WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)   作:木村仁一

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7話 コンテナヤードの戦い

 (タケル)の予想外のアクロバットで、距離を取られてしまった勝田(かつた)

 すぐに車をバックさせると、フォークリフトを避けて前進。

 その先に横たわる白バイを見つけたが、肝心の武の姿は無い。

 白バイの近くに車を止めた勝田は、車を降りて周りを見渡した。

 

「なんなんだあんたは⁉」

 

 コンテナの積み込みをしていた作業員の1人が、勝田の背中に向けて(しか)りつける。

 一歩間違えれば、フォークリフトにぶつかっていたこともそうだが、明らかに部外者である人間が、ここで暴走に近い運転をしていたのだから当然だろう。

 しかし、勝田は全く聞く耳を持たない。

 

「おい、聞いてんのかっ⁉」

 

 更に作業員が怒鳴ると、勝田は振り向かないまま、懐から拳銃(ハードボーラー)を取りだすと、地面に向けて、弾を2発放った。

 それを見た近くに居た埠頭の作業員たちが、慌ててその場から逃げて行った。

 静かになったことで作業員たちが居なくなったことを悟った勝田は、車の後部に置かれたガンケースからライフルを取り出した。

 先ほどガムシャラに撃ち過ぎた所為で、手持ちの拳銃の弾が少ないのだ。

 勝田は、ライフルを抱えながらコンテナヤードの中へ向かった。

 

                 ○

 

 コンテナヤードで武を捜す勝田。

 その姿を2段に積み重ねられたコンテナの上から、武が覗き込んでいた。

 コンテナとコンテナの隙間を両手両足で突っ張り、ここまで登って来たのだ。

 武は顔を引っ込めると、仰向けになる。

 

応援(レイドマスター)はまだかな……? 警察でもいいけど)

 

 さっき銃声が聞こえたので、もしかしたら誰かが警察に通報した可能性がある。

 こんなことを考えていると、一台の車が止まる音が聞こえた。

 やっとレイドマスターが来たのかと思って、音の方へ見てみると、止まった車は一台のワゴン。その中から、暴力団のチンピラらしき人間が3人降りてくると、勝田に向かって走ってきた。

 

「勝田さん、応援に来ました」

「おう、お前らはあっちを探してくれ。だが、殺すなよ」

「はい」

 

 来たのは勝田の応援だったようだ。

 

「……何でよりにもよって、敵が増えるんだよ」

 

 再び仰向けになる。とりあえずこのまま動かなければ気づかれることは無いだろう。いや、見つからないことを祈っていた。

 そんな武の思いとは裏腹に、1人の足音が近づいて来る。

 足音の主は勝田の物だった。人の気配がないか慎重に耳を傾けながら、周りを見渡して武を探している。

 武も見つかるまい、と息を殺している。

 コツコツ、と武が隠れているコンテナに足音が迫り……そして、徐々に遠ざかっていった。

 どうやら見つからずに済んだようだ。

 内心ホッとした武。このままレイドマスターを待てば――

 

 ピリリリー‼

 

 武の携帯電話が鳴ってしまった。隠れることに必死で、携帯電話まで気が回らなかったのだ。

 

「……こんな時に‼」

 

 慌てて携帯電話を切るが、既に遅かった。

 

「あそこだ‼」

 

 勝田の声の後に、次々に足音が集まって来る。

 

「そこだ、そこを登れ!」

 

 チンピラと思われる声の後、ドンドン、とコンテナに手や足を突くような音が聞こえる。武と同じ方法で登っているのだろう。

 何か脱出する方法はないだろうか。

 武が周りを見渡すと、1台の大型フォークリフトが、大きなコンテナを抱えて武の近くまでやって来た。

 チンピラがコンテナを登り切った時、武はフォークリフトが抱えるコンテナへ飛び乗った。

 

「クソッ!」

 

 組員が武に向けて拳銃を向けると、それを察した武は、コンテナにぶら下がる形で陰に隠れ、チンピラの放つ銃弾をかわした。

 とりあえず追跡は逃れたが――

 

 ピリリリー‼

 

(なんだよ、さっきから⁉)

 

 片手を放して携帯電話の画面を見ると、そこには「隆太(リュウタ)」と出ていた。

 武を心配して電話したのだろうが、今はいい迷惑だ。

 

(人がどんな状況かもしれないのに……)

 

 そう考えていた時、武にある考えが浮かんだ。

 武は通話ボタンを押した。

 

『武、今どこに居るんだ?』

「それより隆太、1分後にかけ直してくれ!」

『1分? それより――』

「――いいから言う通りにしろ!」

 

 そう言って武は一方的に電話を切った。

 コンテナヤードの中で武を探し回るチンピラ。

 1人のチンピラが、コンテナの間を警戒しながら進んでいると、先ほど聞いたものと同じ携帯電話の着信音が耳に入った。

 それを辿って行くと、少し開けた通路に出る。

 着信音も大きくなり、コンテナの陰から拳銃を構えてと飛出した。

 しかしだ。

 そこには武の携帯電話がコンテナの扉に立てかけてあるだけで、武の姿は無かった。

 

