彼のくすぶった想いが羽ばたくまでの、永くも儚い、翠玉の記憶。
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遊戯王の身内大会の罰ゲーム(自主的
普段使われない追放扱いされたカードをテーマ外で活躍させようという趣旨で開催された「追放杯」で使用した「転生炎獣エメラルド・イーグル」の小説です。大会結果は2位でした。
各人最近はやりの追放モノを書く流れになったんですけどよくある追放ざまぁ書いてもかぶると思ったので自己否定セルフ追放モノにしました。
遊戯王neuronで「追放杯」でデッキ検索だ!
____いつからだろう。
「コレが…!俺と不霊夢の…!友情のチカラだッッッ!」
___あの人のナカから、
「あぁ。最高に熱いカード達だよ。」
___ボクがいなくなったのは。
「バーニングッ……ドローーーッッ!!!」
身を焦がすほどの熱。ぶつかり合う思いはヒバナとなってフィールドを爛々と照らしている。
そこで戦うみんなは苦しそうで…つらそうで。
だけどその眼に萌した焔は消えることもなく。
どこか満足気で。
「負ける訳にはいかない」
そんなご主人の想いに応えるように燃え猛る仲間たち。
疾き鷹はその翼をさらに燃え上がらせ、
太陽の如く燃え盛る狼はより敵を燃やし尽くさんと吠える
聖域に根差し山猫は味方を守らんと炎の壁を展開し、
幾度も敵を灰燼と化してきた不死鳥はそのチカラを奮わんと羽根をはためかせる。
___そして絶対的なエース。熱く熱く燃え滾る獅子は主の想いを実現せんと、
その身を顧みず炎に身をやつす。
どこまでも熱く。誰よりも燃ゆる想いを。
「現れろ!未来を変えるサーキット!!」
___きっと彼らはこれから先の未来も切り開いていくのだろう。
「転生リンク召喚!!!」
___そこにボクがいなくても。
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「ーーーーーー。」
どこかを漂っている。ふわふわした変な感覚だ。
「ーーー? ーーーー!」
まわりがうるさい。まだ眠いんだ。寝かせてくれ。
「ーー**んなこと!おか***!?」
本当にうるさい。ただそれ以上に微睡んでいたい。瞼が重すぎる…
「弱すぎんだろ!誰が使うねんこんなやつ!!」
冷水を浴びたかのように一気に目が覚める。
その言葉を脳が理解するよりも早く呼吸が荒くなる。
………。
落ち着け。大丈夫。
自身に言い聞かせると先程の言葉を咀嚼する
それは誰よりも自分が、自分に対して感じていた言葉だった。
…。
数分経ち、そこでやっと自分の置かれた状況を気にする余裕ができた。
恐る恐る目を開け声の主の方へ顔を向けると、
そこには少年たちがなにやらカードを眺めていた。
先程の言葉が直接自身に向けられたものではないとりわかりホッと一息つく。激しく鐘を打っていた鼓動が収まっていくのを感じる。
ただ、感じたのは違和感。
「どこだ…?ここ?」
ボクがいたのはなにやら少し広めの白い部屋だった。
それだけなら特に違和感を感じないのだが特徴的なのは壁面。その壁は透明な棚で埋め尽くされており、中にはカードが端から端まで整然と並べられていた。そして最も大きな違和感がもうひとつ。
「なんだこの空間は…? …っ!?というかボクはなんで浮いているんだ!?」
そう、ボクの身体は半透明でぷかぷかと宙に浮いていた。
「いつも飛んでる感覚でもない…。なんだこれ。」
ただ不思議と嫌な感じはしない。漂っているというよりも自然体な感じだ。だからこそ不気味なんだけど…
ようやく現実を認識してきた。
どうやら少なくとも今までいたVRAINS世界じゃないみたいだ。ということは…
「ということは…ご主人とは…」
いや、やめよう。今考えるべきことじゃない。
とりあえず情報集めよう。それに今のボクじゃ__
先程までの熱き闘いが脳裏をよぎった
炎を背負った仲間。そして愛する主人。
そしてそこにはいない自分。
「ボクには…ボクには…」
帰る場所なんて…ないんだから。
