WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)   作:木村仁一

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11話 ピンハネ 第14章END

 (タケル)白摩署(はくましょ)で県警の事情聴取を受けている頃――

 

「何だとぉ⁉」

 

 組長室で受話器を持つ荒松(あらまつ)は、先ほど埠頭で勝田(かつた)に協力していたチンピラの一人からで、勝田が捕まったことを聞いた。

 怒りで荒松が受話器を置くと、電話を掴んで床に叩きつけた。

このままでは、資金が手に入らず、取引に間に合わない。

 怒り狂い、肩で息をしていると、今度は荒松のスマートフォンが鳴った。

 

「何だぁ⁉」

『おいおい兄貴、俺だよ! どうしたんだ、機嫌が悪いな?』

 

 電話の相手は博之(ヒロユキ)だった。

 

「勝田がドジ踏んで警察(サツ)にパクられた……。これで金がパァだ!」

『そういうことか……』

「……?」

 

 荒松は首を傾げた。

 

『実は、(しゅう)の奴を抑えたんだ。高飛びしようとしてたんだよ』

「高飛び⁉」

『そうだ。どうやら岩屋(いわや)にも勝田がパクられたことが耳に入ったらしい。その証拠に、奴のケースから偽造したパスポートと一緒に1億の銭もあった』

「1億⁉ なんでそんな金を⁉」

『それを今、しめて吐かせてる最中だ』

「何処に居る?」

元田(げんだ)工場跡だ』

「わかった、すぐに行く」

 

 ここで電話は切れた。

 荒松は部屋を出ると、部屋の外に待機していた組員に命令を出した。

 

「車を用意しろ、出かけるぞ」

「はい」

 

 

 荒松の車が、博之の言われた場所に到着した。

 元田工場跡がある場所は、濃い森林に囲まれた場所にあり、工場自体も町工場と言った方がしっくりくるほど小さい。

 今は封鎖され、窓も真っ白く変色し壁は錆びて茶色くなり、夜中ならお化けでも出そうな印象だ。

 それ以前に、いつ建物が壊れても不思議じゃないほど老朽しているので、ほとんどの人が危険を感じて入ろうとしないだろう。

 荒松が中へ入ると、中には既に到着していた博之率いる組員数人が、床に横たわる小太りの男を取り囲んでいた。

 床に倒れる男――周は、顔中血だらけになっており、相当リンチにかけられたことが見てわかる。止めは額に一発だ。

 

「どうなってる博之?」

「ちょうどいい兄貴。全部吐かせた」

「本当かぁ?」

「思った通り、っていうか兄貴もわかっていたと思うけど、やっぱり岩屋が情報を漏らしていたんだ」

「クソヤローがっ‼」

 

 激怒した荒松が、周の頭に蹴りを入れた。

 

「それより、この金は何だ?」

 

 荒松が、周の横に置かれていたケースを指さした。

 

「こいつと岩屋がピンハネした金だ」

「ピンハネ? ……、まさかこの金⁉」

「そう、グローブスファミリー(連中)に払う金からくすねたんだよ。ちょうど1億あった」

「そういうことか……」

 

 薄々は気づいていたが、1億なんて大金があるとすれば、それしか考えられない。

 この金の管理を任せていたのも岩屋なので、偽金にすり替えることくらい容易いだろう。

 ということは――

 

「じゃ、それを隠すために金を魔女たちに奪わせて、隠そうとしたのか?」

「そういうことだ」

 

 岩屋の意図が掴めたのはいいのだが、荒松には、まだわからないことがある。

 

「未だに分からないんだが、なんで勝田が周に声を掛けたんだ?」

 

 そう、敵であるはずの周に、勝田が協力する理由が未だにわからないのだ。

 そこで博之が推理したことを話し始めた。

 

「多分だけど、何処かで周の正体を知って、利用しようとしたんじゃないか? 協力者が居なきゃ、刑務所(ムショ)に入れた奴に復讐なんか出来ないから」

「だから金で周を釣って協力させて、周はこの計画を立てた訳か……」

「まあ、そんなところだろうな」

 

 まんまと利用されていたことに、再び腹が立ってきた。

 そこで荒松が、ある重要なことを思い出した。

 

