勢いるところに近づいて銃撃するのは無理なので、遠距離用のライフルを用意させたのだ。

 勝田がライフルを手に取ると、弾倉(マガジン)を手に取り、ライフルにセットし、コッキングレバーを引いて弾を装填した。

 すると、勝田は自分の左手のひらにある傷が目に入った。

 穴が開いたようなその傷を見るたびに、〝あいつだけは許せない〟という気持ちが湧いてくる。

 

 自分を撃って刑務所に入れた、あの男は絶対に……。

 

 勝田は白摩署がある方へライフルを向け、スコープを覗いた。

 あとは武の姿を見つけて撃つだけだ。

 とはいえ、武はなかなか姿を現さない。

 見えるのは、避難した警察署の人間だけだ。

 しばらく待っていると、署の側面から仲間の刑事に腕を引かれる武が姿を現した。

 それを見て勝田の口元が緩む。

 しかしだ。スコープの照準線を武の頭に合わせようとするが、人混みが邪魔でなかなか引き金を引けない。

 関係なしに排除してもいいのだが、それだと武に自分が狙っていることがバレてしまう。

 そして、あっという間に武の姿は車の陰に隠れてしまった。

 

「……っ‼」

 

 タイミングを逃してしまい、舌打ちをする勝田。

 だが、まだ手は残っている。

 勝田はトランシーバーを懐から取り出した。

 

「おい、何とか奴を引っ張り出せ」

 

 そう一言だけを言ってトランシーバーを懐に仕舞うと、再びスコープを覗いた。

 スコープを通して見えたのは、サラリーマン風の男が車の陰から武を無理やり引っ張り出した。

 実はこのサラリーマン風の男は、武が障害物に隠れた時に武を引きずり出すために送り込んだ刺客だったのだ。

 武からサラリーマン風の男を警官二人が引き離そうとしているが、もう関係ない。

 再びスコープの照準線を武の頭に合わせる。

 そして、引き金に指を置き、あとは弾が発射されるだけだった。

 

 トン……トン……。

 

 微かだが、誰かが屋上へ上って来る音が聞こえ、勝田は引き金から指を放した。

 警察だろうか⁉

 勝田は、ライフルを手すりに立てかけ、ズボンに引っ掛けた拳銃(ハードボーラー)を取り出すと、階段の方へ目を向けると、そこに二人組の……組員らしき男たちが姿を現した。その手には、リボルバータイプの拳銃が握られている。

 勝田は咄嗟に拳銃(ハードボーラー)を組員たちに向けて発砲。

 組員と撃ち合いになったが、何とか組員を倒すことが出来たのだが、銃声が武に聞かれてしまった。

 勝田は急いでライフルを取り、再び武が居る方へそれを向けた。

 

                 〇

 

 サラリーマン風の男から武を引き離すことに成功した警官2人。

 武もホッとした瞬間。

 

 ……バンッ‼ バンッ‼ ――

 

 遠くから乾いた破裂音が聞こえた。それも複数。

 

「何の音だ……?」

 

 松崎は音の正体に気づかなかったようだが、武は直感した。

 

「銃声‼」

 

 この乾いた音は、間違いなく銃声だろう。

 ただ、銃声は1つではなく複数、それを考えると撃ち合っている感じだ。

 

「どっかで撃ち合いでもしてるのか?」

 

 松崎がそう言った瞬間。

 

 ……バンッ‼

 

 銃声と共に、サラリーマン風の男が倒れた。その額には風穴が開いていた。

 狙撃だ。

 

「キャァァァー‼」

 

 外に居た女性がそれを見て悲鳴を上げた。

 

「みんな伏せろぉ‼」

 

 武が叫んだが、それよりも悲鳴によって周りがパニックを起こしている所為で、誰も聞いていない。

 

 ……バンッ‼

 

 すると再び銃声が聞こえた瞬間、今度は警官の1人に当たった。

 幸い肩をかすめた程度だが、それで武は悟った。

 自分が狙われている所為で周りの人が巻き込まれている。

 そう悟った武は、走り出した。

 

「おい武、何処に行くんだよ⁉」

 

 松崎の呼びかけも無視する武が向かった場所は、白バイの駐車場だ。

 バイクの近くには、待機していた白バイ警官が1人居た。

 

「ちょっとバイク貸してくれ!」

「それは困るよ!」

「緊急事態だ!」

「分かりました」

 

 白バイ警官からキーを受け取ると、武は白バイに乗って、白摩署から離れて行った。

 

「おい、ヘルメット忘れてるぞ!」

 

 白バイ警官が呼び止めようとしたが、武の姿はもうない。

 そこで白バイ警官は、青切符を取り出しペンを走らせた。

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