「クッソ……」

 

 してやられた、と怒りがこみ上げるチンピラが、武の携帯電話を拾った。

 すると、チンピラの体にものすごい衝撃が走り、地面に倒れ込むと、更に顔面にパンチが入った。武がコンテナの上に隠れていたのだ。

 気を失ったチンピラから武は拳銃を拝借。若干錆気味なマカロフだが、これさえあれば、レイドマスターが到着するまでに、勝田たちを返り討ちにできるだろう。

 そんなことを考えていると、二人分の足音が近づいて来る。

 同じように着信音を聞いて追いかけて来た他のチンピラだ。

 その内の1人が、気を失っているチンピラに駆け寄った。

 

「おい、大丈夫か⁉」

 

 チンピラが肩を揺らして安否を確認した。

 

「大丈夫、気を失ってるだけだ」

「でも、何があったんだ?」

 

「こうなったんだよ」

 

 突然、武の声が聞こえて、チンピラたちがその方へ顔を向けると、そこには武が立っていた。

 

「貴様ぁ!」

 

 武に拳銃を向けたが、それよりも早く武の拳銃が火を噴いた。武の放った銃弾は、それぞれチンピラの拳銃を弾いた後、更に放った弾が左膝付近に命中した。

 激痛に悶えるチンピラたちをよそに、武は移動する。

 残りは勝田だけ。弾も4発は残っているので、反撃もできる。

 さっきの銃声を聞きつけて、勝田もここに来るはずだ。

 コンテナの陰に隠れながら、勝田が現れるのを待ちつつ、武は視野に入る限りのクレーンや高く積まれたコンテナなどに警戒した。

 高い場所なら武をライフルで狙撃できるからだ。音速を超えるライフルの弾が相手では、能力を発動しても避けられる自信はない。

 ただし、近距離の場合なら話は別だ。

 勝田が持っていたライフルには、高倍率のライフルスコープが付いていた。あれでは近距離ではぼやけてしまうので狙いをつけ難くなる。

 それなら武にも反撃も可能だが、そのチャンスはあくまでも相手が銃に関して素人だった場合だ。

 勝田がそんなドジを踏むとは考えられない。

 甘い考えを捨て、武は改めて周りを警戒した。

 すると、武の背後から足音が聞こえ、武が振り返ると、別のコンテナの陰から勝田がライフルを持って現れた。

 案の定、勝田はライフルを構えて武を狙うが、武との距離は十メートルもない。

 勝田がライフルスコープを覗いても、ぼやけた武の姿しか見えず、スコープで狙うのを止め、標準装備のアイアンサイトで武を狙おうとするが、ライフルスコープが邪魔でそれも使えない。

 そんな切羽詰まっている間に、武の方が先に銃弾を放った。

 武の銃弾はライフルの弾倉(マガジン)に当たり、それは破損した。

 だが、勝田は薬室(チャンバー)に残っている一発で武を仕留めようと、引き金を絞る。

 乾いた銃声が当たりに響くが、ろくに狙いが定まらない状況で発砲したので、当然、武に当たることはなかった。

 弾倉(マガジン)が破損しているので、次弾は給弾されず、薬室(チャンバー)の中は空っぽだ。

 

「動くな、勝田‼」

 

 武は銃を構えながら勝田に警告する。

 

「チッ‼」

 

 勝田は舌打ちをすると、武に向かって使えなくなったライフルを投げた。

 能力を発動している武は、それを容易くチャッチしたのだが、その間に勝田は、コンテナとコンテナの間の通路に逃げ込んだらしく、姿を消していた。

 

「待て、ゴラッ!」

 

 武が勝田を追いかけるが、コンテナの角を曲がったところで、もう勝田の姿は無かった。

 コンテナヤード中を捜し回る武。

 勝田の奇襲のことも考え、コンテナの陰から陰へ慎重に移動する。

 通路に出た時、武の耳に入って来たのは、車のエンジン音。勝田が乗っていたセダンと同じ音だ。

 それが次第に近づき、武がその方へ向くと、勝田のセダンが姿を現した。運転席に乗っているのは、勿論勝田だ。

 車1台が通れる程の通路だ、このままでは引かれてしまう。

 武は咄嗟に、コンテナとの間に人1人が入れる隙間を見つけ、そこに逃げ込んだことで、何を逃れた。

 コンテナの間なら車は入ってこられないが、同時にこんなに狭くては狙い撃ちされてしまう。能力を発動しても、こんなに狭すぎては避けるのは無理だ。今の勝田の残弾もわからない以上、出来るだけ能力の無駄遣いは避けたい。

 

「仕方ない!」

 

 武は走り出した。

 コンテナヤードの間をランダムに移動しながら、適度に勝田と距離を取りつつ、中央のバースを目指した。

 広い場所なら、能力で弾も避けられるし、勝田を仕留められると踏んで。

 

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