WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)   作:木村仁一

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3話 ファーストコンタクト

 8年前、当時の(タケル)は、髪を茶髪に染め、スカジャンを着た不良感むき出しの格好をしていた。

 その武は、スキンヘッドで茶色いレンズのサングラスを掛けた小太りの如何にも、チンピラです、というような恰好をしている男の後ろを歩いて、とある大きな倉庫に入って行った。

 この男は、当時の勝田(かつた)の部下だ。

 中にはいると、そこには大きなコンテナがあり、その前に勝田と3人の部下らしき男が立っていた。

 そしてもう1人、暴走族みたいな白い長ランみたいな恰好をしている男が居る。

 これが当時の直人(ナオト)だ。

 部下の1人に案内されてコンテナの前に立った武と直人。

 部下がコンテナの扉を開けると、中にあったのは、理科室で見るようなガラス容器や器具が並んでいた。

 それよりも目を引くのは、色鮮やかな紫色の花や、緑色のギザギザした長い葉が入った袋だ。

 当時の武は、その植物の正体を当然知らなかったが、明らかに騙されてここに連れてこられたことに気づいた。

 何故なら――

 

「機械の部品製造のバイト、って言ってなかったか?」

 

 武は部下の人間から、そう聞かされていた。

 機械の部品を加工するのに必要な機械も材料も無くて、代わりに有ったのが、謎の植物と変な器具。

 それを見れば大体察しが付く。勝田は、武と直人を騙して、麻薬の密造を企んでいたのだ、と。

 いくらグレたからといっても、こんな犯罪に手を染めるつもりは武には全くない。

 直人も危機を感じたのか、目が泳いでいた。

 何とかこの場から逃げなくては、と思い、武は周りを見渡すと、すぐ側に武器になりそうな鉄パイプが落ちている。

 勝田とその部下が武から視線が逸れた隙に、武は鉄パイプを拾おうとした。

 

 バンッ‼

 

 武の側に着弾した。

 勝田の手にはリボルバー式の拳銃が握られている。

 気づかれてしまったのだ。

 部下によって地面にねじ伏せられてしまった武。

 

「使えねぇな」

 

 そう言って勝田は、拳銃を武に向けた。

 武が死を覚悟した。

 

「警察だ、全員動くなぁ‼」

 

 その場に居る全員が声の方へ向いた。

 倉庫の出入口には、刑事たちが立っており、その後ろには、大勢の警官隊も居る。

 突然の警察に、勝田は咄嗟に倉庫の奥へ逃げ出したが、あまりにも慌てていたので、足がもつれて転倒。

 その際に、拳銃を落としてしまったらしい。

 しかし、警察が迫っているので、やむなく銃を拾うのを諦め、再び走り出した。

 

「おい、待てっ!」

 

 1人の中年の刑事が勝田を追い始める。

 勝田の部下は、全員警官たちが取り押さえた為、自由になった武。

 

「待ちやがれ、クソヤローがぁ‼」

 

 しかし、今以上にヤンチャだった当時の武は、腹の虫が収まらない。

 

「おいキミ、どこへ行――早っ‼」

 

 警官の1人が止める前に、武は勝田を追いかけた。

 すると、途中で足に何かがあたったのを感じて床を見ると、そこには拳銃が落ちていた。勝田が落とした物だ。

 拳銃を拾うと、奥から何やら声が聞こえたので、そこへ向かうと、そこには先ほど勝田を追いかけた刑事が床に倒れており、そのすぐ側には、角材を持った勝田が立っている。

 刑事が床に倒れているのは、勝田の一撃を受けたからだろう。

 勝田は、止めを刺そうと、角材を振り上げた。

 

(させるか‼)

 

 武は拳銃を構え、そして能力を発動。

 引き金を引き、武が放った弾は、勝田の左手を撃ち抜いた。

 本当は角材を狙っていたのだが、振り上げたことで狙いがズレたことや、まだ実銃の重さに慣れていなかったことで、左手に当たってしまったのだ。

 勝田は角材を落とし、激痛で叫びながら左手を抑えて床を転がり回る。

 それでも腹の虫が収まらない武は、勝田に近づき、もう一発何処かに撃ち込んでやろうとして、撃鉄(ハンマー)を立てた時だ。

 

「おい、よせっ! 銃をよこすんだ!」

 