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この世界に来てから1週間ほど経った。
元々生きていくのになにも必要のない身体ではあったが時折みかける美味しそうなものにはこっそり啄んだりしている。
少し前に頂戴した長方形のサクサクした板のようなものをはとても美味しかった。
それを食べていた人間は口の中の水分がなくなると文句を垂れていたが、普段炎を食していたボクには丁度良かった。
さてこの世界について分かった重要なことをまとめていこう。
ひとつめ
この世界はこのカードだらけの空間だけではないということ。
これはこの空間から扉を介して出ていく人間に興味本位でふらっと着いて行ったらあっさりと外へと出られた。てっきりこんな身体だから限定的な空間しか存在できないのかと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。空も普通に飛べるし移動にも制限はなさそうだった。
ふたつめ
どうやらこの世界ではVRAINS世界と同じようにボクたちがカードとなって人間の間でゲームとして親しまれていること。
人々はそれを「遊戯王」と呼んでいるらしい。そしてボクが最初に居たあの空間こそがその遊戯王カードを手に入れるための場所であることもわかった。
みっつめ
これが現状ボクを悩ませている原因なんだけど…
「ねぇ、聞いてる?あんたはここにいちゃダメなの。はやく立ち去んなさいおバカ」
3日ほど前に出会ったボクと同じ半透明の女の人。
艶やかな黒くとても長い髪を2つに結った髪型で黄色ベースの振袖を着た綺麗な人。何故かやたらと突っかかってくるけど見た目だけはお姫様みたいだ。1度ぽろっとそんなことをもらしたとき、
「当たり前でしょ。本当に姫なんだから」
などと言っていたしあながち間違ってないのかもしれない。名前は教えてくれなかったけど。
「というか、あんたが来てからやたらと増えたわねー『精霊』。多すぎるでしょ」
そう。これが分かったことのみっつめ。どうやらこの世界でのボクは遊戯王カードの『精霊』というものらしい。隣のお姫様もそう。周囲に目を向けるとポツポツと色んな『精霊』がいる。
外に出られることも考えると世界中に『精霊』は存在しているのだろう。
などと考察を深めているとお姫様に背中を蹴られた
「いたっ… なにすんのさ」
「聞いてなかったの?さっさと立ち去んなさいって言ってるでしょ。このデータ…この部屋はダメなの。」
諭すように彼女は言う。基本的にボクは彼女に逆らえない。なんだかそうさせるオーラがでてるというか…
1度反抗しようとして頭をつついたら片方の羽をむしり取られた。痛かった。そこまでする?
とにかく彼女がダメと言うなら今いるこの部屋はダメなんだろう。といっても散歩がてらよく店員が入っていく奥の部屋まで飛んできてただけなのだが。
一旦以上がこの世界についてわかったこと。
ただご主人のもとに戻る方法だけがわからない。
というか情報を得る手段がない。ちょっとだけ困っている
まぁでも焦っても仕方ないし、
特に不便もしてないし(お姫様は癪だけど)、色んなカードを使ってデュエルする人間は見ていて楽しいし退屈もしていない。
ゆっくりVRAINS世界に戻る方法を探していこう
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そんなこんなでさらに数ヶ月経った
相変わらずVRAINS世界に戻る手がかりは見つかってはいない。でもそれ以上に時々行われる人間たちのデュエルにボクは魅力されていた。
絶対的エースを主軸にどんどんと押して押して攻め勝つデュエリスト。
はたまた魔法や罠をトリッキーに使い、ジワジワと攻め立てるデュエリスト。
相手の隙を見逃さず一瞬にして捲りひっくり返すことを得意とするデュエリスト。
どの闘いもワクワクするものだったが何十戦、何百戦と試合を見届けるにつれてボクはあることに気づいていた
「またあのカードだ…」
そう。ここにきてほぼ毎日デュエルをみているがどんなデッキにも、どんなデュエリストもある程度共通のカードをつかっているのである。