「ところで博之、岩屋の居場所も吐かせたんだろうな?」

「それなら心配ねぇよ兄貴。岩屋なら――」

「――お待たせしました」

 

 博之が言いかけた時、入り口から声が聞こえた。

 荒松たちがそっちへ向くと、そこには、組員に襟元を掴まれた状態で引っ張り込まれた岩屋が居た。

 その岩屋の顔は、相当殴られたらしく、頬や目は腫れあがり、鼻からも血が出るほどだ。 

 

「……オヤジ、俺が何したってんですか⁉」

「とぼけんじゃねぇ‼ (こいつ)と金をネコババしやがったくせによ‼」

「……俺は、何も知りませんよっ‼」

 

 必死に荒松に訴える岩屋だが、荒松からしてみれば、ただの言い訳にしか聞こえない。

 

(こいつ)が全部白状した。兄貴にも納得するような事情があるなら言ってみろ」

 

 博之も岩屋を睨みつける。

 

「本当に……何も知らないです‼」

 

 岩屋は否定することを止めない。

 

「その根性だけは認めてやるけどよ。2億を丸ごとパクったのはわかってんだよ⁉」

「2億……? 俺は1億しか……あっ‼」

 

 うっかり口を滑ら滑らせてしまった岩屋に、荒松の口元が緩んだ。

 

「決まりだな……。始末しろ!」

「任せな」

 

 博之が腰から拳銃を取り出すと、岩屋に照準を合わせる。

 

「まっ、待ってくれぇぇぇー‼」

 

 バンッ‼ バンッ‼

 博之が岩屋の心臓に2発撃ちこんだ。

 それにより、岩屋のシャツが、心臓を中心に真っ赤な染みが広がっていった。

 

「それで、海にでも沈めておくか?」

「いや、丸ごとここを燃やしてやれ。抗争に見せかけるんだ。おまけに解体する費用も安くなるだろう」

「そうだね」

 

 

 建物を出た荒松と博之。博之の手には、1億円が入ったケースが握られている。

その後ろでは、組員が何やら準備をしていた。

 

「問題は勝田をどうするか……? 博之、何か方法はないか? 勝田を連れ出す方法を?」

「連れ出す、って言っても勝田は警察(サツ)の所に居るんだろ?」

「そうだ。でも何とかして連れ出さないと、金が……」

 

 荒松の問題が、まだ全て済んでいない。

 勝田を警察から取り戻さなければ、マフィアとの取引が出来ないのだ。

 半分の1億は戻ったが、それでは足りない。

 

「兄貴、半分は戻ったんだ。他の奴らから何とか半分集められないか?」

「……」

 

 博之の言う通りだが、そう易々と1億も集まるとは考えにくい。

 ただでも魔法使いたちに金を奪われたことが失態なのに、金を貸してくれ、と言っても素直に貸してはくれないだろう。勝田を取り戻した方が、難易度としては簡単のような気がする。

 それに、勝田を取り戻すことで、もう一つメリットがある。

 勝田に黙っていれば、1億円分が事実、浮くのだ。

 

「博之、勝田をパクった刑事(デカ)たちを調べろ。利用する方法があるかもしれねぇ」

「……。まぁ、やってはみるけど、かなり厳しいぞ?」

「いいからやるんだ」

「わあったよ」

 

 投げやりのような返事を返した博之は、スマートフォンを取り出して情報屋を呼び出そうとした時、スマートフォンに着信が入った。

 相手は博之が掛けようとしていた、北野組(きたのぐみ)を探らせている情報屋だ。

 

「何か掴めたか?」

『はい。組長の北野のことを調べていたら――』

 

 情報屋の話を聞いて、博之は眉をひそめた。

 

「そういうことか……。引き続き頼むよ」

『わかった』

 

 博之は電話を切った。

 

「誰からだ?」

「北野を調べている情報屋。このネタは使えるかもしれねぇ」

「どんなネタだ?」

「実はな――」

 

 荒松に情報屋から聞いたことを話した。

 もしかしたらこの後、北野組との戦争で役に立つかもしれない情報を。

 

                              第14章 END

 

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