 刑事が起き上がり、武に近づくと、武に向かって手を伸ばした。

 

「こんなクズ、生かしておいたら、また同じことをするぞ!」

 

 それでも武は聞く耳を持たない。

 グレたとはいえ、人を騙して汚い仕事をさせるような卑怯なことは絶対にしないし、させることもない。

 だからこそ、勝田のような奴は許せなかった。

 

「気持ちはわかるが、こいつを殺したところで、キミが刑務所で何年も人生を無駄にすることになる。それに引き換え、こいつは死んで終わり。もしかしたら生まれ変わって、のうのうと新たな人生を送るかもしれないぞ?」

 

 荒唐無稽(こうとうむけい)な説得だが、何となく刑事の言っていることを考えたら、自分は酷い目に遭って、勝田が死んだ後、何事も無かったかのように生きている、と想像したら、何かムカついてきる。

 武は拳銃の撃鉄(ハンマー)を戻して、刑事に渡した。

 

 その後、武は白摩署に連れて行かれ、事情聴取を受ける。

 嘘の仕事内容で倉庫に連れてこられたことや、勝田に殺されかかったことなどの話だ。

 当然、勝田を撃ったことに関しては、こっぴどく怒られたが。

 ちなみに、倉庫になった植物の正体は、麻薬の原料のケシの花と、大麻の葉だった。

 聴取を終え、自販機エリアで一息ついていると、中年の刑事が武に近づき、先ほど助けたことを感謝され、銃の腕も褒められた。

 武にとっても、銃の腕を褒められたのは、初めてだったので嬉しい。

 だが、反撃するにしても相手の隙を見るタイミングが、まだまだ甘いと説教され、再び気持ちが落ち込んだが。

 話をしているうちに、次第に刑事と打ち解けたのか、武も口が緩んだ。

 父親も警官で、肝心な時に仕事で家に居ないことは理解しているが、母親が亡くなった時も、捜査に出掛けていたことで、母親に寂しい思いをさせたことで、父親のことも警察という仕事も恨んでいた。

 不良になったのも、これが原因の一つだ。

 そして、武が逆に刑事に対して、どうして刑事になったのか訊いた。

 刑事の話だと、きっかけは高校時代、親が事件に遭い、その犯人が捕まるまで数年も掛かったことに不満を覚え、自分みたいな思いをする人間を少しでも減らしたいからだった。

 刑事が真剣に語る姿を見ているうちに、何故か父親と同じく憎い警察官のはずのこの刑事に対しては、全く違う感情が芽生えた。

 憧れだ。

 話を終え、武の前から立ち去ろうとした時だ。

 

「あ、あの。刑事さん、名前は?」

 

 気になったので武が訊くと、刑事は振り返った。

 

(たに) 大介(ダイスケ)だ」

 

 そう、これが武と谷の出会いだった。

 

                 〇

 

「まぁ、それが直人との出会いでもあり、オヤッさんとの出会いでもあったわけ」

「そんら出会いらったんだれー、谷さんろ……ヒック!」

「何だよ、そのろれつの回ってない喋り方……レイッ?」

 

 武がレイの方を見て言葉を失った。

 何故なら、目はトロンとして、顔は赤くなり、体を右に左にヤジロベーのように揺らしていたのだ。

 

「酔っぱらってんのか⁉」

「ごめんなさい! ジュースと酎ハイ、間違えました!」

 

 確かに、よく見るとレイの手に握られている缶には、バッチリ〝お酒〟の文字が書かれている。

 

「アタイは酔ってらんか――グー……」

 

 レイは横に倒れて寝てしまった。

 

(酎ハイ1本でここまで酔っぱらうって、結構弱いんだな)

 

 まさかのレイの一面を知ったところで、レイのスマートフォンが鳴った。

 相手は野々原(ののはら)だ。

 

「野々原さん、大下です」

『武様⁉ お嬢様は?』

「あぁ、それが……。酔っぱらっていまして……」

『なんですって⁉ そろそろ戻って来てほしかったのですが……』

「これから連れて行きますので」

『かしこまりました』

 

 武は電話を切った。

 

「ごめんね、未来ちゃん。レイを送ったらすぐに戻るから」

「気を付けてくださいね……」

「未来ちゃんも、戸締りをしっかりして、誰も入れないように注意して」

「わかりました」

 

 武はレイを背負ってアパートを出た。

 

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