それはピンク色っぽい幼気な女の子だったり、
イラストからは見て取れないがどうやらゴキブリのようなカードだったり、
長靴を履いた水晶でてきた身体をもつリンクモンスターだったり。
そしてデュエルしているお互いがそのカード達を使うことを当たり前のように受け入れていた。
使って当然。使われて当然。驚きもなければワクワクそうにもしていない。デュエルとはそういうものだと言わんばかりに当たり前のように進められる。
「そうか…どんなデッキでも必ず使われるカードがある…。これが遊戯王なのか」
ボクの主観でしかない。デュエルを見た数が少ないだけなのかもしれない。
ただこの世界における遊戯王とは「そういうもの」だということは恐らく間違っていない。
そんな実感が、そんな事実が、何故かはわからないけれどボクの胸に少し引っかかった。
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ある日。
ボクはいつものように目の前で繰り広げられるデュエルを眺めていた。
「スタンバイメイン、何かありますか」
「ッ…ぁーーー、スゥ ぃやーー」(トントントントン)
今日も今日とて遊戯王が行われている。
左側に座る男の子が使っているのは魔法とモンスターが一緒になっているカードを使ったデッキ。
右側の男の子が使っているのデッキはわからないが裏側のカードが多い。リバーステーマだろうか
「今日もまたあのカードが使われるのかな… ん?」
そんなことを頭で思っているとき、視界の隅でチラチラと動く1本角を持った兎のような『精霊』に目が止まった。
「(あれは…アルミラージ!?)」
そこに居たのは同郷・同族の転生炎獣だった。
ここまで同族とは会ったことのなかったボクは嬉しさのあまりに駆け寄っていく
だがアルミラージはこちらを一瞥すると、まるで知らないものに追われるかのように部屋の奥まで逃げていってしまった。
「!? まってよ!! ボクだよ!」
慌てて翼をはためかせ奥まで飛んでいく。
途中でなにやら他の『精霊』に声をかけられた気がしたがそんなことは一切耳に入らなかった。
奥の部屋まで辿り着いたはいいがアルミラージの姿が見当たらない。あれだけ小さな身体だ。どこか隅に隠れているのだろうか
「アルミラージ~? どこにいったの~ ボクだよ~」
とりあえず呼んでみるが返答はない。しぶしぶ部屋を探索してみる。
が、そこであるものに目が止まる。暗闇の部屋で光っているものがあった。ノートPCだ。
なんだか見てはいけないような気がしたが、
どうしてか、その画面に引き寄せられるようにボクはふらふらと身を寄せる。
「なんだ…なにが写って… ってこれは…?」
《使い道がない・難しい遊戯王テーマカード一覧》
そこに映っていたのはとある遊戯王サイトだった。
__いけない。
これ以上は見てはいけない。理由はわからないけど感覚が訴えている。これ以上は…
「なん…だこれ。なんでこんな」
そんな気味の悪い直感に反して、自身の目はページ下部へ下部へと吸い込まれていく。
そして。
見つけてしまった。
「ぁ… 」
《転生炎獣 エメラルド・イーグル》
見間違う訳がなかった。ボクの名前だ。
そこに記載されていたのは、かつてあの人が呼んでくれた、自分自身の名前だった。
ただサイトを読むことは止められなかった。そこに書いてあるのは淡々とした事実
「事実上儀式召喚1回分を無駄にする」
「このカードをサポートする手間で他のことができる」
「総じて単体では何もできないモンスター」
一つ一つの評価が棘のように心に突き刺さっていく。頭がパニックを起こし身体にも力が入らない。
「そうか…やっぱりボクは…」
薄々と感じていたことではあった。VRAINS世界でのご主人のデュエル。いつもボクの目の前にいる仲間たち。その背中を見ることしかできないボク。
「ボクは…ボクはいらないカードだったんだ」
不意に零れた言葉。
その言葉は雨のように突き刺さり、ボクの、転生炎獣として生きてきた胸の内に眠る最後の小さな炎を簡単に消してしまった。
もうチカラが入らない。
もう立ち上がれない。
なんのために。
「だから言ったじゃない。この部屋は来ちゃダメだって。バカなの?」
不意に背後から放たれる声。
この憎まれ口。
確認するまでもない。「お姫様」だ。
「この部屋はね、ここの管理者が遊戯王カードについて調べたり店の売上を運用するために使う部屋。当然売れないカード、使われないカードの情報も蓄積されているわ。」
彼女は在庫棚の間を跳ぶように移動し僕の元まで近づいてきて言った。
「あなたが転生炎獣であること。そしてその中でも全く使われていないことは初めて会ったときから分かっていたわ。」
なんで…そんなに詳しいのだろう。
「当たり前でしょ。私はお姫様なんだから」
なんの答えにもなっていない気がしたが真剣な表情をした彼女に何も言えなくなってしまう。
「だからあんたがこの部屋に来ればいつかどこかのタイミングでこんなことが起こってしまうことは容易に想像できたの。だからダメだって言ったのに。」
そうか。だから最初に会った時も彼女は…。
ボクのために…ボクがこんな思いをしないように。
口の悪さに隠れたお姫様の思いやり、そしてそんなふうにさせてしまった自分の不甲斐なさ。
色んな感情がぐちゃぐちゃになる
情けない。情けない。情けない。
「ボクは…どうすれば…」
何も分からない。これからどうすればいいのか。
VRAINS世界に戻ったところで必要とされていないボクが。
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はぁ~~
何秒とも何分とも分からない静寂を破ったのはお姫様の呆れたようなため息だった。
「仕方ないわねぇ… ほら。」
彼女が渡して来たのは1枚の紙。
渡されるがままにそこに書いてあった1文を声に出す。
「【遊戯王コンセプト杯 《追放杯》開催のお知らせ】…?」
そこに書いてあったのはとある遊戯王大会の開催規定だった。詳しく読むよりも先にお姫様が口を開く
「それは近々行われる遊戯王の大会…と、いってもまぁちゃんとしたものじゃなくてもっとカジュアルなもとだけれど。そのお知らせよ。あんたみたいなテーマでは使われないカードを別のテーマや他のカードを駆使して輝かせる大会らしいわ」
紙の下の方まで目を通す。なるほど。どうやら普段使えないカードを使う趣旨のものらしい。でもこれとボクになんの関係が…
「その大会であんた… 《転生炎獣 エメラルドイーグル》を使うデュエリストが出るって噂よ」
「!!!」
彼女の言葉がもう一度心の火種に火を付けた気がした。
ボクを…ボクを使うデュエリストがいる。
「別にこれがあんたのためになるかなんて知らない。けどどうせならもう一度、もう一度だけ頑張ってみたらいいんじゃない?」
その言葉に、ボクは_____。
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「よし。いこうか!」
この世界に来てから仲良くしてくれた『精霊』達に別れをつげボクは扉のほうへ向かう
飛ぼうとするボクの背中には少しだけ確かな重さがあった
「キュイ?」
アルミラージだ。あの後机の裏からひょっこりでてきてからやたらと懐いてくれている。今回もボクに着いてきてくれるらしい。
それともうひとり。
「久々に外に出るわね~~。アイス食べたいわアイス。」
お姫様もどうやらついてくるらしい
この前それとなく理由を聞いてみたのだがどうやら彼女も彼女で会いたい子達がいるらしい。
「ハレとニニは元気にしてるかしら。」
背中に乗りながらなにか呟いている。
まぁ着いてきてくれるのは嬉しいし、いいか。
「じゃあしゅっぱーーーつ!」
「キュイキューーーイ!!」
翼を広げたボクの背中の上で1人と1匹が声を高らかに上げる。
ボクがどれだけできるかわからない。自信が取り戻せたわけでも強くなったわけでもない。
ただこの1回のはばたきが。
いつか。
「待っていてね。ご主人。」
__彼に届くように。
ボクは今日、生まれ変わる
飛び立ったその翠玉色の鷲は、爛々と炎を輝かせていた。